ニュース
タイの神獣モチーフに「水星の魔女」を独自解釈! 「GUNPLA BUILDERS WORLD CUP 11th TOURNAMENT」受賞作の魅力を紹介!
2023年12月17日 10:09
- 【GBWC 11決勝大会】
- 開催日:12月16日
- 会場:ガンダムベース東京
ガンプラ世界一を競う世界大会「GUNPLA BUILDERS WORLD CUP 11th TOURNAMENT」の決勝戦が、12月16日、東京・お台場のガンダムベース 東京にて開催された。
「GUNPLA BUILDERS WORLD CUP(GBWC)」はBANDAI SPIRITSが発売する「ガンダム」をモチーフとしたプラモデル"ガンプラ"を使ったコンテスト。いまや「ガンダム」というコンテンツ、そしてガンプラは世界の様々な国で楽しまれている。
そしてガンプラは説明書通りに作るのだけが楽しみ方ではない。アニメと同じように細かく色を塗る「塗装」、劇中の姿を再現する「ダメージ表現」や、運用される機体を想定した「ウェザリング」、劇中とは全く違うオリジナル機体に改造したり、ガンプラ化されていない機体を作り出したりもできる。
そしてジオラマだ。劇中再現や、MSの活躍場面を表現したり、オリジナルイメージを追求したり、様々な楽しみ方ができる。そしてガンプラは"巨大ロボット"が活躍するというスケールモデルとは方向性が少し異なるロマンがある。様々な可能性をどう模索し、自身のプラモデル製作スキルを高めて独自の世界を表現して欲しい。「GBWC」はガンプラ開発者、関係者の想いを込めて開催され、その想いに応える多くの参加者によって日々可能性を広げているのだ。
今回の「GBWC 11th TOURNAMENT」では日本、中国内地、韓国、台湾、香港特別行政区、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、オーストラリア、ベトナム、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ&中東、英国の16のエリアが参加、会場にはそれぞれの国で勝ち進んだエリアチャンピオンが集まった。
ガンダムベース東京は現在販売されている多くのガンプラと関連商品が集まる場所だ。ガンダムベース東京が入っている ダイバーシティ東京 プラザの前には究極のガンプラと言える「実物大ユニコーン立像」もある。各選手と家族はこの東京に招待され、ガンプラの精緻とも言える憧れの地での観光も楽しんだ。そしてその中から、各3コースでの優勝者が発表された。
本稿では各コースの最優秀作品の選評とコメントに加え、2位、3位の作品も写真で紹介していきたい。どれも驚くべき情熱とテクニックで生み出された作品ばかりである。
タイの神獣モチーフ! U-14コース優勝「ザ ドラゴン ホース マニル マンコーン」
14歳以下のビルダーが参加する「U-14コース」で1位となったのはタイのパッサコーン・フォサインガム氏の「ザ ドラゴン ホース マニル マンコーン」である。巨大なメガ粒子砲と、MSの行動範囲を大きく拡げるサブフライトシステムが組み合わさったオリジナルメカだ。モチーフとしては頭が竜で、体は馬のタイの神獣をイメージしているとのこと。
この作品が「U-14コース」で1位になった選評として、BANDAI SPIRITSホビーディビジョンの安永氏は「『ガンダム』作品に登場するメガライダーに似ていながら、実は使っているパーツには『ガンダム00』や『ガンダムSEED』など宇宙世紀以外のパーツも使ってうまくまとめ上げている。ミキシングのセンスの様さを高く評価しました」と語った。
受賞後、フォサインガム氏に話を聞いたが、作った期間は4カ月ほど。見て欲しい点としては神獣が空を駆けるように飛んでいるように見えるか、どのように見せれば飛翔感が出せるかを工夫したとのことだ。
