レビュー
水鉄砲「アーマーマグナム the Water Gun」レビュー
「装甲騎兵ボトムズ」の銃! 凝った発射シーケンスと“大きさ”が魅力
2021年9月29日 11:21
アルゴ舎の水鉄砲「アーマーマグナム the Water Gun」はアニメ「装甲騎兵ボトムズ」に出てくる銃「アーマーマグナム」を再現した商品だ。アーマーマグナムは劇中での“ボトムズ乗り”のための支給品であり、印象的な活躍もする。
「ボトムズ」は、作中のロボット「AT(アーマード・トルーパー、通称ボトムズ)」は何度も立体化されるのだが、アーマーマグナムは主人公・キリコの所持品として同スケールで立体化されることはあっても、「実銃スケール」での商品はなく、ガレージキットだけだった。
今回、サンライズの監修を受けた上での1/1スケールでの立体化である。本商品の原型(設計)製作は、ハートフォードの「戦士の銃」を手がけたエルフィンナイツプロジェクト/髙木亮介(高は正しい表記は旧字体)氏である。高木氏らしいこだわりの造形がこもっている。今回少しだけ高木氏にこだわりポイントも聞くことができた。
水鉄砲としての性能もユニークだ。「ボトムズの銃としてのこだわり」、「水鉄砲としての面白さ」を紹介していこうと思う。
デカイ! キリコが劇中で愛用した「対AT拳銃」を手にする楽しさ
アーマーマグナムは“ボトムズ乗り”の標準装備の銃である。形は拳銃だが、その大きさは全長43cm、まるで銃身を切り詰めたショットガンのように大きい。両手で構えるとかなりの迫力だ。
設定上、この大きさは理由がある。この世界のロボット、ATは4mほどの大きさであるが、アーマーマグナムは「対AT用の銃」なのである。この銃が撃ち出す弾丸でATを倒すことができる、という設定なのだ。
撃ち出す銃弾の薬莢はATの接近専用の武器、前腕内で火薬を爆発させ、その衝撃で前腕をスライドさせて相手を殴る「アームパンチ」の薬莢と同じものを使う。このためこの大きさにかかわらず、装弾数は3発、薬室に弾を入れておく場合は4発まで携行できる。さらにグリップ部分に2発の予備弾を入れておくことが可能だ。
しかし「ボトムズ」は過酷な世界だ。ATも兵士も使い捨ての消耗品。代表的なAT「スコープドッグ」はコクピット内に気密処理すらされておらず、宇宙空間ではパイロットが身につけている気密服だけが生命維持の命綱。ATを駆動させ手足を動かす血液のような「ポリマーリンゲル液」は空気に触れると爆発するような代物だ。
当然「対AT兵器としての支給品」であるアーマーマグナムも、ATのスコープや装甲の弱いところに当てられれば効果を発揮するが、ストックもついてない、反動のバカでかい銃では精密射撃は難しい、実際にATを前にしたら、本当に気休め程度の武器だ。しかし劇中キリコは効果的にこの銃を使う。「ボトムズ」ファンにとって、キリコの使用イメージや、“使い勝手の悪さ”という「ボトムズ」ならではの世界観を提示するアイテムとしても、魅力的な銃なのである。
では、「アーマーマグナム the Water Gun」を詳しく見ていこう。本商品は劇中そのままを再現したのではなく、アニメーションとはデザインが少し異なる「コンセプトモデル」になる。設定画から実銃を参考にした機構や、高木氏の考察が加わっている。
オートマチック拳銃らしい無骨な銃本体、右側には薬莢を排出できる排薬口が確認できる。左側は切り替え用のスイッチ、安全装置が確認できる。銃の上側には実銃のコルトパイソンや、オートマグに使われているベンチレーテッドリブ(放熱板)がある。また銃身の下の茶色の部分はポンプアクション式ショットガンのフォアエンド風だ。設定ではここがスライドして外れて弾を入れることができるが、商品では水を入れるタンクになっていて、前の蓋を外して入れるようになっている。
