レビュー
ガスブローバックマシンガン「AKX」レビュー
カラシニコフ技師の悲願、"AKMの近代化改修"を東京マルイが実現
2023年5月2日 00:00
- 【AKX】
- 3月29日 発売
- 価格:82,280円(税込)
- 全長:548mm/741mm(ストック展開時)
- 銃身長:200mm
- 重量:3,550g
- 弾丸:6mm BB(0.2~0.25g)
- 動力源:専用ガス
- 装弾数:35+1発(1発は本体に装填した状態)
東京マルイによって、ガスブローバックマシンガン「AKM」のバリエーションモデル「AKX」が遂に3月29日に発売された。
「AKX」の元となった「AKM」は、2021年7月に発売されるやいなや醸し出される“本物感”で大人気となった東京マルイのガスブローバックマシンガンだ。発売前から大人気で、再販分も入手困難が続いている。その発売から1年8ヶ月を経た3月29日、待望のバリーエーションモデルである本商品が発売されたのだ。
「AKX」は、東京マルイオリジナルのモダナイズド(近代化改修)されたデザインで、本物を超えると噂の新ギミックを搭載している。今回はAKフリークを自認する筆者が製品版「AKX」をお借りし、外観チェック、試射、サバイバルゲームでの実戦投入までのレポートをお届けしたい。
何故「AKX」なのか? カラシニコフ技師の想いから紐解く
ガスブローバックマシンガン「AKM」発売直後から、バリエーション展開は期待されていた。バリエーションとなるとまずは次世代電動ガン「AK47」と「AKS47」がある様に、折り畳み銃床「AKMS」が思い浮かぶ。
前述したような折り畳み銃床タイプはレシーバーを新造しなくてはならないので、旧東欧諸国でポピュラーなサイドスイング式や、スタンダード電動ガンで製品化されたストックが無いタイプも予想されていた。そこで発表されたのがオリジナルデザインの「AKX」ということで、非常に驚かされた。
しかしAKファンとしては「AKX」は納得のいくバリエーション展開でもある。その理由の前にまずはガスブローバックマシンガン「AKX」の元になった実銃の「AKM」について語っていきたい。
「AKM」は、ソ連の7.62mm口径アサルトライフル「AK47」を、産みの親カラシニコフ技師自らが近代化改修し、1959年に正式採用された銃だ。正式名称は「Автомат Калашникова модернизированный(近代化カラシニコフ自動小銃)」である。
基本構造はAK47を踏襲したガスピストン式で、各部品が「宙に浮くように」組み合わさっているため、泥水や砂塵にまみれても作動する確実性がある。また、操作や整備が簡単で、短時間の教育で使える特徴と相まって世界中で使用されていることはミリタリーファンならずとも知られている。
その後、米軍が自動小銃の弾薬を7.62mmから5.56mmへ小口径弾化したのに対抗し、AKMの基本構造を踏襲して口径5.45mmへ変更した「AK74」が採用された。第3世代にあたる「AK74」はさらに近代化改修され、東京マルイで次世代電動ガン化された「AK74MN」などの第4世代を経て、現行は第5世代の「AK12」がバリエーション展開されている。
一方で、開発者であるカラシニコフ技師は2000年代に口述筆記された自伝で「小口径弾を採用することについて反対の立場だった」、「今でも私は、口径7.62mmの方が優れていると確信している」と語っている。現行品で口径7.62mmの「AK15」も存在してはいるが、口径5.54mmのAK12を単純に大口径化した物だ。口径7.62mmAKの発展は1959年で停まった。と言っても良いだろう。
そう考えると、本物感あふれるガスブローバックマシンガン「AKM」を開発した東京マルイ開発陣が、停まっていた口径7.62mmAKの近代化改修の針を進めたのは、当然の帰結とも思えるのだ。では実際に「AKX」がカラシニコフ技師の想いを受け継いだ「近代化改修AKM」となっているかどうか、次項から仔細に見ていきたい。
「AKX」外観チェック! AKフリークも納得の本物感を踏襲しての近代化改修
東京マルイ製品でお馴染みなのが凝った造りの外箱だ。「AKX」はマットブラックの上蓋にシンプルな漆黒で刻印されたロゴで構成されている。シンプルかつシックな外見は、一見してエアソフトガンの物とは思えないほど上品で洗練されている。
上蓋を開くと、布が敷かれた内箱に金属特有の鈍く黒光りするコンパクトな本体、マガジン、小箱が収まっている。
パッと見た感じの本体は、現代AKそのもの。上部にAKには珍しいレイルが走っていて、米軍のモダンなM4カービンのバリエーションを思わせる。銃身は短くカットされ、後部にはコンパクトなスケルトンストックが付いている。携帯性に優れたSMGの様でもあり、口径7.62mmの自動小銃とは思えないコンパクトな外見だ。
