インタビュー

「Harmonia humming 竈門禰豆子」企画担当者インタビュー

つややかな黒髪、大きな瞳、精巧な服……ドールの手法で禰豆子を表現!

12月発売予定

開発・発売元:グットスマイルカンパニー

発売日:2022年3月

価格:未定

ジャンル:ドール

全高:約23cm

髪の毛:耐熱繊維

素体:PVC、POM、PP、ABS他

 グッドスマイルカンパニーは5月29日より開催されるワンホビにて、「Harmonia humming(ハルモニア ハミング) 竈門禰豆子」を発表した。本商品は新たに誕生したドールシリーズで、可動式のアイやボディ、UVプリントを採用したアイなどフィギュアメーカーらしいフォーマットで、アニメ「鬼滅の刃」の竈門禰豆子を表現する。

 ドールはいわゆる“着せ替え人形”であるが、女児玩具としての役割を超えて海外のみならず国内でも様々なメーカーが参入する大きな市場を持つホビーだ。ユーザーはサイズ、体型、肌の色など様々な要素から素体を選び、眼球、ウィッグ(髪の毛)、などもカスタマイズ、そしてそのドールに服を着せて楽しむ。スケールとしては60cmクラスの1/3スケールから、30cmほどの1/6スケールのラインナップが多いが、リアルな体型から、デフォルメされたものまで種類も多彩だ。海外、国内でも様々なメーカーが参入している。

【Harmonia humming 竈門禰豆子】
「鬼滅の刃」の竈門禰豆子をウィッグで、布製の服、大きな瞳などドールらしい手法で表現する

 グッドスマイルカンパニーの「Harmonia(ハルモニア)」シリーズはフィギュア製作のノウハウを活かしてドールを展開している。「Harmonia humming 竈門禰豆子」は“アニメキャラクター”をかわいらしいドールで表現しようというテーマの商品となる。今回は本商品だけでなく「Harmonia」シリーズを企画するグッドスマイルカンパニーの田中詩凡氏に「Harmonia humming 竈門禰豆子」の魅力や込めた想いを聞いた。

 田中氏はグッドスマイルカンパニーにおいて本格ドールブランド「Harmonia」シリーズを立ち上げた。ドールならではの魅力と、キャラクター表現、本商品が追求する“かわいらしさ”とはどのようなものだろうか? 試作品を前に質問を重ねてみた。

本商品も含め、「Harmonia」シリーズの企画を担当するグッドスマイルカンパニーの田中詩凡氏。自分の手でドールをプロデュースする夢を実現するためグッドスマイルカンパニーに入社、「Harmonia」シリーズを立ち上げた

目の形、衣服、髪の毛……本格ドールでアニメキャラクターを表現する!

 2016年田中氏はグッドスマイルカンパニーに入社、それと共に立ち上げたのが「Harmonia bloom(ハルモニア ブルーム)」という新しいドールブランドである。「ねんどろいど」などグッドスマイルカンパニーの可動フィギュアの技術を活かし、”扱いやすくも本格的な可愛らしいドールをお届けする”、と言うのが大きな目的だった。

 「Harmonia bloom」は“いつの時代にも愛されるかわいい”をコンセプトに、スタンダードなドールをモチーフにしているという。独特の世界観でフィギュア製作を行なう「植物少女園」の石長櫻子氏が原型を担当し、ガラス製の“グラスアイ”で、1体1体手作業でメイクを施す。素体は全長約23cm、頭が大きく、体の小さいデフォルメ体系となっている。

【Harmonia bloom】
ガラス製の瞳、耐熱ウィッグの髪の毛、1体1体手作業でのメイクなどドールならではの手法で製作されている。価格は服まですべてセットされたものが4万円弱、2万円弱の素体に、目、ウィッグ、服などを購入しカスタマイズすることも可能

 そして服は細かく繊細なパーツで作られていながらも、マジックテープや凹凸のある金属製のボタンでパチリとはめる「スナップボタン」など初心者でも簡単に着せ替えができるようになっている。自分のお気に入りの素体に、ウィッグをつけ、いろいろな服を着せて楽しむことができる。独自のアイギミックや手足の関節には可動フィギュアの技術を応用しているので、自由度の高いアイの可動やポーズ付けが楽しめるのが他のドールと異なる特徴だ。

 やはりドールは扱うユーザーの愛情がこもっている雰囲気が楽しい。今回撮影のためにお田中氏にドールのヘアスタイルなどを整えてもらったが、ウィッグには専用のオイルを使いコームで丁寧に髪を整え、服のしわなども丁寧に伸ばす。指先にまでそのドールへの愛情を込めているのが伝わってくる。指先さえも気をつけて丁寧に扱う姿はやはり独特のホビージャンルであることが実感できる。

