レビュー

モデルガン「S&W M360J “SAKURA”」/「S&W M37 J-police 警察仕様」レビュー

M36を原型とした日本警察仕様のリボルバーの細部をチェック!

【S&W M360J “SAKURA”HW モデルガン】

ジャンル:モデルガン

開発・販売元:タナカワークス

価格:31,350円(税込)

発売日:8月再販

全長:161mm

重量:440g

装弾数:5発

【S&W M37 J-police 警察仕様HW モデルガン】

ジャンル:モデルガン

開発・販売元:タナカワークス

価格:27,280円(税込)

発売日:8月再販

全長:160mm

重量:355g

装弾数:5発

 タナカワークスはモデルガン「S&W M360J “SAKURA”HW モデルガン」と「S&W M37 J-police 警察仕様HW モデルガン」を8月上旬に再販する。今回発売に先駆けてサンプルを触ることはできた。

 この2丁は日本の警察、交番などに勤務しているいわゆる"おまわりさん"が装備しているリボルバー(回転式拳銃)だ。実銃をほとんど目にすることがない我々が日常的に目にできる数少ない銃といえる。どちらも「S&W M36 チーフスペシャル」のバリエーションだが、比較をすると、1997年より配備された「S&W M37」はM36の軽量化モデルといえるものだが、2006年より配備の「S&W M360J 」は素材や構造に改良が加えられている。

 日本警察仕様として、どちらもグリップや刻印、警官と銃を紐でつなぐ「ランヤードリング」の装備といった特徴がある。今回、「S&W M360J “SAKURA”」と「S&W M37 J-police 警察仕様」を比較することで、M360Jはどのようなところが改良されたかが。日本の警察が装備する銃の特徴がわかるというわけだ。

 外見上の特徴を紹介するのはもちろん、モデルガンとしての質感や、モデルガンならではの、火薬を使って拳銃を発射したような雰囲気を味わう"発火"の楽しさも紹介していきたい。

【S&W M360J “SAKURA”HW モデルガン】
M36シリーズの最新バージョンと言えるM360の日本警察仕様
【S&W M37 J-police 警察仕様HW モデルガン】
こちらはM36の軽量化を施したM37の日本警察仕様。2つを比較することで特徴がさらにはっきりと見えてくる

2つの銃の元となったS&Wの小型拳銃「M36」はどんな銃か?

 この2丁の警察配備の拳銃を紹介する前に、原型となる「S&W M36 チーフスペシャル」を少しだけ紹介したい。この銃が生まれたのは1950年、アメリカの警察で多く使われていた「38スペシャル弾」を撃つための小型リボルバーとして開発された。この銃が発表されたのは国際警察署長協会(International Association of Chiefs of Police)であり、この際に銃の名前が投票で決められ、「チーフスペシャル」となった。

 38スペシャル弾とは、S&W社が開発した弾薬で19世紀末に.38ロングコルト弾以上の威力を持つ弾薬として開発された。名称は38だがその口径は357インチ(9.067 mm)であり、口径が同じで薬莢を長く創薬数を増やした弾薬が「357マグナム」である。38スペシャル弾は犯人を無力化する拳銃弾として1990年代初めまでアメリカの警察で広く使われた。

【S&W M36 チーフスペシャルHW モデルガン】
1950年に生まれたS&Wの小型リボルバー。様々なバリエーションが展開している

 M36はこの38スペシャル弾を5発装填できるリボルバーである。引き金を引くだけでハンマーが起き銃弾を発射できるダブルアクション、ハンマーを起こして引き金を引くシングルアクションどちらの射撃も可能。全長165mm、重量550gと小型軽量の拳銃で、取り回しがしやすい。S&Wは拳銃を"フレーム"という単位で様々な拳銃を製造しているが、M36は小型拳銃であるJフレームの基礎となった。ちなみに357マグナムが発射できるM19は中型のKフレーム、狩猟用の大型拳銃であり、映画「ダーティハリー」でおなじみのM29はNフレームとなる。

