レビュー
「帝国海軍 零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」レビュー
今だからできる精密再現をふんだんに盛り込んだ最新の零戦プラモデル
2024年12月7日 10:28
- 【1/48 帝国海軍 零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)】
- 開発・発売元:ファインモールド
- 12月9日発売予定
- 価格:4,950円
- スケール:1/48
- 全長:約19cm
ファインモールドが12月6日に出荷、店頭発売は12月9日頃となるスケールプラモデル「1/48 帝国海軍 零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」はファインモールドのこだわりをとことんまで形した商品だ。
細部やパーツの精密度もさることながら、航空機プラモデルではオーソドックスとなる胴体部を左右で構成・接着する部品分割が廃されており、分割は実機同様に胴体前部・後部で分割とする造りとなっている。通常のプラモデルとは一線を画す力のいれようだ。
零戦は日本海軍の誇る傑作戦闘機だ。その華々しい活躍と知名度は凄まじく、昨今では映画にもなった小説「永遠の0」や、設計者である堀越二郎を元に描いたアニメ映画「風立ちぬ」など、度々注目を浴びる機会があった。そんな零戦を今回ファインモールドが令和ならではの新しい零戦のプラモデルになるべく開発したのがこのプラモデルだ。
スライド金型を用いた一体成形の後部胴体パーツや、窓枠とガラス部が別パーツで再現された風防など、稀有な部品分割と組み立て方法が盛り込まれた、組み立てるのが楽しいプラモデルとなっている。今回、発売に先がけてサンプルを作ることができたので、スミ入れでディテールを強調し「1/48 帝国海軍 零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」を組み立てていきたい。
世界最強と呼ばれた零戦の魅力
今回のプラモデルを紹介する前に、まず零戦について触れておきたい。零戦は日中戦争から太平洋戦争にかけて活躍した大日本帝国海軍の艦上戦闘機だ。名前の零は兵器としての年式を表しており、皇紀2600年の下二桁の「00」から「零式」とされた。読みは零式艦上戦闘機(れいしきかんじょうせんとうき)で、略称は零戦(れいせん)。米軍が零戦のことを「Zero Fighter(ゼロ・ファイター)」と呼んだことから、「零(ゼロ)戦」の名称でも知られている。ちなみに米軍は本機のコードネームをZeke(ジーク)とつけていたりと、なにかと名前が多い機体だったりする。
そんな零戦だが、実は名前以外にバリエーションモデルも数多く存在している。本キットの名前にも含まれている「五二型」の文字がまさにそれで、零戦として初の戦闘を行った一一型(11型)、空母搭載を前提とした量産モデルの二一型(21型)、翼の折りたたみ機構をなくして新型エンジンに換装した三二型(32型)、翼の折りたたみ機構を復活させた二二型(22型)、生産数最多の零戦を代表するモデルの五二型(52型)などがそれぞれ存在する。他にも零戦にフロートを装着した二式水上戦闘機や、終戦間際に少数生産された六二型(62型)、「甲・乙・丙」で分けられた武装違い、三菱製の他にライセンス生産を行った中島製のものなども存在しており、シンプルに零戦の一言で片付けられない情報の多さを持っている。
今回のプラモデルのモチーフは五二型(三菱製・中期型)。数多く存在する零戦バリエーションモデルの中でも最多の生産数を誇る、零戦の主力モデルだ。主な特徴は、翼端の折畳み構造を撤廃し、短縮したうえで先端を丸みのある形状にしていること。さらに、エンジンの排気管を機首部分から直接排気する形にすることで、その反作用で推力を得ることを目指した推力式単排気管へと変更されている。今回はそのなかでも各排気管が位置する胴体に耐熱板が装着される以前の中期型モデルの姿が再現されている。
デカールには第381航空隊81-161と163のマーキングが付属している。第381航空隊81-161の機体マーキングが施された零戦五二型の機体は遊就館で展示されているので、実機に興味がある方は是非とも足を運んでみてほしい。
繊細に再現しつつ、大胆に分割された機体パーツ
冒頭でもお伝えしたが、本キットの特徴は大胆に分割された機体パーツにある。細かなパーツ類で細部まで再現されたエンジンやコックピット部分がある一方で、胴体後部はスライド金型を用いた一体成型となってたりと、航空隊プラモデルとしてはかなり異色のパーツ分割となっている。しかし、そのおかげでより一層に実機を感じながら楽しんで組み立てることができる。
