特別企画

17年の時を経て復活したバトルホビー「カブトボーグ」の楽しさとは?

子供達が店頭でふれあう機会を! 目の前で見るから伝わる「この玩具で戦いたい!」という気持ち

――今回、16年ぶりの「カブトボーグ」復活ですが、復活する大きな理由は何だったのでしょうか?

赤木氏:タカラトミーはバトルホビーの商品を継続的に販売しています。昨今では「ボトルマン」、「ベイブレード」といった商品がありますが、「小さいころバトルホビーで遊んでいた人達が、大人になってもその遊びを続けている」というユーザー層が大きくなってきたと感じています。弊社ではこの新しいユーザーを“キダルト(キッズ+アダルト)層”として、このユーザーにもリーチするバトルホビーを提供したいと考えています。

 子供の時にバトルホビーを夢中になった心を大事にしていただき、玩具も遊んでいただけるキダルト層は、「ボトルマン」、「ベイブレード」でも存在感を示しています。玩具会社としての新しいチャレンジとして、「カブトボーグ」ではキダルト層にもきちんとリーチした戦略をしていこうと思っています。その上で昔の商品のリバイバルではなく、新しく生まれ変わった「カブトボーグ」を見せたい、というのが企画のきっかけになりました。

戦う玩具「バトルホビー」は子供を夢中にする。タカラトミーはかつて夢中になった大人達にもその情熱をぶつけて欲しいと考えている

――「カブトボーグ」はやはりネットで大きな話題となったアニメ版も欠かせません。アニメ版「人造昆虫カブトボーグ V×V」の全話を収録したBlu-rayが昨年発売されましたがこの盛り上がりがあってこそなんでしょうか?

赤木氏:アニメは破天荒な展開でも話題となりましたが、主人公達が「ボーグバトル」で戦うというところで、17年間新製品が発売されていなかった「カブトボーグ」を支えてくれた存在であることは間違いありません。しかし「カブトボーグ」復活に当たり、最も大きい原動力となったのは「昆虫ブーム」です。

 コロナ禍で旅行などが制限されている中、近くの公園やキャンプ場での昆虫採集などで、昨今の子供達は昆虫に興味が強い。この昆虫ブームで、「カブトボーグ」を復活させようという企画が生まれました。

 私自身はステージに向けカブトボーグを走らせるというシンプルな、むしろシンプルすぎる部分が気に入っていて、面白いと感じています。アニメ方面での話題にもなり、「16年後のリュウセイ」などの企画もでき、意外なほど反響があったと感じています。


【次回!バトル・コンチュウ・カブトボーグ!!】
16年前のTVアニメ「人造昆虫カブトボーグV×V」とのコラボ映像

――新しい「カブトボーグ」発売に当たり、工夫した点はどこでしょうか?

赤木氏:「ダイナミックな勝敗になる」ということを心がけました。「カブトボーグ」は前進する機体がぶつかるというかなりシンプルな遊びとなります。このため2つの機体がぶつかる様子をいかにダイナミックにできるかが課題でした。ギアボックスと機体可動部を調整し、ぶつかりあった時、機体同士がぐぐっと持ち上がって直立状態になりやすいものにしました。

 ギアの組み合わせは何パターンも試し到達したバランスです。「来るか、来るか、来るか?」という感じで、前進するカブトボーグに思わず魅入ってしまうスピード感はとても大事だと思っています。

 そして、リアパーツは簡単に倒れないようにする仕掛けでもあります。ぶつかり合った機体がグッと持ち上がり直立しお互いのパワーをぶつける。このときに直立した状態が長くなる工夫です。直立しもみ合う様子をいかに豊かにするか、というのは新しいカブトボーグで、力を入れた部分です。

 もちろん頭角や大顎の形状など本体部分も、モチーフを感じられるデザインにこだわりつつ、ひっかかりやすくしたりと戦うための演出も盛り込んでいます。ぶつかり合う楽しさを実現させるために様々な調整を加えています。昆虫ブームとしてモチーフの昆虫に近い雰囲気になる、特徴を活かし、リアルな虫の感じも追求しています。

モチーフ元の昆虫の要素もきちんと取り入れ、「昆虫らしさ」を追求。写真のリアパーツは他機種とカスマイズしている

――現時点で、開発チームが編み出した勝率の良い作戦などはありますか?

