インタビュー

「戦士の銃」は松本零士作品の武器を立体化する「LEIJI SMALL ARMS COLLECTION」の始まり!

原型師・高木亮介氏とハートフォード・コネティ加藤氏の壮大な夢が明らかに!

 モデルガン「戦士の銃 コスモ・ドラグーン」は筆者の“人生の夢”といえる商品だった。「戦士の銃」とは松本零士氏のコミック/アニメ「銀河鉄道999」の主人公・星野鉄郎が手にする銃で、作品に魅了された筆者はいつか戦士の銃を手に星の海へ旅立ちたいと夢見てきた。

【戦士の銃 コスモドラグーン】
ハートフォードが樹脂に金属を練り込んだ“ヘビーウェイト樹脂”で製作したモデルガン「戦士の銃 コスモドラグーン」。筆者の子供からの夢を実現した商品だ

 その夢に近づけたのがハートフォードが販売する「戦士の銃 コスモ・ドラグーン」のモデルガンだ。筆者がこの商品にどんな思いを持っていたのか、そしてそのこだわりを理解してくれた“職人さん”に出会い、革のホルスターを作って頂いたエピソードも、記事にした。

 「戦士の銃」は、プロジェクトマネージャーであり、フリーの原型師であるエルフィンナイツプロジェクト・高木亮介氏(高ははしごだかと呼ばれる旧字体)と、ハートフォードの代表を務めるコネティ加藤氏の2人の“夢”が結実したプロジェクトだという。筆者は機会があればこの2人にインタビューしたいと思っていた。今回、その願いが叶ったのだ。

 そしてインタビューでは「戦士の銃 コスモ・ドラグーン」は2人の“夢”の始まりであることを知った。この商品は、松本零士氏のコミックに登場する様々な武器を商品化しようとするプロジェクト「LEIJI SMALL ARMS COLLECTION」の1つだというのだ。

 2人は「LEIJI SMALL ARMS COLLECTION」にどんな思いを託しているのか? 今回は「戦士の銃 コスモ・ドラグーン」のモデルガンがいかにして生まれ、そしてこの商品が生まれたことで広がる未来「LEIJI SMALL ARMS COLLECTION」の壮大な構想を紹介していきたいと思う。

今回話を聞いたハートフォード代表のコネティ加藤氏と、フリーの原型師であるエルフィンナイツプロジェクト・高木亮介氏

高木氏の40年の情熱と、ハートフォードの西部劇への熱い思いが、「戦士の銃」を生み出した!

 この「戦士の銃 コスモ・ドラグーン」が生まれるには2つの大きな流れがある。この企画には「戦士の銃」に強いこだわりを持つ高木氏と、“西部の銃”のトイガンメーカーとして想い入れを持つハートフォード、両者がいなければ生まれない商品だった。

戦士の銃への思い入れが伝わってくる高木氏

 まず、高木氏そのものを少し掘り下げていこう。高木氏は様々な商品を手がける原型師だ。「ブレードランナー」に登場するブラスターをモチーフとした「高木式爆砕銃」や「装甲騎兵ボトムズ」に登場する「アーマーマグナム」のウォーターガンの原型製作などで知られている。「平成ガメラ三部作」の劇中に登場する銃の原型製作など、特撮映画などにも関わっている人物である。

 その高木氏が長く、20年も関わり続けているのが「戦士の銃」なのである。高木氏は20年近く前に「バイス」というトイガンメーカーで金属製の無可動モデルガンとして「戦士の銃」の商品に関わり、商品化を実現している。このバイスの戦士の銃はファンの間で長く語られるものだった。コルトドラグーンを思わせる大型モデル、ズシリとした金属の重み……トイガンメーカーが実際のモデルガンの手法で生み出した商品だ。

 高木氏はこの商品の企画と原型を担当した。実は高木氏はバイス製・戦士の銃が生まれるさらに20年前、中学生の時に「銀河鉄道999」の映画公開時に自分の手で精巧な木製の模型で戦士の銃を作っている。高木氏が人生の最初に実現させた「戦士の銃」である。映画の設定資料などを見てパーツを全て削り出して作った戦士の銃を今回見せて貰ったが、非常に精巧で、作り手の強い思い入れが伝わってきた。

【高木氏の最初の戦士の銃】
高木氏が中学生の時に作った戦士の銃の木製モデル。この後取り回しのしやすい小型モデルも制作したという

 戦士の銃はアメリカの南北戦争時の騎兵が使ったパーカション式拳銃「コルト ドラグーン(コルトM1848)」がモチーフベースになっている。コルト ドラグーンは金属薬莢が使用する前の拳銃で、弾を込めるのにかなりの手間がかかる。まず、シリンダー型の薬室に火薬と丸い弾丸を詰め、銃身下のハンドルを押し下げることで弾をシリンダーの奥まで押し込んでから、暴発防止のグリスで穴をふさぐ。

