レビュー

海洋堂「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機獣化第2形態ザ・ビースト」レビュー

作ることでより深く楽しめる"神造型"! プラモデルの新たな世界

【ARTPLA エヴァンゲリオン2号機獣化第2形態ザ・ビースト】

9月29日発売

価格:7,150円

全長:約170mm

原型:吉良かずや氏

 海洋堂はプラモデル「ARTPLA SCULPTURE WORKS エヴァンゲリオン2号機獣化第2形態ザ・ビースト“ジオフロント血戦”」を9月29日に発売する。価格は7,150円。

 ARTPLAは海洋堂の"造型の力"をフルに活用したプラモデルブランド。ガレージキットなど原型師が細部までこだわった造形物をプラモデルとして再構成、組み上げることで精緻で迫力のある立体物を組み上げることができる。「ARTPLA SCULPTURE WORKS エヴァンゲリオン2号機獣化第2形態ザ・ビースト“ジオフロント血戦”(以下、ARTPLA エヴァンゲリオン2号機)」では吉良かずや氏原型のガレージキットをプラモデル化している。

 モチーフとなるのは劇場アニメ「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」において秘めたる力を全開にしたエヴァンゲリオン2号機のザ・ビースト。吉良かずや氏は2号機を迫力のある姿にアレンジし立体化している。敵となる第10使徒を地面に叩きつけ圧倒する姿は、原作と異なる新しいイメージをもたらしている。

 「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機」では吉良氏の解釈による2号機のザ・ビーストの姿を、プラモデルを組み立てることで、より深く楽しむことができる。手足の筋肉の形、力を解き放つことで筋力に耐えきれず歪む装甲板、脊髄から突き出すリミッター、大きく膨らんだ胸部……。独特の造型を組み立てることでより間近に見ることができるだけでなく、プラモデルとしてのパーツ分割の見事さも楽しむことができる。

 今回は発売に先がけサンプルを触ることができた。無塗装だが、スミ入れによりディテールを浮き立たせ、その造形美を強調させ組み上げてみた。商品の魅力を紹介していきたい。

【スミ入れで際立つ神造型! 海洋堂、「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機獣化第2形態ザ・ビースト」】

海洋堂だからできる造型美で、ランナー状態でも美しいプラモデルに!

 「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機」は吉良氏の原型をプラモデルとした商品である。モチーフとなっているのは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」では圧倒的な力で侵攻してくる第10使徒を真希波・マリ・イラストリアスがエヴァンゲリオン2号機で迎え撃つシーンだ。

 エヴァンゲリオン2号機の本来のパイロットは式波・アスカ・ラングレーであるが、アスカは前の戦いで出撃できなくなっており、マリはエヴァを管理しているネルフにすら関知されずに無断搭乗で出撃した。マリは2号機で使徒と戦うが使徒のATフィールドは強力で、ダメージを与えることができない。マリは切り札として「裏コード ザ・ビースト」を発動させる。エヴァンゲリオン2号機は裏コードを受け背中のリミッターを解除、禍々しい獣のような姿に変化し、雄叫びと共に第10使徒に飛びかかる。

【ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION:2.22 Promotion Reel】

 原作ではザ・ビーストになった2号機や、N2ミサイルで特攻したエヴァンゲリオン零号機さえもかなわず倒されてしまうのだが、「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機」ではこの第10使徒をザ・ビーストで撃破し、まさにとどめの一撃を与えようとする姿で立体化している。2号機の姿も大きくアレンジされ、「この姿なら使徒に勝てるかも」と思わせる迫力あふれる立体物となっている。

「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機」は原作とは異なる第10使徒を圧倒する2号機のザ・ビーストの姿を表現している。今回はスミ入れで原型のモールドを際立たせる形で組み立てた
パッケージのボックスアート

 プラモデルの組み立て説明書には吉良氏が原型に込めた思いが紹介されている。吉良氏は原型を手がけるにあたり、アニメーション用資料と、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の映像を足掛かりに、海洋堂の先輩原型師の立体物を参考にして自分の中での方向性を決めていったという。

