特別企画

ガンプラ「HGUC 1/144 Ξガンダム」作例「閃光のハサウェイ」設定画のシャープなフォルムを再現

シャドウ吹きで大型MSの巨体を立体的に演出

【HGUC 1/144 Ξガンダム】

発売元:BANDAI SPIRITS

発売日:2021年4月24日

価格:6,600円(税込)

 今回は、アニメ「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」より「HGUC 1/144 Ξガンダム」の作例を紹介します。比較的新しいキットなので素組みでも十分な仕上がりとなりますが、Ξ(クスィー)ガンダム本来のエッジの効いたフォルムの再現を目指します。アニメの設定画を参考に、各部のディテールアップを行ないつつ、各部の塗装にはシャドウ吹きを多用して立体感を演出しました。

アナハイム・エレクトロニクスが開発した第5世代ガンダムタイプMS

 今回作成する「HGUC 1/144 Ξガンダム」は、アニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の後枠で1月に放送された「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」に登場する機体です。「機動戦士ガンダム」から続く、宇宙世紀における第5世代のガンダムタイプ・モビルスーツにあたります。機体内蔵型のミノフスキー・フライト・ユニットを装備することで自由に重力圏を飛行することが可能なだけでなく、サイコミュを利用した操縦システム、大型メガ粒子砲などの強力な火器を有していることで地球連邦軍ともわたり合うことが可能となりました。パイロットは、同作主人公のマフティー・ナビーユ・エリンことハサウェイ・ノア。劇中では反地球連邦の秘密結社マフティーの主戦力として地球連邦のガンダムタイプMS「ペーネロペー」と死闘を繰り広げました。

【『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』予告2】

全高26mの巨体を1/144スケールで再現した大型キット

 今回作成する「HGUC 1/144 Ξガンダム」は2021年4月24日に発売された新しめのキットです。ポリキャップ、ABS不使用で、塗装ユーザーにも優しい構成となっています。劇中の設定では全高26mにも達する大型MSを、1/144スケールにて忠実に再現しており、完成したキットは全高約18cmにもなります。また、大型キットということもあり、アーマー裏には裏打ちがされており素組状態でも十分なボリュームを感じることができます。

「HGUC 1/144 Ξガンダム」に設定画をイメージしたディテールアップ

 それでは、Ξガンダムを作成していきましょう。今回の作例ではアニメの設定画を参考に各部をディテールアップして作成していきます。

「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」でのΞガンダム設定画
今回使用したツール類。今回はパーツの形状を加工するために粗めのやすりを多用していきます。
今回使用した塗料類。今回は設定画を参考にオリジナルで調色したため説明書のカラーレシピは参考にしていません。

 まずはこれまでの作例と同様に仮組を行なっていきます。

仮組を行なったΞガンダム。全高18cmと1/100 ガンダムと同じくらいのサイズ感のためボリュームがあります。

設定画を参考に先端をシャープ化

 Ξガンダムは設定を見ると各部アンテナやエッジの部分がシャープに描かれています。しかし、本キットでは安全性配慮のためエッジが丸くなっている個所が多くあります。今回もこれまでに作成したキットのアンテナと同様に先端をシャープ化していきましょう。

加工前の頭部パーツ。パーツ下部が短くなっています。
先端をナイフでカットします。
カットした端部にプラ板を接着します。今回は作業効率向上のため瞬間接着剤にて接着します。
やすり掛けを行ない、形状を整えれば加工完了です。

エッジのシャープ化とモールドの彫り直しで、メリハリアップ

 Ξガンダムはアナハイム・エレクトロニクス社が開発したMSであり、その特徴として多くのエッジを持つデザインとなっています。しかし、プラモデルではエッジが丸くなってしまっていたり、本来、部品が分割されている個所が1パーツとして成形されています。そこで、エッジ出しとモールドの彫り直しを行なうことでよりメリハリの利いたカッコイイスタイルにすることが可能です。そのため、全パーツにエッジ出しとモールドの彫り直しを行なっていきます。

各パーツをカンナ掛けすることでエッジ出しを行なっていきます。今回の作例では新ツールとしてプラカンナを使用してみました。
モールドの彫り直しにはファンテックのスジ彫りカーバイト0.15、クレオスのMr.ラインチゼル0.2mm、0.3mmをそれぞれ適応した太さに合わせて使用していきます。
加工前パーツ(左)と加工後パーツ(右)の比較。メリハリが効いたことで塗装後の仕上がりも変わってきます。

後ハメ加工で塗装を簡単に

 本キットでは挟み込みのパーツが存在するためそのまま合わせ目消しを行なうと塗装時の塗分けが大変になってしまいます。そのため、後ハメ加工を行ない塗装しやすくしていきましょう。

