レビュー
「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」レビュー
2024年11月2日 00:00
GTMの注目ポイント「ツインスイング関節」を組みたてる!
脚、特に膝部分は「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」のクライマックスポイントと言える。GTMという人型兵器の最重要ポイントである「ツインスイング関節」を組みたてることができるのだ。
この関節は従来のロボットデザインや作業機械などの関節と異なり、腿とずねがZの字のように接続され、膝部分には半円のレール状になっている。このレール部分がスライドすることでスムーズな折り曲がりをするだけでなく、ねじる動きも可能とする。
これは"動く"だけでなく"止まる"ことも考えている。音速を超える速度で手足を動かしたとき、動かすだけでなく思ったところでどう止めるか、加速によって生じた膨大なエネルギーを膝や肘でどう吸収するかを考えたデザインだという。そのデザインをプラモデルで再現しようというのが「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」における大きな挑戦なのだ。
キットではABSという強度の強い素材で挟み込むことで、設定を再現した可動と、ポージングのための渋みを実現している。この膝関節を動かすことで、GTMの大きな特徴である「ツインスイング関節」の構造と動きを実感できるのだ。この面白さこそ"模型"の醍醐味だろう。スライドさせることで膝が曲がり、捻ることもできるのは面白かった。
脚の装甲板を付け、つま先を接続し、本体に接続することで脚が完成する。ここから腰の装甲板を接続する。こちらも先端がくるりと丸まっており、ダッカスのデザインを強調する。半透明の装甲の感じが楽しい。これらがつくことでダッカスが立つことができる。想像したより背が高く、改めてダッカスの体のバランスが実感できる。とてもユニークなデザインであることがしっかり実感できた。
次は腕の組みたて。肘部分にもツインスイング関節はあるのだが……。「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」の場合、膝は2段のスイングブロックがレール状に可動するスイングレール構造でツインスイング関節を再現していたが、肘部分は実際にはボールジョイントで接続し、上腕部分はパーツを挟み込むものとなっており、膝のようにシンプルなスイングレール構造ではない、複雑な多重関節による構造となっている。これはサイズや動かすプレイバリューを考えての設計だろう。前腕部のパーツ構成もあいまって、巧みなパーツ構成とアイデアにより既存の構造でもツインスイング関節風に見えるところが面白い。
最後はデカールである。武器であるガット・ブロウの柄頭、頭部の額部分、そして最も目立つ前腕の装甲部分の三つ巴の紋章を貼る。そしてこれら全部を組みたてて、「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」の完成だ。次章では完成したダッカスのディテールを紹介していこう。
完成したダッカスを眺めて、動かして楽しむ
まずは完成したダッカスのディテールを見てみよう。クリア素材の装甲はまるでガラスのような硬質な質感で、目を近づけると緑の色彩と、装甲の裏のモールドやフレームが見える。手と脚はZ型になる関節と、末端の大きさで人とは異なるシルエットで、禍々しい顔の表情も相まって異形の怪物のようにも見える。
装甲形状やフレームのモールドも相まって凄まじい情報量だ。そして筆者のような「F.S.S.」ファンにとっては「GTMって、ダッカスってこんなディテールなのか!」というたまらなく楽しい感慨が生まれる。
これまで原作のシーンや、設定資料のデザインでしか見ることができなかったダッカスを好きな角度で、たっぷりと見ることができるのだ。ファンでなくても本商品が生む独特の情報量、デザインの面白さは興味深いものがあると思う。1つのプラモデル商品としても組みたてがいのある魅力的なデザインだ。
動かしてみよう。「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」は動かすことの面白さも注力している。やはりツインスイング関節での膝を動かすのはこれまでのロボットプラモデルやフィギュアと違う感触がある。今回は使用しなかったが、背中にジョイントのついた装甲も用意されておりこの装甲を使えばフィギュア用スタンドを取り付けることができる。自立を考えるとポーズに制限が生まれてしまうが、スタンドを支えにするとさらに自由度が広がる。
膝を曲げたり、腕を動かしたり、アクションフィギュアのように自由に各部を動かせるが、「GTMってどういう動きをするんだろう?」と考えるとポーズ付けも考えてしまう。何より腰と腹部の動きが面白い。まだまだポーズのポテンシャルもありそうだ。
「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」はクリアパーツとABSパーツ、そして多数のギミックで、やはりちょっとプラモデルの組みたてに慣れた人向けの設計だと感じた。組みたてにはよく切れるニッパーが必須であり、接着剤はボークス公式で推奨アイテムを公開している。接着をしっかりしないとパーツを動かしたとき外れてしまう場合もあるので慎重に組みたてていかねばならない。
一方で今回のようにほとんど塗装をしなくても劇中の雰囲気に近い仕上がりになるし、何よりもダッカスの魅力的で複雑なデザインをたっぷり堪能できる。ツインスイング関節を手で動かして設定の面白さを実感できるし、「この形状は放熱を考えてのものなんだな」など、語られていない機能を想像するのも楽しい。
なにより、ダッカスのような複雑なデザインのロボットを自分で組み立てられた、という実感が嬉しい。ボークスでは本商品を皮切りにGTMのインジェクションプラキット化を進めていくという。GTMの繊細で複雑なデザインをプレイバリューも考えて立体化するのはパーツ強度や素材選定も含め非常に大変そうだが、だからこそ楽しみである。
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