インタビュー

猫科の動き、ゾイドの重量感を! 「AZ-01 ブレードライガー」開発者インタビュー

「ゾイドワイルド」のフィードバックも受け進化していくゾイド

――「AZ-01 ブレードライガー」は、組立式のキットですが、ユーザーはプラモデルのようにランナーからパーツを取り外し組んでいくという感じでしょうか?

中瀬氏:「ゾイド」シリーズは基本は組立式のムービングキットですが、その時々で組立のバランスは変わっています。2019年より展開した「ゾイドワイルド」は対象年齢を6歳以上としており、組み立てやすさを重視しました。パッケージを開けるとパーツは1つ1つ切り離されており、ランナーはなくしました。番号なども振っておらず、絵でわかりやすくパーツを提示し、6歳のお子さんがしっかり組み立てるようにしました。

 対象年齢15歳以上の「AZ-01 ブレードライガー」は、ランナーからパーツを切り離し、組立説明書に従って組み上げていくプラモデルスタイルです。部品の分割も細かく、説明書をしっかり見て、順番通りに組み立てなければ組み上がらないものとなっています。各パーツの造型のシャープさ、ディテールの情報量も注目して欲しいです。ちなみに組立に接着剤は使用しません。電池を入れるのにドライバーを使用するのと、ランナーからパーツを切り離すために、ニッパーなどの工具は必要になります。

シンプルさにかっこよさを感じさせるパッケージ
パッケージ内部はランナーが詰まっている
パーツは大きめで組み立てやすさ重視だが、ディテールの密度は濃い

――ディテール表現も細かいですが、パーツの造型でのこだわりはありますか?

中瀬氏:動くために各パーツは軽さも意識して、肉抜きを行っているパーツもありますが、メカとしての整合性も考えています。デザインでの説得力を持たせている。たてがみ部分は放熱フィンを兼ねているので、肉抜きをすることで薄く、放熱効率を上げるためのデザインに落とし込んでいます。

――制作中に苦労した点などはありますか?

中瀬氏:「MPZ-01シールドライガー」開発時でのブレードライガーの案として、「歩きながらブレードが展開するギミック」を考えました。しかし開きはするけど開きっぱなしになってしまう。収納のためのギミックを入れようとすると複雑化すぎてしまうので、このアイディアはボツになりました。

 しかし歩きながらの武器展開、そして収納というアイディアそのものは「ゾイドワイルド」で活かせるようになります。「ゾイドワイルド」は、各商品に「ワイルドブラスト」という必殺技ギミックを歩行と共に織り込んでおり、機構の設計の経験値を蓄積できました。その設計のノウハウは「AZ-01 ブレードライガー」にも活かすことができました。

 もう1つ、「MPZ-01シールドライガー」から、「ゾイドワイルド」、そして「AZ-01 ブレードライガー」で継承した表現は「ボーン」の存在です。「AZ-01 ブレードライガー」は顔などの一部の装甲を外し、骨格を見ることができます。元々の「ゾイド」には内部骨格という考え方はなかったんです。

装甲を外すことで内部のフレーム構造が確認できる
肉抜きをしたことで放熱フィンとしての説得力が増す
可動域の広いブレード

 このアイディアの元になったのは2001年のアニメ「ゾイド新世紀/ゼロ」に登場する「ライガーゼロ」からです。ライガーゼロは装甲を換装することでカスタマイズが可能で、装備のない「ライガーゼロ野生体」なども登場しました。ここでゾイドに「フレーム・素体」というアイディアが盛り込まれたのです。それならばライガーゼロ以前にデザインされたシールドライガーにも素体の概念を導入できるかも? という考えのもと「MPZ-01シールドライガー」の仕様を練り込んでいったのです。

 そこで「MPZ-01シールドライガー」を開発するときに内部骨格をデザインとして作り、ここに装甲をかぶせるというイメージを作りました。「ゾイドワイルド」ではここをさらに深掘りし、ゾイドは骨格状態で“発掘”され、ここに装甲や武装を加えて兵器として使用するというアイディアが生まれました。「AZ-01 ブレードライガー」も頭部などは内部骨格が表現されており、ここに装甲を付けていく。ゾイドの進化も体験できる商品と言えます。

