特別企画
【ちょい組み】「1/35 アメリカ駆逐戦車 M18 ヘルキャット」を作ってみる!
76mm戦車砲の迫力! オープントップならではの内部描写の楽しさ
2022年2月25日 00:00
「タミヤのプラモデルを作ってみたい」という想いは毎回タミヤのイベントを取材する度に強く感じることだ。ただ、その繊細なパーツ構造や、カッコイイ作例を見ると「ちょっと難しそうだし、塗装はきれいにできる自信がないしなあ」と構えてしまうところがあった。
しかし最近はプラモデル作りをする機会が以前より増え、しっかりしたニッパーや、接着剤や塗料も買いそろえるようになってきた。「1/12 カワサキ Ninja H2R」や、「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」といったプラモデルを作っていく中で、もっと色々なプラモデルを作ってみたいと思うようになった。そんなとき、筆者の心をグッと掴んだのが「1/35 アメリカ駆逐戦車 M18 ヘルキャット」だった。
このプラモデルの魅力は"砲塔内部の表現"にある。オープントップの構造のため、戦車内部をのぞき込める。プラモデルはその砲塔内部のメカを精密に表現しているのだ。まるで外装の一部をカットすることで内部メカを描写する「カットモデル」の様でその構造にとても興味が惹かれた。
今回、この「1/35 アメリカ駆逐戦車 M18 ヘルキャット」を作っていきたい。精密なメカディテールを際立たせるため、あえて全パーツに"ウォッシング"をしてみた。ウォッシングのみでも精密な造型が楽しめるし、ピタリとパーツがはまる設計のすごさ、組み立ての楽しさが実感できるプラモデルだった。
たくさんの車輪と履帯、迫力たっぷりの車体の組み立て
まずモチーフとなるM18ヘルキャットに軽く触れておきたい。この戦車はアメリカの"駆逐戦車"である。機関銃の登場で戦争は一変し、兵士達は塹壕を掘り強力な防御力で陣地を確保するようになった。この塹壕を突破すべく開発されたのが戦車である。機関銃弾をものともしない装甲と要塞を破壊する強力な火砲を備えた戦車の登場は、新しい戦争の姿を作り出した。
その後戦車は様々な役割に分化していく。偵察や歩兵の援護を担う「軽戦車」、より強力な戦闘力を持たせた「重戦車」、大砲に戦車の足回りを組み合わせ、砲撃能力に特化した「自走砲」……そういった中で"対戦車"に特化していったのが「駆逐戦車」である。地形や作戦規模などで戦車にも様々な能力が求められる。機動性を犠牲にして攻撃力に特化したり、設計そのものを小さくして機動性を上げたり、逆により大きくするなど戦車は様々に特化していく。M18ヘルキャットは様々な役割に特化していった時代に生まれた戦車だ。
ヘルキャットの主任務は"敵戦車の駆逐"。M4中戦車の星形9気筒ガソリンエンジンと強力な76mm戦車砲を搭載。新設計の車体により、小型化、軽量化がなされ、サスペションにも最新のものを採用、良好な機動性を獲得した。砲塔は索敵能力を強化するため屋根のないオープントップ。ギアやショックアブソバーにも改善が加えられ、「第二次大戦における最速の早装軌車両」と呼ばれる機動性を獲得する。
M18ヘルキャットはアメリカ軍の就役期間は1944年の春頃から終戦にかけてのわずか1年ほどだったが、より早く敵を発見しその機動力で戦場を駆け抜け、76mm戦車砲で敵戦車を破壊する強力な戦車として歴史に名を残している。
プラモデルを組み立てていこう。ランナーは8枚。履帯や車輪が中心のAパーツは2枚用意されている。とても細かいパーツが多く、組み立てにはピンセットが必須だ。細かく小さいパーツは多いが、全体的に組みやすい。何より、パーツとパーツをあわせるとピタリときれいにはまる。このパーツの精度は、組んでみて実感し、驚かされた。
