レビュー

「HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)」レビュー

ヒロイン・フィアナフィギュアと専用台座で遊びの幅が大きく広がる!

【HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)】
開発・発売元:BANDAI SPIRITS
発売日:2025年4月23日
価格:25,300円
ジャンル:アクションフィギュア
サイズ:全高約165mm
材質:ABS、ダイキャスト、PVC

 BANDAI SPIRITSは4月23日にプレミアムバンダイ専売商品として、アクションフィギュア「HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)」を発売した。本商品のモチーフはアニメ「装甲騎兵ボトムズ」に登場する主役AT(アーマードトルーパー)スコープドッグだ。

 スコープドッグは主役メカでありながら一般兵が使う量産機、作中世界で最も普及した機体であり大国による星間戦争があったすぐ後の世界を描く「ボトムズ」において、スクラップ置き場の廃品からすら組み立てられる機体だ。様々な派生機もある。人気のある機体であり、立体物も様々な商品が発売されている。本商品も「HI-METAL R」で3商品目のスコープドッグである。

 今回のモチーフとなる宇宙戦仕様のスコープドッグは、物語中盤に登場する機体で、これまでのスコープドッグとは機体色が異なり、宇宙用装備「ラウンドムーバー」と弾体を発射する「ソリッドシューター」を装備している。これまでの陸上での戦闘と異なる本格的な"宇宙戦闘"が描かれる。上下がひっくり返った姿勢で射撃したり、垂直に立った宇宙船の外壁に立っての戦い、スラスターをふかしての姿勢制御など、無重力の宇宙空間ならではのシーンが展開する。

 「HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)」は宇宙用の装備に加え、ヒロインである「フィアナ」のパイロットフィギュアを同梱、さらに特製スタンドがついており、宇宙での戦いをはじめ様々な劇中シーンを再現できる。今回は商品の紹介、特にスタンドを活用し撮影していきたい。

宇宙を漂流するキリコとフィアナに追いすがる戦いの影

 まずは作品として宇宙戦仕様のスコープドッグが登場するエピソード部分を紹介していこう。本商品のモチーフとなる宇宙戦仕様のスコープドッグは「装甲騎兵ボトムズ」の29話「二人」から登場する。主人公キリコ・キュービィーは銀河を二分する「百年戦争」の末期、味方を襲撃するという謎の作戦に参加、それが原因で軍から追われる身になる。キリコは自分が謎の作戦の真実を追う中で、軍が秘密裏に開発していた「PS(パーフェクトソルジャー)」を奪取した秘密結社の存在を知ることとなる。

 PSの第一号である女性プロト・ワンは兵器としてプログラムされる前にキリコを見たため、彼女の潜在意識にキリコがすり込まれてしまう。秘密結社の謎を追うキリコと出会う中で、キリコはプロト・ワンに「フィアナ」と名前をつけ、いつしか2人はお互いを愛することとなる。キリコとフィアナは戦いのさなか、小型宇宙船で共に脱出することとなる。

【装甲騎兵ボトムズ Blu-ray Perfect Soldier Box】
「装甲騎兵ボトムズ」はBlu-rayや配信サイトで見ることができる。OVAや番外編なども製作されている

 29話「二人」では、宇宙に逃れた2人は気を失い、気がつくと謎の宇宙戦艦「戦艦X」の中にいた。自分たちをここに運んだのは誰なのか? 手がかりを求めて2人は艦内を探索するが、艦内は無人で、自動航行により進路の変更もできない。そんな状況にありながら、キリコとフィアナは今が出会ってから初めて2人の落ち着いた時間であることに気がつく。しかし、2人を突然の艦内放送が切り裂く。それは通称「レッドショルダー」の映像、ギルガメス宇宙軍第10師団メルキア方面軍第24戦略機甲歩兵団特殊任務班X-1の蛮行を記録した映像だった。

 レッドショルダーは、たとえ味方のほとんどが死ぬような過酷な戦場でも生き残る強さと、無慈悲な戦い方で味方からも恐れられた。「レッドショルダー」というあだ名は、部隊マークとしてスコープドッグの右肩を血のように赤い色に塗っていたことに由来する。2人をこの船に運び込んだ何者かは、レッドショルダーの蛮行を暴き出し、元レッドショルダーであるキリコの古傷をえぐるのだ。何のために?

