インタビュー
ガスブローバックマシンガン「AKM」開発者インタビュー
2021年6月30日 00:00
7.62mmの弾を発射するリコイルを再現した「AKM」の醍醐味!!
ガスブローバック式エアガンの大きな特徴は「実銃に近づけた内部機構ができること」にある。実銃は薬室内で火薬を爆発させて作動するメカニズムだが、マガジン内に溜めたガスを噴出させることで作動させるので、そのメカニズムを実銃に近づけることができる。モーターで駆動させる「電動ガン」とは全く別物なのだ。
もちろん噴出するガス圧は火薬の爆発力よりずっと小さく、内部で使用できる部品素材も様々な制約がある。そういった“違い”を前提とした上で、実銃のような作動メカニズム、撃ったときの強烈なリコイルショックを表現しようというところで、開発者の意地があるというわけだ。ここからは、この難題に挑戦する内部機構を掘り下げていきたい。
映画などで登場人物が銃を撃っているときスライドが後退したままの形で固定され、外観からも弾切れがわかるシーンがある。これは「スライドストップ機構」で、多くのハンドガンに採用されている。射撃手が弾切れを気にしなくて引き金を引き続けていても自動的に教えてくれるのだ。またM4に代表されるライフル系は同じく「ボルトストップ機構」により、エジェクションポート内を覗けば弾切れを目視できる。
しかしAKMなどAKシリーズにはこの機構はない。弾が切れてもハンマーが普通にダウンするのみだ。そのハンマーもレシーバーカバーに隠されており、さらにエジェクションポートも閉まったままなので弾が切れたときの「カチッ」というハンマーが空撃ちした音がして初めて弾切れだとわかる。
ガスブローバックマシンガン「AKM」の内部メカ最大のセールスポイントは、何と言っても特許出願済みの「ハンマーダウン機構」である。ガスブローバックマシンガン「AKM」では、BB弾が無くなると一旦ボルトが前進した状態で止まる。さらに引き金を引くと、ハンマーがダウンした音だけが響く、「ハンマーダウン機構」が作動する。
M4系にはBB弾を撃ち尽くした時にはボルトが後退した位置で止まり、マガジンを交換してストッパーを解除して再装填、という解りやすさがある。それに比べ「AKM」は、ハンマーがカチッと言うだけの非常に地味なギミックと言える。
実銃は弾=火薬=動力源なので、弾がなくなれば当然作動しなくなるが、ガスブローバック式のエアガンの場合、BB弾がなくなってもマガジンにガスが残っているので、ブローバックが作動してしまう。
このため、実銃においてはシンプルなこの状態を、「AKM」ではBB弾が無くなった事を感知させてバルブを叩かない様にするという複雑な動きが必要になる。この「ハンマーダウン機構」のキモが、マガジンに設けられたBB弾を感知してバルブを回避させ、叩けなくする物理センサーだ。弾切れの時にハンマーが固定され引き金を引いても弾が出ない。
マガジョン内にガスが残っていても中の動きがストップするこの地味だがAKシリーズならではの特徴を本製品はきちんと再現しているのだ。
ここからは内部メカを詳しく見ていこう。「AKM」は実銃同様、後部のロックを解除してレシーバーカバーを外すと、簡単にそのハンマー含む機関部が露出する。
ここで東京マルイからの注意として、この状態で作動が可能ゆえに、絶対にマガジンを装填して引き金を引いたりしないで欲しいと念を押された。M4系では機関部を露出させると発射は不可能なのだが、「AKM」では出来てしまう。
ボルトの前後する力は非常に強力で、指などを挟まれると大怪我必至、最悪指の切断も有りうるのだ。マルイでは配信で実銃同様にカバーを外して作動させていたが、あくまでも内部の動きを解りやすくする為の措置であり、決して真似しないで欲しいとのこと。本当に危険な行為なので絶対にやらない様にしよう。
危険を回避する為には、レシーバーカバーのロックを解除する場合、内部のガスやBB弾の有無に関わらず、必ずマガジンを外してから行う事が肝心だ。以上の安全な状態にしてレシーバーカバーを開けたら、ボルトの後退を受け止める「バッファー」部分を前進させ、スプリングガイドを捻って引くと一気に抜き出せる。
続いて、スプリングのテンションが無くなったボルト部分は後ろにスルッと抜き出せる。ボルトから繋がる銀色のガスピストンは本製品ではダミーだが、形状は忠実に再現、色もこだわったアルミ製だ。外からは見えにくい部分のボルトの形状も、ロッキングラグを模して成型されている。
本製品の基本的な作動原理は、東京マルイのガスブローバックシリーズの誕生時から大きな変化はないが、部品のレイアウトはモデルアップ対象の実銃のアウトラインや細部のデザインに激しく影響されるため、部品の形状や配置を新規にやり直している。製品ごとに“その実銃ならではの体積や細部のデザインを、最大限有効活用できるエアソフトガンのメカのレイアウト”を模索し、追求しているとのことだ。
例えば今回の場合のボルト部分では「その体積で得られる最大のリコイルショックを追求する」という最も求められる課題を追求するだけでなく、非常に多くの要素を考えている。
「ブローバックのアクションの動力源となるピストンユニットが、マガジンからのガスを無駄なくリコイルショックに変換できる効率のよい構造にする」、「ピストンユニットを組み込むため実銃と異なりボルト本体を分割しなくてはいけないので、その分割ラインやネジなどでリアルさを損なわないように配慮する」、「目立たない配置を追求しつつ、ネジの耐久性をしっかり確保する」、「曲がらず一直線に、簡単に組み立てられるようにする」、「コストへの配慮」、「重量や部品点数、組み立て工数をできるだけ減らす」……などなど様々な要素を検討していくとのことだ。
