特別企画

レゴブロックの超絶技巧を楽しめるファンイベント「海老ブリ 2021」をレポート

ガンダムやエヴァンゲリオンなどのアニメロボや、オリジナルメカなどが大集結

【海老名ブリックカンファレンス】

10月23、24日開催

会場:神奈川県海老名市民ギャラリー 第1展示室

 日本各地のLEGOブロックのアマチュアビルダーがそれぞれのオリジナル作品を持ち寄り、LEGOファン、およびそれ以外の人に公開する展示会「海老名ブリックカンファレンス(通称::海老ブリ)」が、今年も10月23、24日の2日間に渡って開催された。時勢柄規模は昨年の半分以下だが、年に一度、自分自身が作り込んだモデルを展示できるイベントとあって、昨年に負けないクオリティの高い作品が多数展示された。

 今年の特徴としては、「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」と「シン・エヴァンゲリオン」の劇場公開の影響か、この2作品の再現モデルが賑わっていた。今回は、「TVチャンピオン レゴブロック王選手権」で準優勝した僕が、「海老ブリ 2021」のハイライトをご紹介していくぜ!

巨大なラーカイラムやHi-νガンダムに圧倒

 まずは、今回の目玉のひとつだった、ガンダム関連を見ていこう。会場のほぼ中央に鎮座するのは、全長1.7メートルの「ラーカイラム(PEN2nd作)」だ。もうその大きさに圧倒されることはもちろんだが、ただ大きいだけでなく極限までディテールが盛り込まれており、ものすごい情報量になっている。

 このような大型モデルはインターネットなどで完成品を目にすることもあるが、リアルイベントでは内部を見ることができるのもポイントだ。作者に説明を受けながら組み方を聞いていると、何だか自分でもできるような気がしてくるだろう。ほかにも、サイズが大きいということもあり、船体には「FW GUNDAM CONVERGE」のモビルスーツや、作品の時代とは異なるガンダムモデルも多数配置されていた。このような楽しみができるのも、リアルイベントのいいところだ。

【νガンダムとラーカイラム】
「ラーカイラム(PEN2nd作)」。会場ではカメラに収まり切らなかったため、別途撮影したラーカイラム画像。写真からもその大きさが伝わるはず!
内部を見ると、形状を出すための組み方と強度を上げるための組み方が混在しているのがわかる
「1/48 Hi-νガンダム(YOGO作)」。ポージングを維持するためには、形状の再現だけでなく強度も考えた組み方必要

 ラーカイラムの先には、約1/48サイズの「Hi-νガンダム(YOGO作)」が、一際存在感を放っている。白と紫とで構成された色合いは機体の美しさを加速させ、もはや芸術レベルと言ってもいいだろう。さらに、このHi-νガンダムがカッコ良く見えるのは、ポージングのチカラもある。今にもメガランチャーを撃ちそうな躍動感溢れるポージングは、後部のファンネルの翼のような美しい広がりも相まって、ロボット好きなら目を奪われること間違いなしだ。

 大きいは正義……そんな印象を与えたかもしれないが、次に紹介する「Gアーマー(くぼっち作)」は、1/144サイズながらひと目でGアーマーだとわかるだけでなく造形が見事だ。これは、小さなパーツで曲面や斜面、ディテールなどを表現しているからこそできる、まさに達人芸といえよう。

 実は、レゴブロックの世界で再現モデルを作る場合、大きく作るよりも小さく作るほうが難しい場合がある。それは、小さいモデルの場合は、どうしても割愛しなければいけないディテールもあり、少ない情報量で見る相手に判らせなければいけないからだ。

【Gアーマーなど】
「/144 Gアーマー(くぼっち作)」。Gアーマーはガンプラのように、ガンダム部分をはずせばGファイターになるのでは? と思わせる再現度。本当にできるか聞けばよかった
「パブリク(PEN2nd作)」。連邦軍の小型突撃艇「パブリク」がこっそりラーカイラムのそばにあった。かなりのデキ!
「Ex-Sガンダム(YOGO作)」。ポージングの効果もあり、このサイズで「Sガンダム」に見せるのはお見事としか言いようがない!

