レビュー
ガンプラ「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」レビュー
「これが770円だと!?……ENTRY GRADEのガンダムは化け物か!?」次世代のファーストガンプラ誕生!
2020年9月4日 12:00
- 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」
- 開発・発売元:
- BANDAI SPIRITS
- 発売日:
- 9月4日(ガンダムベース東京・福岡先行販売)
- 価格:
- 770円(税込)
- ジャンル:
- プラモデル
- サイズ:
- 全高約13cm
今回レビューする「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は共に40周年を迎えたガンダム(2019)・ガンプラ(2020)イヤーにおいて、4体目の”RX-78-2 ガンダム”のガンプラとなります。さすが40周年メモリアルイヤー、いろんな視点のプロダクツが発表・発売されていましてファンとしてはうれしい限りです。
現在のガンプラシーンは主にHG、MG、PG、RGといったグレード分けで商品構成がなされているわけですが、今回の”ENTRY GRADE”は既存のグレードとは別に”プラモデルの面白さ”を伝えるための商品としてBANDAI SPIRITSが展開しているシリーズとなります。そもそも”ENTRY GRADE”はガンダムメインに向けられたシリーズではなく、すでに”仮面ライダーゼロワン”・”ドラえもん”・”ウルトラマンゼロ”・”ドラゴンボール超・孫悟空/ベジータ”といったキャラクターたちが同じフォーマットでリリースされています。
この「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム(以下EGガンダム)」のコンセプトは”初めてガンプラに触れる人”・”久しぶりにガンプラを組む人”・”ガンプラをこよなく愛する人”等々、対象年齢は8才以上となっていますが、全ユーザー・全年齢層のだれもが簡単に組み立てられるにもかかわらず、完成したガンプラはファンが求める素晴らしいプロポーションと可動性能を体験できる新感覚のガンプラとなっています。
そして”ENTRY GRADE”の特徴ですが、まず”抑えられたパーツ数”があります。組み立てやすさを重点におかれたパーツ構成と配置で、プラモデル製作の面倒な部分を一挙に排除してくれます。そして”工具不要”です。”タッチゲート”と言われる製法でプラモデル製作の基本的な工具であるニッパーさえ必要ありません。今回のレビューでもニッパーは封印しましたのでその状況は確認していただけると思います。さらに”塗装・接着・シール”すべて不要で色分けされたパーツをくみ上げるだけでカラフルなイメージ通りのプラモデルが完成します。
RX-78-2 ガンダムのガンプラに関しては先日の”ガンダリウム合金製”や、すでに発表されている”PERFECT GRADE UNLEASHED”、そして横浜に”GUNDAM FACTORY YOKOHOHAMA”として実物大「動くガンダム」が登場し、そのガンプラが1/144スケールと1/100スケールで登場しますよね。筆者としても気が休まらないくらいの怒涛の78ラッシュにうれしい悲鳴を上げております。
ここで”RX-78-2 ガンダム”をおさらいしておきましょう。”RX-78-2 ガンダム”はアニメーション作品「機動戦士ガンダム」の主人公アムロ・レイが搭乗する全高18mのロボット兵器(モビルスーツ)です。地球から最も離れたスペースコロニー、サイド3にて勃興した「ジオン公国」が初めて実戦に投入し、戦争初期を圧勝したモビルスーツ”MS-06ザク”に対抗すべく地球連邦軍が建造したモビルスーツが”RX-78-2 ガンダム”です。
”RX-78-2 ガンダム”は月面でしか生成できないとされる”ルナ・チタニウム”(後にガンダリウムと呼称)を使うことで高剛性と軽量化を実現して建造され、破格の性能をもってジオン軍のモビルスーツを凌駕しました。開戦時に圧倒的に優勢だったジオン軍は連邦軍のガンダムの登場によって形勢逆転となりましたが、戦争後期においてジオン軍が巻き返しをはかるべく技術面で追いついてくるも、ガンダムは関節部の”マグネットコーティング”化と共にパイロットのアムロがニュータイプへと覚醒することでその多大なる戦果は語り継がれることとなりました。
開発発表時にそのプロポーションと可動性能、それに”770円”というインパクトのある価格設定にガンプラファンたちが軒並み驚きの声を上げた今回の”ENTRY GRADE”はどういった商品に仕上がったのか?お借りしたサンプルをもとに本商品を担当したBANDAI SPIRITS ホビー事業部開発担当の齊田直希氏にお話を聞くことができましたので、その内容を盛り込みつつレビューをお届けしたいと思います。
これが新時代のファースト・ガンプラ!
