特別企画
ヘタ仙人の「プラモデルを楽しもう!」、戦車のプラモデルってどんなもん? 「1/35 ドイツIV号戦車G型 初期生産車」~まずは塗装しないで作ってみた~(前編)
2022年1月21日 00:00
- 【1/35 ドイツIV号戦車G型 初期生産車】
- 開発・発売元:タミヤ
- 発売日:2021年7月
- 価格:4,620円(税込)
- 全長:187mm
- 全幅:82mm
こんにちは。ヘタ仙人です。今回は、スケールキット未経験の方に向けて、「まずは塗装せずに作ってみてはいかがでしょう?」というご提案です。作るのは、2021年夏に発売されたタミヤの新しいキット「1/35 ドイツIV号戦車G型 初期生産車」になります。
スケールモデルは塗装が前提じゃないの? と違和感をおぼえる方もいらっしゃるかもしれませんが、まず第一にプラモデルは組み上げる行為そのものも楽しいですし、さらに、塗装は義務ではないはず。むしろ「塗装しなくちゃ」といった義務感で手を出さないくらいであれば、「組むだけでも楽しんでみようかな」という方向も、大いにアリかなと思いますし、満足感も得られると思います。特に1/35スケールともなりますと、そこそこのボリュームですから存在感もあり、さらにスケールキットならではの細かいディテールもてんこ盛りで、そこも楽しいわけです。
というわけで、車両について簡単に説明を。IV号戦車は第二次世界大戦を通じて活躍したドイツの戦車です。最初の生産タイプであるA型、その問題点を改善したB型、装備改良と装甲の強化が図られたD型、砲塔の設計が変更されたE型、車体設計などの大幅な改修が行われたF型と進化し、さらにF型に長砲身の43口径7.5cm砲を採用したF2型が開発されていきます。この、長砲身のF2型の制式名称が、今回製作するG型となります。その後さらにH型などが登場し……と、さも知ったような言い方をしていますが、実はこれ、製品に入っている実車解説パンフに書かれた斎木伸生氏による解説の受け売りなんですよ。
キャラクターキットならば映像などのコンテンツの活躍シーンを思い出しながら作るのが楽しいわけですが、一方スケールキットは、史実を知ることで厚みのある楽しみを得られてしまうというわけです。IV号戦車に関しては、書籍や写真集(私も1冊持っています)も出版されていますから、そうした資料を漁るのも面白いでしょうね。歴史好きの方はぜひとも楽しんでみてください。
前置きが長くなりました。では、作っていきましょう。このキットは接着剤が必要なのですが、それ以外にも、数カ所ドリルなどで1.2mm径の穴を開けなければならない箇所も存在しています。が、穴を開けるのはそこそこ簡単なので、大丈夫大丈夫。後々その方法も見ていきます。
パーツを切り出し、接着。パーツにドリルで穴開け
まずは箱絵。第21戦車師団所属車 1942年秋の北アフリカ エルアラメインに展開していた車両イラストです。これはもう、かっこいいですね!