 M36はその後様々なバリエーション展開をしていく。3インチのヘビーバレルを採用した「M36-1」、フレーム後部を大きくハンマーを隠すことで拳銃を抜く時服などに引っかからないように設計された「M49 ボディーガード」。そして素材を変更し、軽量化を行なったもの。その1つがアルミニウム合金により100グラム以上の軽量化を果たしたM37となる。今回取り上げる「S&W M37 J-police 警察仕様」は、M37の日本警察向けバリエーション、というわけだ。

M37とM360を比較することで見えてくる特徴と、日本警察仕様のカスタマイズ

 ここからはモデルガン「S&W M37 J-police 警察仕様」と、「S&W M360J “SAKURA”」を見比べながら、その特徴とモデルガンの楽しさを見ていこうと思う。モデルガンはやはり"実銃を前にしたような興奮"が最大の魅力だ。エアガンのように弾が出ないので、造形や操作感、そしてカートリッジに火薬を詰めての"発火"が楽しめるのが大きな特徴となる。

 実銃の特徴を紹介しながらモデルガンの細部をチェックしていこう。M37は前述の通りスチール製のM36の材質を変更し、軽量化を行なったモデル。形状もM36に近い。「S&W M37 J-police 警察仕様」は耐久性を上げるためシリンダー部分の材質を変更、ほかにもM36のバージョンアップと共に改良を加えられたM37-2が原型となっている。「外見的にはM36そのまま」というのが、M37である。

【S&W M37 J-police 警察仕様HW モデルガン】
外見的にはM36そのままという感じのM37。実際にM36と比べるとシリンダーをスイングアウトさせるための「サムピース」や、「トリガー(引き金)」の形状などに違いがある
【S&W M360J “SAKURA”HW モデルガン】
ぱっと見にはほとんど同じ銃に見えるM360J。比べることで違いが見えてくる
見比べるとグリップの違いがよくわかる

 そして「S&W M360J “SAKURA”」はM360の日本警察向けモデルである。M360は2002年より量産された新しい銃だ。日本警察は2006年に生産が終了したM37に代わり、M360の日本仕様である「S&W M360J “SAKURA”」を導入するようになった。

 M360は材質を変更した軽量化モデルだが、こちらは軽量化と共に「357マグナムに対応」という命題が掲げられている。フレーム材質に「スカンジウム添加アルミニウム合金」を使用することで、軽量化と共に構造の強化が図られている。構造の強化はデザインそのものも変えている。M37とM360を比較することでその強化が見えてくる。

【M37銃身部分】
【M360J銃身部分】
まずM360Jは銃口が2重構造になっているのが大きな違いだ。銃身そのもののデザインも異なる。また銃身の下のエジェクターロッドを覆う。エジェクターシュラウドが印象に残る。構造が強化されているのが視覚的にわかりやすい

 ぱっと両者を比べただけでは"間違い探し"の様に両者の違いは見つけにくい。特にシルエットはほとんど変わらないように見える。大きく異なるのは銃身部分だ。銃口をのぞき込むとM360はM37に比べ太く、そして黒いフレームの中に銀の"バレル・ライナー"が見える。外側はスカンジウム添加アルミニウム合金で、内側にはステンレス鋼が使用されており、強力な弾丸の発射に耐えられるようになっているのだ。

 銃身側面にはシリンダーを支える「エジェクターロッド」があるが、M37はむき出しであり、M360はフレームを伸張した「エジェクターシュラウド」に包まれている。弾丸を発射したときにエジェクターロッドに強い力が加わる。38スペシャル弾より威力が高い357マグナム弾を発射することが前提のM360はエジェクターシュラウドでこの衝撃に耐えるように設計されているのがわかる。

【M37の刻印】
6桁の警察管理番号。サムピースの形状もしっかりチェックしたいところ
S&Wのマークと軽量化モデルであるAirweightの文字
刻印のチェックもモデルガンの楽しさだ
【M360Jの刻印】
6桁の警察管理番号はシリンダーの下に刻印
NMBの文字はミネベアミツミによるカスタマイズを示す
こちらもAirweightの文字。M37はアルミ合金、M360Jはスカンジウム添加アルミニウム合金によって軽量化が施されている

