インタビュー
初の昆虫モチーフの戦隊1号ロボ! 「DXキングオージャー」
可動、スタイリング、開発者が語る様々な挑戦
2023年2月21日 00:00
- 【DXキングオージャー】
- 3月4日発売予定
- 価格:9,350円
3月よりスタートするスーパー戦隊の新番組「王様戦隊キングオージャー」(テレビ朝日系列 東映制作)に登場する戦隊ロボ・キングオージャーは10体のシュゴット(虫メカ)が合体して誕生する巨大ロボだ。クワガタの大顎を角にした頭、トンボの羽根、胸にクモなど各所に虫メカの特徴が出ていて、トゲトゲとしたデザインと力強さが大きな特徴だ。
キングオージャーをモチーフとした「DXキングオージャー」は、変形合体に加え、プロポーション、可動にこだわった、「遊んでとても楽しい商品」となっているという。これまでの戦隊ロボは初期は5体のメカが合体というのがフォーマットだったが、今回はいきなり倍の10体である、その並んだボリューム感は驚きをもたらす。
しかもその10体のシュゴットが合体した「DXキングオージャー」は、とてもよく動くのだ。膝立ち、腕の振り上げ、腰のひねり、可動のために装甲が動くなどアクションフィギュアの技術が活かされている。
素材は耐久性の高いABSを使いながらディテール表現も細かく、メカとしての表現も凝っている。関節にはクリックによる抵抗がアリ、大きな手足をダイナミックに動かせる上に、ポーズをしっかり支える。昆虫の姿から巨大ロボにガラリとイメージを変えながらも、変形システムはシンプルだ。
メインターゲットである子供達はもちろん、大人にも魅力的な、よく動き、カッコイイロボットフィギュアとなっている。この可動とスタイリングを追求する方向性は前作にあたる「DXドンオニタイジン」の流れを汲んでいるが、本商品は「DXドンオニタイジン」で得たノウハウをフィードバックし、さらに発展させているという。
これからの戦隊ロボはどう進化していくのか? 「DXキングオージャー」は多くの人が期待しているプロダクトである。今回は本商品のプロデュースを担当するバンダイ ブランド企画部 企画1チームチーフの木村覚志氏と、商品を担当した山本瞳依氏に話を聞いた。チームの新たな挑戦を取り上げていきたい。
合体を意識しながら虫のフォルムにこだわった10体のシュゴット
まずは各シュゴット(虫メカ)のデザインやギミックを見ていきたい。「DXキングオージャー」は10体ものメカが合体する。クワガタ、トンボ、蝶、ハチ、カマキリ、アリ、そして2体ずつのテントウムシにクモ……並べた姿は圧巻だ。
「DXキングオージャー」のシュゴットは"ちゃんと虫の姿をしている"のが楽しい。大きなゴットクワガタはもちろん、クリアパーツで大きな羽根を表現したゴッドトンボ、美しい羽根を持ったゴッドパピヨンは立体化で省略されがちな足もちゃんと確認できるし、ゴッドハッチは腹部の丸さや突き出た針まで造型されている。
ゴッドクモも蜘蛛が胴体を地面にぴったり付けて獲物を待ち構えるような姿勢もとれる。虫のデザインとしてはかわいらしさも感じるデフォルメもされているが、虫らしいフォルムもちゃんと表現されており、昆虫図鑑で本物と見比べたくなるリアリティがある。
その中で、特に「DXキングオージャー」の中心となるゴットクワガタはクワガタメカとしての表現にこだわっている。6本の脚のうち、大きな後ろ脚はもちろん、前と中脚も基部がボールジョイントになっており、きちんと可動する。最大のウリである大顎ももちろん可動、クワガタとしての特徴を実感できる。背中の羽根も左右に開く。動かすことでも"クワガタらしさ"をたっぷり楽しめる。
全体の表現も面白いが、特にゴットクワガタは特徴的だ。よく見ると大顎の構造、全身のディテールが左右で全く違う。前脚の片側に金の差し色が入っていたり、注意してみるとどんどん左右の違いが見えてくる。手に入れた子供はここに気がつき改めてデザインをしげしげと見てしまうだろう。玩具で遊ぶことで一層愛着が生まれる仕掛けともいえる。
ゴットトンボは羽根の基部が本物のトンボのように折れ曲がるように可動、ゴッドハッチは敵を刺すために腹部と張りを前にした姿と、体をまっすぐにした飛行形態にできる。ゴッドパピヨンは巨大な羽根はもちろんのこと、脚もきちんと造型されている。ゴッドクモも体を伏せたような状態にできる。各メカの関節は合体・変形を意識してのものだが、虫としての特徴も活かしている。デザインの巧みさを実感させられる部分だ。
