特別企画

【年末特別企画】HOBBY Watchライター陣が選ぶ2020年オススメ「プラモデル」

 ここ10年ほどプラモデル関連記事の編集をしている関係で、HOBBY Watchでは、主にプラモデル関連の記事を書かせていただいております。

 とはいえプロモデラーではないので(ペンネームでもわかるとおり)、商品情報であったり、未経験の方がどこに躓いているのかな? という点を察知した記事を書いていければという観点から執筆したのが、「ヘタ仙人の「プラモデルを楽しもう!」、確実に完成させられる"素組"テクニック教えます」です。

僕はウデはともかくプラモデルが好きなので、ついつい目線がマニアックになってしまいがちなのですが、実際に買い物で売り場をウロウロしていると、未経験の方が何を買うか迷っている光景を目にすることがたびたびあって、これからもそういう人に少しでも安心感と、プラモデルの面白さが伝えられればよいなあと思っています。

 さて、今回選択した商品3つですが、かなり偏っています……というよりも、完全に独断です。スケールモデルが1つも入っていないですしね。ただし、逆に言えば購入した/する予定のものをセレクトして、自分としては迷いなく推せるものを選んでみました。プラモデルを知らない人にはマニアックに思われるかもしれませんが、こういうプラモデルにも触れて、硬派な世界に旅立ってみませんか?

2020年オススメ「プラモデル」その1:「COMBAT ARMORS MAX21 アビテート F44B テキーラガンナー」

発売日:2020年10月
価格:7,800円(税別)
全高:約170mm
スケール:1/72
メーカー:マックスファクトリー

 テキーラガンナーは、1981年~1983年に放送された「太陽の牙ダグラム」(現在バンダイチャンネルにて視聴可能)に登場するコンバットアーマー(CB)です。この作品は、地球の植民惑星デロイアの独立闘争に身を投じた若者たちの物語で、主人公クリン・カシムが政治家を父に持ちながら反体制ゲリラとして戦うなど、重厚なもの。

 CBはたいてい人型のロボットなのですが、4足歩行の「ガンナータイプ」も登場し、それがまた「リアル」なのです。中でもテキーラガンナーは、残忍なゲリラ狩り部隊「ガルシア隊」のCBであり、両脇に張り出したバルコニーなどミリタリー感の高いCBであります。この機体が、近年ダグラムシリーズを強力に推進するマックスファクトリーからリリース! ガルシア隊長のほか、飼い犬のドーベルマンも付属しているのも魅力です。

 人型が多いCBの中にあって、今回敢えて4足歩行タイプのガンナーシリーズをオススメに選んだのは、それだけこの、4足歩行のメカが「太陽の牙ダグラム」の世界観を象徴しているからです。ミリタリーテイストあふれる世界の中で、CBはひたすら物言わぬ油臭い機械として描かれます。

 中でもテキーラガンナーは物語序盤に登場したクラブガンナーの強化型であり、歩兵が戦車に乗るタンクデサント的な運用がなされていて(ちょっと違うけど)、たいへんシビれる機体でオススメなのです。ダグラム関連のキットは放送当時タカラから発売され人気を博しましたが、21世紀になってマックスファクトリーがダグラムシリーズの開発を開始し、「ダグラムやブロックヘッドはわかるけど、ガンナーシリーズもやるのかな? どこまでキット化されるのだろう」とドキドキしていました。

 物語を彩った機体とはいえ、ガンナーシリーズはやっぱり人型ではないので、こういうメカは商品化が難しいのかもしれないなと素人考えで思っていたからです。しかし! やはりそもそもダグラムシリーズを開発する心意気は伊達ではありませんでした。キット化されただけでも嬉しい! しかもガルシアはもちろん、あのムカつく犬まで付属! 歩兵を配置できるバルコニーとともに、十分ミリタリー感と“当時感”を堪能できるキットを推さぬ理由はありません。

【テキーラガンナー】

2020年オススメ「プラモデル」その2:「IMS 1/100 ザ・ナイト・オブ・ゴールド =デルタ・ベルン 3007=」

発売日:2020年12月12日
価格:9,570円(税込)
全高:約264mm
スケール:1/100
メーカー:ボークス

 永野護氏による漫画『ファイブスター物語』の、最初のエピソードに登場するのが、このナイト・オブ・ゴールドです。同作品は、壮大な年表をはじめ、複雑な設定と美しい画が魅力で、ロボットであるモータヘッド=HM(現在はゴティックメード=GTMとの呼称)は、その全てに存在感があり、魅力的なのです。

 ボークスの「F.S.S.|IMS」シリーズは、複雑で神秘的なMHを、こだわりの……というよりは名人芸で立体化。プラスチックのキットではありますが、どちらかというと「ガレージキットがプラスチックキット化された」という、原型の情熱が伝わってくるシリーズです。本商品は、その最新版で、発売後あっというまに売り切れ。現在第三次受注が行なわれている人気商品です。