 動物フィギュアの第一人者と知られる松村しのぶ氏が手がけた「エヴァンゲリオン初号機」と元となるアニメの初号機を見比べ、アレンジの幅を自分の造型に落とし込んでいった。動きに関しては「リボルテックヤマグチ」を作り上げた山口勝久氏の造形物の"動き"に注目。そしてメカ造形作家である谷明氏の造型アプローチを参考にして生み出していったという。吉良氏がその上で「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機」をどのような解釈で造型していったかは、各部の組立のところで触れていきたい。

【海洋堂の原型師による商品】
「ARTPLA エヴァンゲリオン初号機“暴走”」。11月発売予定、価格7,150円。原型を松村しのぶ氏が担当している。吉良氏は松村氏のアレンジを参考にしたという
「【レガシーOFリボルテック】 LR-035 エヴァンゲリオン2号機 獣化第2形態 『ザ・ビースト』」。名作を復刻した商品。2015年05月発売で、価格は4,620円。原型は山口勝久氏。吉良氏は山口氏が表現する動きを採り入れた

 海洋堂は吉良氏が手がけた2号機の原型をガレージキットとして展開した。今回、「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機」では、その原型の迫力をそのままに、"プラモデル"として商品化したところにも注目したい。ARTPLAは海洋堂のガレージキットの精緻な表現力を、よりユーザーが手にしやすいプラモデルで提供しようというブランドである。

 その目指すところは「ランナーの状態でもその造形で魅了する」だ。未組み立てのランナー状態でもそのこだわりの造型を見せることで「この部品が組み上がったらどんな立体物になるのだろう」とユーザーをワクワクさせる。海洋堂の造形力を武器とした新しいプラモデルの方向性の提示だという。

 実際、「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機」のランナーからはその迫力が伝わってくる。台座となる第10使徒の大胆なパーツ分割、脊髄や肩から突き出す十数本のリミッターの迫力のある造型や、肥大化した筋肉の表現など未組み立ての状態から完成した姿を予想させ期待を高める。

 さらに作ることで痛感するのだが「パーツ分割の見事さ」も実感できる。パーツの分割線を原型のモールドと合わせたり、装甲と肉体部分を分割することで塗装しやすくするなどパーツ設計がとても考えられている。そして固定ポーズならではの大胆なパーツ分割。組み立てやすさもかなり練り込まれており、改めて「海洋堂だからこそできるプラモデル」という開発者の想いを感じることができた。

【ランナー】
Aランナーは使徒による台座のパーツ。全体的にパーツが大きい
Cランナーは腰や頭部のパーツ。非常に多いリミッターのパーツが目を惹く
Eパーツは腕部分。商品はA~Eまでの5つと、クリアパーツのFランナーで構成されている
パーツのアップ。リミッターの造型も細かい
腕パーツは筋肉の細かい表現までしっかり造型されているのがわかる

 「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機」のランナーはクリアパーツのFランナーを加えて6枚。各パーツは大きめだが、パーツ分割が独特なのでプラモデルをいくつか作った人にオススメしたい。複数のパーツがパズルのように組み合わさって力強い手足を形成していくのは、それまでのプラモデル知識を揺るがす設計の見事さを感じられるだろう。ゲート跡も極力目立たないように考えられており、開発者のプラモデルへのこだわりを感じることができる。

 本商品は赤1色の成型色で、組み立て見本のように仕上げるには塗装が必要で、見栄え良く仕上げるにはかなりの塗装技術が必要となる。しかし「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機」はスミ入れで原型のモールドを浮き立たせるだけで、とてもかっこよく仕上げられるのだ。本商品は一見難しそうだが、吉良氏の原型の凄まじい表現力、そしてその魅力を損なわず組み立てやすいプラモデルにした設計力は、無塗装の組み立てでも充分実感できる。ぜひこの魅力的なプラモデルに触れて欲しい。

 次ページからはいよいよ組み立てていこう。

【組み立て見本】
商品見本では塗装された見本が提示されているが、商品は未塗装だ。見本のように仕上げるにはかなりのスキルが必要となる。今回は商品の造型の魅力を伝えるためスミ入れでディテールを強調した形で組み立てた。本商品は塗装せずとも非常にカッコ良く組み上げられる。模型初心者も手に取り、組み立てて欲しい