特別企画

VFRと藤和那須リゾート、年収300万/Z世代向けの新たなドローンプロジェクトを始動

VAIO子会社が那須ハイランドパークでスタートさせる「Hello DRONE Project」構想

【トイドローン「VFRee-T01」】

11月2日発売

価格:5,000円(那須ハイランドパーク特別価格)

 VAIOの子会社VFRと、那須ハイランドパークを運営する藤和那須リゾートは10月26日、都内で発表会を開催し、ドローンの認知向上と正しい理解促進に向け、「Hello DRONE Project」を開始することを明らかにした。

 その第1弾として、VFRが企画・販売を手がけるトイドローン「VFRee-T01」を発売し、那須ハイランドパークにおいてVFRee-T01を使ったアトラクション「ハチャメチャ ドローン探検隊」を2021年11月2日~2022年1月5日まで開催する。

 トイドローン「VFRee-T01」の発売日は11月2日予定で、価格は5,000円。現時点では一般販売は行なわず、那須ハイランドパークでのアトラクション体験者限定販売となる。

VAIOの子会社として誕生したドローン特化のベンチャー企業VFR

 VFRといってもその存在を知らないホビーファンも多いと思われるので、最初にVFRとはどのような会社か説明したい。VFRは、VAIO Flying Roboticの頭文字を取って付けられた名前であり、その名の通り、VAIOの子会社として、2020年3月に設立されたベンチャー企業だ。

 もともとVAIO自体、ソニーのPCのブランド名であり、2014年にソニーのPC事業が日本産業パートナーズに譲渡されることに伴い発足した会社である。VAIOは、パソコンの製造と販売だけでなく、ロボットなどのEMS(電子機器の受託生産)も行っており、パソコン事業やロボット事業で培った知見をドローンに生かせるということで、VFRを設立したという経緯がある。

 これまでVFRは、主に産業用ドローンの開発・販売を行ってきており、2021年10月5日にDRONE FUND、ACSL CVC、加賀電子、KDDI Open Innovation Fund 3号、理経の計5社からの資金調達を完了し、「有人地帯における補助者なし目視外飛行」(レベル4)を見据えた事業拡大を行うことを発表した。

 もともとVFRは、ドローンによる社会インフラの革新を推進・加速する機体開発、ソリューション提供を行うために設立された会社であり、今回発表された「Hello DRONE Project」もその文脈に沿ったものとなる。

【VFRが販売している産業用ドローン】
VFRが販売しているACSL製産業用ドローン「ACSL-PF2」。一部の機体はVFRが委託を受けて製造している。VFR SHOPでの価格は37万9,500円

ドローンの認知向上と理解促進のための「Hello DRONE Project」

 発表会では、VFR代表取締役社長の湯浅浩一郎氏が、「Hello DRONE Project」発足の趣旨を説明した。

 Hello DRONE Projectは、世の中におけるドローンの認知向上と正しい理解促進のためのプロジェクトであり、ドローンが人々の「ライフ」に寄り添っていくための取り組みを行うものだ。VFRの最終的な目標は、誰もがいつでもどこでも、必要な時にドローンを使えるという世界の実現である。

 しかし、コロナによって、従来の戦略を変える必要が出てきた。アフターコロナ時代は、「アフターコロナ時代にとるべき戦略は、『年収300万円代の所得層』や『Z世代の若者』にターゲットをシフトすることだ」と、湯浅氏は強調した。

 湯浅氏は、「年収300万円時代に成功するビジネス戦略 TARGET SHIFT」という著書を執筆しているが、今回のHello DRONE Projectも、そのターゲットシフトを意識したものである。Hello DRONE Projectでは、コンシューマーを対象として「エデュケーション」「エンターテイメント」「ショッピング」へのドローン活用を推進する。主催はVFRと藤和那須リゾートだが、ACSLやKDDI、ベルデザインなど、18社が賛同していると説明した。

【Hello DRONE Project発足の趣旨】
VFR 代表取締役社長 湯浅浩一郎氏
「Hello DRONE Project」は、世の中におけるドローンの認知向上と正しい理解促進のためのプロジェクトである
VFRの設立経緯と資金調達について
VFRは、誰もがどこでも必要な時にドローンを使える世界を目指している
アフターコロナ時代にとるべき戦略は、「年収300万円代の所得層」や「Z世代の若者」にターゲットをシフトすることだという
今回の「Hello DRONE Project」では、主に「エデュケーション」「エンターテイメント」「ショッピング」へのドローン活用を推進する。主催はVFRと藤和那須リゾートだが、ACSLやKDDI、ベルデザインなど、18社が賛同している