製品としての効率と、実銃の雰囲気を追求した部品の形状、耐久度やコストも考えたこれらの部品でも、実際に組み上げて動作させると新たな問題が生まれたりする。「ボルト本体が裂ける」、「徐々に湾曲する」、「小さな部品が砕ける」、「スプリングがすぐにへたる」……経験豊富な東京マルイの開発部でも新製品を作る度に様々な壁にぶち当たる。
改造プランを練り上げ、金型図面やテストショットのパーティングラインから金型の駒の形状を調べ、溶接やパーティングラインの変更、新規部品の彫り込みなどといった金型改造を依頼して、問題に対処していくのだが、それで新たな問題が生まれるといったこともある。こういった問題に向き合いながら、東京マルイの製品は生まれていくのであると永井氏は語った。
苦労したのはもちろんボルト部分だけではない。レシーバー側もまた、激しいリコイルショックに耐えきれず破損するなどのトラブルが多発したという。泉氏は「壊れたところを補強すると、破損が他に転移していくので、外観を極力崩さずに強度をあげるのが大変でした。バッファーの反動を受け止める部分は元は強力なスプリングを使う予定だったのですが、どうしても保たなくて、土壇場で肉厚のラバークッション材に変更しました。ユーザーの皆さんが通常使用される状況では問題無いですが、過酷な使用状況を想定するテストで何千発も連続して撃っていると、ガスガンなのに触れないぐらい熱をもってしまうという初めての経験もしました」と語った。
実銃の「AKM」も、ボルトを受け止める「バッファー」部分が比較的脆弱と言われるが、東京マルイではレシーバーが裂けてしまう様な耐久テストを繰り返し、「AKM」らしい、迫力の作動が実現したのだ。
そして永井氏はこの強烈な反動故の東京マルイからの注意点として、「レシーバーカバーの組み付けは確実に」と注意点を挙げた。強烈な反動を生むため、ボルトはすごい勢いで後退する。正確にレシーバーカバーを組み付けずに作動させてしまうと、後退してきたボルトに押し下げられたバッファーの一部であるレシーバーロック部分がレシーバーカバーを変形させてしまい、はまらなくなってしまうとのことだ。
レシーバーカバーを外す場合はマガジンを抜き、締める場合は必ずロックを確認しよう。
ガスブローバックガン「AKM」で取り入れられた新しい機能としては「空撃ち機能」がある。マガジンを差し込む部分の上側にオートストップのオン/オフ切り替えレバーがあり、これをオンにすると弾を装填しなくてもリコイルショックが楽しめるようになる。
もう1つ実銃と違う部分はセイフティをオンにしたときの「ボルトハンドル」の動作。実銃ではセレクターレバーが一番上のセフティオンの位置にあっても、それにぶつかるまでコッキングレバーを引くことができるが、商品では誤作動防止の為にそこまでは動かない様になっている。故障の原因にもなるので無理をして引かないようにしよう。
では射撃動画を。セレクターでセフティを外してからボルトハンドルを操作し射撃に入る様子。引き金を引くとボルトが前後して、反動が島村氏の体を激しく揺らす様子が確認できるだろう。
続いて筆者も体験させてもらった。筆者は、東京マルイのガスブローバックマシンガンは、既にM4のバリエーションである「MTR16」を体験している。そのM4系に比べてより強烈な反動が、全身を襲う感覚があった。M4系のものより遙かに重量があるボルトと、気化容積の大きいマガジンの相乗効果だそうだ。今回は空撃ちだけだが、早くBB弾を実際に発射してみたい。
ガスブローバックマシンガン「AKM」の発売は当初の予定から遅れており、発売計画の通りいかないという事になったが、「それだけ妥協しないでやっていると思っていただければと思います」と島村氏はコメントした。安全性や耐久度の確認のため、開発者は連射のし過ぎで肩に青アザが出来、耳栓をしないといられないぐらいの耐久試験もクリアしてようやく発売にこぎ着けたとも聞いた。その言葉に偽り無し、そう思える完成度だった。ついに発売日も決まり、ユーザーの手に届く日も近くなった。
島村氏は最後に読者へのメッセージとして「設計1名、開発2名体制で、およそ2年間大きな山に挑んで。今ようやく皆様にお届け出来るところまで来ました。今日、細かな部分への熱いこだわりが伝わったかと思います。他メーカーで発売しているものの中で最後発ではありますが、これが東京マルイのAKMです! という自信を持って造っています。是非手にとって、東京マルイのAKMを味わって頂ければと思います。よろしくお願いします」と語った。
筆者のAKへの偏愛は既に紹介しているが、その筆者の視点でも、これは「買い」だというのが第一印象である。
現物を見て、話を聞いて思ったのは、旧ソ連が誇った1970年代の工業技術力から造られた傑作アサルトライフル「AKM」を、東京マルイが現在の技術の粋を集めて、日本の国内事情、法律、規制に従って、日本向けにローカライズして再現したな、という事だ。
東京マルイを訪れた別のミリタリー関係者は一瞥して「ロシアで工場から出荷された時の状態そのもの」と、評したというエピソードもうなずける。1970年代のソ連の工業力を感じながら、使い込んで自分色に染めるのが正しい遊び方であろう。
M4に対する「敵役」である「AK」という位置づけで、AKシリーズに興味があるライトユーザーにとっては「AK」の何たるかを知る為の入門用として最高だし、これまでマルイの電動ガンを初めとしてAKのエアソフトガンを愛してきたフリークの皆さんも当然の事ながら、絶対に入手すべき逸挺だと断言できる。