田中氏の姿からはドールへの強い愛情が伝わってくる。こういった思い入れが深くなるのがドールというホビーの大きな魅力だろう

 「Harmonia bloom」立ち上げにおいて、田中氏はまさに0からグッドスマイルカンパニーにおいてドール製造を実現すべく努力を重ねたとのこと。田中氏は「いつか自分でドールをプロデュースしたい」という想いを持っており、グッドスマイルカンパニーはそれを後押ししてくれた。まさになにもわからない状態からのスタートだったので、国内外の「ドールメーカー」、「ガラス工房」、「メイクアップアーティストの現場」などいろいろな場所を訪問し、知見を重ねたという。中国のドールを製作する工場でも話を聞き、生産への方法を模索していった。

 そういった中で決まっていった企画が「Harmonia bloom」である。素体には「ねんどろいど」の技術が活用されているが、グラスアイ、ウィッグ、服などの生産過程、デザイン、素材選びなど新しい挑戦は多かったという。

 「ボディに関してはねんどろいどやスケールフィギュアのノウハウが活かせましたが、"お顔のメイク"が大きな課題でした。かわいらしさをきちんと出すというところは、苦労したところです。『Harmonia bloom』は職人さんの手書きでお顔を作っているのですが、どれもちゃんとかわいい。そのかわいらしさが出せたところは今でも力を入れているポイントです」と田中氏は語った。

 「Harmonia bloom」はユーザーの評価を得て現在3年目、そして新展開となる「Harmonia humming」がスタートするというわけだ。「Harmonia humming」は“新しいフォーマット”が作られる。素体のボディ部分は共通だが、頭部が変わる。具体的には目の穴(ホール)の形状を変え、内部の目もグラスアイからプラスチックによる成型となる。目はUVプリントを使用し、瞳の中の造形など細かいところも作り込め、より多彩な表現が可能となった。

【新しいブランドHarmonia humming】
左がこれまでの「Harmonia humming」、右が「Harmonia bloom」である。「Harmonia bloom」でもノンキャラクターの商品は展開予定だ
「Harmonia bloom」はグラスアイと手作業のメイクで、古典的なドールの持つかわいらしさを追求
「Harmonia humming」では目の形や口の形などを細かくカスタマイズでき、キャラクター性を追求できる。樹脂製の瞳はより表現の幅を広げ、生産コストも抑えられるという。よりフィギュア的なアプローチを強めたフォーマットだ

 「Harmonia humming」のコンセプトは今の"kawaii"。「Harmonia bloom」はいつの時代でも愛されるスタンダードなドール的のかわいらしさを目指しているが、「Harmonia humming」は"丸くて大きなアイホールと、笑みを浮かべる口角"、"つり目のアイホールに、落ち着いた口角"など、フィギュア的アプローチでより細かいカスタマイズが可能となった。こういった自由度の高さを活用しアニメキャラクターの再現も可能となったのである。「Harmonia humming」これまでよりよりフィギュアらしいアプローチを行なったドールといえる商品となる。

 「Harmonia humming 竈門禰豆子」の"足"は本シリーズが指し示す方向性の1つだ。アニメの竈門禰豆子は足袋にレッグウォーマーのような防寒着を着けているが、このパーツは樹脂と彩色で再現するフィギュアの手法をとっている。このように細かい部分にフィギュアの手法を用いたアクセント付けを行なえる。さらにパーツを組み替えることで素足状態にもできるという。

 そして衣服に関しては「Harmonia bloom」のコレクションがそのまま使える。ユーザーが工夫することで禰豆子に様々な服装をさせることもできるだろう。「Harmonia humming」では「Harmonia humming 竈門禰豆子」のほかいくつかのアニメキャラクターを販売予定で、ワンホビ33では「狼と香辛料」の「ホロ」などを展示した。まずアニメキャラクターをドールフォーマットで表現するという方向で販売していく予定だ。

 もう1つ、「Harmonia humming」でのノンキャラクターのドールも準備を進めており、こちらは今後明らかになるとのこと。「Harmonia bloom」の"いつの時代も愛されるクラシックなドールのかわいらしさ"から"より表現の幅を広くした"現代風のかわいらしさ"を楽しめる方向性を提示していくとのことで、どのように展開していくかは楽しみにして欲しいと田中氏は語った。

【Harmonia hummingの楽しさ】
素体は「Harmonia」シリーズで共有だが、可動フィギュアの関節をフィードバックしている。いろいろなポーズを取らせ、そのポーズで固定できる。ポーズを取らせて飾ることができるのは、「Harmonia」シリーズの特徴と言える