レビュー
「MODEROID AV-98イングラム&ブルドッグセット」レビュー
グッスマが提案する、作りやすくてよく動く、パトレイバーキットの新しい形
2021年1月23日 00:00
- 「MODEROID AV-98イングラム&ブルドッグセット」
- 開発・発売元:グッドスマイルカンパニー
- 発売日:1月
- 価格:5,300円(税込)
- サイズ:イングラム約135mm、ブルドッグ約100mm(全高)
グッドスマイルカンパニーのモデルシリーズ「MODEROID(モデロイド)」にて、「機動警察パトレイバー」に登場するレイバーがラインナップされ、その第1弾となる、「MODEROID AV-98イングラム」、「MODEROID AV-98イングラム&ブルドッグセット」、「MODEROID ブルドッグセット」の3種類が1月21日に出荷、発売となった。
「機動警察パトレイバー」の発表から30年以上が経過し、これまでも主役機・イングラムだけでなく様々な登場メカが、プラモデルやガレージキットなどで多数発売されてきたが、このMODEROID版はその中で最も新しいプロダクトとなる。
パトレイバーファンとプラモデルファン両者の期待が高まるこの新製品「MODEROID AV-98イングラム&ブルドッグセット」をレビューしていきたい。令和に蘇るパトレイバー「AV-98イングラム」と、作業用レイバー「ブルドッグ」の2体セットの組み立て手順やその完成度を紹介していきたい。
「機動警察パトレイバー」TVアニメ版1話より登場した2機のレイバーをセットに
「機動警察パトレイバー」は、5人のクリエイターを中心とする「ヘッドギア」によるコミックやアニメーション、小説などで展開されたメディアミックスプロジェクトである。アニメ(OVA)及びコミック発表当初の1988年は昭和最後の年であり、人が乗って動く作業用の巨大ロボットが生活圏に浸透した10年後の近未来を描いた物語は画期的で、多くのファンの心を鷲掴みにした。
そんな作中で描かれた未来が、現在では“レトロフューチャー”という見方もされてしまうのは筆者として驚きを隠せないが、2018年のプロジェクト30周年を機に、イベントの開催やREBOOT版の公開、公式ファンサイトの設立、映画のリバイバル上映なども行なわれ、その魅力は現代まで伝えられている。
“レイバー、それは産業用に開発されたロボットの総称である。建設、土木の分野に広く普及したが、レイバーによる犯罪も急増。警視庁は特科車両二課パトロールレイバー中隊を新設してこれに対抗した。通称、パトレイバーの誕生である”……ファンにはおなじみのアニメのオープニングナレーションでも紹介されている通り、20世紀末に一般社会にも浸透した作業用ロボット「レイバー」をテーマとしたのが同作であり、その存在は作品の大きな魅力となっている。
この「MODEROID AV-98イングラム&ブルドッグセット」は、そんな作中のレイバーを代表する2機種をプラモデル化し、セットにして発売したものだ。主役機であるパトレイバー「AV-98 イングラム」は単体でも発売され、汎用レイバー「ブルドッグ」は同じ機体を2機セットにした「ブルドッグセット」がグッスマオンラインにて受注販売された。ともにアニメ版1話から登場している作品を代表する機体であり、実は主人公の泉野明はTVアニメ版で両方の機体に搭乗している。
昭和最後の名機を、令和の造形・設計技術によって1/60スケールでプラモデル化
まずは主役となる「AV-98 イングラム」から見ていきたい。AV-98イングラムは、多発するレイバー犯罪に対応するために、篠原重工の八王子工場にて開発された2足歩行型レイバーである。密閉型コクピットの採用によりヒロイックな人間型のシルエットを実現し、パトカーを思わせる白と黒のカラーリングやパトランプ、旭日章を備え、見る者に与える心理的影響をも考慮して設計された、純警察用の機体だ。作中では特車二課第二小隊に3機が配備され、このキットではその1号機と2号機のどちらかを選んで組み立てられる仕様となっている。
スケールは1/60に統一。アニメ版放映当時に発売されたバンダイのプラモデルと同スケールというのが懐かしいが、別会社の製品といえど30年の模型設計技術の差は歴然で、プロポーションや可動はもちろん、パーツの色分け分割、作りやすさなども考慮されている。
ランナーはイングラムだけで13枚あるが、それぞれは小さめでパーツ数はそれほど多くはない。MODEROIDシリーズの特徴である塗装済みパーツは、頭部カメラのバイザーとパトランプ、旭日章のみであった。先日行なわれたオンライン展示会「THE合体展」で関係者にコメントを求めたところ、このパトレイバーシリーズは、どちらかというと多少心得のあるホビーユーザー向けの仕様で、組み立てや塗装などもある程度考慮し、塗装済みパーツの数は最低限に抑えているとのこと。クリアパーツに限っては、塗装していないスペアが付属するのもそこを意識したものかもしれない。
ホビーユーザー向けとはいっても、組み立て自体に特別難しいところはないように感じられた。頭部は1号機、2号機ともに5パーツの設計ながら、合わせ目も目立たず、ディテールもカンペキだ。1号機頭部左右の特徴的な意匠であるボルトディティールもバッチリ再現されている。肩は可動を重視した設計で、アーマーの独立可動と引き出し式関節を備えている。
パトレイバーの立体化時、ちょっとした注目ポイントとなるのが、設定では布製の関節カバーの仕様だ。前述の1/60キットや、ある程度大きさのあるアクションフィギュアなどでは、設定と同様に関節の上に布や樹脂などでカバーをかける仕様が採用されていたが、このキットではオーソドックスにプラパーツで再現している。成形色は紫がかったグレーになっているが、好みで塗装してみてもいいだろう。
キットは接着剤を使わなくても組み立てられるが、関節など一部の可動部に接着を推奨する部分があり、説明書にその旨が表記されている。完成後に可動させることを前提とするなら、推奨部分は全て接着することを勧める。
なお関節にポリキャップは使用しておらず、全てパーツのジョイントによってまかなっているため、はめ込むときに少し固いところがあり、細めの軸は耐久性が心配でシリコングリスなどを薄く塗ってみようとも思ったのだが、完成後に緩くなってしまう恐れもあったので、結局使わずに完成させている。当然そういったものを使わない前提で完成させられる設計なので、このあたりは組み立て時に自己責任で判断していただければと思う。
完成後のプロポーションは、腕や太ももなど部分的にやや細身の印象もあったが、直立させて眺めてみると、全体のバランスはかなりいいと個人的には思った。イングラムの体格は作品や個人の好みなどで印象が結構変わるものだが、多くのファンに好まれるプロポーションにまとまっているのではないだろうか。
またパーツの合わせ目がほとんどわからないのもプラモデルとしての評価を高めている。色分けも問題ないが、作例のようにシールドが色分けされていないところだけは素組みでも目立つので、塗装するか、もしくは黒色のテープなどを貼ってみるのがよさそうだ。
完成させてみると、可動もかなり優秀で、特に引き出し式の肩関節のおかげで、武器を持ったポーズが決めやすく、リボルバーカノンを両手で構える、スタンスティックを持って見得を切るなど、イングラムらしいシーンを再現可能だ。前述の接着推奨ポイントを接着しておけば合成も上がり、アクションフィギュアのように動かすこともできるだろう。なお1号機と2号機は頭部と肩アーマーを交換するだけで換装できるようになっている。ただしナンバープレートはデカールなので、好きな方を選択して貼り付けていきたい。
(C)HEADGEAR