キットは箱絵の北アフリカに展開していた車両のほか、ちょっとだけ装備が違う第12戦車師団所属車(ロシア北部展開)も再現が可能なので、どちらかを選んで組み立てます。今回は、北アフリカのバージョンを作ってみました。
次に同梱物を見ていきましょうか。
・ランナー……フィギュアも含めて8枚
・車体パーツ……1個
・デカール……1枚
・ポリパーツなどの部材……1袋
・説明書……1部
・車体解説書……1部
・組み立てワンポイントアドバイス……1枚
という内容です。「あれ? ランナー少ない?」と思われるかもしれませんが、細かいパーツが多いので、作りごたえはめちゃくちゃありますよ。また、初心者の方には「組み立てワンポイントアドバイス」の1枚が役に立つでしょう。基本工具や塗装のアドバイスが書かれていますから、参考になると思います。
そして、前述した車両の説明書も秀逸で、戦車の解説は組む前に読むとテンション上がります。さらに車体のカラーリング指示もタミヤの塗料のナンバーを含めて書かれていますから、「やっぱり塗装したい!」と後々思った場合には、大いに役に立ちます。
と、内容物については以上です。次に作業に入りますが、用意したのはシンプルに、流し込み接着剤、デザインナイフ(カッターでも可)、そしてニッパー。後々少し追加しますが、まずはこれだけです。なおこのキットは(スケールキットは大抵そうですが)、はめ込み式の「スナップフィット」方式ではなく、殆どのパーツを接着しながら進めます。今回は主にタミヤの流し込み接着剤を使用しましたが、匂いが気になる方は、「タミヤ リモネンセメント(流し込みタイプ)」440円(税込)を使えばよいでしょう。柑橘類から抽出されたものなので、ホントにみかんのような匂いがします。
では説明書の順序に従ってパーツを切り出し、接着していきましょう。まずはリアパネルからなのですが、ここはのっけから細かくてディテールが楽しい部分。ごちゃごちゃのリアパネルに、さらにごちゃごちゃした付属物を付けていくかたちで進みます。1つの小さなパーツを、2つのパーツで挟み込んで接着……という場面もありますが、あらかじめ挟み込む形で指で持っておき、パーツの隙間から流し込み接着剤を「チョン!」と流せばOKです。
さて。ここで最初の難関です。……難関というほどでもないのですが、パーツに穴を開けなければいけません。C28という板状のパーツにF49という棒状のパーツを通すのです。おそらくは成形上の理由で穴が空いていないのだと思いますが、説明書には径が「1.2mm」と書いてあります。
ここは、模型でよく使われる「ピンバイス」と呼ばれる極細のドリルを使いたいところですが、私が持っているのは0.8mmまで。1.2径をポチるなり買いに行くなりすればよいのですが、それも面倒です。ここ、多少汚くなってもおそらくはほとんどわからない部分。穴さえ開けられればなんでもいいやと、まずは0.8のピンバイスで穴を開けて、そのあとデザインナイフの先でゴリゴリと広げました。
「ピンバイスそのものが無いよ」という方はキリなどご家庭で使えるものを探してみるのもよいのではないでしょうか。要点としては「多少汚くなっても小さい穴をあけられればいいや」ということです。また、当たり前の話なのですが、怪我をしないようにご注意ください。
さて、次なのですが、かなり細かいパーツの登場です。おそらく1mm程度のキャップ状のパーツが登場しました。これはピンセットを使っています。ただ、流し込み接着剤の普段の使い方通りに「パーツを予め合わせておいて」→「接着剤を流す」という方法だと、パーツが小さすぎて逆にやりにくい。
なのでここは、接着剤をあらかじめ接着先のパーツに塗っておき、キャップ状のパーツをカポッとかぶせる方法をとりました。流し込み接着剤はあっという間に乾燥しますから、ちょっと多めに塗ったり素早く作業したりと、そのあたりは塩梅を調整しましょう。まあ、くっつけばよいのです。
ここまでは小さいパーツ続きでしたが、こんどはちょっと大きめ。円筒形のマフラーです。こちらは単に、組み上げて(接着して)、カポッと取り付けるだけ。
これにてリアパネルは最終段階に突入。あとは、マフラーを取り付けて、車体後端の「アドラーホイール」と呼ばれるホイールの軸パーツを完成させればおしまいです。が、こちらも細かい! どのくらい細かいかといえば、デザインナイフと一緒に撮影しましたのでご確認ください。
すべてのパーツを付け終わり、リアパネルが完成しました。
