レビュー
「1/35 レオパルト2A6戦車“ウクライナ軍”」レビュー
白十字と国旗のデカールを同梱、ドイツより供与されるレオパルト2を再現!
2023年4月17日 00:00
- 【1/35 レオパルト2A6戦車“ウクライナ軍”】
- 開発・発売元:タミヤ
- 4月1日発売
- 価格:5,060円
- ジャンル:プラモデル
- サイズ:全長314mm
2022年2月24日より現在も継続しているロシアのウクライナ侵攻。2014年のクリミア侵攻に続くロシアの侵略に対し、ウクライナは今も頑強に抵抗し続けている。日本を含む西側諸国はウクライナを応援するため様々な面で援助を行っている。
ドイツは2023年1月、ウクライナに対して戦車「レオパルト2A6」の供与を発表、ウクライナ兵はドイツ北部で欧州連合(EU)の軍事訓練による訓練を受け、給与された18両のレオパルト2A6と共に戦場に戻るという。
今回タミヤは、この「レオパルト2A6」の特別パッケージ「1/35 レオパルト2A6戦車“ウクライナ軍”」を発売した。本キットにはNATO軍の標準塗装であるグリーン、ブラック、ブラウンの3色迷彩の塗装ガイドと、識別マークである白十字、さらにウクライナ国旗のデカールを同梱。ウクライナ軍に配備されるであろうレオパルト2A6をいち早く再現したプラモデルになっている。
プラモデルとしてはパーツ数を抑えた作りやすさを重視した設計、最新戦車であるレオパルト2A6の機能が実感できる精密な造型、クリアパーツやポリキャップなど様々なマテリアルを使った表現など作って楽しい商品となっている。今回、スミ入れの組立でキットの魅力を紹介したい。
最新技術と強力な主砲を搭載する改修で、世界最強の戦車とも呼ばれるレオパルト2A6
まずモチーフとなったレオパルト2A6という戦車を紹介しよう。第二次大戦中、ドイツは優れた戦車を持つソ連に対抗するために戦車技術を向上させた。第二次大戦では大口径の砲を持つ「駆逐戦車」、偵察と索敵を担当する「軽戦車」、戦線を押し上げる「重戦車」など役割に合わせ様々な戦車が登場したが、戦後はバランスのとれたMBT(主力戦車)に集約されていく。ドイツはMBTとしてレオパルト1を開発した。
レオパルト2はその後継として1979年に生まれた。この前にドイツはアメリカと戦車を共同開発していたのだがその計画は中止、この時開発した技術でレオパルト1の性能向上を目指すこととなる。当時最新技術の素材の異なる防御板を何枚も重ね合わせて作る複合装甲を導入、砲塔は垂直面を構成するスタイルとなる。強力な44口径120mm滑空砲、そして1500馬力を発揮するエンジンを搭載したレオパルト2は、これまでの戦車と次元の異なる「第3世代」と呼ばれる基準を作り上げた戦車となった。
レオパルド2はさらに1990年代に性能向上のための大幅な改修が行われる。レオパルト2A5は、砲塔の前面と側面に着脱可能なくさび形増加装甲を装着。熱戦映像装置を内蔵した車長用パノラマペリスコープを搭載。射撃統制用の安定装置は油圧式から電動装置へと変更。GPSナビゲーションも採用している。車体後部にはCCDカメラが追加されるなど最新技術で生まれ変わっている。
レオパルト2A6はここからさらに主砲を55口径120mm滑空砲に変更、タングステン弾芯の新型徹甲弾によって砲口初速や貫通力を格段に向上させている。これらの改修によりレオパルト2は他国の戦車と較べてもトップクラスの性能を誇り、そのバランスの良さから世界最強の戦車とも呼ばれる性能を持っている。
レオパルド2はドイツ国内のみならず、オランダ、オーストリア、スペイン、デンマーク、カナダ、トルコなどで配備されており、レオパルト2A6へと改修を進めている。ロシアのウクライナ侵攻に対してはドイツだけでなく、ヨーロッパ各国が自国のレオパルト2A6の供与を宣言しており、ウクライナ防衛で活躍する予定だ。
