特別企画

マルシン工業のモデルガン「ワルサーPPK」の魅力を語る!

マルゼンが新作ガスガンを出す今こそ、モデルガンの味を紹介したい

【ワルサー PPK ブラックヘビーウェイト】

開発・発売元:マルシン

発売日:2022年10月21日発売

価格:27,280円(税込)

全長:約150 mm

重量:380g(約400g)

装弾数:7発

 マルゼンが新作ガスガン「ワルサーPPK ブローバック」の発売を公式Twitterで発表し、話題になっている。だが「ワルサーPPK」には優れたモデルガンもあるのだ。筆者が2023年に購入し、最も愛用したモデルガンであるマルシンの「ワルサーPPK HW(ヘビーウェイト)」である。今回はマルシンのモデルガン「ワルサーPPK HW」をメインに、筆者のコレクションから「PPK/S HW」、「PP」も合わせて比較することで、オートマチック拳銃のモデルガンの魅力、発火システムの進化を紹介したいきたい。

筆者が購入したマルシンのワルサーPPK(2022年発売)。刻印がリアルになり、グリップにもWALTHERのロゴが入っている

 新旧モデルガンを使って、モデルガンの進化、新旧の発火システムの比較などを行っていく。オートマチックモデルガンの魅力は撃った後にスライドが後退し薬莢が排出される動作を繰り返すとこにある。モデルガンは、「弾丸を発射する反動」は生じないが、スライドが後退する際の衝撃などが手に伝わり、「撃っている」感じを得ることができる。

 スライドが後退する衝撃だけならばガスガンでも味わえる(BB弾も飛んで行って的に当てられるのもまた楽しい)が、発火音の迫力と薬莢が飛んでゆく爽快感、漂う煙、撃つたびにカートリッジが排出されて軽くなってゆく銃の重さなど、モデルガンならではのロマンに魅力を感じてしまう。

 オートマチックの弱点としてジャム(ジャミング=装填不良や排莢不良などの弾詰まり)があるが、おもちゃとして遊ぶには、その状況をいかに早く、手慣れた感じで解除(ジャムクリア)するかというのも楽しみの一つである。ぜひ、モデルガンの奥深い世界へ来て欲しい。

携帯性、隠密性を重視して作られた警察・軍用自動拳銃「ワルサーPPK」

 まず最初に実銃のワルサーPPK、そしてPPシリーズを紹介していきたい。ワルサーPPKは007シリーズでジェームス・ボンドが使用する銃としてあまりにも有名だ。イアン・フレミングの原作では、ベレッタの25口径とだけ記載されており、おそらくM1919だとか、M950あたりではないかとか、ファンによる考察や意見交換が盛んなところでもある。映画では、9mm口径のベレッタM1934からワルサーPPKに切り替えるよう渡され、その後PPKやPPK/Sを使うようになる。のちにP99シリーズを使うこともあったが、いつの間にかPPKシリーズに戻っていた。

【映画「007」とPPK】
2015年の映画「007 スペクター」。ダニエル・クレイグ演じる最新のジェームス・ボンドもワルサーPPKを使う
「007は殺しの番号」の邦題で1962年に公開、007はショーン・コネリーが演じている。劇中でベレッタを愛用していたボンドがPPKを使うようになるシーンがある

 スパイ映画やドラマで多く使われており、秘密のエージェント(スパイ)のアイテムとしてのイメージが強いが、実銃は1931年にプロイセン州警察からの要請に基づき開発、発売された私服警察官向けモデルとなる。ベース銃は、1930年発売のワルサーPP(Polizei Pistole)で、その名の通り警察用拳銃として、必要な時にすぐに撃てるようダブルアクション方式が組み込まれた自動拳銃として誕生した。

 私服警察官向けは、ショルダーホルスターに収めて隠し持つ運用なので、銃身も短くグリップも小型化しており、コンシール(隠し持つ)ガンとしての性能を有している。

PPKはフォーマルな装いも似合う

 ナチスドイツ軍時代には、警察以外にもドイツ軍や親衛隊(SS)などでも使用されており、映画などでも上級将校が使用しているシーンなどが描かれている。

 戦後は映画007の主人公、ジェームズ・ボンドが使用する銃として人気を博し、アメリカでも販売数を大きく伸ばしたが、ケネディ大統領暗殺事件をきっかけに小型拳銃を規制する流れの中で、PPKの販売が不可能となってしまった。

