レビュー

「ポケモンプラモコレクション No.54 セレクトシリーズ グラードン」レビュー

子供の頃から憧れたポケモンを手のひらサイズで組み立てる幸福感がここに

【ポケモンプラモコレクション No.54 セレクトシリーズ グラードン】

開発・発売元:BANDAI SPIRITS

発売日:12月16日

価格:1,815円

ジャンル:プラモデル

全高:約108mm

 ゲーム「ポケットモンスター ルビー」もしくは「ポケットモンスター オメガルビー」などに登場する伝説のポケモン「グラードン」は、当時小学生だった筆者の胸に深く刺さった。「なんか恐竜っぽくてかっこいい!」や「赤と黒がかっこいい!」といった感じだ。

 そんな「グラードン」が、12月16日に「ポケモンプラモコレクション セレクトシリーズ」からプラモデル化して発売される。全高約108mmという手のひらサイズで、恐竜のようなカッコよさを持った伝説のポケモンが手に入る。今回は本製品を実際に塗装なしで組み立てて、どんな見た目に仕上がるかを確認してみよう。

ランナーから分かる、デザインのシンプルさ

 「グラードン」のランナーは6枚。うちAパーツがマルチカラー成型で、カラーは赤、黒、白、ライトブラウンの4色とシンプルだ。これに口の中のピンクと赤、目の色分けに加え、爪などの肉抜き穴を埋めるシールが1枚付属する。

 パーツは大型の体幹を形成するものと、手足を構成する比較的小さなものに大別される。こうしてパーツ分けされた状態で見てみると、カッコいいと感じるファンが多いであろう伝説のポケモンであっても、デザイン自体はシンプルだ。それに腹や手足はトゲトゲした部分があっても丸みを帯びてかわいらしく、手つきの拙い子供でも絵に描いたときに形が取りやすいような印象を受ける。ポケモンの「シンプルかつかわいい/かっこいい」を突き詰めるデザイン志向に、改めて驚かされる。

Aパーツ
Bパーツ
C1パーツ
C2パーツ
D1パーツ
D2パーツ
シール

 パーツはニッパーいらずで取り外せる「タッチゲート」仕様で、手でプチプチと取り外すだけでいい。もしバリが気になるようなら、爪でカリカリとひっかくと平たくならせる。爪が傷つくのが嫌なら、デザインナイフやカッターを使って削り落とすことも有効だ。

 それぞれのパーツをじっくり見ていると、「手がほぼ一体成型だ!」、「尻尾の先がきれいに分かれている!」、「手のひらの微妙な膨らみが生物っぽさを感じてかわいい!」と思える。ポケモンは架空の生き物なのに、こういった実在しそうなテイストが盛り込まれているのが最高にかわいいのだ。

D1パーツの手。肉抜きはともかく、手全体を1パーツで成型しているのがすごい
Aパーツの手のひら。微妙な膨らみが母指球を感じさせ、何かを支える筋肉や脂肪があるのだと感じさせる
Aパーツの尻尾の先。後ほど胴体にかぶせるようにしてはめ込む

ツルッとしたプラが気が付くとグラードンになる、不思議な組み立て

 では実際に組み立ててみよう。パーツをランナーから切り出していくと、「グラードン」になる前の不思議な生き物が出来上がる。甲殻に覆われた黒い地肌を幹にして赤い甲殻を取り付けていくので、地肌を組み立てる段階では「何だかツルッとした不思議な生き物」に見える一方で、甲殻を取り付けた瞬間「グラードン」になる。これが「プラモデル化された生き物」を組み立てる気分なのか。

 グラードンの頭は、パーツの組み立てに加えて口の中と目にシールを貼って完成させる。目にはシールを貼るガイドのための彫刻があるが、素組みでないならばこれをなぞるように塗装してもよさそうだ。

シールと口蓋部分
上顎
Bランナーのパーツを使い、顎パーツをはめ込んでいく。黒い軸パーツは首の根元の可動ポイントになる
なんだか魚のようでもある頭部
お腹側の肌を取り付けると、確かに爬虫類らしい見た目になる

 甲殻を取り付ける際に、兜のような側頭部のヒレの裏側にシールを貼る。これは肉抜き穴を埋めるためのものだ。貼っておくとプラモデルではなく、生き物の見た目に近づく。頭が完成した時点で「グラードン」を象徴する部分ができているので、既に満足感が高い。