齊田氏によると、「誰もが簡単に作りやすく、かつハイクオリティなガンダムが作れないか?」というところから始まり、ガンプラ40周年ということもあり何か入門的なものが出せないかと検討していたところ、実はHGUCの”REVIVE”版(HGUC 191 1/144 RX-78-2 ガンダム:2015年発売)でさえも”ハードルが高い”という感想だったそう。それから5年たった今、新しいRX78-2 ガンダムができないかということで企画されたそうです。HGリーオーの”ファインビルド(簡単組立)”がSNSなどでの評価が高く、買ってすぐ組めることの重要性に気が付き、今回のEGガンダムにフィードバックされたそうです。
EGは”タッチゲート”方式といってパーツをランナーから切り出すのに工具のニッパーが必要ありません。ガンプラ歴40年になる筆者は最初期のガンプラブームの時は工具も知らず「爪切り」を使っていました。爪切りが見つからなければ無理やりランナーからもぎ取っていました。もちろんパーツはギザギザが残ったり汚くなりはしましたが同じ経験をされた方も多かったのではないでしょうか……ある意味いい思い出ですね。この”タッチゲート”は少々力を加えてやることで”パチン”とランナーからパーツを取り出すことができます。
Bランナーはスライド金型オンパレードでした。頭部をはじめ肩やふともも、足首アーマーがスライド金型でした。これも作りやすさ優先の設計で、本来パーツを挟んだり貼り合わせるなどして組み立てますがもう最初から出来上がっている状態になっているわけです。これは本当にスゴイことでだいぶ製作のハードルを下げてくれます。
あっという間に組み上がっちゃいます!
それではさっそく組み立てていきましょう。本誌では組立説明書通りに進めていくことにしています。まずはモビルスーツの顔、頭部からです。タッチゲートでパチンパチンと外していきます。まだ触り始めなのでどのくらいの感覚でランナーからパーツが外れるのかを確かめながら進めていきます。
黄色のパーツはガンダムの目です。これまでのシール再現ではなく”シェーディングモールド”という処理で影を目の縁取りとして取り込んでいます。組んで目を見ると確かに縁取りがあるように見えます。横浜に建造中の実物大「動くガンダム」でもモールドの影はグラデーション塗装されているそうです。どちらも立体感を強調させるための技術ということになりますが様々なアプローチがあっておもしろいですね。
そして注目は赤いアンテナ基部です。ここは頭頂部のメインカメラといっしょに成形することで組みやすさが格段に上がりました。メインカメラが赤くなってしまいますが、気になるようなら別途ガンダムマーカー等で塗ればいいですね。ここは頭部全体を垂直に組み立てられる構造と共に齊田氏イチオシの構造だそうです。
ボディ部を組み立てます。
筆者がこれまで作ってきたガンプラで見たことない組み方でした。いつもガンプラを作っている筆者からすると「こんな組み方があったのか!」と新しい発見をしたようでなんだか嬉しくなってきました。特に胸の黄色いルーバーなんて青いパーツに埋め込むのが当たり前でしたし、齊田氏によると「これまでは、技術をプラス方向に積んでいくということをやっていたが、今回はこういう細かい構造を削ぎ落していくことでいかに組み立てやすさを追及するか」を大前提にしたそうです。襟のパーツと一体になっているなんてすごい構造で素晴らしいですね。こんなに大きな黄色い部分はこういった構造だと隙間から見えるんじゃないかと心配になりますがそんなことありませんでした。
腕部を組み立てます。
腕部パーツを並べてみました。ここもパーツ数は少なくてあっという間に組み上がります。まず前腕を貼り合わせるのですがいつものガンプラならこんな組み方は”間違っちゃった”だったりするのですが、これで正解です。組んだ前腕に肘関節をパチンと組み込めばほぼ完成です。
この組み方だと接続部が露出しますが、それをカバーするパーツまであるのが驚きです。これなら関節部が目立たなくて最高ですね。このようなカバーを着けた肘も2重関節ではないのに結構可動しますし、肩部の可動域を合わせると最新HGクラスの可動性能を発揮します。
腰部を組み立てます。
可動しないリアアーマーを前提にリアのヘリウムコアを基部と共に成形するというなんとも大胆な構造です。ここも大きなボールジョイント関節を持たせることで必要にして十分な強度と摩擦容量を確保しています。ガンガンにアクションさせてもへたりも少なく大胆なポージングが可能になります。フロントアーマーは左右つながっていますが、中央の接続部で切り離せば左右独立して動かせるようになります。ポージングの際に密度が増すのでオススメの工作です。
そして!ここが「RX-78-2 ガンダム」のガンプラ化の際にいつも気になる部分の股間の連邦軍のV字マークですが、なんと別パーツ化で再現されています。HGシリーズでさえもここはシールでの再現が多く、まさに思い切った部品分割の勝利であります。もちろん基部の黄色や股関節部の赤色が目立つことはありませんが、気になるならメカ色(グレー)等で塗装してもよいでしょう。
脚部を組み立てます。
脚部でも腕部同様の構造になっています。足首以下のソール部を組み、太ももと脛部を作っておいて、関節部で双方を接続してカバーパーツを取り付けます。筆者が文章書くのに困るほどたったこれだけで組み上がってしまうんです。組んでいて笑みがこぼれっぱなしでした。
確かに脛部のバーニアなど細かいところの色分けがなかったりそれなりにオミットされていることはあるのですが、組んで動かしてみたらそんなこと気になりませんでした。これまで培われた”ガンプラ”の技術革新……広範囲な関節可動を実現するためにどこに軸を置いたらよいかがこのEGガンダムには詰まっています。これは立体物の”構造”というものを学ぶのに最適なんじゃないでしょうか。齊田氏も「少ないパーツで最大限の可動を実現するためチャレンジした」と、この脚部……特に足首の構造に自信をもっていらっしゃいました。
装備は2つ……あ、あれがありません!