加工前の肩部パーツ。オレンジのパーツを紺色のパーツで挟み込む形状となっているため、そのままでは塗装が大変です。
加工を行なった肩部パーツ。左側が加工前のパーツ。右側が加工後のパーツ。干渉する箇所を切除しています。

 後ハメ加工が完了したら合わせ目消しをしていきます。今回はクレオスのMr.セメントSPB(ブラック)を使用して合わせ目を消していきます。

パーツの合わせ目に接着剤を流し込み合わせ目消しを行ないます。

肉抜き埋めで密度感アップ

 本キットでは胸部パーツ、平手パーツに肉抜き穴が存在しています。そのため、肉抜き穴を埋めていきます。

穴埋め前の平手パーツ。肉抜き穴が多くあるので穴埋めを行なっていきます。
肉抜き穴をポリパテで埋めていきます。この際、パテの肉痩せを考慮して多めに盛り付けます。
硬化後やすり掛けを行なったアームパーツ。これに塗装を行なえば肉抜き穴は目立ちません。

つま先の形状変更で設定画に近づける

 本キットと設定画を比較した際に相違点としてつま先の長さが異なるという点が挙げられます。そこで、つま先部分を設定画に合わせで延長していきましょう。

加工前のつま先パーツ。設定画と比較し、短い印象があります。
つま先パーツの先端にプラ板を接着します。今回は1mmプラ板を2枚接着しました。
やすり掛けを行ない形状を整えたつま先パーツ。よりシャープな印象になりました。
加工前後のパーツ比較。プラ板を追加することでより足先を細くすることができました。

 これにて塗装前の加工は完了です。一度パーツを洗浄して塗装に入っていきましょう。

下地を整えるサーフェイサー

 今回の塗装は、設定色に合わせた配色とするため下地には一般的なカラーであるグレーのサーフェイサーを塗布します。使用するのは、ガイアノーツの「サーフェイサーエヴォ」です。設定画のΞガンダムは全体的にくすんだ配色となっているためサーフェイサーのカラーはグレーとしました。

設定画を見ながら調色と塗装を行なう。

 ガンプラの塗装を行なう際、組み立て説明書に記載されているカラーチャートを参考にする方も多いのではないでしょうか。確かに、カラーチャートの調色を行なえば設定画に近い配色を得ることが可能です。しかし、プラモデルを長くやっていくと使いかけの塗料がたまっていくものです。そのため、新しい塗料の購入にためらいが出てしまいます。そこで今回は自宅に保管している塗料にて調色を行ない設定の配色を目指していくこととします。

 まずは外装のメインとなるホワイトのパーツから塗装していきましょう。設定画を見るとΞガンダムのホワイトはただのホワイトではなく、少し青とグレーを含んだホワイトに見えます。そこで、今回はガイアノーツの「Ex-ホワイト」にガイアノーツの「ミディアムブルー」を加えた色を塗布することにしました。

ホワイトを塗装した外装パーツ。思い通りの色味に仕上がりました。

パーツの立体感を際立たせるシャドウ吹き

 仕上げ色を塗装したらそれで完成でもいいのですがパーツの立体感を際立たせるため、シャドウ吹きを行ないます。シャドウ吹きはパーツのエッジ部分に仕上げ色よりも少し暗めの色を塗布することにより、パーツの立体感を際立たせる塗装技法です。今回のホワイト部のパーツには先ほど仕上げ色に調色した塗料に追加でガイアノーツの「ミディアムブルー」を加え暗めにした塗料を塗布していきます。

シャドウ吹きを行なった外装パーツ。パーツに立体感が出ています。

調色とシャドウ吹きを繰り返し、全パーツを塗装していく

 ホワイト以外のパーツに関してもこれまでと同様に調色とシャドウ吹きを繰り返していきます。塗料を調色する際は基準とする塗料(最も強く見える色)に他の塗料を加え、色味を調整しました。

ネイビーを塗装したパーツ。ガイアノーツの「ウルトラブルー」に「純色バイオレット」、「Ex-ブラック」を加えて塗装しています。シャドウ吹きには仕上げ色にガイアノーツの「Ex-ブラック」を加えた色を塗布しています。
イエローを塗装したパーツ。ガイアノーツの「NAZCAカラー マンダリンイエロー」に「Ex-ホワイト」を加えて塗装しています。シャドウ吹きにはガイアノーツの「NAZCAカラー マンダリンイエロー」を塗布しています。
オレンジを塗装したパーツ。ガイアノーツの「NAZCAカラー マンダリンオレンジ」に「Ex-ホワイト」を加えて塗装しています。シャドウ吹きにはガイアノーツの「NAZCAカラー マンダリンオレンジ」を塗布しています。
レッド部を塗装したパーツ。ガイアノーツの「ブライトレッド」に「ナチュラルブラウン」と「Ex-ホワイト」を加えて塗装しています。シャドウ吹きの部分には仕上げ色にガイアノーツの「ナチュラルブラウン」を加えて塗装しています。
関節色を塗装したパーツ。クレオスの「軍艦色(2)」に「RLM76 ライトブルー」を加えて塗装しています。また、シャドウ吹きの部分には仕上げ色にクレオスの「ブラック」を加えて塗装しています。