機体全身に彫り込まれた精密なリベット彫刻、窓枠とクリアパーツを別にした風防部分、精密感を重層的に盛り込んだエンジン部などは見栄えはもちろん、塗装時のマスキングを減らす工夫なども盛り込まれている。
そのおかげで、細かいものやデリケートなパーツはあるが、実際に組んでみると思いの外組みやすく感じた。スケールモデルというこもとあり、組立にはニッパー、流し込み用と通常型のプラモデル接着剤、ピンセットなどが必要になるが、プラモデルを組み立てた経験がある人ならば、楽しみながら組み立てられるはずだ。
エンジンやコックピット、開発者のこだわりが垣間見える部品
このプラモデルは大きく分けてエンジン、コックピット、主翼、機体後部の4つのブロックで構成されている。これらを組み上げ、最後に合体させることで零戦を完成させることができる。いずれのブロックも比較的組み立てやすい構造になっており、一部の小さなパーツを除けば、穴や溝のガイドに添って組み合わせていくだけで、わりとすぐ形にすることができる。今回組んでいてとりわけ驚いたのがエンジンとコックピットだ。エンジンは少ないパーツ数にもかかわらず、細かな排気管まで精密に再現されており、あっという間に組んだとは思わないクオリティのものが完成する。
反面、コックピットはエンジンと違い、細かいパーツが数多い。コックピットには計器やスイッチ、レバーなどのパーツが数多く存在している。現実でもさほど大きくないこれらの部品が、1/48に縮小されると、米粒のようなサイズになってします。組み立てる際はピンセットを活用しながら、慎重に接着していく必要があり、筆者もピンセットで気を付けて作業してたのだが、何度か小さなパーツを弾いてしまい、冷や汗をかいた。
だが、その苦労にみあうだけのクオリティと、こだわりがこのコックピットには詰まっている。計器やスイッチ類は小さいにもかかわらず、しっかりと彫刻で再現されている。さらに、照準器はクリアパーツで再現されている。コックピットのパーツはすべて組み上げると操縦席区画になるようになっており、1/48とは思えないクオリティの操縦席が完成する。
エンジンやコックピットをメインにあげたが、もちろん他のパーツもこだわりに満ちている。主翼や胴体部分などは細かなリベット彫刻が機体全体に彫り込まれていたりと、外装ひとつとっても精密に再現されている。
素組みや内部パーツディスプレイでも魅力が楽しめる
各ブロックが完成したら、あとは組み合わせるだけた。主翼にコックピットを乗せ、機体後部を接続、最後にエンジンを差し込めば零戦のできあがりだ。
プロポーションはもちろん、細部の彫刻もしっかりしているので墨入れするだけで素組でも十分にかっこいい零戦を楽しむことができる。
そのままでも十分かっこいい零戦だが、本キットの場合は内部パーツも高精度で再現されているので、あえてエンジンカバーなどの外装を外した状態でのディスプレイもオススメだ。兵器の展開図をみるような、いつもとは違う零戦の魅力を楽しめる。
なお、今回は使用しなかったが、本キット向けに機銃とピトー管を真鍮製にディテールアップするパーツ「1/48 航空機用アクセサリー 零戦用20mm機銃&ピトー管セット」も同時発売となる。価格は1,760円。折れやすいパーツが金属製になることで見た目だけでなく耐久性も上がるため、こちらも導入したいところだ。
零戦の魅力を改めて知ることができる令和の零戦プラモデル
多くの零戦プラモデルが出ているなか、今回このキットを組み立てることができたおかげで、まったく新しい零戦プラモデルの魅力を知ることができた。零戦のかっこよさから、その内部の凄さなど、このプラモデルを触れることで今まで以上にその構造や魅力への理解が深まる。
素組みに軽い墨入れでも十分に魅力的な本キットだが、最後に付属のデカールを使用した「1/48 帝国海軍 零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」を紹介する。初期の零戦が銀、灰色だったせいもあってか、思いのほか自然にみえるので、塗装に自信がない方にはこういう楽しみ方もありかもしれない。
※組立にはウォッシングによるスミ入れを行っています
スケールモデルは接着剤やピンセットなど専用の道具が必要となるため、プラモ初心者には難易度が高く感じてしまうかもしれない。だが、このプラモデルはパーツを合わせるための穴や凹凸のガイド、一体成型された大型パーツなど、初心者でも安心して組めるように様々な工夫がされている。チャレンジングな部分も確かにあるが、それを乗り越えたさきにある満足感や達成感もしっかりと味わえるプラモデルだ。この機会に令和に登場した新たな零戦プラモデルにぜひ挑戦してみてほしい。