 その後シリンダーの後ろにある部分に雷管を装着、ハンマーが雷管を叩くことで薬室内に火が入り、弾丸が発射される。戦闘中にとてもリロードなどできない銃だ。前身である「コルトM1847ウォーカー」よりは軽量になっているが、それでも重さは1,885g。映画「ダーティーハリー」で有名な大型拳銃であるS&W M29ですら1,400gである。馬の鞍にホルスターをつける「騎兵(ドラグーン)」が使うための銃というところにこの名前がある。この後拳銃はより使いやすく、小さく進化していくのである。

 戦士の銃はこの大きくて重い、180年近く昔の銃がベースになっている。「銀河鉄道999」の作者であり銃に博学な松本氏は、このコルトドラグーンをベースに戦士の銃をデザインした。

 高木氏はバイスに入社し、原型師として様々な商品に関わる。戦士の銃は彼のこだわりを実現させたプロジェクトだ。しかしこの時は1スタッフとしての関わりだったため、自分のこだわりを全て実現できなかったという。

 当時バイスは高木氏製作による戦士の銃の試作を持って松本氏の事務所を訪れた。松本氏は戦士の銃に強い思い入れがあり、数多くの箇所に厳しいチェックが入った。「当時、ドラグーンを基にしたデザインであることは知っていましたが、立体化するときに試作品をブラックホークをベースに使用したためにネジの位置などがドラグーンと異なっていたため松本先生に御指摘を受けました」と高木氏は語る。このあとにゼロベースからの製作されたものがバイス製の商品の原型となったという。

 なお、このとき指摘された資料を高木氏は今も保管しており、その松本氏の強い思い入れもその後の高木氏の企画に影響することとなった。高木氏は現在はフリーの原型師として、様々な作品を手がけている。戦士の銃をはじめとした松本メカのミニチュアなども手がけたとのことだ。

【バイス製の戦士の銃】
1999年に発売されたバイス製の戦士の銃。金属バージョンと樹脂バージョンが何タイプか発売された。高木氏自身のコレクションは、自身で黒の塗装を施したとのこと
バイス製の戦士の銃は松本氏によってかなり細かいチェックが入ったという。このチェックはハートフォード製の戦士の銃設計に大いに活かされている

 一方、モデルガン「戦士の銃 コスモドラグーン」を実現させたハートフォードはどんなメーカーだろうか? 創業は1980年、その商品ラインナップは“西部を征した銃”として米国コルトにて今でも製造される西部劇での主役の銃「コルトシングルアクションアーミー45(以下、SAA)」のモデルガンを中心に、前述の「コルトドラグーン」、前身にあたる「コルトウォーカー」、「M1860アーミー」などコルトのパーカッションリボルバーを多く商品化している。

古き良きアメリカ、そしてその時代の銃への深い知識と思い入れを持つ加藤氏

 ハートフォード代表を務める加藤氏は昭和30年代の“ガンブーム”の世代。TVでは「ローハイド」、「ララミー牧場」、「西部の男パラディン」などが放映され、大きな西部劇ブームが起きた。ハートフォードはそんな“西部劇の銃”、「アメリカの古き良き時代の銃」をこだわりを込めてモデルガンとして商品化しているメーカーなのだ。

 ハートフォードは商品はモデルガンが多いが、リボルバー式ガスガンの「ペガサスシステム」の特許をベースにガスガン(エアソフトガン)も製造している。またピースメーカーのモデルガンを使用してのファストドロウ(早撃ち)を、スポーツとして捉え、普及活動をしている側面もある。

【ハートフォードのモデルガン】
「ドラグーン サード・ジェネレーション 再生産 2013年冬特別仕様 200丁限定生産モデル」。ブルーイング(塗装)により、本物の鉄製に見える処理を行なったモデルガン。ドラグーンは1~3までのジェネレーションを再現、組み立て式など様々なタイプを販売している
「コルト・M1860アーミー:コンバージョン・モデル」。ドラグーンより後のパーカッションリボルバーだが、こちらはカートリッジ式薬莢に対応したコンバージョンモデル。このように歴史で変化していく様々な銃を立体化しているのだ
「西部を征服した銃」として西部劇のヒーローたちが手にする代表的な銃「コルト・シングル・アクション・アーミー(SAA)」。「ピースメーカー」という通称を持つ銃は、ハートフォードのモデルガンの定番商品

 加藤氏は「原作の設定はありますが、私の中で戦士の銃は、パーカッションリボルバーであるコルトドラグーンを未来へ発展させた銃だと思っています。その意味では戦士の銃は“究極のウェスタンガン”と捉え、その想いを込めて商品化をしました」と語った。西部劇の銃へのこだわり、戦士の銃の商品化はそのハートフォードのこだわりの延長上にあるのだという。

【ハートフォード東京店】
ハートフォードは東京と名古屋に直営店があり、こちらは東京店。様々なモデルガンや部品、資料が展示・販売されており、ワクワクさせられる