赤木氏:必勝法など公表できるものはありませんが、「ビクトリーチャージの効 率」は意識しています。自分の力をいかにカブトボーグに伝えるか、これは練習しがいのある要素です。最初はチャージングホイールを地面にこすりつける際、ホイールがまっすぐ地面に接地できていないことでロスが多くなる。押す力が弱くなる。練習することでより速く、強くパワーを溜めることができるようになります。

 台に乗せる時もタイヤにいかに触らないか、というのもロスを減らすためのコツです。スムーズに台に乗せるところにも工夫が必要になる。こういった「自分が勝つために想いを乗せるアクション」というのが大事だと思っています。このビクトリーチャージはとても想いを込めやすいアクションですね。

――タカラトミーはバトルホビーにおいて、全国大会などこれまでのノウハウを活かして盛り上げていく方法をたくさん持っていますが、「カブトボーグ」ではどんなことをやっていきますか?

赤木氏:今の子供達はまだ「カブトボーグ」を知りません。どんな遊びかもわからない。だからこそ店頭での実演、対戦イベントを積極的に開催していきたいと思っています。「カブトボーグ」は4月下旬発売予定ですが、ゴールデンウィークからは、積極的に店頭での体験会を開催しようと思っています。実演や、大会を開催し、参加賞なども用意して、「カブトボーグ」に慣れ親しんでいってもらえればと考えています。

 昨年まではコロナ禍の自粛もあり、なかなかイベントが難しいところがありました。今年は社会的な状況が許せばではありますが、準備を進めています。やはり「カブトボーグ」という新しいバトルホビーに関しては、体験会でお客様に触れてもらいたいと考えています。

 コロナ禍の状況では、昔から知られているコンテンツはプロモーションを展開しても認知されるのですが、新しい企画は成功しづらい状況がありました。新しいコンテンツにお客様が触れられる接点が少なすぎたと思っています。知らないコンテンツに対して手が出しにくい状況があったと思います。「カブトボーグ」を新しい遊びとして、今の子供達に届けていければと考えています。

 玩具ってずっと欲しいとサンタさんにお願いするものだけでなく、その場で見て欲しいと思う者もあると思うんです。実演販売や、体験会はそう言う玩具との出会いを生んでくれます。勝負してもし勝ったら欲しくなる。負けてもまた戦いたくなるじゃないですか。「カブトボーグ」はそういう出会いの機会を設けたいと考えています。お子さん側にもそう言う機会、自分で玩具の楽しさを探す機会を持って欲しいと思います。

 そしてこれまで以上に様々な取り組みも必要ではないかと私たちは考えています。雑誌とのメディアミックス展開、店頭での販売、TVCMだけでなく、さっきも言いましたキダルト層への訴求、親子2代で楽しめるコンテンツ、子供達だけでなく、お父さんお母さんさんも楽しめるコンテンツになって欲しいと考えています。

 また、「カブトボーグ」は、「ボトルマン」や「ベイブレード」に較べるとより勝負がシンプルでわかりやすい。対象ユーザーの年齢層をより低めに、幅広く訴求できるのではないかとも思っています。

 4月中旬にはより「カブトボーグ」の面白さをお子様に知ってもらえるようなプロモーションもスタート予定です。こちらも楽しみにしてください。

赤木氏は、カブトボーグ同士がぶつかった状況をいかに盛り上げるかに注力したと言うことを強調した

――最後にユーザーへのメッセージをお願いします。

赤木氏:「カブトボーグ」は玩具だけでなく、アニメのファンもいるコンテンツです。17年ぶりの商品を楽しみにしている方も、新しいファンの方々と一緒にぜひ楽しんで、「カブトボーグ」を語り合ってみてください。

――ありがとうございました。

 実際に説明を受けて実感したのは、ぶつかり合うカブトボーグの面白さだ。機体がぐぐっと直立し押し合う姿は、見ていてこちらも熱が入る。メカと昆虫が融合したカブトボーグのデザインは、ミリタリーテイストも加えられ、独特のカッコ良さがある。

 そしてビクトリーチャージで自分の力を機体に託すアクション、かけ声と、バトルホビーならではのケレン味も楽しい。こういったバトルホビーのノウハウ、玩具としての見せ方にこだわったデザインとギミックの融合は、改めてタカラトミーの技術の凄さを実感させられる。イベントなども取材していきたい。