RX-78-2 ガンダムを象徴する装備といえばビーム・ライフルとシールドですよね。もちろんそれは付属していますし、ビーム・サーベルもランドセルに収まっています。収まっていますが、あれがありません!あれとはビーム・サーベルの”ビーム刃”です。他のHGシリーズから持ってくればいいのですが、たとえば黄色のランナーの一部がビーム刃になっていれば話のネタにもなって面白かったかもしれません。ここが少々残念ではありました。
なんと組むだけなら30分ほどで組み上がります。みんなでタイムアタックも面白そう!
こんなに早くRX-78-2 ガンダムが組み上がったのは何十年ぶりでしょうか……”エントリーグレード”という名にふさわしい組みやすさとプロポーションとアクションの融合は初めて”ガンプラ”に触れる方にとてつもない体験を与えてくれるとおもいます。
ここからガンプラに触れて、EGでは”ここが物足りなかった”という部分が出てきたらEGを自分のイメージ通りに改修したり塗装するもよし、HG、MG、PG、RGと難易度を上げていってもよいでしょうし、その選択肢はたくさんありますね。筆者からはこのような環境があるのはうらやましい限りです。
今回撮影込みではありましたが組み立てだけなら30分ほどでできてしまうのは大変驚きましたし、いろんなものを背負ってしまって時間のないベテランの方々にこそオススメなのかもしれないなぁ、と思いながら作りました。ルービックキューブじゃないですけど「キミは何分で作り上げることができるか!?」みたいなタイムアタックやるのも面白いんじゃないでしょうか。
ポーズ集
見てください、このプロポーション。この40周年でいろんな視点で設計された「RX-78-2 ガンダム」が発売されてきましたが、私たちが思う、標準的な「ガンダム」のプロポーションですね。腕も脚も細すぎず、太すぎずいいバランスです。各パーツのエッジ(角)もビシッと面取りされていて陰影も強調されるのでプロポーションや見た目の印象も決まってます。
組み立ても簡単なのにここまで動きます!この可動範囲はこの40年の積み重ねなんですね、素材の変化もあるとは思いますが”どこに軸を持たせるか”を突き詰めていくと一見どう動くかわからない関節パーツの働きがわかってきてとても楽しくなります。
いろんなところに関節を仕込んで”可動すごいです”とされていても動かしてみると余計に動く場合があってポーズが取りにくい時もあります。齊田氏からは「引き算の美学」という言葉を教わりました。積み上げていったものから余分なものを引いていって必要なものだけにフォーカスするということですが、このEGガンダムにはその効果が十二分に行かされていると思います。
ENTRY GRADE 1/144 ガンダムを作り終えてみて
正直驚きました。”エントリーグレード”という言葉通りに受け止めてしまうと、なんだ”超”初心者向けなんでしょう?というイメージが頭の中に浮かんでしまって発表された写真はたしかにイマドキのプロポーションでかっこいいんだけどディテールも甘くって動かないんでしょう?770円なんだし……という想像をしてしまっていました。
そしてサンプルをお借りして2枚のランナーを見て”はっ”としました。これはガンプラだ……しかもちゃんとしたガンプラだ!と思ったんです。しかもこのクオリティのガンプラを770円で提供するという……大変失礼しました。パーツは驚くほど巧みな分割で整然とランナーにならんでいます。よく見ていくと関節部分もぬかりなくグレー色で表現されていてまったく新しい構造で設計されているのがわかりました。仮に何の情報もなく「HGシリーズの新作です」と渡されてもなにも疑わないと思います。
作り始めてその設計思想にもびっくりで、素の状態のガンプラが”後はめ”構造がこんなにたくさんあるのは初めてでした。最初からこの状態だと間違いにくく、パチパチ接続していくだけなので直感的で組みやすかったです。齊田氏へのインタビューでもそこを強調されていたので、筆者も開発者からのメッセージをそのとおりに受け取ることができました。
齊田氏は「PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60 RX-78-2 ガンダム」も担当されています。お話を聞いてみると、実はこのEGガンダムのコンセプトや技術も継承されているとのことです。残念ながらPGに関しては詳しいことはまだ聞けてないのですが、グレードの大小にかかわらず他のグレードへのフィードバックを行っていくことでガンプラは進化していくんですね。
そして横浜の”GUNDAM FACTORY YOKOHOHAMA”の実物大「動くガンダム」の1/144スケールと1/100スケールはどういった視点で作られるのでしょうか、こちらも楽しみになってきますね。筆者も「RX-78-2 ガンダム」をさまざまな視点で設計されたガンプラを作ることで”そうなるのか!”と驚き、発見するのが毎回の楽しみにしています。今回の「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は東京と福岡のガンダムベースで先行販売とのことで、9/4になったらガンダムベースへ行きたくてウズウズしてきますね!
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