レビュー

「HG 1/72 メイレスケンブ」レビュー

 腕の構造も基本的には脚と同じだが、ヒジに当たる部分に加えて手首の付け根にも軸があり、可動するようにようになっている。ここだけを見ると産業用ロボットのマニピュレーターのようで、ロボットアニメの主人公メカとはちょっと思えないかもしれない。なお手首は平手(左右)と武器持ち手(左右)、銃持ち手(右のみ)の5つが用意されている。

腕の組み立て。肩は左右共通のパーツ
肩の内側にシールを貼り付ける
上腕の装甲を取り付けて肩パーツの完成
前腕と手首のパーツ。赤いパーツの黒い部分はシールを貼っている
手首は2種類あり、手甲のパーツを使いたいほうに取り付ける
腕の構造も脚と同じ片持ち式で、はめ込むだけでOK
腕の完成。手首の付け根が独立して動く構造が面白い
同じように左腕も組み立てる

 頭部は直線で構成された形状が印象的な中に、主人公機らしいヒロイックな要素もちりばめられた独特の形状だ。組み立て自体に特筆すべき点はないが、全体的に目立つ合わせ目が存在しない設計はさすがなところ。目に当たるカメラはクリアパーツで、透明度が高く、反対側から取り入れた光により、光って見えるのがグッとくるポイントだ。

頭部の組み立て。目のクリアパーツはかなり小さいので、無くさないように注意
装甲と飾りを組み付けていく
後頭部にあるアンテナはパーツで色分けされている
組み立てたアンテナを取り付ける
上部装甲を被せ、スリットに飾りとなるパーツを取り付けて頭部の完成

 武装は「60mm携行機関砲」と「超熱振式戦闘直刀」、「盾付短剣」の3種類が付属。また前者2つを装備できるウェポンラックは左右のアームが可動式で、武器を取り出すポーズを取らせることが可能だ。

60mm携行機関砲。スコープのレンズにはシールを貼っている
ウェポンラックは3パーツずつに分かれたアームを組み立てる
完成した機関砲、直刀、ウェポンラックの武装

 各部位のパーツが完成し、それぞれを組み上げていく作業は、劇中のアモウになったような気分に浸れるはず。個々のパーツが他のアニメに登場するロボットとは明らかに形状が異なり、実際に存在してもおかしくないような現代的な世界観を印象づけている。

完成した各部位を組み立てていく
「HG 1/72 メイレスケンブ」完成。直線で構築されたシルエットが美しい機体だ
背面は背中のウェポンラックの存在感が強い
工業デザインの意匠を取り入れながらも、ヒロイックさも備えた顔つき
鳥の脚のような脚部。可動域は広く、接地性も高いのでポーズは付けやすい
肩の関節を前方に引き出すと、シリンダーが連動して可動する。見た目のギミックながら、これが結構感動する
引き出した肩関節はこのぐらいまで前方に可動し、ポージングの自由度を高めている
腹部と前後左右のスイングと、腰部のボールジョイントで、体をひねったポーズも可能
前腕内側に機関砲のストックがピッタリはまる設計だ
ウェポンラックのアームを動かすことで、武装を手に取るポーズも取れる

 もうひとつポイントなのは、機体の未完成状態を再現する両肩のパーツが用意されているということ。3話でアモウが八咫烏と合流するまでの、肩に装甲のない非対称の姿をパーツの差し替えにて再現できるのだ。もちろんこちらも関節は通常の両肩と同じ構造なので、派手なアクションポーズを取ることが可能だ。

未完成状態を再現する両肩のパーツと、そのときに装備していた盾付短剣
1話と2話で見せた未完成状態のスタイルを再現

造形を前提としたデザインにより、誰にでも作りやすく、なおかつ完成度の高いケンブが完成する。今後のシリーズにも期待がかかる

 SUNRISE BEYONDとBANDAI SPIRITSの共同企画ということで、登場メカは立体化されることを前提にデザインされていると思われ、それだけにプロポーションや可動は実に満足度の高い完成度で、さらにパーツがそれほど多くなくて作りやすく、合わせ目もほとんどがディテールに隠されているので、素組みでも画像のようなケンブが完成する。

 1/72スケールながら、細部の造形も忠実に再現されている。例えばケンブの目となるカメラは3面の平面で構成された凹モールドとなっていて、下側に上方を、上側に下方を、目尻側に前方をそれぞれ捉えるカメラがあるという設定がある。キットでは縦1.5mm、横5.5mmというほんのわずかなサイズながら、この3面カメラの構造をディテールとして盛り込んでいる。関節部に入ったモールドなどにスミ入れを施すことで、機体のリアルさはさらにアップするのではないだろうか。

少しわかりづらいので、右写真にはカメラの形状を線で表している。形状が正しく再現されていることがわかるだろうか
駐機形態も再現可能。アモウは頭部後方のハッチから乗り込むのだ
「HG 1/72 メイレスケンブ」ポーズ集。完成後もアクションフィギュアのようにポーズを取れるのが楽しい。「アクションベース5」にも対応している

 ケンブの劇中での活躍は、派手なアクションを繰り広げる一方で、機体の細部が描写されるシーンも多く、メカ好きの心をワクワクさせてくれる。この「HG 1/72 メイレスケンブ」はそんな主人公AMAIMの細部を、自分で作りながら楽しむことができるキットであった。来年1月にはさらに細かなディテールが再現されるであろう1/48スケールのキットの発売が予定されているのも嬉しいところだが、作りやすさや価格の手軽さはこの「HG」版のほうが上だ。今後はAMAIMの他に、その運搬車などの発売も予定されているので、完成後の遊びの幅も広がるはずだ。アニメ本編も序盤からかなり面白いと評判で、アモウとガイの活躍を、これらAMAIMのキットとともに楽しんでいきたいところだ。