インタビュー
「戦士の銃」は松本零士作品の武器を立体化する「LEIJI SMALL ARMS COLLECTION」の始まり!
2021年4月19日 00:00
戦士の銃、そして壮大な計画のスタートは「スカルグリップ」のドラグーンから!
加藤氏と高木氏は出会ってからもう15年以上になる。現在のハートフォード東京店は渋谷区広尾にあるが、その前に吉祥寺にあった店舗で高木氏は常連の1人だった。高木氏は「戦士の銃のモデルガンを出すならハートフォードさんで」という思いを当時から持っており、さらに戦士の銃にとどまらない大きな構想を持っていた。
「この戦士の銃をはじめとする『LEIJI SMALL ARMS COLLECTION』には大きな構想があります。ハートフォードさんは西部開拓時代の銃のエキスパートですし、『実現できたら良いな』と思っていました。ですから話が進んでからその時初めて企画書を書いたんです(笑)」と高木氏は語る。
「LEIJI SMALL ARMS COLLECTION」は“松本零士作品に登場する武器を立体化する”という想いを込めて名付けられたプロジェクトだ。現在の所いくつかの商品を展開しているが、高木氏の構想は様々な松本零士作品、西部劇、SF、戦記物などいくつもの時代を扱った作品に登場する武器を立体化する希望を出している。戦士の銃は大きな“マイルストーン”であるが、それはまだ序盤に過ぎないというのだ。まだ企画段階のため現在は明らかにできないが、非常に大きな、夢のある構想である。
高木氏と加藤氏はこの「LEIJI SMALL ARMS COLLECTION」を胸にプロジェクトを進めている。この大きな構想のスタートはハートフォードが2011年に発売した「スカルグリップ」の発売が“プロローグ”になる。戦士の銃の大きな特徴の1つが木製グリップに埋め込まれたメダルだ。頭蓋骨と2つの骨が組み合わさった海賊風マークが描かれたメダルは、松本氏の代表作「宇宙海賊キャプテンハーロック」の海賊旗を想起させる。
ハートフォードと高木氏はまずこの海賊旗のマークを描いたメダリオンをはめ込んだグリップを作成、モデルガンのコルトドラグーンに取り付けたモデルと、アクセサリーパーツとしてグリップのみの2商品を販売した。
ドクロのメダリオンをグリップにつけたコルトドラグーンは松本作品には登場しない。ハートフォード側もこの商品に関しては“カスタムモデル”として販売したが、好評だった。そしてこの後に、正式に松本零士氏に許可を取り、コスモドラグーンを中心とした「LEIJI SMALL ARMS COLLECTION」が正式にスタートするのである。
加藤氏と高木氏が松本氏の事務所「零時社(会議が深夜0時から始まるという意味を込めた社名とも言われる)」を訪問したのが2017年5月。松本氏はプロジェクトを快諾、濃密な会談の後、おそるおそる色紙を差し出したところ、松本氏は快くハーロックとメーテルのイラスト共にサインをしてくれた。今回筆者もその色紙を見せていただいた。この色紙のイラストは、「戦士の銃 コスモドラグーン」のパッケージや、中のカードにも使われている。その“原画”を見ることができた。松本氏とは鉄砲の話で大いに盛り上がったとのことだ。
松本氏の許諾・監修を得た「LEIJI SMALL ARMS COLLECTION」の名前を冠する商品の第1弾となるのが、2017年11月に発売された「ガン・フロンティア・シックス・シューター」である。西部を舞台にしたコミック「ガンフロンティア」でハーロックが使う拳銃をモチーフにしたモデルガンで、“西部を征した銃”といわれるコルト シングルアクションアーミー(SAA)の9インチバレルモデル。グリップには「松本ドクロ」と言われる、独特なメダリオンが埋め込まれている。
この銃にはハートフォードが得意とする「ケースハードン処理」が施されている。本物の銃では焼き入れ処理をすることで表面に印象的な焼き色と模様ができる。ハートフォードの職人が行なうことで、樹脂製でありながら実銃のような質感をもたらしている。
そして第2弾が2018年2月に「ドラグーン・スカルグリップ モデル」が発売される。今回のスカルグリップモデルは松本氏監修のメダリオンがグリップに埋め込まれている。さらにこの銃は“世代の違う部品”が使用された特別モデルであることが大きな特徴なのだ。
「松本先生が参考にされた実物のコルトドラグーン、戦士の銃のモチーフとなった銃は、トリガーガードはセカンド、シリンダーがファースト、ローディングレバーはサードジェネレーションの部品が使われているんです。コルトドラグーンは製造時期で設計に変更が加えられている。松本先生が参考にされたドラグーンは修理などで様々な世代の部品が使われているんです。だから弊社の戦士の銃も、その世代の違いを正確に再現しています」と加藤氏は語った。コルトドラグーン・モデルガンをサードジェネレーションまで製造しているハートフォードだからこそ作ることができる、こだわりのモデルというわけなのだ。
「戦士の銃に関しては、基本はコルトドラグーンの金型を活用しています。コルトドラグーンは今後も生産していく。従来の金型には手を入れず部品を足していくことで『戦士の銃 コスモドラグーン』を具現化しました」と加藤氏は語る。高木氏はこの前提の元、こだわりの戦士の銃を設計していったのだ。
苦労をしたのは後部ボルトの部分。「戦士の銃 コスモ・ドラグーン」は松本氏のがデザインする銃の特徴として、銃の後部にボルトがあり、通常の拳銃のようにハンマーを起こすのではなく、ボルトを引くことでシリンダーが回り、射撃準備状態となる。この機構はハンマーを起こすアクションにかわり、ボルトを引くことで撃針が後退、引き金を引くと撃針が前進するという劇中さながらのアクションを実現している。
高木氏はバイス製の戦士の銃では関わりきれなかったという思いがある。今回のハートフォードの「戦士の銃 コスモ・ドラグーン」はプロジェクトマネージャーとして、コルトドラグーンへの強い思い入れがあるハートフォードならではのこだわりを活かしつつ、本当に思いの丈をぶつけられたと語った。
ちなみに“本物戦士の銃”は射撃をするとその射撃のエネルギーが再びボルトを後退させる“ブローバック”で次弾が装填される。この機構はさすがに再現できなかった。高木氏は「いつかエネルギー弾が撃てる本物の戦士の銃を実現させたいです(笑)」と夢を語った。
「LEIJI SMALL ARMS COLLECTION」の第3弾であり、シリーズの大きなマイルストーンである「戦士の銃 コスモ・ドラグーン」は2018年3月に発売された。次項ではその反響やバリエーションモデルなどを紹介していこう。
(C) Leiji Matsumoto