エヴァンゲリオンモデルも大集結「見なきゃダメだ……見なきゃダメだ」

 会場でガンダムに匹敵する盛り上がりを見せていたのが、エヴァンゲリオン関連のモデルだ。特に「AAAヴンダー(ハル作)」は2メートルくらいありそうな超巨大サイズにも関わらず、空中に浮かせて展示されており、まさに「シン・エヴァンゲリオン」で見たシーンを彷彿とさせてくれる。

 また、AAAヴンダー単体でなく、きっちりと「新2号機α」、「改8号機γ」が用意されているのも嬉しい。見ているだけで「アンテナ回るのかなぁ?」とか「エヴァ動かしてみたいなぁ」とか、持って帰ってブンドドしたい欲求がMAXになった作品だ。

 そのほかのエヴァンゲリオン作品として気になったのは「第3新東京市(KeetA作)」のジオラマだ。SF系のアニメ作品というと、どうしてもメカによりがちで、ちょっと食傷気味になる時もある。そんな時に大リーグボール1号なみの変化球で楽しませてくれた。よく見ると、使徒もいたりして、見れば見るほど味がでてくる。また、集光ビルは回転するギミックもあって、作者のこだわりに敬服した。このままセカンドインパクト後の赤い世界も作って欲しい!(いや冗談です)

【エヴァ関連】
「AAAヴンダー(ハル作)」。AAAヴンダーと新2号機α、改8号機γの配置が絶妙!
「新2号機α(ハル作)」。下から煽り視点でみると新2号機αが主役のカッコイイ絵面になるのも嬉しい
「第3新東京市(KeetA作)」。第3新東京市は冬月の「私は人で汚れた混沌とした世界を望むよ」というセリフに感銘を受けて組んだのだとか

空想静物やバイクなどもレゴブロックで再現

 紹介した以外にも、レゴブロックで組まれた再現モデルが多数出品されていた。例えば、映画「ブレードランナー」に出てきた「ユニコーン(KABA作)」だ。これは、馬らしいお腹から腰にかけてのフォルムをカーブスロープというパーツで表現した部分や、劇中に出てきたユニコーンが夢の世界で駆けるシーンになっているところが凄い。

 いくら曲面のパーツが増えたとはいえ、レゴブロックはどうしてもカクカクしてしまうので、このようになめらかな曲面を見ると、妙に艶があって生き物としての魂があるようにすら感じる。

 また、オリンピックの開催で惜しくも予言を外してしまった「アキラ」から、「金田のバイク(KABA作)」も登場。こちらも小さいながら劇中の有名シーンをきっちりと再現している。特に煙の部分を歯や爪を表現するパーツで構成しているのが技ありだ。

【ユニークな作品】
「ユニコーン(KABA作)」。ただでさえ難しい生物モデルにここまで躍動感を出せるのは天才の域かも
「金田のバイク(KABA作)」。このサイズだとステッカーまではレゴブロックで再現できないのは仕方なし

レゴブロックを使ったオリジナルモデルも大集合

 レゴブロックの楽しみとしては、自分の好きなメカやお気に入りのシーンを再現することだけではない。自分の頭の中でふつふつと沸いてくるイマジネーションを具現化することだって可能なのだ。

 例えば「ベニーの超高速星間クルーザー(キラッ☆)(SIGEZO作)」は、レゴブロック製品の製品ラインアップのひとつ「クラシックスペース」の世界観をベースに、空想の宇宙用のクルーザーとして作られたモデルだ。

 世界観そのものを構築するのではなく、製品ラインをイマジネーションで膨らませることで遊びの幅を拡げていくのは、とても楽しい遊び方。だが、そのような世界観の中でも、コクピットやエンジン部分を作り込むなど、自分の作品を活かすことはいくらでもできるのだ。

 空想のロボも、「レゴロボ」という略称があるほど人気の分野。しかし、ロボットだからといって、人型にこだわる必要はない。例えば「平良蟹(石作)」や「海百合(石作)」のように、円盤形のパーツを用いて、独創的なシルエットのロボを作ることもできる。人型と違ってまとめるのが難しいが、完成したものは一際個性を放つだろう。

 また、「消防竜(YOU★霊作)」のように、生き物をベースにしたロボを作ることも楽しい。特に、ゾイドなどがストライクな世代には、かなり根強いファンが多い。この消防竜は本体が竜であるだけでなく、プテラノドン型のドローンも装備していたりして、作者の中で構築されたストーリーが溢れだしてくるようだ。

【アイディアあふれるオリジナルモデル】
「ベニーの超高速星間クルーザー(キラッ☆)(SIGEZO作)」。大型の三角翼を備えた船体に、青と灰のコントラストが映える
「平良蟹、海百合(石作)」。海百合は「ゆらめく花」をイメージしたというだけあってポージングに柔軟さが感じられる
「消防竜(YOU★霊作)」。ロボというと戦わせたくなるが、消防竜は戦う相手が炎というのがいい

