特別企画
ホームセンターのDCMが地方店舗に超本格模型・パズルコーナーを設置! ガンプラ、ミリタリー、RCカーにミニフィギュアやパズルまで!
2024年9月19日 00:00
地方のホームセンターはワクワクする場所だ。広大な店舗の中に、日用品だけでなく、大きなテントなどのキャンプ用品、数メートルの長さの木の柱が置かれるようなDIYコーナーではその気になれば家すら作れそうだ。様々なスイッチやライトなどもあり、ドリルやのこぎりも様々な用途に向け専門的な工具がある。筆者も日用品の買い足しだけでなく、撮影用の小道具などを買いに行くことがある。
そのホームセンターに突然超本格的な"模型・パズルコーナー"が設置されたのだ! BANDAI SPIRITSのガンプラ、タミヤやアオシマ、ハセガワのスケールモデル。ホームセンターの大きな棚を埋めるプラモデルの箱に加え、専門的な工具、塗料など、都内の家電量販店の模型コーナーでもここまで広大で豊富な品揃えはないんじゃないかという非常に充実した品揃えなのである。
そんな専門的な模型・パズルコーナーが設置されたのはDCM長生店。千葉県の東南部の千葉県長生郡長生村にあるホームセンターだ。筆者の近くではこの長生店だけが模型・パズルコーナーの設置対象店のようだ。
DCM長生店は2024年4月までケーヨーD2長生店だった。ケーヨーD2は東北から関西にかけ164店舗展開しているホームセンターで、DIY商品からカー用品、園芸用品なども扱っている。2024年1月にケーヨーD2は同じくホームセンター大手のDCMにより子会社化され、4月より店名をDCM長生店に変更している。筆者が住む一宮町の隣町で店舗には車で15分かからずにいけるDCM長生店に本格ホビーコーナーが生まれた。これはとても嬉しい。今回は店舗の様子や、調べることでわかったDCMのホビー戦略をレポートしたい。
なお、今回の記事作成にあたりDCM長生店に取材を申し込んだが、店舗個別の回答は得られなかったため、店舗の写真などはお伝えできない。あらかじめご了承いただきたい。
プラモデル、塗料、工具が広い面積にぎっしり! 充実した品揃え
まず最初に筆者周辺を例に、地方のホビー状況などを語っておきたい。筆者の住む一宮町周辺はこれまでほとんど模型店もおもちゃ屋もない状況になっている。筆者が子供の頃は待ちにはおもちゃ屋や模型店があり、文房具店でもプラモデルなどが販売されていたが、今ではそういう店はない。
セブンイレブンはガンプラを扱っている店舗もあるが、筆者の生活圏内のセブンイレブンにそういった店舗はない。時々一番くじが入荷するくらい。ホビー商品を販売しているのは、車で30分ほどの人口が集中する地域・茂原市に老舗の模型店があるくらいで、現在、ホビー関連商品を店舗で購入する場所は全くないといっていい。
一方で、大型のスーパーやホームセンター、家電量販店は多い。これらの存在が町の小規模店舗をなくしてしまった状況ではあるが、車で10分圏内でもDCMだけでなく、農具や飼料、農機具の充実したホームセンターのコメリがあったり、家電量販店のケーズデンキがある。しかしこれらの店舗には模型や玩具コーナーなどはない。さらに足を伸ばせばGEOなどもあるが、中古の玩具は売っていても、模型はほとんどなかった。
それでもAmazonなど通販が充実しているので筆者のようなホビーファンでも最新商品を手にできる。筆者が東京から田舎へ帰ることを受け入れたのはまさに通信販売網があったからだ。それでもやはり都内の充実した模型コーナーがうらやましかった。品揃えを見て工具を買ったり、発売されているプラモデルを買う。チェックしてなかった新商品や、再販商品に出会って思わず買ってしまう。こう言った体験は、これまで都内の限られた店舗でしかできなかったのだ。そんな生活が、DCM長生店のおかげで一変しそうなのである。
千葉県市町村別大規模小売店舗名簿によると、DCM長生店の面積は6,443平方メートル。周辺のホームセンターとしてはかなり規模の大きなお店だ。模型・パズルコーナーは、これまでカー用品が置いてあったスペースの2/3を使って設置された。お店の中でもかなり存在感のあるコーナーだ。
品揃えは都内のビックカメラやヨドバシカメラと言った家電量販店の旗艦店並みに充実している。BANDAI SPIRITSのガンプラを始め、コトブキヤのプラモデル、グッドスマイルカンパニーの「MODEROID」、マックスファクトリーの「PLAMAX」などで1コーナー、タミヤ、アオシマ、ハセガワなどでカー、ミリタリー、航空機などスケールモデルで1コーナーを設置している。かなり本格的な品揃えでプラモデルの箱がぎっしりと並んでいる光景は迫力がある。
ハセガワの建機シリーズなども並んでおり、ボリュームだけでなくバリエーションも豊富だ。初心者向けの組みたてやすいアオシマの「スナップキット」シリーズは目立つように別棚に置いてあるなど、店舗を設計した担当者の商品に対する深い理解も垣間見える。タミヤは別コーナーでミニ四駆とRCカーも販売されている。
そして塗料もかなりの面積が割かれている。タミヤとGSIクレオスの「Mr.カラー」などで1コーナーを形成、さらに別コーナーにはガイアノーツなどの塗料もある。もちろん筆も高額なものから安価なものまで、さらにエアブラシもコンプレッサーからハンドピース等様々な部品がそろっている。