それでいて手にすると、ズシリとくる重量があり、金属部品を多用したガスブローバックマシンガンならではの本物感が伝わってくる。
細部を見ると、やはりなんと言っても「AKX」の最大の特徴、「センタリングダイヤル」によるロック機構に目がいく。
AKシリーズは第1世代のAK47以来、特徴的なレシーバーカバーを一貫して踏襲してきた。内部機構との間に広いクリアランスを備え、ボタンロック式で外し易いカバーは、“確実な作動”と“メンテナンス性の高さ”というAKならではの大きなアドバンテージを保つ源泉でもある。
だがレシーバーカバーのクリアランスと外し易さは、一方で不安定さとガタつきを産む。AK標準のリアサイトは目から離れた場所に設置され、光学照準器はレシーバーに付けるサイドマウント方式を採らざるを得ない。
そもそもカラシニコフ技師は戦場で目の当たりにした旧ドイツ軍の短機関銃への対抗策からAK47を発想している。AKシリーズ伝統のレシーバーカバーは、一般兵士が持つアサルトライフルに精密射撃の必要性を感じていなかったからこその構成と言える。
だが現代戦では精密射撃以外の用途にも光学器機が用いられ、一般兵士にとっても標準装備に近い存在となっている。実銃、エアソフトガン問わず、リアサイトを撤去したりレシーバーに強引に固定するなど、AKの上部にマウントレイルを設ける試みはこれまでもあった。しかし、それらはカスタマイズ品の域を出る物ではなかった。また、現行のAK12ではレシーバーにロック機構が設けられている。なお、実銃「AK12」のロック機構は不完全で実用に耐えない物で、従来の形に戻しているという。
今回、東京マルイの「AKX」の登場によって、レシーバーにロック機構を備え、マウントレイルを標準装備した実用に耐える量産型のAKが史上初めて誕生したとも言えるのだ。また、特筆すべきはロック機構の単純な仕組みだ。センタリングダイヤルとピンとスプリングとの3点で構成され、左に回すと緩み、右に回すと締まる。確実で視覚的にも解りやすい。まるで、単純で信頼性が高い機構を尊んだカラシニコフ技師の思考が受け継がれているようにも感じられる。
ロック機構が固定するレシーバーカバーは新造されたもので、20mmのピカティニー規格のレイルが一体成型されている。ロックすればガタつきは全く無いが、緩めればレシーバーから簡単に取り外せる。
レシーバーカバーから通常のリアサイトベース、さらにフロントサイト近くまでレイルが3ピースを跨いで伸びている。大型の光学照準器や、ナイトビジョンとダットサイトを併用するタンデム方式まで用途は広い。
フロントサイトはショートタイプカラシニコフでは定番のコンパクトな形状のものが新造。同じく新規で製作された金属製ハンドガードや、削り出しのフラッシュハイダーと相まって、東西折衷のカッコ良さがある。
さらに、前述したハンドガードは北米で多用されるM-LOKレイルシステムを採用しているため、付属の3種類のレイルを取り付けることで各種アタッチメントに対応可能。上部のレイルと合わせ拡張性が非常に高くなっている。
レシーバーはAKMと共通だが、新造のグリップとマガジンキャッチ、ストックと相まって完全に現代風のフォルムに変わっている。また、グリップは細身で中空に成型され、モーターの不要なガスブローバックマシンガンならではのデザインとなっている。前後左右のモールドが入ったAKMから64年の進化を感じさせる、手に吸い付く様な握り易さだ。
グリップを握り、人差し指を伸ばすと、アレンジされた形状のマガジンキャッチが触れる。テコの原理を応用した素早いタクティカルリロードが可能だ。そのマガジンも、AK47でお馴染みの旧式金属プレスタイプだった「AKM」に対し、互換性のあるベークライトタイプを新規で製作されている。「AKM」と同じ物でも問題はなかったはずだが、あえてベークライトタイプを新造した点にこだわりを感じられる。
コンベックス(凸)型のスケルトンデザインを採用したストックは、コンパクトだがしなったりせず強固な造り。折り畳む時にボタンを押す必要がなく、さらに畳んだ時のロックもオミットされている。M-LOKレイルシステムと共通のレンチでネジを1本緩めると簡単に取り外すことも可能だ。シンプルかつ、様々な機能を併せ持つストックからもやはりカラシニコフ技師的思想を読み取れるだろう。
最後に内部機構を見ていく。ロックを緩めレシーバーカバーを外すと見える内部機構は「AKM」と共通の物。信頼性と実用性は折り紙付きだ。
外観からも解るが、パーツリストを見ると「AKM」との共用部分が驚く程少ないことに驚かされた。デザインのみならず、バリエーションの域を超えた手間の掛かった製品だと言える。
次のページからは実際に使ってみた際のレビューに入る。