インタビュー

「フィギュアーツZERO ゼタ / ベアトリクス」開発者インタビュー

素材選択や彩色、ボディライン……随所に込められたこだわり

 BANDAI SPIRITSより、2021年9月に発売予定のフィギュア「フィギュアーツZERO ゼタ」と「フィギュアーツZERO ベアトリクス」。こちらは、CygamesのPC/スマートフォン向けゲーム「グランブルーファンタジー」(以下、「グラブル」)に登場するキャラクターを立体化したものだ。

 「グラブル」は今年7周年を迎えた。今回フィギュアとなった「ゼタ」と「ベアトリクス」はファンの間でも人気が高いキャラクターであり、ファンの間から“ゼタベア”と呼ばれ、ゲーム内シナリオイベントでの活躍も大きな魅力だ。今回、ゲーム内で美麗なイラストで描かれる彼女たちが、全高約22cmというコレクターズ事業部が手がける美少女フィギュアとしては、あまり例のない大サイズでの立体化となった。

 「フィギュアーツZERO ゼタ / ベアトリクス」はこの大サイズならではの詳細な表現力で、イラストの繊細な雰囲気を活かし、立体物ならではの手法を活かしてキャラクター性やリアリティのある装備の表現を実現したという。今回商品の企画を担当した洲崎敦彦氏と山本りさ氏にインタビューを実施し、商品の魅力や込めた想いを聞いた。

【開発者】
写真左から、BANDAI SPIRITSの洲崎敦彦氏(左)と山本りさ氏(右)

ファンに人気な“ゼタベア”コンビを大スケールのフィギュアに!

 まずはフィギュアのモチーフとなるキャラクターを紹介したい。「グラブル」は空に浮かぶ島々を旅する冒険の物語。この世界にはかつてこの世界を征したという“星の民”による超科学の様々な遺物がある。主人公はこの世界で勢力拡大を目指す軍事国家エルステ帝国から逃れようとする不思議な少女・ルリアを助け冒険を繰り広げていく。

 今回フィギュアとなる「ゼタ」と「ベアトリクス」は、人気の「組織」編のシナリオイベントを中心に登場するキャラクターだ。ゼタは空の世界を暗躍する謎の「組織」に属する勇敢な女戦士。封印武器と呼称される「アルベスの槍」の契約者であり、相棒の漆黒の鎧に身を包んだ「バザラガ」と共に様々な任務をこなす。主人公たちの実力に一目置き、共に戦うようになる。

 ベアトリクスもおなじ、「組織」に属する戦士。因果を喰らい勝利を手繰り寄せる「エムブラスクの剣」の契約者である。プライドが高く、功を焦って先走りピンチに陥ることもしばしばあるが、逆境を力に変え道を切り拓く。ゼタとは旧知の仲で、ふたりが登場するシナリオイベントも多く、ファンからは“ゼタベア”という愛称で呼ばれている。イベント限定での衣装でも登場するなど非常に人気の高いキャラクターだ。

 BANDAI SPIRITSで「『グラブル』のキャラクターをフィギュア化しよう」という企画がスタートしたのは、今から3年程前のこと。同社のイベント「TAMASHII NATION」にCygamesを招待したときに、イベント会場内で魂ネイションズの商品を見てもらったことがきっかけで、BANDAI SPIRITSからCygamesに商品企画を提案することになったという。

【フィギュアーツZERO ゼタ】
こちらは「フィギュアーツZERO ゼタ」。赤をベースにしたメタリックな衣装が印象的だ

 「どのキャラクターをフィギュア化するか」は大きな課題となった。人気があり、たとえ今後ゲーム内に異なる衣装のバージョンが登場したとしてもフォルムやコスチュームが古くならないキャラクターにしたいという思いがあった。いくつか候補を絞ったなか、声優の人気なども含めてファンのニーズが高いことから、最終的にゼタとベアトリクスが選ばれたとのこと。

 2021年の3月には「グラブル」の7周年となったが、このときも「ゼタベア」を含めた「組織」メンバーがフィーチャーされており、キャラクターの選択としてピタリとはまった。キャラクターはイベントで様々な服装を見せるが、ゼタベアは今回のフィギュアで採用したキャラクターの衣装が、スタンダードになっている。たとえば「グラブル」のリアルイベント会場内でも、オフィシャルキャストが同衣装を身にまとっており、ユーザーの間でもそれが定着してきたからだ。そうした部分に関しても、フィギュア化の手応えを感じたと洲崎氏は語る。

