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海洋堂のプラモデルはランナー状態でも美しい! エヴァ、太陽の塔……海洋堂ならではの造形に特化した「ARTPLA」【#静岡ホビーショー】
2023年5月12日 11:32
- 【第61回 静岡ホビーショー】
- 開催日:5月10日~14日(一般開放は13~14日)
- 入場料:無料
- 場所:ツインメッセ静岡(静岡市駿河区曲金3丁目1-10)
「海洋堂が本格的にプラモデルに挑戦する!」。今回のホビーショーでのブース出展は、その意味を込めているという。海洋堂は「ARTPLA(アートプラ)」というプラモデルブランドを2022年から展開している。
今回展示の目玉は3つの商品。「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機 獣化第2形態 ザ・ビースト ”ジオフロント血戦”」、「ARTPLA エヴァンゲリオン初号機“暴走”」、「ARTPLA 太陽の塔」の3商品だ。
2つのエヴァンゲリオン商品は、それぞれ以前発売されたガレージキットをプラモデルとして表現したものとなる。「ARTPLAエヴァンゲリオン2号機 獣化第2形態 ザ・ビースト ”ジオフロント血戦”」は原型制作を吉良かずや氏が担当、9月発売予定で、価格は7,150円。「ARTPLAエヴァンゲリオン初号機“暴走”」は、原型を松村しのぶ氏、11月発売予定で、価格は7,150円。もう1つの「ARTPLA太陽の塔」は原型を木下隆志氏、9月発売予定で、価格は19,800円。1/200スケールのプラモデルとなる。
海洋堂は本格的なプラモデルに挑戦することを2022年の静岡ホビーショーで宣言し、ブースを出展した。これまでもワンフェスなどでも出展していたが、今回3つのプラモデルのランナーを提示し、プラモデルとしての具体的な姿を提示したこととなる。「これが海洋堂が作るプラモデルだ!」ということをアピールする出展とのこと。今回会場で開発者に話を聞くことができた。
多くのプラモデルメーカーがそれぞれの持ち味を活かして商品を展開している現在、"新規参入"である海洋堂がどんなプラモデルを製作していくか? それは海洋堂ならではの"造形技術"をアピールすること。これまでファンの心を掴んだガレージキットの繊細で精密な造形をプラモデルでユーザーに提示する。それが「ARTPLA」のテーマだという。
「ARTPLA」は完成品はもちろんだが、「ランナーの状態でもその造形で魅了する」というのが1つの大きな目標とする。パーツの造形や配置でユーザーにキットの魅力を伝える。この繊細な表現と開発者のアイディアを実現するプラモデル製作メーカーをパートナーにしているとのこと。
各アイテムの"見せ方"を見ていこう。「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機 獣化第2形態 ザ・ビースト ”ジオフロント血戦”」は、エヴァ2号機の秘めた力「ビーストモード」で使途を圧倒する姿を描いている。
このガレージキットをプラモデル化するに当たり、ビーストモードの2号機を"着ぐるみを着た姿"として肉体のライン、筋肉の表現などを印象づけるパーツ分割を設計した。生物的な曲線を持つパーツ、動物の内臓や、筋繊維1本1本が表現されたパーツが寄り集まって獣のように姿を形作る2号機の姿へと組み上がる。エヴァンゲリオンの生物としての雰囲気を活かしたパーツ分割を行っているとのこと。
一方、「ARTPLA エヴァンゲリオン初号機“暴走”」はまるで装甲板の集合体のような、エヴァンゲリオンを形作る外部装甲の重なりを強調したパーツ分割を行っている。手のひらや足の先端と言ったパーツは確認できるが、例えば前腕でも複数のパーツを重ねて作るように設計し、ランナー状態ではどこがどの部品かわかりにくい。これらが細かく合わさり、重なり合って、暴走するエヴァンゲリオン初号機のシルエットを形成するのだ。
そしてランナー状態での衝撃を突き詰めて提示したといえるのが「ARTPLA太陽の塔」だ。このキットは太陽の塔の外見のみならず、内部まで再現している。特に内部の「生命の樹」は、多くの生物の模型が飾られており、命の進化を表現している。
プラモデルではあえてこの生命の樹の生物たちをプラモデルの1つのランナーに集約している。このランナーそのものが、生命の樹の多様性、どれだけ多くの動物がこの模型に使われているかを印象づけるようになっているのだ。
さらに「ARTPLA 太陽の塔」は、顔が中央に描かれた太陽の塔の印象的な部分を1パーツで表現、パーツを見た人にその迫力を刻みつけるようになっている。また内部骨格の複雑な造形、内側のパーツの金型での表現が難しい模様の表現など、まずパーツ単位でその造形美、表現のすごさで圧倒するようにしているという。
この説明を聞いた後に改めてパーツを見ると、パーツ設計の意図、そのアイディアを立体物として造形しているプラモデル製作メーカーの技術の高さにうならされる。これがどのように組み合わされるか、想像するだけでドキドキする。あえて組み立てず、パーツだけでも眺め、思いを巡らしてしまうキットなのだ。
「ARTPLA」は「パトレイバー」や「ボトムズ」など過去に海洋堂が手がけたガレージキットをプラモデル化していく。筆車は海洋堂の過去の資産であるガレージキットをシンプルにプラモデル化するのか、と思っていたが、それはどうやら違いそうだ。パーツ分割、ランナーの姿、組んでいく体験そのものが、"造形"の魅力を実感させるように設計されている。完成した姿だけが商品の魅力ではない、という、非常にユニークな、まさに造形の専門メーカーだからこそできるアプローチで製品が企画されているのだ。
これは、実際にパーツを見て、組んで、その上でもう1つ製品を購入し、完成品とパーツを見比べたくなる。「ランナーを楽しむ」という、面白いアイディアをぜひ体験してみたい。