 そして細かな刻印もリアルなモデルガンの楽しみだ。M37の左側面は銃身部分に「SMITH & WESSON」の文字があり、フレーム部分には6桁の数字。これは警察管理番号だという。M360にもシリンダーの下にこの番号が刻印されている。

 M360Jの方で特に注目したいのは、「NMB」の刻印。NMBは「ミネベアミツミ株式会社」の製造であることを示す。M360Jはミネベアミツミのグリップや"ランヤードリング”の取り付けによるカスタマイズが行なわれており、これを示す刻印だ。

 ちなみにM360JはM360の大きなセールスポイントである「357マグナムの使用」には対応していない。日本警察仕様では強力な357マグナムは使用しないという判断だろう。このためM360Jの初期型はスチール製のシリンダーとなっている。

 ちなみに実際に警察で使用されているM360Jは「SAKURA M360J」と「NMB」の刻印が白く浮き出るようになっているという。タナカの製品ではこれが塗られていない。メーカー出荷品として実銃との混同を避けるための処置だろうか? 水性クレヨンなどで色を入れることでより実銃の雰囲気に近づけるとのことだ。

【M37各部】
ハンマーは「ハンマーノーズ」という前方に大きく突き出した部品が確認できる
非常にシンプルなリアサイト
シリンダーをスイングアウトしてみる。装弾数は5発だ
【M360J各部】
M360Jのハンマーはハンマーノーズがなく、大きさそのものも小さい。ハンマーノーズは破損しやすい部品であり、ここにも改良・強化の設計が感じられる
こちらのリアサイトもシンプル。ハンマーが叩くファイアリングピンが確認できる
シリンダーをスイングアウト

 M37とM360はハンマーも大きく違う。M37はハンマーが比較的大きく、「ハンマーノーズ」という前方に大きく突き出した部品が確認できるが、M360のハンマーは小さく、形もシンプルである。M37はハンマーノーズで弾薬の炸薬部分を激しくたたくことで弾薬を発射させるが、M360はハンマーで銃内部のファイアリングピンをたたくことで弾薬を発射させる。ハンマーノーズは衝撃を受けやすい部品であり、この構造を改良したというのがわかる。

 銃上部の狙いをつけるためのリアサイトはM36から受け継ぐ溝が掘っているだけの簡素なもので、調整可能な照準機などは取り付けられていない。

【M37グリップとランヤードリング】
大きな特徴のグリップとランヤードリング。握ってみると小指が余ってしまう。小型拳銃は反動が大きい。小さなグリップは心許ない印象がある
【M360グリップとランヤードリング】
こちらはM360J。グリップは小指までしっかりカバー。しっかりした握り心地だ

 そして日本警察仕様として最大の特徴がグリップだ。M37もM360Jもグリップは樹脂製だが、M37はかなり小さく握ると小指部分にはひっかからない。滑り止めのチェッカリングが彫られていてしっかり手のひらになじむ。グリップも指が引っかかる形状にはなっているが、いざ握ると"小さいな"と言う印象が強い。

 M360Jのグリップはこれに比べると大型化していて小指部分もしっかりカバーしている。また重量もM360Jの方が440gと重さが増している。銃弾を発射する際の反動は大きい。しっかりと握りやすいグリップを持ったM360Jの方が安定した射撃を行なえそうだと感じた。

 グリップと共に日本警察仕様としての大きな特徴がグリップ底面の「ランヤードリング」この金具に金属が芯に入った紐を接続し、警官の腰にしっかりつなぐ。拳銃の盗難、紛失を防ぐための装備で、このランヤードリングによって紐につながれた拳銃というのが、日本の警官用拳銃の伝統的なシルエットと言えるだろう。

 2丁を比べることで原型のM36に近いM37の特徴、そこから様々な強化が施されたM360、そして日本仕様というものはどういうものかがわかった。小型の拳銃で装弾数も5発しかないリボルバーは"武器"と考えるとちょっと心許ない感じもするが、日本の警察、「おまわりさんが持つ銃」というのは、やはり大きな魅力とリアリティーがある。次ページではモデルガンならではの"発火"をやっていきたい。