【フィギュアーツZERO ゼタ】
「フィギュアーツZERO ベアトリクス」。ゼタとは対照的に青が基調になっている

 商品にフォーカスしていこう。やはり目を惹くのは約22cmという大サイズに非常に緻密な造形だ。それでいてキャラクターが持つ明るい雰囲気や、ボディラインなどもしっかりと表現されている。コレクターズ事業部では様々なフィギュアブランドがあるが、固定フィギュアである「フィギュアーツZERO」ブランドで発売されることになった理由は、キャラクターの美しいビジュアルを再現したかったからだという。デフォルメブランドではなく、リアルな等身でのフィギュア化をしたかったとのこと。

 このフィギュアは「グラブルフェス2019」で初お披露目されたがユーザーが大きく反応したのはその後の試作品をグラブルのディレクターが2回ほどツイートしてくれたとき。このときはユーザーの反応もよく、早く欲しいという声が多かったとのこと。

 その中には、「最初のときから顔が変わった?」と鋭い指摘をするファンもいた。じつは、最初にイベントで展示を行なったときから、商品のブラッシュアップが行なわれている。特に顔回りに関しては、ごっそりと変更が行なわれた。このブラッシュアップの評価が高かったと洲崎氏は語った。

 そう言われて顔に注目するとはっきりとしたアイラインだけでなく、眉の角度、口元などイラストの味をしっかり再現しながらしっかりと立体に落とし込んでいるのがわかる。こういったこだわりが画像からしっかり伝わったからこそ、ファンの反応は大きくなったのだろう。

 人形の命ともいえる顔に関しては、たしかに近くで見ても見劣りするところもなく、キャラクター自体が持つ愛嬌のようなものもしっかりと再現されていると感じた。いくつもの戦場を駆け抜けてきたかのような鋭いまなざしのようにも見え、見つめているとこちらの心も見透かされてしまうような気分にさせられた。

【アップデートされる造形】
最初の発表時と比べて、顔はごっそりと作り変えられているという

 顔に関しては、最初はやや面長の感じがあった。また目の雰囲気も変えたいということから、作り直しが行なわれている。オリジナルのイラストの場合、ブラシで描かれているため立体化では必要となる“正しい線”が見えにくくなる箇所がある。このため例えばイラストの絵をそのままフィギュアにプリントしても、イメージが異なってしまうことがある。

 フィギュアは3Dデータで設計するものの、イラストの“ブラシを使った画のタッチ”も活かすためには、実際に1回アウトプットしてからでないとフィギュアの出来が確認できない。このため出力してその出来を確認してから修整するという形での試行錯誤となった。また、顔以外の全体的なボディラインについては、版元とやりとりをしながら調整が行なわれたとのこと。原作の雰囲気を活かすプロポーションの追求も行なわれているのだ。

【イラストの雰囲気を活かす】
イラストをトレースしただけでは、キャラクターの持つ本来のイメージを再現することはできない

 「フィギュアーツZERO ゼタ / ベアトリクス」は全高約22cm、スケールとしては約1/8で、これは他の「フィギュアーツZERO」より大きなスケールである。実は最初期の段階で実際に商品化された「フィギュアーツZERO ゼタ / ベアトリクス」もより小さいサイズで企画が進んでいたが、どうせやるなら徹底的にこだわっていこうという話を現場として、サイズアップを行ない、細部へのこだわりをより密にする方向へ舵を切り、全身にわたり一気に作り変えている。

 この大サイズにすることで、装飾を非常に繊細に、そしてメリハリのきいたボディラインもしっかり表現できたとのこと。キュアラクターとしての表現と共に、ディテール面の見応えもあるという様々な要素が詰め込まれている。

【大サイズの魅力】
小さい方は顔を作り直す前のものだ。しかし、サイズが違うだけでも、これだけ印象が異なるとは

 開発初期に方向性を決定するために大小の原型2種を比べてみることにしたが、「全員一致で、大きい方で。だってこの原型、こんなに素敵なのに小さくしちゃったら全然見応えないじゃないですか」というのが一致した意見だったという。大きくするとコストが上がってしまうが、ファンを満足させるのにこの大きさは必要だとチームは判断した。

 元々原型師が気合いを入れて造形し、ラインなども意識して作られているものだ。それを、相応の大きさで見せたいという想いもあり、BANDAI SPIRITSのコレクターズ事業部の商品としては珍しいサイズ感の商品となった。

 今回開発中の小さい試作品も見ることができたが、サイズ感の違う2体を見比べてみると、たしかに欲しくなるのは大きい方だ。これは決してサイズが小さいから出来が良くないということではないのだが、やはり思い入れのあるキャラクターはより大きい方が手にしたときの満足感が増すように感じるからかもしれない。

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