レビュー
「創彩少女庭園 佐伯 リツカ【聖アイリス女学園高等部・夏服】」レビュー
かわいさ満点、原石のような可能性を秘めたプラモデル
2021年8月19日 00:00
- 【創彩少女庭園 佐伯 リツカ【聖アイリス女学園高等部・夏服】】
- 開発・発売元:コトブキヤ
- 発売日:2021年7月28日
- 価格:6,600円(税込)
- ジャンル:プラモデル
- サイズ:全高約157mm
コトブキヤは美少女プラモデルシリーズ「創彩少女庭園」第3弾「佐伯 リツカ【聖アイリス女学園高等部・夏服】」を7月28日に発売した。
コトブキヤといえば、同社のオリジナルロボットプラモデル「フレームアームズ」のスピンオフ「フレームアームズ・ガール」や「メガミデバイス」など美少女プラモデルコンテンツの第一線を走るホビーメーカーだ。
筆者も「フレームアームズ・ガール」、「メガミデバイス」に触れてきた。メカと美少女が織りなす有機的で可愛らしさを体現する本体と、それを覆う無機質でカッコよさを放つ装甲のコンビネーションは魅力にあふれている。
そして、プラモデルの長所であるパーツの交換による簡単なミキシングから始まり、自作パーツを作りオリジナリティを出すもの、そして着せ替え人形のように洋服を作ることで現実的な表現ができるなど、幅広い遊びが可能だ。
「創彩少女庭園」はその中でも「普通の女の子」をテーマに可愛らしさとおしゃれをするようなカスタムが楽しめるシリーズとなっている。
「フレームアームズ・ガール」と比べるとメカ部分がオミットされているため、組み立て工程が短縮できるのが想像できる。しかし、筆者が気になったのはその関節構造だ。商品ページの画像を見ると、肘や膝の関節が目立たない、より自然な立ち姿になっている。
その関節構造と可愛らしさを知るために筆者は購入を決意した。
筆者の出遅れ感が否めないが、今回その最新キットなる「佐伯 リツカ【聖アイリス女学園高等部・夏服】」の紹介をしていきたい。
「創彩少女庭園」という原石のようなプラモデル
商品の紹介の前に、少しだけ「創彩少女庭園」について紹介したい。
「創彩少女庭園」は「フレームアームズ・ガール」や「メガミデバイス」を手がけるコトブキヤとイラストレーター・森倉円氏による美少女プラモデルシリーズで、普通の女の子をプラモデルで表現する方向性となっている。
装甲やパワードスーツのようなSFチックな「フレームアームズ・ガール」や「メガミデバイス」とは異なり、制服や学生鞄、スマホなど現代チックなデザインでかわいさ重視のビジュアルとなっている。別売りのオプションパーツも旅行やカフェなどの情景を表現する小物を展開している。
「創彩少女庭園」を筆者が最初に見たときは、「プラモデルでドールに近い遊びができる」と思った。これまでも「フレームアームズ・ガール」は素体状態に服を着せたり、表情パーツにはお化粧のような塗装をするなど「キャラクター性」を重視した遊び方もある。
そうした遊びが入りやすいコンセプトで、簡単な塗装や別売りの小物で彩りを加えられるのが魅力だ。
また、「創彩少女庭園」の女の子たちにもそれぞれ性格や好みがあり、彼女たちに合わせたコーディネートがしやすいようになっている。
今回紹介する「佐伯 リツカ【聖アイリス女学園高等部・夏服】」は超ポジティブな性格のお嬢様。歌やダンスが好きで、アイドル的な魅力を持っている。表情も明るい笑顔が多く、元気いっぱいな雰囲気が伝わってくる。
森倉円氏によるイラストや完成したプラモデル、そうした設定からイメージを膨らませやすく、組み立てた後こそ作り手によって個性を発揮するキットとなっている。まさに磨けば輝く原石のようなプラモデルだ。
では、その原点といえるパーツ類はどうなっているのか見ていこう。
中身を確認。美少女プラモ初心者にもやさしいパーツ構成
パッケージを確認。キャラクターデザインのイラストレーター森倉円氏による華やかなイラストが描かれている。
中にはランナーと取扱説明書、塗装済みのパーツと表情パーツ、手首パーツ、水転写デカールが入っている。ランナーは全19枚。「フレームアームズ・ガール」に比べるとパーツ数は少なめで、組み立てやすい印象だ。
また、リュックには合成皮革のベルトパーツが使用されており、質感へのこだわりが感じられた。
筆者が特に驚いたのが、塗装済みパーツの多さと細かいパーツにもディテールが施されていることだった。塗装済みパーツが多いことで、塗装作業がなくても完成したときの満足感が違うのはもちろん、塗装経験がなくても安心して作れる設計となっている。
