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子供も大人も楽しめる! トイザらス新戦略キーマンインタビュー

皆が訪れたくなる場所を目指した新店舗・京都駅前店のコンセプト

 トイザらスが新戦略を展開しようとしている。10月20日にリニューアルオープンした「トイザらス・ベビーザらス 京都駅前店」では店舗レイアウト、品揃え、さらにはコンセプトも従来の店舗とは異なる戦略をとっているという。

 その1つが「大人向け商品の拡充」。従来の子供に向けた商品展開、サービスに加え大人も楽しめる要素を加えている。昨今大人向け商品、ホビー商材は大きな人気を博しており、15歳以上を対象にした複雑で精密なフィギュアや模型なども増えてきた。こういった玩具/ホビー業界の潮流に、トイザらスはどのように対応していくのだろうか?

 今回、日本トイザらスマーケティング本部ブランドコミュニケーション部長の立原俊久氏にトイザらス・ベビーザらス 京都駅前店(以下、京都駅前店)のコンセプト、そしてトイザらスの新戦略について話を聞いた。トイザらスだからこそ実現できる新しい時代へのアプローチとは、どんなものだろうか?

大人と子供両方が楽しめる、現代に求められる新しいサービス

――まず最初に、トイザらスが"新戦略"を展開していくということですが、これはどのようなものでしょうか?

立原氏:「大人も子供も楽しめる」というのがトイザらスの新戦略となります。過去3年ほど、世界的にコロナ禍が大きく社会と人の価値観を変えました。イベントが中止になったり、旅行ができなくなりました。また在宅勤務になり家で仕事をする人も増えた。家族全員が"家"で過ごすことが多くなったのです。そうなると家の中で遊べるもの、玩具の需要は大きく増しました。

日本トイザらスマーケティング本部ブランドコミュニケーション部長 立原俊久氏

 子供と親が接する時間が多くなり、家族で過ごす時間がより「大切なもの」となったと思っています。子供向けの玩具需要だけではなく、家族で楽しめる玩具も人気を集めました。それだけでなく大人自身が「自分が興味を持つ玩具」というのも重視するようになった。旅行や外食に使っていたお金を玩具やホビー、趣味に使う人も増えていきました。

 私たちはこの流れの一端にトイザらスが果たした役割があると考えています。トイザらスは日本に上陸して30年以上、当時子供だった人達が30年以上たって、自分の子供と共にトイザらスに訪れる。子供時代の玩具の楽しい想い出を自分の子供にも体験させたい。もちろん子供に玩具を買い与えるためにトイザらスに来るのですが、懐かしさや、自分の好みに合った商品を見つけて一緒に買っちゃう。ウルトラマンや仮面ライダーなど、自分が好きだったヒーローが、現代の技術でカッコイイ玩具になっていてつい手に取ってしまう。そういった流れも強くなっていると感じています。

 「子供に買い与える玩具」と共に、「自分のために買う玩具」という商品が増えてきていると思います。また大人向けの商品は金額も高く、その分作りも精巧で、大人の目線でも満足できる商品が増えてきました。トイザらスでおもちゃを買ってもらっていたユーザーが大人になり、自分が稼いだお金でトイザらスで買い物をするということを自然にできるお客様も増えてきた。

 大人向け商品が拡充された背景として、バンダイナムコグループが2018年にBANDAI SPIRITSを立ち上げ、ハイターゲット向けの商品を積極的に展開するようになってきたというのもわかりやすい事象の1つだと思っています。2010年代くらいから、明確に大人に向けたフィギュアやプラモデルも出てきて、従来の模型やRCなどのホビーの世界を活発にしています。玩具店で扱っている商品の中に、大人をターゲットとした商品が増えてきているんです。

 また、大人向けの商品は切り口が多彩です。部屋の中にたくさん並べるコレクション、ギミックや可動などをしっかり遊ぶ商品、飾って眺める……。ミニ四駆やベイブレードなど子供と一緒にも遊ぶけれど、自分のものとして大人目線でしっかり遊ぶ、といった商品もあります。こういった複雑な需要を持つ大人向けの商品は現在増えていると感じています。トイザらスとしてはこういったお客様の変化、商品の変化に対応していきたいと考えています。

立原氏自身が先行販売時に早朝から並んで購入したという「BX-23 フェニックスウイング9-60GF」。現在人気のベイだ。立原氏は店舗イベントなどに関わるだけでなく、様々な玩具も積極的に購入・コレクションしている

――お客様や市場に対して変わっていくトイザらス、というところで気になるのは、日本やアジアでのトイザらスの現状です。

立原氏:アジアにおけるトイザらスの状況ですが、まさに大人向け市場の強さが顕著に現れて来ています。その中でも日本が顕著ですが、ユーザーがコレクションしたがる商品品質や、細部に対するこだわりが詰まった商品、大人が買いたくなるハイクオリティな商品があって、トイザらスで子供だけでなく大人も商品を買ってくれている。こういった背景も、アジアのトイザらスは人気を博している理由だと考えています。

 玩具に限らずですが、凝った仕様、仕上げの見事さ、細部へのこだわりといったポイントは日本の製品の特徴だと思います。海外では「玩具は子供のもの」として、可能性を閉じてしまったのではないか。「大人に応える優れた玩具/ホビー商品」というのは今後日本を中心にアジア、そしてそのほかの国にも影響を与えていくと思っています。

トイザらスの今年のクリスマスキャンペーンのキーワードは「めいっぱいクリスマスしよう」

 2022年の私たちのクリスマスキャンペーンのメッセージは「クリスマスを、プレゼントしよう。」。それまでは「子供が欲しいものを買う」というのが、多くの親の考えることだったと思います。だから、2022年は「親も子供に買ってあげるものを一緒に選ぶ、子供が本当に欲しいものを考える」という方向性にしました。親が玩具について考える時間をエンターテイメントにしようとしたのです。これは大人が自然に玩具に対して、興味を持つきっかけにもなったと思います。

 その上で2023年のクリスマスキャンペーンのキーワードは「めいっぱいクリスマスしよう」。2022年からさらに踏み込んで、大人も子供と一緒にクリスマスのすべての行事と、そして玩具を楽しもう、というものです。

 トイザらスのタグラインは「あそびが、キミをつくる。」です。玩具に限らず、遊び全体が子供を、家族のコミュニケ―ションも作っていく。玩具はその1要素であって色々な遊びが、人の成長の要素となる。だから私たちは「大人向け玩具/ホビー」と従来の「子供のための玩具」をわけるのではなく、人を形成していく新しい要素が加わったマーケットでいかに成長していくか、ということこそ大事だと考えているんです。

10月20日よりオープンしたトイザらス・ベビーザらス 京都駅前店。新しいコンセプトで新戦略を実現しているという

 次ページでは京都駅前店の新戦略を取り上げていこう。