インタビュー
「ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形」原型師・Syujyu氏インタビュー
2021年12月21日 00:00
「破烈の人形はシルエットで魅せる騎体」、SyujyuのGTMへのアプローチ
―― 「ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形(以下、「破烈の人形」)」の企画が決まった経緯をお聞かせください。
Syujyu氏: 元々アワートレジャーさんの方でF.S.S.を題材にしたガレージキットはリリースしていたのですが、GTMに関しては許諾が下りていなかったんですね。そこに、ボークスさんのカイゼリンがリリースされたことによって、各メーカーにもGTMの商品化許諾が降りるようになり、それならば早速ということで申請したというのがきっかけとなります。「破烈の人形」のアイテム選択は商品の企画を担当するアワートレジャーの永見さんの希望ですね。企画当初からマーク2とマーク3を並べたいということで、私の方でマーク3を担当したという形です。
―― Syujyuさんは原型師としてこれまでどんなお仕事をされてきましたか?
Syujyu氏: ガレージキットの原型が主になります。これまではB-CLUBさん、WAVEさん、アワートレジャーさんなどで仕事をやらせていただきました。原型師は副業になりますので、本業の方に影響の出ない形で、納期がそこまで厳密ではなく相談可能な仕事をやらせていただいています。
―― その中で永野護氏の作品関連ではどのようなお仕事がありますか?
Syujyu氏: WAVEさん、アワートレジャーさんでのF.S.S.関連のガレージキットの仕事ですね。変わったところではmomokoドールクリスティン・Vに付属のガットブロウを作ったりしたこともあります。実はこのガットブロウがこれまでのF.S.S.関連の仕事の中で一番監修が厳しかったですね。
―― 「F.S.S.」では、MHから、GTMへの変更がありました。とても大きな変化ですが、原型を手がけるに当たり、MHとGTMの大きな違いとはどんなものだったでしょうか?
Syujyu氏: MHに関しては頭部、胸部、腹部、腰部、肩部、上腕など、主要な装甲パーツを作ってその間を関節パーツで埋めていくような、従来の他のロボットでも通用するような作り方が可能なのですが、GTMではそのような作り方は通用しないというのが一番大きいですね。MHの頃は装甲が主要パーツと言えましたがGTMの主要パーツはフレームというか。全身のフレームをきちんと作って、そこに装甲を被せていく形の作り方をしないと成立しません。
デザイン画で見えていない部分を考えるのもF.S.S.のガレージキット原型を作るうえで大きなウェイトを締める作業ではあるのですが、そこの考え方もだいぶ変わっていまして、デザインを考えるパーツの大きさが大きくなったというか、乱暴な言い方をするとMHの頃は関節部のごちゃメカを考えてたのが、GTMだと大きなフレームパーツを考えないといけないようになりました。MH造形とは別のセンスが要求されると感じています。
―― GTMは立体化に適したモチーフですか、それとも難しいですか?
Syujyu氏: 1/100で実際に造形してみるとわかるのですが、パーツ単位のボリュームとしては1/144のMHに近いボリュームだったりします。その状態で1/100のMHより身長が高かったりするわけですから、難しい部類に入るかと思います。今現在出ているGTMのガレージキットが大きめなサイズなのはそういった理由もあると思いますね。
―― ツインスイングによる関節、手足の大きなバランス、華奢な背骨など、GTMは永野氏ならではの「巨大ロボット」への独特の視点、アプローチを感じます。立体化する上でSyujyuさんが感じた、"GTMならではの楽しさ"はどこだったでしょうか?
Syujyu氏: GTMのデザインも多くが発表されてきており、GTMの中にも「シルエットで魅せる騎体」、「パーツ単位のデザインで魅せる騎体」などデザイン的な方向性があるんだなと感じてきています。そういったデザインのポイントを理解して造っていく点でしょうか。
例えば今回の破烈の人形は前者だなと思っています。ブースター、羽根、スタビライザーなどが構成するシルエットは非常にかっこいいデザインですが、装甲パーツ1つ1つを見るとそこまで複雑な形状のパーツはありません。逆に後者の代表的な例はダッカス・ザ・ブラックナイトだと思いますね。
―― GTMの中でも情報量が多いと感じる「破烈の人形」ですが、今回立体化をしたことでの感想をまず教えてください。
Syujyu氏: とにかく形になってほっとしたというのはあります。前述した通り、とにかくシルエットで魅せるデザインだと理解しましたので、そこはうまく表現できたと思っています。
―― 組み立てるユーザーに最も見て欲しい、注目してもらいたいポイントはどこですか?