そして細かいパーツに関しては、例えば髪形は3種類あるのだが、それぞれが毛先の動きまで細かく造形されている。これによってディスプレイ時に躍動感あるポーズが楽しめる。そして、ランナーごとに分かれているので、組み立て時の管理もしやすい。
表情パーツも塗装済み以外も未塗装のものが同封され、水転写デカールと合わせてオリジナルの表情が作れるのも楽しい。
わかりやすいランナー分けと質感にこだわったパーツなど、「美少女プラモデル」の入門向けキットとして入りやすいと感じた。
しかし、組み立ててみると簡略的なキットではなく、実にこだわりの深さが伝わってくるキットだと思い知らされた。
組み立てていくほどに、細かなこだわりが伝わる
組み立て工程を紹介していこう。まずは、頭部だ。
前述の通り、髪形はポニーテール、ロングへア、三つ編み3種類ありそれぞれ独立して組み立てることができる。これによって頭部の交換がスムーズになり、おしゃれの幅も広がる。
ポニーテールは結び目部分が可動し、活発な印象のへアスタイルとなっている。赤いリボンのアクセントも可愛らしい。
ロングヘアには可動はないもの、存在感あるヘアスタイル。ポニーテールとは違ったおおらかな印象にできる。しかし、ロングへアは固定されており、動きに合わせた髪の躍動感が出しずらいのが難点だ。
三つ編みの髪は通常用とアクション用の2種類があり、シチュエーションに合わせて選択できる。文学少女的な雰囲気が楽しめる。
続いて胴体。首や肩の付け根の可動を備えており、肩の上下位置の調整ができる。
首元のリボンパーツも指先サイズながら、丁寧に造形されている。
次に腕パーツを作成。半袖デザインで肌部分が多く、肘関節も肌の色となっている。
美少女プラモデルの関節部分はディスプレイ時に違和感のもとになりやすい。
しかし、本キットではその違和感を極力抑えた構造となっている。それを可能としたのは二の腕部分だった。外側に少し伸びたデザインのパーツで覆い、継ぎ目部分を少なく見せる工夫がなされている。
またハンドパーツの種類も7種類あり、シチュエーションや小物に合わせて使い分けることができる。
次に腰部の作成を紹介。胴体と脚部はボールジョイントで接続され、柔軟な可動ができる。そして、下着の造形にもコトブキヤのこだわりが感じられた。肌色部分と下着パーツの分割やモールドなど、これまでにない造形追及がされている。
「創彩少女庭園」のコンセプトにある「普通の女の子」らしい表現といえる。
脚部の作成を紹介。脚部は太ももとニーソックス部分で構成されている。膝関節は膝上部分で覆う構成となっており、正面から見たときの膝のビジュアルが自然な雰囲気となっている。「フレームアームズ・ガール」と異なるのは、関節が1点のスイング可動となっている。
「フレームアームズ・ガール」では膝部分にも装甲パーツを付けるためのジョイントがあるデザインもあり、玩具的なデザインとなっている。しかし、「創彩少女庭園」ではそうした部分がオミットされているので、シンプルかつビジュアル重視の構造が可能となっている。
また、足を組んだ状態用の腰部パーツも組み立てることができる。
これまで可動域の限界や硬いABS素材では表現できなかった。それを足組を専用パーツにすることで実現したコロンブスの卵的発想だ。
スカート部分は独立しており、塗装済みパーツと白いフリル部分のパーツを合わせて完成する。形状が「通常」、「なびき」、「座り」の3種類がある。スカートはABS素材のため脚部の可動に干渉しやすく、1種類ではカバーしきれないポーズを別種のものに変えることで幅広いポーズに対応している。
オプションパーツのリュックは、筆者が作っていて特に開発者のこだわりが強く感じた。ベルト部分の素材に加え、リュックの付け替えも着せ替えする感じで楽しめる。
単純にジョイント部分で繋げるだけでなく、ベルトを回して背負った感じが表現されている。
そして、展示ベースも遊び心あふれたデザインで、ベースを含めたディスプレイが楽しめる。しかし、保持力は低く、派手なアクションや跳躍するような動きには対応できない。
ここまで作ってみて、シンプルな構造でサクサク組み立てることができ、筆者は4時間ほどで組み立てることができた。
組み立てるときの不安点としては髪の毛やりぼんなど、細かいパーツをランナーから切り離したり、組み立てるときの破損に注意が必要なことだろう。
では、次には完成した「佐伯 リツカ【聖アイリス女学園高等部・夏服】」の魅力を紹介していこう。
© KOTOBUKIYA