 自分の暗い過去を暴かれフィアナの顔も見れなくなったキリコの前に、領海侵犯となった戦艦Xを調査するため、バララント軍がAT・ファッティーの部隊を送ってくる。キリコはまるでフィアナから逃げるように宇宙戦用スコープドッグに乗り込む。「俺の、安息の場所は、戦いの中にしかないんだ!」、キリコは悲痛な独白と共に、トリガーを引く……。

【宇宙での戦い】
カメラに対し水平方向に立ち、ソリッドシューターを発射。29話「二人」からは宇宙空間というこれまでの陸戦と異なる戦いが描かれる

 「装甲騎兵ボトムズ」では物語は何回か大きく舞台を変える。戦後の治安が不安定な都市「ウド」。旧体制派がゲリラとなってジャングル戦が繰り広げられた「クメン王国」。そしてそ29話からの新しい舞台が、謎めいた「戦艦X」が進む宇宙だ。29話から、これまで陸戦兵器として描かれていたATの本格的な宇宙戦闘が描かれる。

 無重力空間で、スコープドッグは宇宙用装備「ラウンドムーバー」で移動する。スラスターをふかし宇宙空間を浮遊、弾体を発射する「ソリッドシューター」で戦う。宇宙空間での戦いを演出するため、ATは空中で回転したり、カメラに対し90度や180度回転した姿勢を見せたりと、カメラアングルや、ATの動きでこれまでと大きく異なった戦闘場面を演出する。傷を負ったキリコの血が、コクピットの中で血の玉となってた漂う、といったぞっとするシーンもある。

【ラウンドムーバー】
スコープドッグの宇宙での戦闘を可能にする装備ラウンドムーバー

 演出だけでなく、傷を負い身動きができなくなったキリコを守るため、フィアナがたった1人で宇宙船内を逃げ回りながら敵と戦うシーンなど、様々な印象的なシーンがある。「HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)」は様々な名シーンを再現できるのだ。

【フィアナフィギュア同梱】
「HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)」ではヒロイン・フィアナのフィギュアが同梱されており、遊びの幅が広がる

宇宙での戦い、より幅広いシチュエーション表現が可能に

 「HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)」の商品を見ていこう。スコープドッグは4m弱のロボットという特性を活かし、コクピットにフィギュアを乗せられたり、コクピットハッチや頭部バイザーを跳ね上げるとパイロットが確認できる。また前腕がスライドする打撃武器「アームパンチ」や駐機状態の「降着ポーズ」など様々なギミックが盛り込まれている。デザインの面白さや、「HI-METAL R スコープドッグ」のギミックは以前紹介しているので、合わせて読んでほしい。

 本商品ならではの要素としては、まず機体色の違いがある。戦艦Xに多数格納されている宇宙戦仕様のスコープドッグは通常のスコープドッグとは異なり深緑一色となっている。機体各所に印刷されたマーキングも従来のものとは違う。

【異なる機体色】
右は「HI-METAL R スコープドッグ レッドショルダーカスタム」。左の「HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)」とは機体色が異なる

 最大の特徴は「ラウンドムーバー」だ。4つのアームの先端にスラスターが配置されているこの装備は、陸戦兵器であるスコープドッグを宇宙戦闘を可能にさせる追加装備としてデザインで説得力がある。背中の大きなタンクも推進剤が入っていることが想像できる。

 本商品のラウンドムーバーの面白さは中央部分に着脱ボタンがあり、このボタンで動くロック機能でラウンドムーバーがしっかり背中に固定される。また接続基部が上下に動くところも感心させられたポイントだ。基部が動くことで、降着ポーズや射撃姿勢時に装備の位置を調整できる。さらに上のアームは角度が変えられ、大型武器であるソリッドシューターを構えるとき干渉しないように移動させることができる。

【ラウンドムーバー】
宇宙装備のラウンドムーバー。宇宙装備としてわかりやすいデザインだ
基部を動かすことで、動きの自由度が広がる
上のアームは角度が変えることができ、ソリッドシューターの干渉を避けることができる

 武器としてはソリッドシューターとヘビィマシンガンが付属。ソリッドシューターは前後のパーツが伸縮する。これはアニメで場面ごとに長さが異なって描写される要素を再現したのと、より自然な射撃姿勢を演出できる。ヘビィマシンガンは宇宙戦仕様のスコープドッグが多用したショートバレルタイプに組み替えが可能だ。

【武器】
ソリッドシューターは前後が伸縮できる
ヘビィマシンガンは組み替えることでショートバレルにできる

 そして「フィアナフィギュア」である。「HI-METAL R ボトムズ」シリーズでのフィアナの初立体化である。劇中でも印象的な女性的ボディラインがはっきりわかるデザインを再現、各部に関節が仕込まれており、搭乗姿勢をとらせることができる。

 頭部は差し替えでヘルメット、ヘルメットを脱いだ状態のものに加え、風に髪をなびかせたものが付属。この広がる髪の毛の演出がファンにはぐっとくる。フィアナが活躍する31話「不可侵宙域」ではフィアナは長い髪をなびかせ、船内を逃げ回りながらバララントと戦う。この髪がなびく頭部はそのシーンを再現できるのが楽しい。

