インタビュー

ガスブローバックマシンガン「AKM」開発者インタビュー

木目まで再現した外観と、こだわりのメカニズム機構を紹介!

【ガスブローバックマシンガン「AKM」】

開発・販売元:東京マルイ

発売日:7月15日発売予定

価格:65,780円(税込)

種類:ガスブローバックマシンガン

全長:898mm

銃身長:436mm

重量:3,290g(マガジン無し)

装弾数:35+1発(1発は本体に装填した場合)

 いよいよ発売が目前に迫ってきた東京マルイのガスブローバックマシンガンの新基軸「AKM」。AKMは「AK47」という名前で世界中に知られているアサルトライフルを改良したモデルである。弊誌では東京マルイがAKMの大きな特徴であるプレス合板の木製ストックを、樹脂で再現するにあたり、いかに注力したかをインタビューで取り上げている。

 今回改めて、発売直前の試作品を前に、東京マルイの広報島村優氏に加え、本製品の設計を担当した泉真也氏、製作を担当した永井悦正氏に話を聞いた。今回のインタビューでは改めて1970年代のソ連の工場が生み出した雰囲気を追求した「外観」と、東京マルイで初めてとなるAKシリーズのガスブローバック機構にフォーカスした「内部メカ」の2つのテーマで話を聞いていった。

向かって左から島村氏、永井氏、泉氏

 前回のインタビューでも触れたが筆者はAKシリーズに特別な思い入れがある。今回のインタビューでは、東京マルイとして初のAKシリーズのガスブローバックマシンガンであり、初の製品化となった、待望久しい「AKM」の特徴を再現する為の様々なトライについて深い部分の話を聞く事が出来た。プレス合板のストックとハンドガードを樹脂成型品で再現するための特殊印刷への挑戦、ガスブローバックにおけるAKらしさの追求へのこだわりを感じて頂ければ幸いだ。

1970年代にソ連の工場で製造された「AKM」そのままのリアルな外観!

 まず最初に、「AKM」とは何か、その銃を東京マルイがガスブローバックマシンガンとして販売する意味をかいつまんで説明したい。AKMは旧ソ連でAK47の改良型として開発されたアサルトライフルである。命中精度や耐久性、生産性が向上し、世界中に輸出されて現在も紛争地帯などで多数が使用されている。

 東京マルイではスタンダード電動ガンの「AK47」の後、次世代電動ガンとして口径5.45mmの「AK74」、さらには再び「AK47」をモデル化してきた。今回、東京マルイとして「AKM」が待望の製品化という事になる。

 また、「AKM」は初のガスブローバックマシンガンのAKとなる。電動ガンでは再現できないリアルサイズの外観と内部メカ、AKならではの「ハンマーダウン機構」も再現されている。口径7.62mmをイメージした迫力のブローバックも含め、ライトユーザーからマニアまで納得の製品となっている。

ガスブローバックマシンガン「AKM」を構える島村氏。AK47の生産性を向上させたAKMがモチーフ。こだわりのメカニズムが生む大迫力のリコイルショック、リアルな外観が楽しめる商品だ

 東京マルイでは今回の製品化にあたって、旧ソ連の「ツァーラ造兵廠」で1975年に製造された「AKM」の無可動実銃(本物の銃の内部機構を加工し、射撃ができないようにしたもの)を入手し、それを元にモデル化している。それにあたって、プレス加工された金属の折り返しなど、非常に細かい工程にまで及び、その“質感”を再現するために注力したという。

無可動実銃や膨大な資料から作られたガスブローバックマシンガン「AKM」。話を聞いていくとその再現度に驚かされる

 東京マルイ社内の会議室でライフルケースから取り出されたガスブローバックマシンガン「AKM」をひと目見て思わず息を呑んだ。筆者は昨年12月の時点で、開発中のガスブローバックマシンガン「AKM」には好印象を抱いていた。その時、樹脂の表面にプリントする事でプレス合板ストックを再現した技術に感心させられたのだが、改めて完成品はその外観の本物らしさに磨きがかかったな、と感じた。細かく話を聞いていく中でその思いはさらに強くなった。

ストック部。樹脂成型品にプリントをしたとは思えない表面の質感

 前回のインタビューでも触れたが、本物のAKMの外観における最大の特徴はプレス合板によるストックとハンドガード、そしてフェノール樹脂(いわゆる「ベークライト」)のグリップである。

 本物のAKMはプレス合板による木製ストックで、1つ1つの銃の木目が異なる。海外製のエアソフトガンでは木製ストックを使用した商品もあるが、量産におけるコストや、安定した品質が保てない事がネックとなり、樹脂と特殊印刷で再現されることになった。ここからいかに手間をかけて本物のプレス合板のストックの質感を再現させたかを前回島村氏は語ったが、今回改めてその試行錯誤の大変さを聞くことができた。