リゾート地の課題をドローンで解決

 続いて、藤和那須リゾート常務取締役 五十嵐弘樹氏が登壇し、Hello DRONE Projectへの関わりについて説明した。

 藤和那須リゾートは、「那須ハイランドパーク」などの遊園地事業、別荘事業、宿泊事業の3つを業務の柱としてしており、その経営理念は、自然とお客様、地域社会の全てがハッピーになるビジネスを展開するということだ。

 最近のリゾート地における課題として、敷地が広範囲で利便性が悪いということと、高齢化と人口の減少が挙げられる。ドローンの活用によってそれらの解決ができるのではないかということで、本プロジェクトに参画したという。まずは、那須ハイランドパークでのドローンアトラクションの設置からスタートするが、リゾート地の諸問題を解決するための業務用ドローンによる実験なども考えているとのことだ。

【Hello DRONE Projectへの関わり】
藤和那須リゾート 常務取締役 五十嵐弘樹氏
藤和那須リゾートの主な事業は遊園地事業、別荘事業、宿泊事業の3つである
藤和那須リゾートの経営理念は自然とお客様、地域社会の全てがハッピーになるビジネスを展開するということだ
リゾート地における課題として、敷地が広範囲で利便性が悪いということと、高齢化と人口の減少が挙げられるが、それらの解決を模索したいということで、本プロジェクトに参画した

第1弾としてトイドローンを発売、YouTubeチャンネルでの情報発信も行う

 再び、VFRの湯浅氏が壇上に上がり、Hello DRONE Projectの第1弾の内容を発表した。この第1弾は、Z世代の若者を攻略するために考えられたもので、具体的には、トイドローンの発売、ドローンの体験イベントなどであり、専用YouTubeチャンネルも開設した。

 トイドローン「VFRee-T01」は、VFRが企画して海外のEMSなどを使って生産されるもので、重さわずか21g、サイズは80×80×30mmしかない。また、ペアリングなどの操作が不要で買って、電池を入れればすぐに飛ばせるようになる。気圧センサーを搭載し、高度維持機能を備えているので、ホバリングも比較的容易だ。1つのバッテリーで約7分のフライトが可能だが、バッテリーが3つ付属しているので、順番に充電していくことで、いくらでも操縦を楽しめる。

 VFRとしては、トイドローンを活用してロボット教育に繋げていきたいという理念があるが、まずは触れる機会を増やしたいとのことで、2011年11月2日から2022年1月5日まで那須ハイランドパーク内に、トイドローンを体験できるアトラクション「ハチャメチャ ドローン探検隊」を設置する。このアトラクションは、3つのゾーンに分かれており、それぞれのゾーンでは「輪をくぐる」、「風船を割る」、「洞窟を通り抜ける」といったミッションが規定されている。ミッションを全てクリアすれば認定証をもらえるというアトラクションだ。

 アトラクションは1回1,000円で、心ゆくまでドローンを飛ばすことができる。ドローンが気に入れば、その場で、VFRee-T01を購入することも可能。なお、VFRee-T01のような小型トイドローンは、基本的に室内で飛ばすことが想定されており、ドローン規制などの影響は受けない。

 VFRee-T01は、こうしたイベントやドローンスクールなどでの販売が中心となり、現時点ではホビーショップやオンライン販売などの販路を利用して大々的に販売する予定はないそうだ。

 また、VFRはドローンについての認知を高めるために、YouTubeチャンネルを開設し、情報発信を行っていくことも表明した。

【Hello DRONE Project第1弾の施策内容】
「Z世代の若者」を攻略するためにトイドローンの発売やドローン体験イベント、YouTubeチャンネル開設などを行う
Hello DRONE Project第1弾として企画されたオリジナルトイドローン
手の平サイズのトイドローンであり、室内で簡単に飛ばせる。バッテリーが3個付属しており、合計で21分間の飛行が可能
左がVFR エデュケーショナルディレクター 船津宏樹氏、右がVFR 顧問/VFR契約パイロット 富岡幸一郎氏
富岡氏によるトイドローン「VFRee-T01」の飛行デモがおこなわれた
ToC事業としてトイドローンを活用してロボット教育に繋げていきたい
那須ハイランドパークで2021年11月2日~2022年1月5日まで実施されるドローンを用いたアトラクション「ハチャメチャ ドローン探検隊」
ハチャメチャ ドローン探検隊は、3つのゾーンに分かれており、それぞれミッションが用意されている
ハチャメチャ ドローン探検隊は、11月1日にメディア体験会が開催され、11月2日から正式に運営が開始される
また、YouTubeチャンネル「ドローン探検隊」が開設された
本プロジェクトへの賛同者。左から、SUNDRED 代表取締役 留目真伸氏、VFR 代表取締役社長 湯浅浩一郎氏、藤和那須リゾート 常務取締役 五十嵐弘樹氏、bravesoft 代表取締役CEO 菅澤英司氏

