インタビュー

「Harmonia humming 竈門禰豆子」企画担当者インタビュー

艶やかな髪、リアルな和服表現、禰豆子ならではのかわいらしさを追求

 フォーマットがわかったところで、「Harmonia humming 竈門禰豆子」そのものによりフォーカスしていこう。まず改めて竈門禰豆子というキャラクターを解説すると、彼女は「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎の妹である。2人はある日“鬼”に襲われ家族を惨殺された上、禰豆子は鬼にされてしまう。

 禰豆子は元々美しい少女だったが、鬼になったことで童女のようなかわいらしさを見せる。「Harmonia humming 竈門禰豆子」はそんな禰豆子のかわいらしさを表現したドールである。田中氏は「注目して欲しいポイントはたくさんあるが、やはり衣服です」と語った。ドールは服で大きくイメージが変わり、お気に入りの子にいろいろな服を着せたい。だからこそドールの手法で竈門禰豆子の服を細かく再現したかったという。

【禰豆子のかわいらしさを再現】
劇中の禰豆子も童女のように体を小さくすることができる。「Harmonia humming 竈門禰豆子」はそんな彼女のかわいらしさがきちんと感じられる

 そのこだわりは細部までみなぎっている。服は羽織を外すことはもちろん、帯締め部分も別パーツ化されており、きれいな帯の形をボタンをはめるだけで表現できるようになっている。そして服の模様だ。禰豆子の服はピンクの布に複雑な模様が入っているが、これはプリントではなく刺繍で再現している。顔を近づけるとわかるが刺繍は非常に細かく、精密だ。

 これはドールの顔が大きく細かい表現ができるので、その"解像度"に負けない密度で服を表現することで、より緻密な雰囲気を出したかったからとのこと。帯びも幾つものパーツが重なっているようになっている。着ている服も1枚ではなく、下に着る白い"肌襦袢(はだじゅばん)"の上から柄のついた"長襦袢"を着ているように、首元や袖、足部分で布が重ねられている。

 この肌襦袢の描写はきちんと着こなしている雰囲気が出るように樹脂製のパーツを芯に入れることでしっかりした襟の形を演出している。服の柄の刺繍もきちんと和服の手法にならい、柄がきちんと並ぶようにできている。随所にかなり力を込めた描写がなされている。「Harmonia」シリーズにおいて和服へのチャレンジは今回が初めてだが、和装知識に明るいドール衣装作家が関わることできちんとした形で仕上げられたという。今回得られた知見は今後のシリーズにもフィードバックされていくと田中氏は語った。

【こだわりの衣服】
複雑な帯の形状もしっかり再現。ドール用の和服を作る作家の知見が大いに活かされているという
首元のしっかりした重ね着表現は芯に樹脂を使うことで可能に。服の柄は刺繍で表現されている
かなり地味な羽織は、竈門禰豆子というキャラクターをうまく表現している
布が折り重なった帯の表現も楽しい

 禰豆子はキャラクターとして華やかな色の服になっているが、着ているものは決して華美な衣装ではない。山の中の炭焼きの娘が着ている実用重視と言える服だ。特に羽織は男物のような地味な色で、作りもシルエットもとてもシンプルだ。裾をきちんと縫っていたり、寒さに強そうに見える裏地だったり、随所にリアルな和服の雰囲気がある。

 しかも人形サイズでしっかりした服に見せるには現実の服に使う布をそのまま使用するのではなく、"小さくても本物に見える素材"を使わなければいけない。現実の被服とはまた違うアプローチも求められる。

 「着物にもここは簡略できる、ここは再現した方がより魅力的になる、と言った人形衣装に落とし込むための方法があります。そういったところも人形衣装作家さんに教えてもらいながらこの部分をどう表現すれば良いか、どんな手法を使うと良いか、という感じで作らせていただきました」と田中氏は語った。

 そして髪の毛だ。禰豆子はつややかな黒髪の持ち主だが、鬼の血の影響で髪の終端部分が赤く変色している。しかし黒は強すぎるため、今回はまずウィッグを赤く染めてから、改めて黒く染めていくことで禰豆子の髪の毛を表現している。ドールにとって髪の毛はととても重要な要素であり、美しくつややかな髪の毛は本商品の大きな魅力だ。