今回はディテールを際立たせるため「ウォッシング」を行なっていく。ウォッシングとは本当は色を塗ったプラモデルの最後の仕上げとしての"汚し塗装"の1つだ。薄め液で薄めた塗料をざっと全体に塗ったあと、拭き取る。拭き取っても一部の塗料が残り、スジ彫りやメカディテールの造型がはっきりする。表面にも薄く塗料後が残るため、全体的に薄汚れた雰囲気になる。ペタペタと筆で塗り、荒く拭き取るだけでできるので、非常に手軽にできるのが特徴だ。
筆者は本誌で掲載している"ヘタ仙人の「プラモデルを楽しもう!」"でこの方法を知り、組み立ててあった「1/144 ミレニアムファルコン」で試してみてかなり満足した。今回、「1/35 アメリカ駆逐戦車 M18 ヘルキャット」では各パーツをウォッシングしていくことで手軽にメカディテールが楽しめるのではないか、と実践していくことにした。結果としては無塗装よりもはっきりメカディテールが楽しめるようになったと思う。
「1/35 アメリカ駆逐戦車 M18 ヘルキャット」ではまず戦車の下半分、基礎となる車体部分を組み立てていく。今回のメインテーマである"車内の描写"ははじめから砲塔内部部分の内装を組み立てていく。ちなみに、今回のプラモデルは戦車全体の内部メカの描写ではなく、エンジンなどの内部パーツは省略されている。
圧巻なのはやはり足回りの組み立てだ。10のロードホイールを保持するサスペション機構、クローラー機構上部の8つのリターンローラー。履帯を強力に回転させるドライブスロケットと、反対側のアイドラーホイール。かなりのボリュームと情報量である。ショベルカーなどクローラーを装備した工事車両を身近に見たことはあるが、その構造をここまで細かくチェックすることはない。戦車の足回りをじっくり組み立てながら分析する作業はとても興味深い。
そして足回りの組み立てのクライマックスといえば履帯(キャタピラ)の組み立てである。このキャタピラにもウォッシングを……と思ったが、ここは手持ちの黒い塗料で塗ってみた。薄いウォッシング用の塗料ではどうしてもムラが出てしまうからだ。結果としては雰囲気は出たのかもしれない。しかし筆塗りで広い範囲を塗るのは手間がかかり、エアブラシが有効なのだということも実感した。
「1/35 アメリカ駆逐戦車 M18 ヘルキャット」の履帯は上下に大型のパーツがあり、その上下を繋ぐ曲線部分だけ、細かく分割されたパーツで繋いでいく。この細かいパーツはくっつけた後も調整が必要なので、他の部分で使っていた流し込みタイプの接着剤ではなく、粘度の高い接着剤を使った。こういったところも"ヘタ仙人の「プラモデルを楽しもう!」"で学んだ部分だ。
車体上部はやは細かい装備品をチクチクつけていくのが楽しい。斧やハンマー、測量機など戦車から降りて使用するものがくくりつけられていたり、ライト、操縦席用のハッチなど戦車のディテールや運用が改めて実感できる。1つ1つに説得力があるのは、この戦車が実在の兵器であり、このキットの開発に際し、タミヤが非常に綿密な取材を行なっているからだ。デザイン優先ではなく、すべてのパーツに必然性と、そこにある理由がある。
そして乗用車やレース車両と違いミリタリーモデルには"戦場"の雰囲気がある。スコップや斧は泥濘地や下生えが多いところなどで使っただろうし、ハンマーは履帯や車輪の整備にも使われただろう。組み立てながらそれらの装備品がいかに使われたかを考えると、自分が戦車兵の1人になったような気持ちになる。これこそがミリタリーモデルの大きな魅力だろう。
次ページではいよいよこのプラモデルのメインイベントである「砲塔の組み立て」をしていく。オープントップならではの詳細な内部描写に挑戦していきたい。