こういった水鉄砲だと、引き金以外可動しない商品も多いが、「アーマーマグナム the Water Gun」は、銃後部のスライドチャンバーが引けるようになっている。スライドチャンバーを引くと実際のオートマチック拳銃のように薬室のカバーが動くのが楽しい。このスライドを引く機構は空気を圧縮する動作につながっている。実銃の機構を水鉄砲の“仕掛け”にしてあるのは感心させられた。
また銃の様々なところに刻印されている「ギルガメス文字」も楽しいポイント。「装甲騎兵ボトムズ」は作中オリジナルの文字があり、ATのマーキングなどもこの文字が使われている。ギルガメス文字のベースはアルファベット、使用している言語は英語なので、ちょっとコツをつかむと読める。高木氏もきちんと資料を当たり、実銃のテイストに近い刻印を盛り込んだとのことだ。
例えば銃左側後部のマークの横の文字は「BACCARAT METALL」と書いてある。これは、アーマーマグナム、正式名称「バハウザーGMA-571」の生産メーカー「バカラ・メタル社」の刻印なわけだ。こういった実銃的なアプローチは高木氏の銃の知識やこだわりが大きい。「実際にアーマーマグナムがあったら、こう言う刻印があったかも」という想像が楽しい。
実銃風のアプローチとしては銃上部のサイトがある。上部のプレートにはギルガメス文字で距離のメモリが設定されていて、スライドすることでリアサイトの高さが変えられる。この機構はルガーP08を参考にしたとのことだ。きちんと安全装置なども設定されていて、銃に詳しい人にとっても楽しい商品となっている。
スライドチャンバーをうごかしてチャージ、引き金を引くと勢いよく水が飛ぶ!
それでは“水鉄砲”の側面を見ていこう。「アーマーマグナム the Water Gun」はスライドチャンバーを動かすことで空気を圧縮し、その空気圧で水をとばす。このため撃つ前にスライドチャンバーを何度かうごかして空気を圧縮する必要がある。
水鉄砲の場合、引き金を引く力でタンクから水を発射する機構があるが、この場合トリガープル(引き金を引く力)が必要となり、「銃を撃つ感覚」から遠くなる。その点あらかじめ空気を圧縮する本商品の場合、トリガープルは小さく、勢いよく水が飛ぶ。もちろん反動などはないが、「撃つ楽しさ」に注力した仕様がこだわりを感じる。
水流は3mほどはしっかり前に飛ぶ。予想していた以上に勢いよく飛ぶ感じだ。ただ1発目はかなりしっかり飛ぶが、空気が少なくなる2発目、3発目になると水流は弱くなる。このため頻繁にスライドをうごかして空気を圧縮する必要がある。
「アーマーマグナム the Water Gun」は例えば水鉄砲の撃ち合い、という“実戦投入”を考えると不利だ。空気を入れるスライドチャンバーはデザイン重視で引きにくいし、何度もうごかさないと空気が圧縮できない。そして継続戦闘力も低く、2発目からは明らかに水流が下がってしまう。水鉄砲としての機能に特化した商品と比べると、能力は高くない。
たがやはり、「アーマーマグナムの1/1のトイガン」という唯一無二の価値は絶大だ。この大きさ、キリコや、ボトムズ世界の住人達が持っていた銃を手に持てるという楽しさは、何物にも代えがたい。「ボトムズ」ファンには本当にお勧めしたい商品だ。筆者自身構えて高い満足感を得ている。……ホルスターも欲しいかも。
この商品は「コスプレアイテム」としても超一級品だと思う。AT乗りの格好をする時に、このアーマーマグナムがあれば雰囲気はグッと良くなる。以前お伝えしたように稲城市には「実物大スコープドッグ」がある。……しかし、やはり人の行き交うところで銃の形をした玩具を出すのは安全上の問題もありオススメはできない。スコープドッグの管理をしている稲城市に個人が許可を取るのも難しいだろう。
やはりコスプレイベントなどでの活用が望ましいが、例えば稲城市に「ボトムズコスプレイベント」を提案するといった動きがあれば、取材してみたい。コロナ禍の中イベントは制限されているが、今後のイベントでこのアーマーマグナムを構えたコスプレーヤーが登場するのではないか、期待したいところだ。
(C)SUNRISE