Syujyu氏: ブースターや羽根が接続されているフレーム部分や手のひらの造形でしょうか。後、脛や足首周りの装甲の形状もこだわった部分です。
―― 原型師として、お気に入りのポイントを教えてください
Syujyu氏: 苦労した部分とも重なるのですが、全身のバランスでしょうか。
―― 立体化に当たり苦労したポイントはどこでしょうか。
Syujyu氏: 上でも言いましたが、全身のバランスですね。実は監修に出す前に一度出力して組み上げた際、どうもしっくりこなくて、一度3Dデータの調整をして全パーツ再出力したりしています。結局はちょっとしたポイントを変えるだけで劇的に印象が改善されたのですが、そこに気づくのが難しかったですね。アワートレジャーの永見さんの意見なども参考にさせてもらって、なんとか解決しました。
―― 製作に当たり、永野護氏の監修を受けたところで印象に残っている場所はどこですか?
Syujyu氏: 永野先生も月刊ニュータイプの記事中でおっしゃっていましたが、必ずしもデザイン画にそっくりなことが正解ではないという点ですね。これはF.S.S.デザインについては昔からそうなのですが、デザインの100%の物は永野先生の頭の中にしかなくて、デザイン画、本編の描写でも100%はアウトプットされていないと思っています。
監修を受けて永野先生の意見を取り入れていくことで、より100%のデザインに近いものを具現化するお手伝いをしているという感じです。そういった点ではデザイン画を理解し、その通りに造ろうと試行錯誤し、それでも疑問に思った点は監修でこちらから聞くようにしています。今回の破烈の人形でも1点、そういった部分がありました。
―― 立体化したことで新しい発見、改めて感じたGTMの面白さというものがあれば教えてください。
Syujyu氏: GTM独特のバランスを理解できたという点は大きいですね。特にあの異形なバランスをカッコよく見せるポイントについて、今回の破烈の人形の立体化を通して気づくことができました。
また、破烈の人形を造るにあたって、あらためて他のGTMデザインも見直したのですが、デザインの方向性が様々で今後GTMを造っていくのが楽しみになりました。
―― 軸打ち、仮組みなどガレージキット製作はプラモデルとは違うテクニックが必要ですが、初心者でも憧れて買う人もいると思います。アドバイスがあれば。
Syujyu氏: 軸打ちはしっかりした方がいいと思います。私も最近購入したのですが、軸打ちにはタミヤクラフトツールの電動ハンディドリルが本当にオススメです。深く軸打ちの穴を開けることが出来ますし、2,000円程度ですのでぜひ使ってみてください。
―― モデラーに向けて、「破烈の人形」を作るのにここを頑張って欲しい、というところはありますか?
キットはポーズ固定モデルとしてパーツ接続のダボも角ダボで製作してありますが、それにあまりこだわらず、自分でかっこいいと思う組み方を模索してみてほしいですね。ほんの少しの調整でも積み重なると大きく印象が変わる形になりますので…後、塗装も色々な表現を見てみたいです。
―― Syujyuさんご自身はこの商品を手にしたら、どのように組み立てたいですか?
Syujyu氏: ひとつデザイン画版の頭部で完成させていますので、今度は違う頭部で作りたいですね。
―― 改めて、本商品の発売を楽しみにしているユーザーへのメッセージをお願いします。
Syujyu氏: アワートレジャー初、そして私自身も初のGTMの立体化となります。様々な苦労もありましたが何とかリリースすることができました。正直すごく高額なキットですが、完成するとそれに見合う価値は必ずあると自負していますので、キットが手元に届きましたら是非完成させてみてください。
「ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形」は非常に興味深い商品だ。筆者もMHの立体物を作ったが、コミックや設定画とはまた違った魅力を感じた。永野氏のメカは、やはり立体物で目の前にしたい。GTMは非常に魅力的な存在で、パーツの連なりや、圧倒的な存在感はコミックで強く伝わってくるが、そのデザインを立体物で、様々な角度や、パーツ単位で楽しんでみたい。
GTMの立体物はまだ少ない。今回紹介した「ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形」は現時点で最新の破烈の人形を満喫できる唯一の立体物の商品だ。注文は12月25日までである、ファンはこの機会を逃さないようにしておきたいところだ。
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