 おすすめの理由は、「IMSの最新版だから」。もうそれだけです。もちろん今回は、話題になったF.S.Sの商品「GTMカイゼリン」のノウハウを受け継いだ可動機構などの見どころはあるものの、プラモデルが好きな方、F.S.Sが少しでも好きな方にはぜひ手にとっていただきたいと思います。とはいえ実は、筆者は二次受注に申し込んだため、未塗装の完成見本を、10月末にオープンした新店舗「ボークス秋葉原ホビー天国2」にて見ただけなのです。

 しかしながらそれだけでも、全体のフォルムは当然として、顔、後頭部の彫刻、肩の細かいディテール、付属の儀礼用大弓など、ゾクゾクする造形の塊であり、自分が上手く塗装できるかはひとまず置いておいて、そのパーツをこの目で見て、手にしたいと強く思ったのです。つまりパーツだけでも触れてみたい、そう思わせる魅力がIMSにはあるわけです。なぜそこまで言い切るのかといえば、実は現在、同シリーズの「IMS 1/100 シュペルター・K.O.G.」をコツコツと作っており、このキットもまた、パーツの美しさに惚れるというよりも、「酔う」。

 刃物のように尖ったヒサシ先端やツマ先、微妙に湾曲している装甲で構成されるボディライン、薄くて透けてしまうほどシャープな板状のパーツなど、仮組みをしているだけで造形の魅力をたっぷり味わえてしまえます。ですから、きっとナイト・オブ・ゴールドもそのはずで、箱を開けただけでも味わえる至福のひとときが、絶対に待っているはずなのです。

【IMS 1/100 ザ・ナイト・オブ・ゴールド =デルタ・ベルン 3007=】

2020年オススメ「プラモデル」その3:「MODEROID エグゾフレーム(アウトキャスト・ブリゲードエグゾフレーム)」

発売日:2020年5月
価格:2,300円(税込)
全高:約85mm
スケール:1/35
メーカー:グッドスマイルカンパニー

 YouTube配信アニメ「OBSOLETE」に登場するロボット「エグゾフレーム」の1/35スケールキットです。OBSOLETEは、異星人ペドラーによってもたらされた、特殊なスキルを必要とせずに万人が操作できる汎用人型機械エグゾフレームをめぐる物語。

 この機械は石灰岩1,000グラムとの交換で手に入るため、経済基盤の弱い国家/組織でも容易に入手可能で、しかもその高い運動性能から兵器と組み合わせることで現代のMBTを凌駕する戦力となるため、世界の軍事バランスを大きく崩しかねない存在になっています。キットは1/35スケールなので、現用兵器のキットと組み合わせた遊びも可能となっています。

 オススメの理由は、作品が硬派だからです。「おじさんこういうの待ってた」という一言です。ここに登場するロボット「エグゾフレーム」は、自分の背丈よりも巨大な口径のビームを放ったりとか、ピンチになったら光ったりとか、世界の危機を救ったりとか、一切しません。そうした地味な存在ではありますが、アクション性が低いかと言えばそうではなく、飛び跳ねたり全力疾走したりとパルクール的なアクションをこなし、水にもぐったりもして、見ていて楽しい。

 そして、髪の毛がピンクだったり青だったりする女の子は登場せず、もちろん「敵のアイツはコイツが好きで」みたいな恋愛要素も一切なし! キラキラ要素が排除され、まるでラーメン二郎のような質実剛健な作品のキット化となれば、とりあえず私としては推さねばなりますまい。その中身は、もちろんダークグリーンです。茶色です。原色なし。

 これは、ミリタリーのプラモデルや現実の建機に魅力を感じる方なら、バッチリハマるでしょう。プラモデルのシリーズも順調に充実してきましたが、どれを買っても満足いくはず。上記したように1/35スケールのキットと組み合わせたり、「俺エグゾ」を作るのも楽しいのでは? で、私は何話が好きかって? ……うーん、12話かな。

【MODEROID エグゾフレーム(アウトキャスト・ブリゲードエグゾフレーム)】

2020年オススメホビー記事!

 私がおすすめする自分の記事は冒頭でも触れましたが、「ヘタ仙人の「プラモデルを楽しもう!」、確実に完成させられる"素組"テクニック教えます」です。

 プラモデル未経験の方や初心者の方に向けて「難しそう」というイメージを払拭し、楽しく作っていただけるように作った記事です。何を買ったらいいのか? オススメのプラモデルは? 買った後はどうしたら楽に作れるのか? といった情報を、なるべく丁寧に紹介しました。この記事をオススメする理由は、プラモデル人口を増やしたいな、という自分の欲もありますが、プラモデルを作る前段階の読者に対して、そのお悩みを解決したかったからです。

 実はプラモデルは、優れたハウトゥ本が多数出版されている分野なのですが、プラモデルに縁がない人がそれらの本を目にすることはまれでしょう。ですから、こうして、まずはWebの記事で第0歩を踏み出していただきたい、そう思った記事なので、オススメにしてみました。