特別企画
アナログゲームの祭典「ゲームマーケット2023春」開催
マーダーミステリーの出展が増加。特別企画「デュエルボーイ」が大盛り上がり
2023年5月16日 11:14
- 【ゲームマーケット2023春】
- 5月13、14日開催
- 会場:東京ビッグサイト(西1,2ホール)
- 入場料:1,500円(税込)より(時間帯で変動)
アークライトが主催するアナログゲームの展示会「ゲームマーケット2023春」が5月14日と15日、東京ビッグサイトで開催された。
ゲームマーケットは、国内最大規模のアナログゲームイベントで、毎年東京で春と秋、大阪で1回の合計3回開催されている。新型コロナの流行によって、2020年春の開催は中止、2020年秋の開催もオリンピックの影響もあり、規模を縮小しての開催となった。2021年春以降は、回を重ねるごとに参加者数と出展数が増加しており、2022年秋は参加者合計が21,000人、出展数も初日が546、2日目が693に達した。今回の2023春は、参加者数は2日間合計22,000人と、2022年秋を上回る参加者が詰めかけ、大盛況となった。本稿では、ゲームマーケット2023春で気になったアナログゲームや、ゲームマーケットで分かったアナログゲームのトレンドを紹介する。
2日間とも待機列がかなりの長さに
ゲームマーケットは週末2日間に渡って開催されるが、同人サークルなどの一般出展は土曜と日曜で顔ぶれが多少異なり、どちらかの日しか出展しないブースもある。筆者は初日も2日目も参加したが、両日とも天気はイマイチであったにも関わらず、長い入場待機列ができていた。特に初日の午後2時くらいには、列が何度も折り返す形になっており、入場までかなり時間がかかっていた。ただし、一旦入場してしまえば、会場内は超混雑というほどではなく、割とスムーズにブースを回ることができた。
マーダーミステリーを出展するブースが大きく増加
ゲームマーケットの出展対象となるのは、電源を使わないアナログゲーム一般とそれに付随するアイテムだ。一口にアナログゲームといっても、カードゲーム(含むTCG)、ボードゲーム、謎解きゲーム、TRPG、ゲームブックなどさまざまなジャンルがあるが、今回のゲームマーケット2023春で、特に目立っていたのが「マーダーミステリー」と呼ばれるジャンルの出展だ。マーダーミステリーは、2019年頃から日本でプレイされるようになった比較的新しいジャンルで、簡単に説明すると「推理小説に出てくる登場人物の一人になりきって、犯人を推理したり、その人物の目的を達成することを目指す」ゲームだ。もちろん、参加者のうち誰か一人が犯人役となるわけだが、犯人は自分が犯人だとバレないように嘘をついて、ミスリードを誘うことになる。そのあたりは人狼的な要素も多分にある。
マーダーミステリーは、専門店舗に集まった人々によってプレイされる店舗公演型とパッケージを購入して有志で遊べるパッケージ型、オンラインで遊べるオンライン型など、いくつかのタイプがあるが、ゲームマーケットに出展されているのは、パッケージ型である。個人で制作したものからサークルや企業で制作したものまでさまざまなマーダーミステリーのパッケージが出展・販売されており、大きなムーブメントとなっていた。マーダーミステリーの6~8人程度でプレイするものが多いが、より少人数で遊べるものや短時間で終わるものも出展されていた。マーダーミステリーは、その性質上、一度プレイして真犯人やトリックなどが分かってしまうと、参加者としてプレイすることは二度とできないが、同人系の作品でもファンが付いているものも多く、新作を早く出して欲しいという要望も多く受けているとのことだ。
最も多くのマーダーミステリー作品を出展していたのが、ボードゲーム&マーダーミステリー専門店「ジョルディーノ」だ。同ブースでは、さまざまなマーダーミステリーのほか、マーダーミステリーの入門書やマーダーミステリーの作り方などの書籍も販売されており、足を止める人が多かった。
ブースターパックも用意されたTCGも出展
TCGも、人気があるジャンルだが、ゲームマーケットに出展されているTCGは、構築済みデッキあるいは固定のカードプールでプレイするタイプが多い。こうした製品は、LCG(Living Card Game)と呼ばれることもあるが、ここではまとめてTCGとして扱う。
同人系でLCGが多い理由の一つは、ランダム封入のブースターパックの生産(カードのアソートも含む)が難しいためだが、ミミカンのブースで、展示・販売されていたTCG「TRETRA」は、スターターデッキだけでなく、カードパック(ブースターパック)やスリーブも販売されていた。また、ジェット娘プロジェクトのブースでは、遊園地などのジェットコースターを擬人化したTCG「ジェット娘」の展示や試遊、販売が行なわれていた。
カードゲームはワードゲーム系からトリックテイキングまで幅広く出展
ゲームマーケットで最もよく見掛けるジャンルが、TCG以外のカードゲームだ。カードゲームは、ボードやコマなどのコンポーネントを必要とせずカードだけで遊べるので、初心者にも人気だ。