そして工具だ。ニッパー、ヤスリ、けがき針、様々な工具がずらりと並んでいる。タミヤだけでなく、ゴッドハンドやウェーブなど様々なメーカーの工具がある。初心者向けから高級工具まで筆同様多彩な種類がそろっている。筆者にはどう使うかよくわからないような高級な工具が並んでいると、「これを使うとどんなことができるんだろう」と興味が惹かれる。これはとてもワクワクさせてくれる光景だ。
ガンプラ、アニメモデル、カー、航空機、艦船、多彩なプラモデルに加え、非常に充実した塗料と工具……。ここまで本格的なプラモデルと工具がそろっている場所は、都内でもそこまで多くないだろう。こんな本格的な模型コーナーが家の近くにあるというのは、すごく嬉しい。また、展示コーナーにはモデラーの作品が展示されており、腕に覚えのあるモデラーの発表の場ともなっている。
そしてDCM長生店の模型・パズルコーナーは、その名の通り、模型だけでなくパズルも充実している。やのまん、ビバリーの本格的なジグソーパズルだけではなく、カワダの「ナノブロック」や「ペーパーナノ」、ビバリーの「クリスタルパズル」など、こちらも充実している。また、タミヤのスイーツなどの模型が作れる「デコレーション」シリーズなど、女性に人気の商品もある。
加えてリーメントのミニチュア、メディコムトイのフィギュアなど、ハイターゲットを視野にしたフィギュアやミニフィギュアも充実、本当に細かく見れば時間を忘れてしまいそうなほど要素が充実しているのだ。
一方で子供向け玩具や、同じBANDAI SPIRITSの「METAL BUILD」や「ROBOT魂」といったフィギュアは置いていない。完成品フィギュアはメディコムトイの「ドラえもん」シリーズなどくらいで、ほとんどが自分で作って楽しむ商品というのが、模型・パズルコーナーユニークなポイントだろう。
今回、このコーナーが嬉しくて、前から気になっていた戦闘機「F-16」のタミヤのプラモデルと、機体色を塗るためのスプレー塗料、アクリル塗料と薄め液、スミ入れ様に筆も買った。やはりずらりと並んだ商品から自分が欲しいものを探すのはとても楽しい。
これだけ本格的な模型・パズルコーナーがDCM長生店にあるということはまだ知られていないようで、コーナーを見つけた人達は興奮した様子で棚を見ていた。この模型・パズルコーナーはDCMグループの戦略のようだ。次章では公式ページからその戦略を見てみようと思う。
全国840のDCM店舗のうち、25店舗に模型・パズルコーナーを設置
地方の場合、ホームセンターは生活の基盤を支えてくれる大事なお店だ。家の電気設備、家の中の電球ではなく、外灯や防犯カメラなどを購入したり、草刈り用の大きな道具や、除草剤、時には椅子やテーブル、外壁の補修など、ホームセンターは専門的な"趣味"を満たす場所だけでなく、生活を安全にするためにもなくてはならない場所だ。車の補修やドレスアップでもホームセンターは重要な場所だ。
そして考えてみれば、ホームセンターはホビーとも相性が良いのだ。DIYはクラフトと相性が良いし、アウトドアでRCカーを楽しんだりすることもできる。なにより充実したホビー商品はいまや多くの人の趣味になっている。ホームセンターにホビーコーナーというのは、それほど違和感がない組み合わせと言える。ただし、今回のDCM長生店の模型・パズルコーナーはあくまで試験的な側面も強いようなのだ。
DCMの公式ページ内の、「サービス・専門コーナー」には「ホビー・クラフト」のページがある。DCMはホームセンター事業を手がける大手小売企業であり、親会社はDCMホールディングス。DCMは全国37都道府県で840のホームセンターを展開している。筆者の近くでさえDCM東金店、DCM大網白里店、DCM茂原店、DCM茂原高師店とかなりの店舗が運営されているが、模型・パズルコーナーを設置しているのは長生店のみである。
模型・パズルコーナーは、DCMの新しい戦略らしく、現在、DCM長生店をはじめとした25店舗がコーナーを設置している。北海道、山形、埼玉、長野、愛知、奈良、広島など25店舗は全国に散らばっている。DCMの出店店舗数は840店舗。その中のわずか25店舗に模型・パズルコーナーが設置され、その1つにDCM長生店が選ばれて、そこを見ることができたのは幸運と言えるかもしれない。このほか、レザークラフトやアクセサリーを作るための「クラフトコーナー」を4店舗で実施しているとのことだ。
ホームセンターは模型とは相性が良いと思う。DIYなど作ることを趣味とする人が集まる場所であり、カー用品でも塗料やスプレーエアブラシなどを使う。実際筆者はカッターや撮影用の機材などでDCM長生店を使った。ドリルコーナーで、ピンパイス(模型に使う極細ドリル)用の刃がなくてがっかりした記憶もある。
模型業界はコロナ禍で外に出られないという状況の中大きく需要を増やし、その後も活況だ。ユーザー層の年齢が上がっていく中、高額商品なども増えてきている。変化していくユーザー層に対応するため各企業も様々なチャレンジを行っており、DCMMの模型・パズルコーナーもそういった動きの1つだと思う。
ただ、個人的なことを言わせてもらえれば「自分の生活圏内に超本格的な模型コーナー」ができたことが、単純に嬉しい。昨今ではAmazon等の通販サイトで模型やフィギュアも購入できるようになったが、やはりずらりと商品が並んでいる中で「何を買おうか」と迷うのがたまらなく面白い。リーメントの小物などもあるので、フィギュアの撮影などにも活用できそうである。DCM長生店は筆者にとって機会があれば通ってしまうお店になりそうだ。今後の活動なども注目したい。