のっけから、リアパネルという、小さい面積にディテールモリモリの場所を組み立てたわけですが、ここからは比較的大きな部分も作業するようになっていきます。そう、大きな車体のパーツに、小さいパーツを取り付けていくのです。まずはフロントパネルやギヤケースカバーを。
履帯の組み立てがクライマックス! 戦車の土台を組み立てる
フロントカバーやギヤケースカバーなどを取り付けたところで、ある意味戦車のプラモデルでは象徴的な作業である、転輪と履帯の組み立てに入ります。まずはホイールからですが、この作業、同じパーツをいくつもいくつも作るために、ちょっとしんどいイメージがあります。しかし実は、関係するパーツを一気に切り出して組み立てればいいので、それはそれで「効率化してやったぜ!」的な快感が……人によっては味わえるでしょう。
リターンローラーを取り付けた後は、最初に作ったリアカバーを接着します。こうなると、俄然車体らしさが増しますね。さらに、サスペンションも取り付けます。こちらも片側に4つ、計8つを車体に付けていきます。
ここまで来たら、お待ちかね(?)の履帯です。戦車の履帯は、軟質素材のものがあったり、1つ1つバラバラだったり、ホイールと一体化されていたりとキットによって様々な工夫が施されていますが、このキットの場合もまた、工夫されていて面白いです。説明書で、まず指示されたのはこの部品の用意。
この、E12というパーツは、実は戦車そのものを構成するパーツではありません。この上に、分割されている履帯のパーツを乗せて接着のガイドとするのです。
さて。どうやって履帯ガイドを使って履帯を作っていくのでしょう? まず履帯のパーツを思い出してください。各ランナーをご紹介した写真を見て頂ければ分かる通り、細かく分割されています。これらを接着して1枚の履帯にするわけですが、なぜバラバラかといえば、履帯が波打っているから。誘導輪の上に1枚の履帯がかぶさっているわけですから、当然ホイールに支えられている部分はたるみます。
このたるみをユーザーが調整しながら接着していくのって大変ですよね? そこで、あらかじめ波打ったガイドの上に履帯パーツを乗せて、接着作業を進めればよいというわけです。ガイドの上に履帯パーツを乗せて、隣の履帯パーツと接着、そしてまた新しいパーツを乗せて接着……という作業を繰り返して接着剤が乾くのを待てば……あら不思議、波打った履帯ができてしまうのです。
履帯の接着が乾くまで、駆動輪であるところのスプロケットホイールと後端のアドラーホイール、そしてサスペンションに接続され、クルマでいえばタイヤ的な役割を果たすロードホイールを組み立てて取り付けていきましょう。
さて、各ホイールも整えたところで、先ほどの履帯を置いてみましょう。こちらも最終的には接着することになりますが、それは若干先なので、履帯の「たるみ」具合を確認します。
こうした履帯のたるみは、軟質素材が使われている場合はシンチュウ線で押さえつけたり、細い糸で引っ張ったりといろいろやり方があるのですが、ガイドを使った接着であれば、接着剤が完全に固まる前に形状の微調整もできますし、位置決めもバッチリ決まるのでありがたいところですね。なお「接着剤を流し込んで、ガイドと履帯まで接着されたりしないの?」との心配は無用です。そんなにドバドバ付けない限りは、うまく回避される構造になっているので。
ここまで来たら、次は履帯の前後/下部分を作っていきます。履帯のパーツ構成としては、長いパーツ、短いパーツがいくつにも分かれていて、ホイールの曲面に合わせて微調整できるようになっています。それでは、作業を開始しましょう。
さて、ここまで流し込み接着剤をメインに使ってきましたが、もう少し乾く速度が遅く粘り気の強い接着剤を使いたい、という場面がでてきたら、白いキャップのタミヤセメントも使ってみてください。適度な粘りのある接着剤ですから、パーツが「ネト」っとくっついてくれますので、位置決めの時間的余裕が大幅に増えます。
こうして、両側に履帯を履かせることに成功しました! いやー、履帯作業は面倒といえば面倒なのですが、これが終わるとあとは楽しい戦車上面の作業になりますので、ひと仕事終えた気分ですね。
こうして、“土台”的なものは出来上がりました。次ページからは上にいろいろと積み上げていく行程になります。このキットは基本的に、すべての面が1枚の板状のパーツで構成されていて、それらを箱のように組んでいくことで構造物を作り上げ、その構造物に小さな部品を接着して組み上げていく……という手順で進みます。