2人の開発者にシュゴットとして2人にお気に入りのポイントを聞いてみた。
山本氏は特に「塗装」を見て欲しいという。「『キングオージャー』は実は左右非対称な部分が多い。クワガタだと左右の顎が部品構成が違うようなデザインですが、これを成型色のパーツで分けてしまうと部品が細かすぎてしまいお子様には危ないので、塗装で左右の違いを表現しています。差し色など塗装はすごくこだわらせていただきました」。
「もう1つ、"かすれ塗装"も特徴です。ゴッドパピヨンの羽根とか、ゴッドクワガタの水色の部分とか、拭き取ったように塗装がかすれている。これは各メカ達が新品ではなく、様々な戦いをくぐり抜けてきたのだろう、と思わせる要素なんです」。
木村氏のお気に入りの部分は「ボールジョイント」。「ゴットクワガタの前脚と中脚の基部はボールジョイントを使っています。これまでの戦隊ロボでは部品の大きさや安全性などであまり採り入れなかった機構ですが、昆虫の脚の表現として使っています。この接続部分は変形やプロポーションの関係で薄く小さくしなければいけなかったんです。試行錯誤した結果、基部のボール部分を凸にして、脚側が凹になっている設計に落とし込むことで、変形に干渉せず、フレキシブルに動かせるようになりました」。
木村氏は続けて「シュゴット達はどれが好きとかは選べないですね。カッコイイし、かわいらしさもあって全部好きです」と言葉を重ねた。
「DXキングオージャー」でのもう1つの大きな挑戦となったのが全身のモールドだという。「DXキングオージャー」の各メカの表面はびっしりとモールドが入っていて情報量が凄まじい。本商品の本体部分に多用されているABSは強度があるがディテール表現が難しい素材だが、工場側での金型技術により細かな表現が可能となったという。このほか軟質素材、クリアパーツなども要所で使われ、ストレスのない可動を実現、とがった部分には柔らかい素材が使われ安全面にも配慮されている。
個人的に気に入ったのはゴッドカマキリだ。上半身を建て威嚇するカマキリのようなポーズをしているメカだが、合体時にはロボットの左足の脛から下部分、いわゆるブーツとなる。その変形を考えて本体を見てみると実はブーツを足の支えで斜めにしているのがわかる。脚をかかとを下にして、斜めにするだけでちゃんとカマキリに見えるデザインが楽しい。同じく右足となるゴッドハッチは全くデザインが異なるところがいい。次ページでは各シュゴットを変形合体させていく。
シンプルで大胆な変形で、キングオージャーに!
それでは変形合体させていこう。山本氏の手によって10体のメカがキングオージャーになっていく。ロボットのメインパーツ、胴体、腕、腿部分を構成するのがゴッドクワガタだ。大きく、可動範囲が多いゴッドクワガタは可動関節が変形機構としても使われる。
「10体もいるシュゴットですが、変形そのものは基本簡単なんです。クワガタの胴体を折り曲げ、各部品を調整すると胴体と腕、膝部分までの足を備えた体の基部になる。クワガタの大顎や足部分は胸の飾りの横のパーツになります。ハチとカマキリが変形して脛と足を構成します。変形は1クリックで変形します。ハチはお腹を深くたたんで、羽根を側面にぴったり付けると変形完了です。前腕部にテントウムシがつくことでヒーローロボらしい力強いデザインになります」。山本氏は解説しながらキングオージャーを合体させていく。
テントウムシに関して木村氏は「キングオージャーの腕はゴッドクワガタの時は後ろ足になる。このため虫メカであることを強調するためにできるだけ細い、虫の足らしいバランスにしています。キングオージャーになったときはテントウムシでボリュームアップすることで、変形前とは大きく異なる印象を与えるようなデザインとなっています」と語った。
山本氏はさらに変形合体を進めていく。「ゴッドパピヨンは胴体部分を分割、この胴体がキングオージャーの頭部になります。ゴッドトンボは長い胴体部分を分割、羽根と頭部がキングオージャーの背中を形成、キングオージャーに羽根が生えたようなデザインになります。胸部分、腰部分にそれぞれゴッドクモを取り付けることで、キングオージャーの本体が完成です。パピヨンとトンボの分割部品は組み合わせ、さらにゴッドアントを取り付けることで剣になる。これで変形完了です」。