トイドローンの操縦体験

 プレゼンテーション終了後、トイドローン「VFRee-T01」の操縦デモや操縦体験が行われた。会場には、那須ハイランドパークに設置されるハチャメチャ ドローン探検隊のコースの小型版が用意されており、実際にトイドローンをコース内で飛ばすことができたので、筆者も短時間ではあるが、操縦させてもらった。

 筆者は5、6年前に、ドローンを試用して記事を執筆したことがあったが、最近はあまりドローンを操縦する機会はなかった。

 VFRee-T01のような超小型トイドローンは一辺が20cm程度のドローンに比べてホバリング(空中停止)の安定性が低く、コントローラーをニュートラルにしていても少しずつ流れていってしまうことが多いのだが、VFRee-T01のホバリングはトイドローンとしてはかなり安定しているといってよいだろう。

 高さ方向に関しては搭載する気圧センサーにより、一定の高度を維持できるため、初心者でも操縦しやすい。また、プロペラに全てガードが付いているため、家具などにぶつけても傷が付いたり、プロペラが折れてしまう心配もない。バッテリーが3つ(予備が2つ)付いているので、交換したバッテリーを、すぐ充電器に繋いで充電するようにすれば、事実上いくらでも連続して飛ばせることも高く評価できる(以前は5分飛ばしたら充電に1時間待って、また5分しか飛ばせないといったことも多かった)。付属の充電器は小型で、USBポートから電源をとるので、スマホ用モバイルバッテリーなどに充電器を接続してバッテリーを充電することもできる。

 ドローンの操縦方法(プロポのスティックへの動作の割り当て)は、モード1とモード2に大別される。海外ではモード2が主流だが、日本ではラジコンヘリなどと同じモード1が使われていることも多い。簡単にモード1とモード2の違いを説明すると、モード1では、右スティックの前後が上昇と下降、右スティックの左右が左右への移動、左スティックの前後が前進と後進、左スティックの左右が左回転と右回転になっているのに対し、モード2では、右スティックの前後が前進と後進、右スティックの左右が左右への移動、左スティックの前後が上昇と下降、左スティックの左右が左回転と右回転になっている。これまでに空モノのラジコンを操縦したことがないのなら、直感的に操縦できるモード2がおすすめだが、ラジコンでの操作に慣れているのなら、ほぼ同じ操作のモード1が向いている。通常のトイドローンでは、操縦方法(モード)が製品によって決まっていることが多いが、VFRee-T01は、モード1とモード2を自由に選べることが魅力の一つだ。国産の業務用ドローンではモード1が使われていることも多いので、操縦練習用としてもおすすめだ。また、機体を360度宙返りさせるフリップも、ワンボタンで行える。

【VFRee-T01 離陸~ホバリング】
飛行の様子。このサイズのトイドローンとしてはホバリングも安定している
【VFRee-T01 水平移動~高度変更】
水平移動や高度変更も安定している
【VFRee-T01 フリップ】
360度機体を宙返りさせるフリップもワンボタンで行なえる

 本製品と似たようなトイドローンはすでに多数発売されており、価格的にも本製品と同程度のものが中心だ。VFRee-T01がそうした製品に比べて、十分な差別化ができているかというと微妙だが、モード1とモード2の切り替えが可能なことやペアリングが不要で電源を入れただけですぐ接続されることも含めて(電源を入れる度にペアリング操作が必要な製品だと飛ばすまでが面倒だ)、トイドローンとしての完成度は高い。ただし、VFRee-T01はカメラを搭載していないため、画像や動画を撮影できないのは残念だ。今後はカメラ搭載モデルの企画も考えているそうだ。

 また、会場には、FINDiの業務用ドローン「Fi4」も展示されていた。Fi4は、配管内を飛び、配管の老朽化などを診断するためのドローンだが、こちらもハチャメチャ ドローン探検隊のアトラクションの中で、展示が行われる予定とのことだ。

 今回の発表はあくまでHello DRONE Projcetの第1弾ということであり、今後の施策にも期待したい。

【VFRee-T01実機とデモ】
「VFRee-T01」実機とパッケージ
パッケージにはコントローラーと本体、バッテリー(実際は3個付属)、バッテリー充電器が入っている。充電器ではバッテリーを2個同時に充電可能
VFree-T01の本体。サイズは80×80×30mmで、まさに手の平サイズ。重さも約21gしかない
コントローラーを手に持って操縦しているところ。子どもの手でも操作しやすい大きさだ
VFRee-T01のバッテリー。超小型リチウムポリマー電池が使われている
発表会場には、ハチャメチャ ドローン探検隊のコースの小型版が用意されていた
風船の周りにつけられた的にドローンをぶつけることで、的から針が飛び出し風船が割れる仕組みなっている
FINDiの業務用ドローン「Fi4」。配管の中を飛んで、中の診断を行う
Fi4のコントローラー。中央の画面にカメラからの映像が表示される