レビュー
「1/48 アメリカ軽戦車 M5A1 スチュアート」レビュー
偵察能力に優れた機敏な戦車を、全長約10cmで表現
2025年1月24日 00:00
- 【1/48 アメリカ軽戦車 M5A1 スチュアート】
- メーカー:タミヤ
- 1月25日発売予定
- 価格:2,530円
- スケール:1/48
- 全長:94mm
タミヤが1月25日に発売する「1/48 アメリカ軽戦車 M5A1 スチュアート」は、第二次大戦中、偵察任務などで活躍した軽戦車だ。M3戦車の改良型であり、時速60km近いスピードを出せる走行能力を持っていた。
本商品は優れた軽戦車として歴史に名を残す車両を1/48スケール、全長約10cmのプラモデルとして再現、組み立てやすく、モチーフの魅力をたっぷり楽しめる商品となっている。今回、発売に先がけサンプルをいただき、スミ入れによりディテールを際立たせた形で組み立て、さらにスプレーを使用した塗装も施してみた。商品の魅力を紹介していきたい。
V8エンジンを2基搭載、新型砲塔を装備した「M5A1 スチュアート」
まずはモチーフとなった「M5A1 スチュアート」を紹介したい。M5は第二次大戦におけるアメリカ陸軍初の本格的な量産型軽戦車「M3」の後継にあたる。M3は1941年3月に生産を開始、本来は航空機用だった空冷星形エンジンを搭載、イギリス軍やソ連軍にも貸し出された。
しかし第二次大戦の激化に伴いエンジンの確保が困難になったため、新たなエンジンを搭載する後継機が求められた。選定されたのは自動車用のキャデラックV型8気筒液冷ガソリンエンジンを2基並列に搭載する方式。さらに自動変速機を搭載したことで、ドライバーの負担が軽減された。この設計で1942年2月に制式化されたのが「M5」軽戦車となる。
このM5の車体に新型砲塔を搭載し1942年9月に制式化されたのが今回のモチーフとなる「M5A1 スチュアート」である。この砲塔は「M3A3」用に開発が進められていたもので、後部を拡張し無線機を搭載、両側面に履帯用グローサーを装着させるためのレールが取り付けられている。主砲はM3と同じ37mm砲だが、砲弾搭載数は103発から147発へと増加。右側面に7.62mm機銃を装備している。
M5A1は北アフリカ戦線末期に実戦投入され、イタリア戦線、北西ヨーロッパ戦線でその機動力を活かし偵察任務などで活躍した。
4枚のランナーで組み立てられるシンプルなパーツ構成
「1/48 アメリカ軽戦車 M5A1 スチュアート」のランナーは4枚。足回りの部品が中心の「Aパーツ」が2枚と、車体部の「Bパーツ」、砲塔部の「Dパーツ」で構成されている。
1/48スケールの本商品は細かい部品もあるが、シンプルなパーツ構成となっており、組み立てやすく、機銃やライトなどモチーフの特徴もしっかり表現している。モールドも精密でスミ入れにより浮き立たせることで情報量がグッとアップする。
おもしろいのは「金属パーツ」が同梱されているところ。これはウエイト(重り)で、車体に組み込むことで完成品の重量を増加させる。小さいながらしっかり重くなり、飾るときなどに安定する。ディテール表現も相まって高い満足度が得られるプラモデルとなっている。では早速組み立てていこう。
組み立てやすくカッコイイ、入門用戦車プラモデルとしてバッチリ
「1/48 アメリカ軽戦車 M5A1 スチュアート」の組立は、“ウエイトの組み込み”からスタートする。車体中央にウエイトを接着する。金属とプラスチックを接着するため「多用途接着剤」を使用する。このウエイトを囲うように車体を組み上げていく。
戦車の車体下部と言えばたくさんの車輪だ。戦車のプラモデルではいくつもの車輪を組み立て、車体に取り付けていく。重い車体で道なき道を進む戦車は、履帯でその重量を分散させ車体を前進させる。この履帯をスムーズに動かすため、車体には多くの車輪が取り付けられている。中でもエンジンからの動力で履帯を回すギザギザの「ドライブスプロケット(起動輪)」は特徴的だ。
車体後方には大型の「アイドラーホイール(誘導輪)」が配置されている。下側にはダンパーによって動く4つの「ロードホイール(転輪)」とサスペンションを取り付けていく。このサスペンションによって転輪が地面の凹凸に追従し、履帯をしっかりと地面に押しつけ、効率的に進むのだ。そして上部には履帯をスムーズに回すための「リターン・ローラー(支持輪)」がつく。
