レビュー
「DX超合金 VF-25メサイアバルキリー WORLDWIDE Anniv.」レビュー
2022年6月10日 00:00
その後のVFの基礎となる、大胆に機体を折り曲げていくバトロイド形態
VF-25の変形はデザイン的にはVF-19から発展したものとなる。かなり複雑に機体全体が折れ曲がり、さらにブロックが大胆に移動してロボットの胴体を形成する。初めてこの変形システムに触れる人は戸惑ってしまうかもしれない。パズルのような変形システムだ。
ランディングギアを収納するためのハッチを開いて機首を折り曲げる。コクピット後部部分のブロックを分離、機体両脇のパーツを支柱に機体部分が折り曲がり機首ブロックに被さり胸部を構成、頭部ブロックを引き出す。主翼を支える部分は背中ブロックとなる。
また機体下部も折りたたむことで股間パーツになる。かなり複雑な変形だが、パーツを取り外して再度取り付けるような箇所はなく、「実際にVF-25ga存在していたらどう変形するか」が深く考えられているデザインであることを実感できる。河森正治氏のデザインセンスとこだわりに感心させられる変形システムであり、それを実現したBANDAI SPIRITSの技術者達にも拍手したくなる。
とはいえ、「DX超合金 VF-25」のバトロイドの変形に関しては、特に「首の据わり」が難しい。胸部ブロックを機首ブロックに重ねるとき、首の基部部分がかっちりとはまらず沈み込むような形になってしまうことが多い。今回もこの首の安定は苦労した部分だった。
VF-25のバトロイド形態は上半身が特にスマートで、かなり細身となる。この細い機体が、他のVFと較べても特徴的なところだ。さらにスーパーパーツ、アーマードパーツで大胆にシルエットを変えるのも魅力である。
今回の細身のシルエットは、YF-19のヒロイックでマッシブなシルエットと対比されるし、宇宙が主な戦場となり、簡易アーマードといえるスーパーパーツが標準装備といえる作中のVF-25において、追加パーツをつけたくなるスリムさといえる。
また、変形玩具では変形を重視するあまりロボット形態で可動範囲が限られる場合があるが、「DX超合金 VF-25」は各形態での関節の可動範囲がきちんと設計されており、良く動く。特にバトロイド形態は足が長くダイナミックなポーズが楽しい。上半身も特に肩関節の自由度が高いため、ガンポッドを両手できちんと構えられる。腰ブロック部分は下半身を捻る関節も設定されていて、アクションフィギュアとしてもポーズをとらせるのが楽しい商品である。
ただ一方で「DX超合金 VF-25」はバトロイド形態で長時間飾っておくにはいくつかの問題がある。足の付け根の関節である金属のボールジョイントは、足パーツの重さのため支え続けるのが難しい。また腕の付け根も弱くなりやすい部分だ。こういった問題点に対してDX超合金はYF-30を経て、VF-31で変形システムでの見直しや、足の付け根にクリック関節を入れるといった改良を行なっている。「DX超合金 VF-25メサイアバルキリー WORLDWIDE Anniv.」はこういった"進化の歴史"を感じさせる商品ともなっている。
「DX超合金 VF-25メサイアバルキリー WORLDWIDE Anniv.」は高い満足感を与えてくれる商品だ。そもそも「DX超合金 VF-25」がユーザーから高い評価を得たことでシリーズが10年を超え今も最新商品が出ている現状がある。BANDAI SPIRITSが新たな"世界市場"へ向け、送り出すのにふさわしい商品であると言える。世界に羽ばたく「マクロス」シリーズのファンはこの商品で変形玩具の凄さに触れて欲しいと思う。
一方で本商品が日本のファンにきちんと届いたか、というところには疑問がある。他の商品同様、販売数に較べ需要が大きく「予約できなかった」という声が大きかったのだ。転売問題は企業の対応だけでは難しく、根深いところではあるが、本商品ならば再販やプレミアムバンダイでの受注販売も可能ではないだろうか? VF-25は「マクロスF」放映から14年がたっている現在でも人気が高いモチーフである。そのデザインと変形がたっぷり楽しめる本商品は、もっと多くの人に手にして欲しいと思う。
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