この戦車をモチーフとしたのが「1/35 レオパルト2A6戦車“ウクライナ軍”」だ。6枚のランナーに、大型の車体と砲塔パーツ、そして様々な素材を活かしたパーツが目を惹く。クリア素材で作られたパーツだけでなく、薄い透明な板のパーツ、ポリキャップ、編み目の素材など「この素材はどう使うんだろう?」と興味も惹かれる。こういった複合素材の活用は本キットの大きな魅力だ。
その中でもやはり注目はキャタピラパーツだ。一見ゴムのような柔らかい素材なのだが、塗装なども可能な素材だという。キャタピラをどう再現するかは戦車キットの注目ポイントだ。
軟質素材のキャタピラ、14個のロードホイールで、足回りを再現
それではいよいよ組み立てていこう。まずは車体を組み立てていく。「1/35 レオパルト2A6戦車“ウクライナ軍”」は大型のパーツに細かいパーツを付けていくことでディテールたっぷりのレオパルト2A6が組み上がっていく。細かいパーツは多いが穴や凹凸で部品の取り付けのガイドがされているので模型初心者でも組みやすい。よく切れるニッパー、部品をつまみ上げるピンセット、流し込みタイプと、通常タイプの接着剤と言ったある程度の道具は必要となるが、これらをそろえれば誰でもカッコ良くレオパルト2A6を組み立てられるだろう。
最初に組み立てるのは「車体リアパネル」。ワイヤーを引っかけるためのフックに加え、テールライトを取り付けていく。テールライトはクリアパーツになっており、質感が楽しい。クリアパーツはさらに車体後方のライトにも使用されている。
次は戦車プラモデルならではの「ホイール」だ。エンジンの力で回転し、キャタピラを引っかけて駆動させる「ドライブスロケット」、車体前方の「アイドラーホイール」を一対ずつ、戦車の巨体をしっかり支える「ロードホイール」を7対組み立てる。
車体後部を組み立てていく。サスペンションとサスペンションアーム。車体上部でキャタピラを送る「リターン ローラー」を組み付けていく。ここにホイールを取り付け、キャタピラを噛ませれば足回りの完成だ。キャタピラパーツは軟質素材で接着剤で輪の形にして、ホイールにかぶせるだけで簡単にはまる。この素材は接着剤はもちろん、塗料も使えると言うことで、塗装派のモデラーは凝った表現が可能とのことだ。
足回りの次は車体上部だ。こちらも大型のパネルに細かいパーツを取り付けていく。後部にあるエンジンのための吸気口、車体前面のライトやフック、バックミラーは収納形態で取り付ける。
楽しいのがドライバーズハッチだ。のぞき穴にはまっているガラスを、プラモデルは薄い透明の板をはめ込むことで再現している。レオパルト2A6にはガラスがはまったのぞき穴が様々な所にあり、搭乗者の視界を確保しているのがわかる。装甲に覆われた戦車でいかに視界を確保するか、最新戦車の工夫を知ることができる。
そしてこのドライバーズハッチは可動するのだ。左にスライドすることで、非戦闘時ドライバーがここから頭を出し、広い視界で運転することができるギミックをプラモデルでもきちんと再現している。残念ながら車体内部は空洞だが、指でハッチをスライドさせてみると設計の面白さが実感できる。車体側面にはサイドスカートを貼り付ける。
戦車プラモデルは“装備品”も楽しい。戦車は車体上部にスコップや車外で使用する測量機、治具などを搭載している。これらを取り付けるのが楽しい。多くの道具は第二次大戦の頃の戦車とも共通だが、スコップの形が変わっていたり、技術の進歩も感じさせられる。レオパルト2A6は後部の視界を確保するカメラも取り付けるのが現代的だ。
車体の組立の最後はワイヤーの取り付けだ。ワイヤーは糸を決められた長さに切り、両端にパーツを接着して車体に引っかける。ワイヤーはこの戦車で他の車を牽引したり、他の戦車に引っ張ってもらうのに使うのだろう。この糸を使ったワイヤーは他のタミヤの戦車プラモデルでも使われており、ワイヤーを付けていると、「タミヤの戦車を作っているなあ」という実感がわく。次ページでは砲塔を組み立てていきたい。