プラモデルを組み立て、改めて車輪の役割を調べるとその見事な設計、様々な人達の知恵が積み重なり、進化していく機構の見事さを実感できる。現実の機械や乗り物を再現した“模型”ならではの楽しさだ。
そして戦車プラモデルの1つの山場といえるのが「履帯」だ。「M5A1 スチュアート」ではたくさんのパーツで履帯を表現している。場所によっては1パーツ1パーツバラバラのパーツを貼り付けなくてはいけない箇所もある。しかし大きなパーツを説明書通りの場所にきちんと取り付ければ、細かいパーツにより構成され、独特のカーブを描く部分もきっちり組み上げることができる。
「大きなパーツの取り付け位置を気をつけることで、しっかり組み上がる」というのは、これまでいくつかタミヤの戦車プラモデルを作って得た知見だ。履帯の細かいパーツを取り付けて行くには、粘度の高い通常の接着剤(タミヤセメント)がやりやすく、大きなパーツを車輪の定位置で固定するのは流し込みタイプが便利だと感じた。履帯を取り付ければ車体下部の組み立ては完了、様々な装備を取り付ける上部に移ろう。
車体上部は操縦手や副操縦手のハッチ、エンジンの放熱を行うグリルなど細かいモールドが入っている。ここにライトやホーンを取り付けていく。ライトの前にバー型のライトガードがついているのが戦闘車両っぽくて楽しいところだ。戦車の上に乗った場合などでもバーがライトを保護してくれるというのが想像できる。
さらに近接用の機銃や、戦車ならではの斧やハンマー、スコップなど様々なものを取り付けていく。ハンマーは履帯の修理などでも活躍する。こういった細々とした装備品をどう使うか調べるのも面白い。これらを取り付けていけば、車体部分の組立は完了だ。
37mm砲を装備する砲塔を組み立てる
砲塔の組立の最初は主砲である37mm砲だ。主砲の基部の装甲板には左側に砲手がのぞき込んで狙いを定めるための望遠鏡用ののぞき穴、右側に機銃の銃身が突き出している。砲身の基部にはポリキャップを取り付け、砲身を上下に可動させることが可能だ。
砲身を砲塔に取り付け、さらに装備を取り付けていく。M5A1に搭載された新型砲塔の大きな特徴は大型化された車長と砲手用のハッチと後部に取り付けられた無線機用のアンテナ。ハッチは開放した状態で組み立て、半身を乗り出した車長フィギュアを取り付ける。
砲塔側面には「履帯用グローサー」を装着する。グローサーとは履帯に“歯”を付けることで、地面に突き立て積雪地や泥濘地での走行をさせやすくする。砲塔を守るための簡易装甲板のような配置が実用性を感じさせられる。
砲塔を車体に取り付け、車長フィギュアをのせ、側面に機銃を装着すれば完成だ。M5戦車は2つのガソリンエンジンを搭載しているため、背が高い感じのプロポーションを持つ。機敏で、偵察に活躍するというイメージにぴったりの姿だ。色々な角度で見ていこう。
今回はここからさらに塗装を行った。次章で塗装、さらにスライドマークを貼っていこう。
オリーブドラブで全塗装。スライドマークを貼っていく
まずは下地としてブラックをスプレーで吹き付けていく。真っ黒に塗ってから、オリーブドラブを吹き付ける。
この後は履帯を「ダークアイアン(履帯色)」で筆塗りしていく。筆者はこの塗装方法を前回の「1/35 ドイツⅠ号戦車B型」から行っている。「履帯は塗装してから組み立てなければいけないのかな」と思っていたのだが、組み立て後に車体全部を基本色のスプレーで塗った上で、筆で履帯を塗っても、きちんと色分けができるのがわかってから、戦車プラモデルを作るのがグッと楽しくなった。模型初心者にオススメしたい塗装方法だ。
さらにアクセントとして機銃や、スコップなどの装備品に色を付けていく。そして車長フィギュアだ。「ダークイエロー」で服を塗り、「フラットフレッシュ」で肌色、「オリーブドラブ」でヘルメット、「レッドブラウン」でホルスターを塗る。
最後にスライドマークを貼れば完成だ。「1/48 アメリカ軽戦車 M5A1 スチュアート」は、全長約10cm。モチーフそのものが軽戦車であるのもあるが、手のひらサイズの小さなモデルだ。このサイズにぎゅっと情報が詰まっているその密度が楽しい。
簡単な塗装を施すだけで、その満足度は大きく増す。繰り返すが「1/48 アメリカ軽戦車 M5A1 スチュアート」は組立もしやすく、塗装もしやすい魅力的なキットである。ぜひ挑戦して欲しい。