――お話を聞いていると、「ゾイドワイルド」は、ゾイド開発の上で様々な進化がもたらされていますね。

中瀬氏:「ゾイドワイルド」での骨格(フレーム)と外装という考え方は「組み立てやすさ」でとても色々なアイディアをもたらしてくれました。6歳以上対象商品なので、絵を見ただけでパーツがわからなくてはいけないし、大きな組み立てやすいパーツでなくてはいけない。ギミックはフレームと連動しているので、ギミックを活かすためのパーツ設計など得られるアイディアは多かったです。

 骨格と動きという所からは「科学への興味」を子供にかき立てることができたのも良かったと思っています。「ゾイドワイルド」はパッケージもこだわって、地層をイメージしたパッケージから骨格(フレーム)を発掘し、組立、外装を取り付ける。恐竜の化石の発掘から復元の流れをなぞっていて、パッケージの工夫も盛り込みました。

 「AZ-01 ブレードライガー」は、「MPZ-01シールドライガー」や「ゾイドワイルド」で得られたノウハウもきちんと活かしている。そしてこの先にさらなるゾイドの世界が広がっていくのです。

――改めて今回の「AZ-01 ブレードライガー」は、当時の商品のリメイクではなく、最新のゾイド技術により表現されたブレードライガーであり、タカラトミーが提示する最新のゾイドだという印象を受けました。

中瀬氏:較べてみると「AZ-01 ブレードライガー」はアニメとはプロポーションが異なります。しかしギミックやカラーリングなどでしっかりとアニメのブレードライガーを感じてもらえ、そこからアップデートされているのを感じて欲しいと思います。

 リメイクではなく、当時の想い出をなぞるだけでなく、ブレードライガーを“現在のゾイド技術”で表現する、というのはこだわった部分です。当時はアニメのCGも発展途上で、現在よりポリゴン数は少なかった。今の技術のCGでブレードライガーを表現するならば、「AZ-01 ブレードライガー」が画面一杯に動きまくるのではないか? そういう想妄想しながら作りました。

 私はゾイド担当としてライセンス商品の監修も行っています。ブレードライガーは人気の高いキャラクターであり、フィギュアやプラモデルも発売されていますが、「アニメのブレードライガーの立体化」というのは、ある程度行き着いているところがあるのではないか、そういう印象も持っています。

 その中で“動く”、ムービングキットという独自性を持っているタカラトミーだからこそできるアップデートとは何だろう、その想いを込めたのが「AZ-01 ブレードライガー」です。

目指すのはタカラトミーだからこそ実現できる“歩くアクション”

――前回私は「カブトボーグ」のインタビューもさせていただいたのですが、その時も動きへのこだわり、見ていてワクワクするメカの挙動にとても力を入れていると感じました。タカラトミーさんはやはり動きと、それから得られる環状にとても注力している印象を受けます。

中瀬氏:私たちは玩具メーカーです。子供達が感じる面白さ、楽しさは常に考えています。動きはもちろんですが、「トランスフォーマー」に関してはクリック感やかっちり決まる変形など、遊ぶことで得られる感触に注力している。玩具としての楽しさがどこにあるか、どうすれば楽しくできるかは、常に考えています。「手の中にある玩具は実はとんでもないパワーを持っているんだ!」と感じさせるワクワクした気持ち、ここは大事にしています。

 歩きの重量感もそうですが、「軽くしない」というのは、カッコイイ玩具としての共通項かもしれません。「AZ-01 ブレードライガー」に関しては動かすことで巨大なメカ生命体の動き、生きているような躍動感。アニメでのブレードライガーのイメージが、「AZ-01 ブレードライガー」に置き換わり、想い出がさらにカッコ良くなるような迫力を目指しています。

 「AZ-01 ブレードライガー」は玩具の機能としては歩くだけなんです(笑)。ですが、目指しているのは“機能”ではなく、リアリティなのです。どのスピードで歩くか、歩くとき関節は全身の重量を受けどこまで沈み込むか、胸の鼓動、背骨の動き、どう動き、どう見せれば“本物”を感じてもらえるか、ここを考えています。

