レビュー
「HG 1/72 メイレスケンブ」レビュー
「境界戦機」主人公機「ケンブ」工業デザインによる脅威の可動とディテールを体感できるキット
2021年10月26日 00:00
- 【HG 1/72 メイレスケンブ】
- 開発・発売元:BANDAI SPIRITS
- 発売日:2021年10月9日
- 価格:2,640円(税込)
- ジャンル:プラモデル
- サイズ:全高約140mm
SUNRISE BEYOND×BANDAI SPIRITSによる完全新作アニメーション「境界戦機(きょうかいせんき)」が、この10月より放映・配信をスタートした。サンライズのグループ会社として設立されたSUNRISE BEYONDの企画と、BANDAI SPIRITSの番組連動の商品展開、そして工業デザインで知られるKEN OKUYAMA DESIGNがメカニックデザインに加わり、作品は放映前から大きな話題となっていた。
「境界戦機」は、他国に支配された日本が舞台。森の中で出会い相棒となった自律思考型AIとともに、人型特殊機動兵器「AMAIM(アメイン)」に乗って戦いに身を投じていく少年の姿を描くハードなストーリーが展開する。今回レビューで扱う「ケンブ」は主人公機として物語の第1話より登場し、敵勢力の機体と派手な戦闘を繰り広げた。
BANDAI SPIRITSはこの「ケンブ」をはじめとする「境界戦機」に登場するメカをプラモデルとして展開。先行発売された外伝に登場する「HG 1/72 メイレスビャクチ」に続き、「HG 1/72 メイレスケンブ」として10月9日に発売となった。ガンプラなどでおなじみの「HG」シリーズで、価格も2,640円(税込)とお手頃なこのキットのレビューを、本稿にてお届けしていく。
自律思考型AIによって戦闘力を発揮する「MAILeS(メイレス)」の有人機「ケンブ」を1/72スケールでキット化
「境界戦機」の舞台となるのは、西暦2061年の日本。4つの世界主要経済圏によって分割統治され、AMAIM(Auto Mobile Artificial Intelligence Mount)と呼ばれる人型特殊機動兵器による「境界戦」と呼ばれる武力衝突が発生。日本人は隷属国の人間として虐げられる日々を送っていた。そんな日本の四国某県に住む機械好きの少年「椎葉アモウ」は、廃工場で見つけたAMAIMを趣味で組み立てていたある日、自律思考型AI「ガイ」と出会い、その力を借りてそのAMAIMを完成させる。「ケンブ」と名付けられていたこの機体は、レジスタンス組織「八咫烏(やたがらす)」の四国支部に提供されていたことが後に判明する。アモウは八咫烏に合流し、ガイや仲間達とともに、日本を取り戻すための戦いへと身を投じていく。
「メイレス(MAILes)」とは「I-Les(アイレス/自律思考型AI)」を搭載したAMAIMのことで、このケンブの他に「ジョウガン」、「レイキ」といった機体が公式サイトで紹介されている。ちなみに「HG」シリーズで先行発売された「ビャクチ」は、「月刊ホビージャパン」で連載中の外伝コミック「境界戦機 フロストフラワー」に登場する機体だ。
コクピットは背中のブロック内にあり、劇中で駐機状態になるときは、上半身が半回転し、背中側に倒れるという非常に面白い動きを見せていた。パイロットはコクピット内に座って固定されているが、システムによって感覚を制御し、本人はコクピット内で自由に動けるイメージで操縦ができるという、現代のテクノロジーの延長線上を描いた設定も興味深いところだ。劇中のガイのセリフに「今どき乗って操縦するタイプのAMAIMなんか珍しい」というものがあり、1話でケンブと戦ったオセアニア連合のバンイップ・ブーメランのような無人のAMAIMが一般的という設定があるようだ。
本作のメカニックデザインには、工業デザイナー奥山清行氏率いるKEN OKUYAMA DESIGNの小柳祐也氏が参加していて、奥山氏自身もメカニックデザインスーパーバイザーとして携わっている。奥山氏は一昨年、「HG 1/144 ガンダムG40 (Industrial Design Ver.)」のメカデザインを手がけ、プラモデルの可動に一石を投じた人物であり、この「境界戦機」では、登場メカに工業デザインを意識したリアリティを取り入れ、関節構造などに今までのロボットプラモデルとは違うアプローチで再現している。この「HG 1/72 メイレスケンブ」は、機体の随所に盛り込まれた工業デザインの妙を、組み立てながら味わうことができるキットである。
工業デザインの意匠が取り込まれたデザインや構造を楽しみながら組み立てていこう
組み立てを脚から始めるキットも珍しいかもしれない。その見た目は鳥の脚のようで、スネに当たる部分が途中で曲がっているデザインで、主役メカとしてはあまり例がないような気がする。関節はいわゆる「片持ち式」の構造で、モモ、スネ、つま先と順に組み立てたパーツは、他のパーツで挟み込むのではなく、単にはめ込むだけでいい。
胸部は引き出し式の肩関節を内蔵し、さらに肩の引き出しに連動して、胸部の左右に見えるシリンダーが可動するというギミックも搭載しているため、組み立て過程はやや多めだ。左右のシリンダーはシールを包むように貼ることでメッキパーツのように仕上がり、そのシールがはがれないよう、シリンダーの受けとなるパーツに通してから本体にはめ込むという工夫がしてある。デザインだけでなく、作りやすくする配慮があるのが、さすがのBANDAI SPIRITSのプラモデルというところだろうか。
©2021 SUNRISE BEYOND INC.