エリクトを救おうとするスレッタをイメージ、U-20コース優勝「ザ・ブレッシング」
20歳以下の「U-20コース」の優勝は台湾のハル氏の「ザ・ブレッシング」。「水星の魔女」のクライマックスシーン、母の復讐を果たすべくガンダム・エアリアルの能力を発動させ様とする肉体を失った娘エリクトを、主人公スレッタが止めようとするシーンを、アニメとは異なるオリジナルのイメージで描いている。
「水星の魔女」という最新の作品をモチーフとした速さ、劇中のエリクトとスレッタの関係を立体でうまく表現したこと、正面だけでなく背面の造型も凝っており、家族の絆をしっかり感じさせる構成になっているといった点が評価ポイントだという。「どこから見ても楽しめる作品」としての全体的な完成度も注目とのことだ。
ハル氏は長い間入賞を夢見てガンプラを作ってきた。入賞の喜びと感謝を語ったハル氏は「作品の視覚的なインパクトはもちろん、エリクトとスレッタの気持ちのやりとりも感じて欲しいと思います」と語った。
オードリーを守る印象的なシーンを凄まじい解像度で表現! 「O-21コース」優勝「ボンド フロム アボーブ」
「O-21コース」、21歳以上の参加者による世界戦を勝ち抜いたのはカナダのサイモン・ラム氏の「ボンド フロム アボーブ」
本作は無重力空間に自ら体を投げ出したヒロイン・オードリーの危機を感知した主人公・バナージは作業用プチモビ・トロハチに乗り込み、2人の運命かのように彼女を助ける。アニメ「機動戦士ガンダムUC」の序盤での強い印象を残すシーンだ。「ボンド フロム アボーブ」はそのシーンを凄まじいディテールで表現している。もちろんこのサイズのトロハチは商品化されてない。
評価されたのはまず、このサイズでトロハチを完成させた点。フルスクラッチのように見えるが、よく見るとPGのガンダムの装甲や、MGのガンタンクのキャタピラなど様々なパーツをうまく使っている。そのミキシング力、造形力が高く評価されたという。コクピットの作り込み、オードリーとバナージのポーズや位置などにも強い思い入れを感じさせる。作品そのものが持つドラマ性も高ポイントだったとのことだ。
ラム氏はこのトロフィーをトロントにいる家族の元に持ち帰りたいとコメント。実はこの作品はコロナ禍の前から製作を開始し、休止も含め4年をかけて完成させたとのこと。このジオラマは1/20スケールで作っているが、もちろんこのサイズのデカールもなく、統べて手塗りで細部を表現している。細かい部分が多いためエアブラシも使わずかなり力を込めたということだ。作業の細かさ、大変さを見て欲しいとラム氏は語った。
表彰の後、BANDAI SPIRITSの川口名人が映像でコメントをした。川口氏は世界中からビルダーが集まるこの機会をぜひ有意義に使って欲しいと強調、通訳スタッフの協力も得て、お互いの作品のテクニックや、ガンプラへの想いを語り合って欲しいと、会場のビルダーに話しかけた。
安永氏はまずコロナ禍を経てのリアルでの開催、ビルダー達の積極的な姿勢、各国の作品を目の前で見ることができる喜びを語った。最新作「水星の魔女」関連作も多く、熱意を感じた。各国の工作・塗装レベルの高さ、何よりもアイディアの多彩さと意外性、何よりも新しさにガンプラの可能性を改めて感じたという。そして最後に安永氏は「GUNPLA BUILDERS WORLD CUP 12th TOURNAMENT」の開催決定を宣言した。
筆者も長い間「GBWC」を見ているが、日本やアジアだけでなく、様々な国のビルダー達が腕を上げており、そして各国の優秀作品を参考に、自分だけの表現を追求していると感じた。それはガンプラという商品やガンダム作品だけでなく、巨大ロボットや、ロボットをキャラクターとして捉える表現など、様々な方向性が見えて興味深かった。
ガンダムベース東京では受賞作だけではなく、今回決勝戦にエントリーした40を越えるファイナリストの作品が来年まで展示
(C)創通・サンライズ