 苦労した点の1つは“色”だ。そのゴールとしては本物のプレス合板ストックがある。しかし樹脂の上に特殊印刷を行なうとどうしても目標の色にならないのだ。特殊印刷の色調、ベースとなる樹脂の色を調整してゴールに近づけるのには苦労したという。結局、ベースとなる樹脂をかなり明るめにすることで、プリントした際に目標の色が出ることがわかった。泉氏は「ストックは左右に別れた物を貼り合わせてから印刷するので、設計は苦労しました」とも語った。

 ストックの各部について、もう少し掘り下げてみた。ストックにはスリング(背負い紐)を取り付けるスイベル(金具)がついているのだが、強度が必要なので見えない部分でリング状に溶接してあるという。

スリング(背負い紐)を取り付けるスイベル(金具)。内部でリング状に溶接してある
内部で樹脂本来の色が確認できる。表面の色にするために試行錯誤した成型色だ。アッパーハンドガード内部はガスの通るチューブの形状を再現しているところも注目
泉氏はプリントの苦労を語った

 本物らしさを追求するポイントとしては“丸い打ち込みのピン”がある。このピンを商品では“塗装”で再現している。永井氏は「ハンドガードとストックにある、打ち込みピンを特殊印刷で同時に表現できないので、もう1工程追加し、プリントした物に、別の色で塗装しています」とのことだ。

 手触りも感心させられたところ。見た目は無論、表面の手に馴染む適度なザラつきから、そうと聞かされていなければ樹脂の成形品とは気付かない。また、フェノール樹脂を塗装で再現したグリップも、前回よりさらに再現度が増していると感じた。

木製パーツを留めるピンも塗装で再現、赤丸の部分にピンが見える
フェノール樹脂を塗装で再現したグリップも、前回よりさらに再現度が増している
永井氏は特に成型色の選定に時間がかかったという。“結果”として求められるのは本物のストック&ハンドガードのグリップの色合いだが、樹脂に特殊印刷すると色合いが大きく変化してしまう。プリントと成型色の色合いは大変だったとのこと

 銃本体も話を聞きながら各部を見ていった。ナナメにカットされた銃口部から続くアウターバレルの表面切削加工跡は、3D解析したデータを元に削り出しのピッチを決め、忠実に再現されている。

 バレルから続く心臓部、ダイキャスト製のレシーバー表面は、非常になめらかで美しい。このきめ細かでありながらざらりとした感触を生む表面処理は当時のプレス加工をイメージして再現されている。泉氏は「無可動実銃や当時の工場での映像や写真を見ると、1970年代当時に非常に綺麗にプレス加工をやっていてスゴいな、と思いました。今の技術を用いても再現するのが中々難しくて、悩ましいところがありました」とコメントした。

 プレス加工のレシーバーカバーもこだわりのポイント。実銃同様、端の折り返し処理を忠実に再現している。これは東京マルイの安全基準で、プレス加工したパーツの断面はそのままでは危険なので処理する事になっているが、今回はその安全性が実銃の再現にも繋がっているというわけだ。

ナナメにカットされた銃口部から続くアウターバレルの表面切削加工跡は、3D解析したデータを元に削り出しのピッチを決め、忠実に再現されている
今の技術を用いても再現するのが中々難しくかったというプレス加工の質感。赤線の部分は折り返し処理が施されている
リアサイトの数字に入れられたホワイト(筋彫りへの白入れ)は、レーザー加工によるもの。良く見られるマーカーによる物に比べ、繊細で美しい
前回のインタビューでも触れたこだわりのマガジン。7.62mmの弾が30連入るこの長いマガジンを一発で金型から抜いている。後部リブのスポット溶接の痕は、当時の製造ラインの加工を参考にして不等間隔を再現して入れられているとのこと

 木製部分を別とすれば筆者は特にレシーバーカバーの折り曲げ処理に驚かされた。松本仁一氏の「カラシニコフII」で、1980年代に中国ノリンコがコストダウンの為にプレス加工を簡略化した話が出てくる。現在モデル化されているAKシリーズの多くはそうした廉価AKを参考にしている為かレシーバーカバーの端は鋭利なままだ。手間をかけて1970年代式の処理を再現した東京マルイ「AKM」にはクラフトマンシップを感じる。

 筆者はオートバイでもカメラでも工業製品は第一印象が大事だと思っている。理屈の積み重ねで性能がどんなに良くても第一印象で「惚れ」なければ、欲しい、所有したい、という気持ちにはならない。その点、ガスブローバックマシンガン「AKM」は、細部にこだわって、ぱっと見た感じで惚れさせる外観に仕上がっている。強く「欲しい」と感じた。

 次ページではガスブローバックガン「AKM」の内部機構に迫っていきたい。こちらにもこだわりが詰まっているのだ。