 この黒髪も「Harmonia」シリーズでは初めてのチャレンジだった。髪の毛もドールのウィッグ専門家の助言を受けている。「Harmonia humming 竈門禰豆子」は様々な分野のプロフェッショナルからアドバイスをもらい試作品を完成させたとのことだ。

【髪の毛の表現】
艶やかな黒髪が赤く変色している表現は、赤い髪を黒く染める、と言う手法で表現

 今回の開発の難所はやはり"顔"だ。ぱっと見たときにちゃんと「竈門禰豆子だ」とユーザーが感じられる顔にしなくてはいけない。ドールフォーマットではあるがきちんとモチーフ元の雰囲気を感じさせる造形やバランスは試行錯誤があったと田中氏は語った。

 ちなみにこのドールは"目線"を動かすことも可能だ。ポーズをとって目線を動かして写真を撮ったり飾ったりもできる。「Harmonia humming」では可動支柱が仕込まれた新しい台座も同梱される予定で、ポーズをとらせる可動フィギュアの楽しさもより強調していく。

【禰豆子のかわいらしさを追求】
和室風の背景は、珠世の隠れ家でくつろいでいる禰豆子をイメージしているとのこと

生活を共にするホビー、ドールの楽しさの可能性

 ドールは他のホビー以上に長い歴史を持つホビーと言える。精巧な衣装をまとった人形は中世にも記録があり、特にガラスの目を持つクラッシックなドールはそういった歴史を感じさせるのも魅力である。

 「Harmonia humming」はより幅広いユーザーに楽しんでもらえる商品を作りたい、と言う思いが込められている。キャラクター性を強くすることでドールファン、フィギュアファン、そして作品のファンに手に取ってもらい、この商品でしか表現できない魅力を感じて欲しいと田中氏は思いを持っている。

フィギュアとドールの魅力を高い次元で融合いさせようという「Harmonia humming 竈門禰豆子」

 ドールならではの注意点としては「服の色が肌についてしまうことがある」という。服の染料がPVC性の素体に色移りしてしまう場合がある。このため保管の際は白いワンピースなどを着せて衣服と別々に保管して欲しいとのことだ。ほかにもドールメンテナンス用の道具や知識があれば、本商品に役立つと感じた。

 改めて田中氏にドールの魅力を語ってもらった。「例えば固定ポーズのスケールフィギュアの良さって、大々的でアクロバティック。その最高の瞬間を切り取ったものだと思います。その世界はそこで完結していてそれ以上に踏み込めないからこその至高がそこにあると思っています。その点、ドールは"日常を共にするホビー"だと私は思っています。いろいろな服を着せたり、ポーズを撮らせたり、時には一緒にお出かけして、カフェのテーブルに座らせたり、観光地に一緒に立つこともできる。そういった経験の中、"最高の瞬間"を何度も見つけることができるんじゃないか、自分とドールのいろいろな思い出が作れるんじゃないか、そう思っています。オリジナルでも、キャラクターモチーフでも、違った髪型にして、違った服を着せ、違った場所に立たせて、物語を越えた先のキャラクターが追求できる。『Harmonia humming』は一緒にいろいろな思い出が作れる商品になって欲しいと思います」。

 最後に、ユーザーへのメッセージとして田中氏は、「すごくかわいくできました(笑)。今までのすべての子がそうなんですが、禰豆子ちゃんも最高にかわいいドールになったと思います。こだわりもいっぱいです。ぜひお迎えしてあげてください」と語りかけた。

田中氏からはドールへの強い愛情が伝わってくる

 正直ドールは縁遠い世界だったが、興味はあった。ミニチュアと同じように"小さな世界"をいかに表現するかというところはとても面白い。今回は特に和服をどうドールの衣装に落とし込むかというポイントが面白かったし、グラスアイを使って古典的なドールの魅力を追求する「Harmonia bloom」から、キャラクター性へとベクトルを変えた「Harmonia humming」の狙い、と言うポイントはとても興味深い。

 そしてやはり、ドールのかわいらしさというのは、フィギュアとはまた違うと感じた。愛情を持ってフィギュアを扱う田中氏の手や表情、それは擬音を出しながらロボットフィギュアを扱う"ブンドド"の熱情に近いものがある。こう言う思い入れの強さがあるからこそ、髪の毛の一本、服のしわ1つにまでこだわる「ドール文化」があると思う。「Harmonia humming 竈門禰豆子」は奥深いドール文化の入り口にふさわしい、とてもかわいらしい商品だと感じた。