 一説にはPPKの売上に押されて他のアメリカ製拳銃が売れなくなったことの対策とも言われているが、ワルサー社は、やや大型なPPのフレームにPPKの銃身およびスライドを組み合わせたPPK/S(SはSportsの頭文字)を開発し、1969年から販売する。PPK/Sはグリップが大きくなり、PPKが抱えていた手の大きな人には扱いにくいという欠点を補う面もあった。

キャプション:左からPPK/S、PPK、PP。PPKが最もコンパクト(全長が短く、グリップ部も短い)だ。比較するとわかりやすい。ちなみにPPKは筆者が今年購入した2022年発売のものだが、PPK/Sは2010年代に購入したもの、PPに到っては1990年代に購入した年代物だ

 日本でも、SPや皇宮警察などで要人警護用に一時期使用されていたという情報がある。昭和の頃、西ドイツ訪問した時の総理大臣が「ワルサー買います」みたいな話をして200挺ほど購入することになったなどの話もあり、日本にとっても因縁深い銃と言える。

マルシン工業 「ワルサーPPK」HW

 ここからは、マルシン「ワルサー PPK HW」の魅力を紹介していこう。マルシンでは、ワルサー社(の親会社UMAREX)からライセンスを受け、刻印がリアルになり、グリップパネルの「WALTHER」刻印も再現されている。箱やカートリッジなどのパッケージにホログラムシールが貼られているので、ライセンスを受けたものかどうかが確認できる。

 過去に購入したものは、MARUSHINのロゴが刻印されていたり、リアルな刻印でないバージョンも存在する。今回紹介するWALTHER PPは1990年代(平成初期)に購入したサイドファイヤー方式もので、PPK/Sは2010年代のもの、センターファイヤー化され、NEWプラグファイヤーカートリッジ使用のものだ。

 HW樹脂で作られたボディはずっしり感があり、手に持った際の収まりも良い。PPシリーズ最小なのでマガジンエンドに備えられているフィンガーレストの有用性が際立つ。なお、マルシンではフィンガーレストの無い戦前モデルもラインナップされている。実にコレクター泣かせなバリエーション展開と言える。

個人的には、ワルサーPPのスラっとしたスタイルが好みだったが、PPKのコンパクトさも魅力的に感じられるようになった

 今回の新バージョンから、カートリッジも一新されて「新型アルミカートリッジ カッパーヘッド」となった。

上から、初期のプラグファイヤー(PF)カートリッジ。センターファイヤーに対応したNEW プラグファイヤーカートリッジ。今回リニューアルした新型アルミカートリッジ カッパーヘッド
こちらは分解しての比較。上が初期のプラグファイヤー(PF)カートリッジ。中央がセンターファイヤーに対応したNEW プラグファイヤーカートリッジ。下が新型アルミカートリッジ カッパーヘッド。構造が一新されているのがわかる。キャップ火薬はいずれも5mmタイプを使用する
リアルなカートリッジになったので、ダミーカートリッジのような使い方もできる

 新型アルミカートリッジは、軽量化され弾頭部がフルメタルジャケットのような別パーツとなっており、カートリッジも勢いよく飛び、外観もリアルになった。動作性も向上している。

 スライドを引いて離すとスライドが戻る衝撃が持った手に伝わってくる。セフティーレバーを下げるとハンマーも戻され(デコッキング)、セフティ解除して初弾を撃つ際はダブルアクションでの射撃となる。もちろん、ハンマーを手で起こしてシングルアクションで撃つことも可能だ。

 実際に発火動作をさせて遊ぶ際は、二発目以降はシングルアクションとなる。

【マルシン、モデルガン「ワルサーPPK HW」空撃ち、各種動作】
こちらは銃へのダメージを考え、空撃ちで楽しんでみた。スライドを引いて装填、デコッキング・セフティON操作、セフティ解除、ダブルアクション、シングルアクション
【マルシン、モデルガン「ワルサーPPK/S HW」、「ワルサーPP ABS」】
PPK/SとPPは発火で。PPK/Sはセンターファイヤー方式で快調に発火するのに対し、PPは古いサイドファイヤー方式なため、不発になる場合がある

 かつては、オートマチックのモデルガンを正常に発火させて遊ぶのは調整が必要で難しいという時代があった。詳しい解説をするとそれだけで数本の記事を書けるくらいの内容になるが、簡単に言うとモデルガンで使用するごくわずかな火薬(メーカー公称値0.01g以下)のエネルギーで、カートリッジのインナーを動かし、デトネーターを支えにしてスライドを後退させなければならないためだ。