 これにて仕上げ色の塗装は完了です。これらパーツに墨入れとトップコートを行ない完成です。

アニメ設定画をイメージした仕上がり

 それでは早速、完成したΞガンダムを見てみましょう。

【正面】
塗装前
塗装後
【右側面】
塗装前
塗装後
【背面】
塗装前
塗装後
【左側面】
塗装前
塗装後

 プラスチックの成型色よりも一段落ち着いた仕上がりとなりました。

ビーム・ライフルを構えてみました。肩アーマーが大型なこともあり大胆なポージングは難しいところですが、迫力は抜群です。
頭部の各部をプラ板でシャープ化しているのでよりヒールな印象に仕上がりました。
つま先の先端を延長することで大柄な機体に対し、スマートな印象を追加できています。
前腕部はエッジのシャープ化とシャドウ吹きによりメリハリの利いたスタイルと立体感を得ることができました。
ビーム・サーベルを構えてみました。機体サイズに合わせた大型サイズなので迫力があります。
背面のスラスターノズルはついメタリックカラーで仕上げてしまいがちですが、今回は設定画に準じて2色で塗り分けています。
シールドにはモールドの彫り直しを行なっているので、墨入れによる線がはっきりと見えるようになりました。
背面はスタビライザーの先端をシャープ化することでよりリアルに仕上がっています。

 いかがでしょうか。Ξガンダムの設定画に近い仕上がりになったのではないでしょうか。宇宙世紀のガンダムシリーズに登場するアナハイム製MSは、エッジを多用したデザインが多いので、今回のΞガンダムでも各部のシャープ化やとシャドウ吹きで大幅にディテールアップすることができました。また、設定色の再現は、説明書のカラーレシピ通りに彩色するだけでなく、独自のアレンジを加えて再現するのも面白いものです。これをきっかけに、キットをアニメの設定にどれだけ近づけることができるのかチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

今回使用した工具一覧
使用工具品名
ニッパーGSIクレオス Mr.シャープネスニッパー両刃タイプ
ニッパーゴッドハンド アルティメットニッパー5.0
ナイフタミヤ モデラーズナイフ
ノコギリクレオス Mr.モデリングソーラージ
やすりピットロード PY10「フィルムスティックやすり 180番」
やすりピットロード PY07「フィルムスティックやすり 400番」
やすりハセガワ モデリングファイル(精密やすり)
カンナHEMIxIPD ぷら用カンナ
スジ彫りファンテック スジ彫りカーバイト0.15
スジ彫りクレオス Mr.ラインチゼル0.2mm
スジ彫りクレオス Mr.ラインチゼル0.3mm
ポリエステルパテウェーブ パテ革命モリモリ
ラッカーパテタミヤ ベーシックパテ
今回使用した塗料一覧
工程使用塗料
下地色ガイアノーツ サーフェイサーエヴォ
上塗り(外装ホワイト)ガイアノーツ Ex-ホワイト+ミディアムブルー
上塗り(外装ネイビー)ガイアノーツ ウルトラブルー+純色バイオレット+Ex-ブラック
上塗り(外装イエロー)ガイアノーツ NAZCAカラー マンダリンイエロー+Ex-ホワイト
上塗り(外装オレンジ)ガイアノーツ NAZCAカラー マンダリンオレンジ+Ex-ホワイト
上塗り(外装レッド)ガイアノーツ ブライトレッド+ナチュラルブラウン+Ex-ホワイト
上塗り(関節色)クレオス 軍艦色(2)+RLM76 ライトブルー
シャドウ吹き(外装ホワイト)ガイアノーツ Ex-ホワイト+ミディアムブルー
シャドウ吹き(外装ネイビー)ガイアノーツ ウルトラブルー+純色バイオレット+Ex-ブラック
シャドウ吹き(外装イエロー)ガイアノーツ NAZCAカラー マンダリンイエロー+Ex-ホワイト
シャドウ吹き(外装オレンジ)ガイアノーツ NAZCAカラー マンダリンオレンジ+Ex-ホワイト
シャドウ吹き(外装レッド)ガイアノーツ ブライトレッド+ナチュラルブラウン+Ex-ホワイト
シャドウ吹き(関節色)クレオス 軍艦色(2)+RLM76 ライトブルー+ブラック
トップコートクレオス スーパースムースクリアー
ビーム・サーベルのコーティングクレオス Mr.カラーGX スーパークリアーUVカット<光沢>