インタビュー
「フィギュアーツZERO ゼタ / ベアトリクス」開発者インタビュー
2021年5月27日 00:00
イラストの魅力を再現しつつ、フィギュアとしての3Dでの強みも活かす
造形と共に、カラーリングはゼタとベアトリクスの対比を意識して彩色されたという。カラーリングに関しては“最も悩ましかった”と洲崎氏は語る。今回一度彩色見本を出した後、さらに2回修正している。これほど工程をかける商品もあまりないとのこと。
装備などの彩色も気をつけたのは顔同様の“イラストのブラシ感”。原画イラストはブラシを効果的に使い色をにじませているが、フィギュアでははっきり色が出てしまう。このため、例えば金のエンブレムは、意図的に色をくすめて色を寄せている。この調整は“ブラシが1回乗ったちょっと溶け込んでいるぐらいの色味”とのことだ。
イラストをフィギュア化するのは苦労する点も多いが、フィギュアならではの強みもある。たとえば鎧の金属の雰囲気や、クリアパーツの質感は、立体物としての存在感がよく出る部分だ。とくにゼタの武器はクリアパーツの露出箇所が多く、目を惹きやすい作りになっている。
ベアトリクスの服も、単なる金ではなく金属感の強い色が採用されている。衣装の青い部分も単なる布地ではなく、青いメタリックになっているのだ。豪奢でありながら服のような質感については、彩色ブレーンの担当がこだわりを込めて調整したとのこと。
そして、前面はともかく、背面などイラストではわからないところについては、版元に指示をもらいながら作り込んでいる。たとえば、ふたりの背中部分にはエンブレムが付けられているのだが、こうした部分もしっかりと設定通りに作り込まれているのは本商品の大きなセールスポイントだろう。
イラストとフィギュアの違いというのは様々なポイントがある。ベアトリクスの腰布や、ゼタの袖の布などはイラスト以上にボリュームのある形にしている。フィギュアを360度回転して見せたときのバランスや、イラストで生じるバランスの違いを3次元に落とし込み調整した上での造形だという。
フィギュアは顔と体のバランスも異なる。これはサイズによって異なり、1/12と1/8といったスケールだけでなく、キャラクターによっても異なるバランスが求められる。フィギュア開発の経験を活かしたバランス調整を行なっているとのこと。
特にこだわったポイントも聞いてみた。今回のゼタでは、特に“槍”にこだわったという。「グラブル」のキャラクターの多くは武器に紐付けられており、それらのキャラクター解放武器をガチャで入手することでキャラクターが加入する。このため武器の表現には力が入っている。
ゼタの武器は大型の槍「アルベスの槍」だが、明確な対比資料がなく「実際の槍の大きさ」がわかりにくい部分があった。そこで、最終的にはイラストからの印象を重視した形で造形が行なわれている。刃先や根元など様々なところにクリアパーツを使い、造形、質感共に見応えがあるアイテムとなっている。
一方のベアトリクスでは、肌の柔らかさや曲線を帯びたボディラインなど、立体物ならではの説得力を持たせることができるかという部分に特に気を使ったという。衣装での金属感など硬質な雰囲気はコレクターズ事業部の得意分野でもある。だが、肌の柔らかさに関しては、どこまで解像度を上げていくことができるかがチャレンジだった。あえて誇張したところもある。太ももや背中回りなど、衣装との比較でどのようにメリハリを付けていくかについて、原型師と話し合いながら進められていったそうだ。
今回のゼタとベアトリクスには、ユニークな点としてそれぞれ台座部分に支柱が取り付けられるようになっている。台座の裏側に4カ所の穴があり、そこに支柱を付けることで高さが変更できるというわけである。支柱は全部で8個付属しており、付けてない状態と、1段、2段という感じで高さの調整が行なえる。
これは、ふたつのキャラクターを並べたときに重ねやすくするためのものだ。もちろん単体で購入した場合も、目線を高くしたいときなど高さが変更できるのはいろいろとメリットがある。せっかくなら2体同時に購入したいという人も多いと思うので、こうしたちょっとした配慮は嬉しく感じる部分だ。
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