内容も言葉を作って遊ぶ「ワードゲーム」から、出したカードの強さを競う「トリックテイキング」まで、非常に幅広い。ワードゲーム系の有名タイトル「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。」を開発したClaGlaは、大きめのブースを出展し、「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。」関連製品やその他のカードゲームを展示・販売していた。ワードゲーム系では、エンスカイが展示・販売していた「みんなで短歌 五七並べ」にも注目が集まっていた。角刈書店のブースで展示・販売されていた「リレカエイズム」も、シンプルなルールで誰にでもすぐ遊べる。
小学生から大人まで!遊びながら学習できる教育系カードゲーム
最近、ゲーム要素を他の分野に取り入れることで、学習効率などを上げるゲーミフィケーションという概念が注目されているが、ゲームマーケットでも遊びながら学習できる教育系カードゲームがいくつか出展されていた。
ラガラガ・ラボでは、分数の学習に役立つ「フラテリ」を出展していたほか、なるしす娯楽学会が出展していた「三角関数麻雀」にも注目が集まっていた。理系ゲームズのブースで展示・販売されていた「有機大富豪」は、有機化学の基礎となる反応系統図を覚えるのに役立つ。小学生には、水溶液の種類を推理する「水溶液推理ゲーム」もおすすめだ。
リアル謎解きゲームの2大ブランド「SCRAP」と「タカラッシュ」が出展
テーマパークや水族館などとコラボしたリアル脱出ゲームやリアル宝探しといった、リアル謎解きゲームも以前から人気のジャンルだが、その2大ブランドである「SCRAP」と「タカラッシュ」がともに出展しており、参加者で賑わっていた。
SCRAPのブースでは、オンラインでプレイできる「封鎖された○○からの脱出」シリーズやパッケージ版の脱出ゲームが多数、展示・販売されており、無料で謎がもらえる大型ガチャマシンも用意されていた。タカラッシュは、実際に行われたリアル宝探しの前日譚やアナザーストーリーとなる謎解き&宝探しキット「おうちで宝探し」の展示・販売を行っていた。
特別企画「デュエルボーイ」バトルフィールドも熱かった
ゲームマーケット2023春では、特別企画として「デュエルボーイ」バトルフィールドが開催された。「デュエルボーイ」とは、前回のゲームマーケット2022秋で初登場した立ったまま遊べるスタンディングTCGであり、手札7枚だけでプレイすることが特徴だ。山札や捨札を置く場所が不要であり、机がなくても立ったままプレイできるのだ。ルールは比較的シンプルだが、戦略性も十分あり、なかなか面白い。
このバトルフィールドでは決着がついたら、敗者が勝者のデッキから欲しいカードを2枚選んで、自分のデッキのいらないカード2枚と交換するルールになっている。ちょうどトランプの大富豪のような感じだが、負けることでデッキを強化できるので、連続して勝つのは難しい。基本的に、負け続けることも勝ち続けることもないので、次のバトルに対するモチベーションとなる。
筆者は2日目の午後にこのバトルフィールドに参加して、3戦したところ1勝2敗であった。バトルフィールドとして指定されたエリアをよく見ると、そこかしこで立ったままバトルを行なっている人がいることに気付く。ポケモンGOのレイドやIngressのミッションデイで人が集まっている感覚に近いが、対面でリアル対戦を行なうイベントはあまりないだろう。とても楽しい体験であった。
ダイスやスリーブなどオリジナルサプライ品目当ての参加者も
ゲームマーケットでは、ゲームそのものではなく、ダイスやダイストレイ、スリーブ、プレイマットなどゲームプレイに必要なサプライ品を販売しているブースもある。そうしたサプライ品目当ての参加者も多く、人気のスリーブなどが早々に完売するブースや購入希望者の列が絶えないブースもあった。
大手企業ブースも盛況
ゲームマーケット主催のアークライトをはじめ、ホビージャパンやイエローサブマリンなどの大手販売系企業やSNEなどのゲーム開発企業も多数出展していた。ホビージャパンは、開発中のボードゲーム「チョコボの不思議なダンジョン ボードゲーム」の展示や試遊会を行なっていた。また、「マジック:ザ・ギャザリング」や「ダンジョン&ドラゴンズ」の体験会も開催されていた。その他、主なものを以下の写真で紹介する。
まだまだ紹介しきれないブースがたくさん
ゲームマーケット2023春では、両日共に800を超えるブースが出展されており、とてもすべてを取り上げることはできないが、筆者が個人的に気になったブースを写真とキャプションで紹介する。
アナログゲームに興味があるならイチオシのイベント
筆者がゲームマーケットに参加したのは今回が3回目だが、コロナ禍直後のゲームマーケット2020秋に比べると、会場のスペース、出展数、参加者数ともに大きく増えており、コロナ以前の規模に近づいてきた。ゲームマーケット2020秋では、「クトゥルフの呼び声」TRPGのシナリオ集を展示・販売しているブースが目立ったが、今回はTRPG関連の出展は減り、代わりにマーダーミステリーが急増した印象である。また、重量級のボードゲームより、気軽に遊べるパーティゲーム系が増えているようだ。ゲームマーケットは、今後のアナログゲームのトレンドを占う上で重要なイベントであり、ゲームマーケットで披露した同人ゲームが大ヒットして、商業ベースに乗った例も少なくない。
荒削りだがキラリと光るゲームを探すのも面白い。普段あまりアナログゲームをプレイしたことがない人も是非一度ゲームマーケットに参加してみてはいかがだろうか。