 ……実はだからこそ歩行の調整はホント大変なんです(笑)。現在は次回作の「AZ-02 ライガーゼロ」をインタビューの直前まで歩行バランスの調製をしていました。

――「AZ-01 ブレードライガー」はゾイド40周年を記念する第一弾です。今後の商品のお話しもお聞かせください。

中瀬氏:9月に第2弾である「AZ-02 ライガーゼロ」が発売されます。こちらは爪部分にボタン電池を入れ、爪が光るのが大きな特徴です。爪部分に電池と発光回路が入ってるので重くて、バランスの調整が大変です。そして「AZ-03 ムラサメライガー」、さらに「ライガーゼロフェニックス」まで企画しています。「AZ-03 ムラサメライガー」は先日試作の画像もアップしました。

9月発売予定の「AZ-02 ライガーゼロ」。前脚の爪の発光が大きな特徴

――「AZ-03 ムラサメライガー」は、巨大なブレードが重量バランスに影響しそうですし、「ライガーゼロフェニックス」も歩かせるためのバランスは大変そうですね。

中瀬氏:試作と戦っています。歩かせるのは大変ですが、ぜひやりたいなと。ゾイドシリーズはアニメのファンはもちろんですが、「動き」に注目していただくお客様もたくさんいるんです。

 ゾイドは「動く」というのがアイデンティティーだと思っています。「トランスフォーマー」における変形と同じ、タカラトミーが提示し続けなければいけないテーマだと思っています。これは他社ではできないものです。時代とともに求められるハードルも上がりますが、チャレンジし続けたいと思います。

 「AZ-03 ムラサメライガー」は自分がアイディアを出し実現した機体なんですよ。だから思い入れもあります。自分が作った機体をリメイクする、20年以上ゾイドを作って、ついに巡ってきたな、と言う感じです。

 「ライガーゼロフェニックス」は、ファイヤーフェニックスが合体する。今度発売する「AZ-02 ライガーゼロ」がベースです。BLOXであるファイヤーフェニックスとの合体も考えながら試作を進めています。重量がさらに増すので、これから調製をしていきます。いざやってみると新しい問題が色々出てくるので……。でもやっぱり、動くのは楽しいです。

「AZ-03 ムラサメライガー」のデザインと試作画像。ムラサメライガーは中瀬氏がオリジナルをデザインしたゾイドとのことだ
「ライガーゼロフェニックス」は、ライガーゼロとファイヤーフェニックスが合体した姿

――今回のラインナップはライオン系のゾイドですが、動きのお話を聞くと他の動物や恐竜モチーフのゾイドも期待してしまいます。

中瀬氏:まだまだ発表はできませんが新作の企画も進めています。どのようなゾイドが出てくるかぜひ期待してください。

 やはり「ゾイドワイルド」で様々なノウハウが溜まりました。このノウハウを活用した商品を作りたいという想いはあります。歩きながら他のアクションも行う「ワイルドブラスト」は色々なアイディアをもたらしてくれました。

――最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

中瀬氏:「AZ-01 ブレードライガー」は40周年のゾイドのお祭りの皮切りとなります。このお祭りだけでなく、ゾイドは続いていきます。ぜひご期待してください。一緒に楽しんでいただければと思いますし、これからも応援していただければと思います。

――ありがとうございました。

中瀬氏の言葉からは強いこだわりが感じられる。今後の展開も大いに期待したい。

 中瀬氏のゾイドへのこだわり、“動き”への注力を感じられるインタビューだった。実際こちらに向かって歩いてくるブレードライガーは非常にかっこよかった。体重を掛け沈み込む姿勢、着地の前の前脚の動き。生物感を感じさせる胸や背中などの部品の動きなど、細部までチェックしてしまう。

 ゾイド40周年は主役機であるライオン型ゾイドのラインナップとなっているが、他の動物や恐竜を中瀬氏をはじめとしたゾイドチームがどう表現するかもとても興味が惹かれた。今後の展開も注目していきたい。