【フィアナ】
ちょっときつい顔立ちでフィアナを再現
別売りのキリコフィギュアと並べることで、女性らしい体型をしっかり表現しているのがわかる
ヘルメットを装備した頭部
風になびく髪を表現した頭部
劇中で印象的な走る姿もできる
もちろんコクピットにしっかり座ることができる

 さらに「専用台座」と、「戦艦XをイメージしたPETシート」がある。専用台座を使えばスコープドッグが宇宙にいるように浮かせて飾ることができ、PETシートを台座に貼ることで、戦艦Xの外壁で戦っている雰囲気を再現できる。これらを使って、「HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)」ならではのシーンを撮影していきたい。

【専用台座】
アームは伸縮、角度調整が可能。基部にはこの世界の文字「アストラギウス文字」が描かれている
アストラギウス文字は、よく見ると英語のアルファベットをアレンジしたもので、何が書いてあるかわかる
戦艦Xの外壁をイメージしたPETシート
台座にシートをセット

劇中の名シーンを再現!

 ここからは「装甲騎兵ボトムズ」の場面を意識して撮影をしていこう。宇宙ならではの自由な構図として、スコープドッグは上下逆さまになったり、地面と水平に飛行したりする。専用台座は保持力も高く、スコープドッグを自由な角度で飾れる。

【自由度の高い台座】
宇宙空間で戦うスコープドッグをイメージ。色々な角度で飾ることができるのがわかる

 さらに写真そのものを加工して、上下反対にすると、劇中の宇宙空間戦闘を再現したシーンが演出できる。

【写真を加工】
写真をひっくり返すことで、さらに自由度が広がる

 ここからは特にシーン再現を意識してみた。特にやりたかったのが前述の横向きにソリッドシューターを撃つシーンと31話「不可侵宙域」のフィアナのアクションシーン。特に印象的なのはフィアナが駐機状態である「降着ポーズ」のスコープドッグをレバー操作だけで操縦し、敵から逃げるところ。「HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)」はこのトリッキーなシーンも再現できる。

【降着ポーズで移動】
31話「不可侵宙域」のフィアナのシーンを再現。降着ポーズでコクピットハッチを開けたまま移動するという、ATの新しい表現が面白い

 もう1つほんの一瞬だが、宇宙空間の戦闘でスコープドッグが拳を前に突き出し、まるでヒーローロボットのように飛翔するシーンがある。このポーズもやってみたかった。

【ヒロイックなポーズ】
拳を前に突き出し飛ぶポーズ。ほんの一瞬だが印象的だったので再現してみた

 フィアナは第32話「イプシロン」で、動けないキリコに変わり、スコープドッグにショートバレルにしたヘビィマシンガンを持たせて敵を迎撃する。ここで敵として登場するのはもう1人のPS・イプシロンと秘密結社の兵士達だ。32話のラストではなぜか重症から復帰したキリコがラウンドムーバーを外したスコープドッグでフィアナを救いに現れる。

【ヘビィマシンガン】
第32話「イプシロン」でフィアナはショートバレルのヘビィマシンガンで戦う
【ラウンドムーバーなし】
キリコはラウンドムーバーのない機体でフィアナをすくいに現れる。戦艦Xが不時着した惑星サンサでは、このスタイルの地上戦が展開する

 さらに別売りの「HI-METAL R スコープドッグ レッドショルダーカスタム」と絡めてみよう。キリコフィギュアを組み合わせ、第30話「幻影」のラストシーンをイメージしたディスプレイ。フィアナのそばにいられず、ATにすがるように立つキリコの背中が哀しい。

【第30話「幻影」】
ラストシーンのキリコの姿を再現

 最後は第13話「脱出」。ウドの街で運命の女フィアナと出会い、2人で逃げようとするが、行く手を阻まれ離ればなれになってしまう。フィアナと逃げるため、キリコがスコープドッグでフィアナを抱きかかえるシーンを再現してみた。シリーズをそろえていくことで遊びの幅が広がるのだ。

【第13話「脱出」】
物語序盤である「ウドの街」を舞台とした1シーン

 「HI-METAL R スコープドッグ(宇宙戦仕様)」は、高いプレイバリューを持った商品だ。スコープドッグの魅力に加え、フィアナフィギュアや台座と言ったシリーズの遊びの幅を広げる要素が盛り込まれている。宇宙戦仕様のスコープドッグの戦いの相手である「ファッティー」は商品化が決定しているが、ライバル機である「ストライクドッグ」もぜひ欲しい。今後もシリーズを注目していきたい。