 口は開閉が可能だ。「だいもんじ」や「ソーラービーム」のような口から放つわざを発動しているポーズを取るときに開くとかっこよくポーズを決められる。ただシールを舌の部分に追従させるのが少々難しいので、つまようじのような尖った棒で押し込むように貼るとよいだろう。

 胴体は大きな首~腰までのパーツと尻尾に当たるパーツを接続し、ライトブラウンのパーツで固定するように組み立てる。この胴体が100mm四方程度の成人男性の手のひらにすっぽりと納まるサイズで、子供の頃にヒーローもののソフビを持たせてもらった時のような、懐かしい気持ちになった。子供の気持ちに帰った大人が、子供の頃から大好きなポケモンを組み立てる幸福感がここにある。

大きく2分割された胴体パーツ
頭と比べると巨大な胴体
組み立てていて、ライトブラウンのパーツをくさびのようにして尻尾の黒いパーツと組み合わせることを発見
尻尾も組み立てると、だんだん怪獣らしさが浮かび上がる
お腹~尻尾にかけての前面部分のパーツが大きく1つのパーツになっている。これに白いトゲパーツを差し込む
甲殻を取り付ければ、黒いプラスチックが憧れの「グラードン」に進化する
前面部分を組み立てるとこうなる。意外と大胸筋がしっかりしている

 じっくりパーツを眺めながら組み立てていると、キット全体を通してパーツを切り取った際にできるバリを可能な限り隠そうとしているのが分かる。BANDAI SPIRITSのキットも時々組み立てることがあり、そのたびに合わせ目やバリが目立たない設計を重視していることに驚くが、この「グラードン」は生き物を組み立てる性質上、特にその気遣いが強く感じられる。

 甲殻は端にゲートを置くことで、トゲの部分は根元にゲートを置くことでパーツ同士の接合部にゲートを隠している。ゲートの処理に時間を掛けるより、完成した姿に喜ぶ瞬間が早く訪れてほしい、というメッセージを感じて楽しくなる。

 さて、手足の組み立ては説明書では後半に当たる。「グラードン」は手足が短くどっしりとしたボディーで、いかにも往年の怪獣映画を思わせる外見だ。そんな足を組み立てて胴体に取り付ければ「グラードン」が大地を踏みしめ、手を取り付けると強大な伝説ポケモンが完成する。

 手足は赤いパーツがほとんどで、そこに黒い模様パーツや爪、手のひらなどを取り付け、肉抜き穴を埋めるシールを貼れば完成する。足裏には肉抜き穴を埋めて足裏の肌を再現するシールが一体型で貼り付けるため、細かい部分まで再現される。

足裏までしっかりと再現している
二の腕部分。接続軸にカバーを一体化させることで、可動部の中身を隠している
「グラードン」の特徴である黒い模様はパーツで色分け

今すぐ外に持ち出して遊びたくなる「グラードン」が完成

 そして、ついに「グラードン」が完成した。手足や首の接続部を隠したり、肉抜き穴をシールで埋めることで工業製品っぽさを薄め、可動式のポケモンの立体物という印象を強めている点は大きな魅力だ。晴れた日に砂場に持って行って、大地を作り上げる「グラードン」の勇姿を撮影したくなる。

背筋を伸ばして手を大きく広げれば、まさに「だいもんじ」のポーズだ
最大までかがませ、腕を内側にたたんだ状態
背筋を伸ばし、腕を限界まで上げる。頭上にエネルギーをためて放つわざのようだ
背中は角張った甲殻類のようで、エビやカニのようだ
太く短い足をアップで
首を上下に動かせる。接合部はほぼ見えず、黒い地肌が前後してカバーする
腕は2軸可動に加えてボールジョイントがあり、手の表情付けが可能
地面をドスンドスンと踏みならすようなイメージ
「ソーラービーム」や「ふんえん」を使いそうなポーズ

 先述の通り、子供の頃から憧れたポケモンである「グラードン」が立体化されて、自分で組み立てられ、しかも大人になった自分の手にすっぽりと納まるサイズであることは非常にうれしい。こういった気持ちになれるのは「自分で組み立てて、好きなポケモンができた」ということが重要で、ゲームやアニメで何度も見た姿がだんだん出来上がっていく時間が楽しかった。皆さんもぜひ、この「グラードン」を組み立ててみてはいかがだろう。