イベントだからできる合同展示卓も大賑わい

 レゴブロックは自宅でコツコツ一人で作るイメージがあって、それは認識として正しいが、ことイベントとなると話は別である。同じジャンルのアマチュアビルダーが強力なタッグを組んで、来場者を圧倒させる大型作品を展示している。

 今回展示されていたのは、「車」、「トレイン」、「ミリタリー」、「艦船」だ。作り手が一人でないぶん、作風にバリエーションがあって、見ていて飽きないだろう。僕も、昔参加したことがあるが、イベント前にはSNSなどで展示の見せ方を検討したり、作品のサイズや色を調整したりと、見えないところでたゆまぬ努力をするのが、イベントの合同展示卓なのだ。イベントに来場した際は、じっくりとひとつひとつの作品を観察してみてほしい。

 車の合同展示卓では、4幅車と呼ばれるレゴブロック特有の企画で制作されたカーモデルが多数展示されていた。中央にあるホテルはライティングが施されていて、とても楽しげなジオラマに仕上がっている。

 トレインの合同展示卓で楽しいのは、何といっても実際に走る姿が見られることだ。また、トレインモデルは車体のカラーを再現するために、かなりトリッキーな組み方をすることがあるので、テクニックとしてぜひ参考にしてほしい。

 ミリタリーをテーマにした合同展示卓では戦車モデルを中心に、市街地戦闘や密林戦闘をイメージしたジオラマが作られていた。また、ヘリコプターなども作られており、立体的な展示が印象的だった。戦車は一見組みやすそうで難しいモデルなので、もし作ってみたい人がいたら、こういうイベントで質問してみるのもいいだろう。

 艦船モデルをテーマにした合同展示卓では、1/300統一スケールでの艦船が大集合。僕の参加した初日は少なめだったが、2日目は大艦隊だったというから少し残念。今回目を引いたのが、線路を利用して走る艦船を展示したこと。動きのあるモデルは来場者を楽しませてくれるので、かなりよいアイデアだったのではないだろうか。

【合同展示卓】
車の合同展示卓は、カーショウをイメージした展示スタイルだ
トレインの合同展示卓では走行会とも言われるほど、運転を楽しんでいる
ミリタリー合同展示卓の戦車モデルはレゴブロックの人形であるミニフィグサイズなので、ジオラマ作りには建築系のノウハウが必要だ
艦船モデルとはいえ、空母があれば艦載機なども作るし、戦わない船を作ったりもする

リアルイベントの参加や見学は楽しいよ!

<本文>
 当たり前だけど、当たり前でなくなったのが、リアルイベントへの参加や見学。オンラインイベントが進化してきたのは嬉しいが、やはり見て、触って、話せるリアルイベントの楽しさは比ではない。

 今回ご紹介した以外にも「GBC」と呼ばれるレゴテクニックで、ボールを動かしてリレーするユニットのバリエーションを多数で作り、それをつなげてループさせる仕組みが展示されていた。レゴブロックのイベントではレゴテクニックの作品が見られることもあるので、こういうモデルが好きな人にはたまらないだろう。

 今回展示していたのは「Pick and Scoop(はしもと作)」で、ボールに往復直線運動を加えて、最後にミニフィグ用のシャベルパーツを使って爪のように組んだパーツで次のユニットに送るところが面白い。このようなモデルはリアルイベントだからこそ、その全容が体感できる。まあ、テキストで説明してもわかりいくいので、気になる方は氏の動画(を見てほしい。

【GBCモジュール011 Pick and Scoop】

 そして、一番楽しいのはイベントに参加することだ。今回は僕も席を設けていただき、作品を展示させていただいた。リアルに来場者からコメントを貰うと、創作の励みになる。だから、レゴブロックのイベントに参加した際は、作者に質問したり、感想をコメントしたりは、ぜひともしてほしい。ということで、来年は何か新作モデルでも展示してするかな。

「Pick and Scoop(はしもと作)」。静止画では迫力が伝わらないが、とにかくずっと見ていても飽きないのがGBCモデル群
「レゴ宇宙軍(さいとうよしかず作)」。筆者もひっそりと旧作を展示。イメージや宇宙戦艦ヤマトのメカコレクションをイメージしたオリジナル宇宙艦隊。黒い布で展示することで、宇宙っぽさをアップさせた展示方法だぞ!