合体完了をしたキングオージャーは前腕や太ももが細いのが、前腕や脛部分のボリュームを強調してパワフルだ。そしてやっぱり虫モチーフなのが良い。トンボの羽根、クワガタの大顎の形をした角、クモが胸と腰のエンブレムになっていて、腕のテントウムシは盾のようだ。
個人的なお気に入りはゴッドハッチが変形する足。ロボットは"扁平足"と揶揄されるような平べったく幅広な足を持つデザインが多いが、ゴッドハッチは丸い腹部が接地部分となる。これできちんと接地し大きな体を支えられるのはデザインとしての面白さと言えるだろう。合体ロボの固定概念を壊そうという気概を感じられる部分だ。
そしてこの特徴あるムシロボが、羽根を広げた蝶を鍔にした大きな剣を持っているのが良い。筆者は戦隊ロボのメイン武器と言えば剣というイメージを持っているが、この剣をどう表現するかも戦隊ロボの注目ポイントだ。過去には恐竜の尻尾などもあったが、「DXキングオージャー」では、ゴッドトンボの胴体で刃の部分を表現、さらにゴッドアントがくっついて迫力を増している。この剣を構えたり振りかぶれる可動を持っているのが「DXキングオージャー」の楽しいところだろう。ポーズを追求したいところだ。
木村氏は完成したゴッドオージャーを前に、「ゴッドクモが前につき、ゴットトンボが後ろにくっつくことで、かなり厚みが生まれ、力強いロボのシルエットを形成しています」と語った。
そして戦隊ロボに欠かせないのが"パワーアップ"である。様々な新たなメカが登場し、キングオージャーと合体、パワーアップした力で敵を打ち砕くのである。「DXキングオージャー」の場合、放送前の時点で「DXゴットカブト」が公開されている。
「DXゴットカブト」はゴッドクワガタに劣らない大きさを持つカブトムシのメカ。6本の足が動き羽根が開くなどこちらも虫メカとしてしっかりモチーフを再現している。
山本氏は「虫形態でも羽根が開いたり、各脚の可動など両形態の表現と遊びごたえは持たせています。虫形態では角が動くのですが、直接前方に突き出した「頭角」を触らず、頭頂部の「胸角」を動かすと連動して動く玩具らしいギミックを仕込んでいます。カブトムシならではの動きを再現したギミックも見て欲しいですね」と語った。
そしてこのゴッドカブトが、全長400mmという大きなカブトキャノンに変形するのである。折りたたまれていたボディを伸張し大きなカブトがさらに長くなるのだ。折りたたまれた内部は金メッキが仕込まれており、露出することでギラリと輝く。
山本氏は、この"金メッキ"がオススメのポイントです。虫形態の時は金メッキは体の内部に折りたたまれて見えないんです。これがカブトキャノンにすると表れ、キラキラと輝く。この驚きを感じて欲しいと思います。表じゃなくて、裏面もメッキが施されているんですよ」と変形させながら語った。
そしてこのカブトキャノンを装着する。大きな武器を「DXキングオージャー」はしっかり支える。この巨大武器を装備することで、キングオージャーの迫力はさらに増す。正直「これが最終決戦の決め技なのではないか?」というくらいのすごくでかくてカッコイイ姿である。
山本氏は「この大きな武器がしっかり装着でき、ポーズが付けられるのも「DXキングオージャー」のセールスポイントです。片側が重くなりますが、支えられます。腕を挟み込むことでしっかりと固定でき、簡単に取り外しができながら、動かしても大丈夫です。キングオージャーは長大なキャノンを水平に構えて銃口を前にして射撃します。この射撃ポーズも支えなしで保持してくれます。今後も様々な商品が出てお客様に驚いていただきたいと思っています」と語った。
10体合体、カブトキャノンの大迫力で「DXキングオージャー」のギミックの楽しさ、カッコ良さは伝わったと思う。次ページからはインタビュー形式で、「DXキングオージャー」のコンセプトや、開発者のこだわりポイントをより掘り下げていきたい。
(C)テレビ朝日・東映AG・東映
※写真は試作品のため、実際の商品と彩色が異なります