 さらに、実弾を使用できない構造にするため、初期のモデルガンはカートリッジ全体を前進させて火薬を発火させるサイドファイヤー方式という構造だったために、ハンマーの打撃力が足りずに不発となることもあるなど、1マガジン問題なく撃ち尽くすというのが非常に困難だった。(ハンマーの打撃力を上げるとスライド後退のエネルギーが多く必要となり、動作不良につながる)

旧式のサイドファイヤー方式(上)と、新しいセンターファイヤー方式(下)の構造の違い。広義のサイドファイヤー方式は、ハンマーの打撃をカートリッジ全体に伝えるファイヤリングプレートがファイヤリングピンの代わりに存在する。センターファイヤー方式では、樹脂製のファイヤリングピンが、カートリッジのプライマーパーツを叩いてキャップ火薬を前進させる。エネルギー量が少なくて済むのでミスファイヤ(不発)しにくくなっている

 さらに、カートリッジの重さも重要になる。真鍮製で重いカートリッジは、それだけで運動エネルギーを必要とする。カートリッジ+スライドの重さを動かすエネルギーを少量の火薬で生み出さなくてはならないので、発火した際に生じるガスが漏れないようにするのと、スムーズな動作のバランスを取らなくてはならない。

 また、重いカートリッジはスライドの後退量が不足するとうまく排出されず、弾づまり(ジャム)となることがある。また、重いことでマガジンの弾上がりが不足して装填不良となる場合もある。アルミカートリッジになったことで、装填も廃莢も、非常にスムーズになったと感じた。

 いわば、モデルガンのカートリッジは、クルマで言えばエンジンのようなもので、火薬を発火させたエネルギーをいかに無駄なく動作(スライド後退)のために使用するか、そして音や火花、煙などを前方に排出させて迫力ある音と煙を演出するか、メーカーの工夫のしどころでもあるのだ。昔と比べてカートリッジの価格も高額になってしまったが、構造を見てみるとそれも仕方ないというレベルで進化しているのだ。

センターファイヤー方式になったおかげで、ローデッド・チャンバー・インジケーターが機能するようになった。カートリッジが装填されるとインジケーターのピンが押されて、ハンマー上部に飛び出て装填状態であることが確認できるものだ。
未装填(左)と装填状態(右)の様子。銀色のピンが飛び出ているのがわかる。
カートリッジがリアルになり、HW樹脂製で重さも増し、リアル刻印になったことで、発火して遊ぶだけでなく、観賞用としても耐えるものとなっている。
【こちらはガスガン】
マルゼンのガスブローバックのワルサーたち。今後発売のPPKも楽しみだ。

 ワルサーは、デザインや構造などが好みなので新しいものが出るとつい買ってしまう。最新のマルシンのワルサーPPシリーズは、刻印もカートリッジもリアルになっているので、住宅環境などの問題で発火させるのが難しい場合でも、ダミーカートリッジモデル的な鑑賞したり装弾、排莢操作を楽しむだけでも満足できるものに仕上がっている。

 かつては、発火用とダミーカートリッジモデルの両方を用途別に買う必要があったが、今は一つで両方の用途で満足できるのが嬉しい。原材料や人件費の高騰などでモデルガンの価格は上がってしまったが、かつては発火モデルとダミーカートリッジモデルの両方を買っていたことを思えば、実質価格は据え置きのようなものとも言える。

 PPシリーズは実銃においては、公的機関など現用で使われているのはごく少数となっているということだが、最新デザインのポリマーフレームオートマチックにはない優雅さだとか手にした満足感を得られるのが、PPKをはじめとするPPシリーズの魅力と言える。興味が湧いたら是非手に取ってみてもらいたい。

【ホルスター】
モデルガンで楽しむ際は、ホルスターにもこだわりたい。ホルスターは、銃を収納、携行するためのホルダーで、腰のベルトにつけたり、脇の下に吊ったりする。秘密のエージェントは、銃を持っていることを悟られないように、小型の銃を懐に隠し持つ。そんな条件に合うホルスターを見つけて入手した。実はフリーマーケットで偶然であったホルスターなのだが、しっかりした縫製で、装着感もよく気に入っている。ホルスターを装着して、ジャケットを羽織れば、気分はもう、映画の主人公だ

 マルシンのモデルガン「ワルサーPPK HW」は満足感をもたらしてくれた。そしてもちろん、現在制作中であるマルゼンのガスガン「ワルサーPPK ブローバック」は大いに気になっている。どのような製品になるのか、とても楽しみである。こちらの続報にも期待したい。

【ホルスター】
マルゼンのムービーに映し出される開発中のガスガン「ワルサーPPK ブローバック」。こちらの出来も気になるところ。発売が楽しみだ