インタビュー

猫科の動き、ゾイドの重量感を! 「AZ-01 ブレードライガー」開発者インタビュー

さらに進化していくシリーズ、新企画も進行中!?

【AZ-01 ブレードライガー】

4月29日発売

価格:11,000円(税込)

対象年齢:15歳以上

使用電池:単4形アルカリ乾電池×2本(別売り)

サイズ:約(W)110×(H)175×(D)380mm

 タカラトミーはムービングキット「AZ-01 ブレードライガー」を4月29日に発売する。本商品は1983年にタカラトミー(当時:トミー)が開始した「メカ生体 ゾイド」から、40周年を記念とした商品だ。

 ゾイドとは、動物をモチーフとした金属生命体で、ライオンや狼といった哺乳類だけではなく、恐竜や昆虫など様々なモチーフがある。今回商品化するブレードライガーは1999年のアニメ「ゾイド -ZOIDS-」で活躍するライオン型のゾイドとなっている。

 ムービングキットというのは、ゾイドならではの商品ジャンル。商品はフィギュアのように完成品ではなく、ユーザー自身が組み立てて完成する。ゾイドの最大の特徴は“動き”にある。モーターやゼンマイなどの動力機構を内蔵しここに部品を組み込むことで、姿だけでなく動きも楽しめる「金属生命体」が完成するのだ。あえて人型ではなく、動物モチーフの姿とアクションが楽しめるゾイドは独自のファンを獲得している。

 今回の「AZ-01 ブレードライガー」を担当するタカラトミーキャラクタービジネス本部ホビーキャラクター事業室のエキスパート・中瀬崇嗣氏に話を聞いた。中瀬氏は今回の商品の前身である「MPZ-01シールドライガー」の時にも話を聞いている。併せて読んで欲しい。

「AZ-01 ブレードライガー」を担当するタカラトミーキャラクタービジネス本部ホビーキャラクター事業室のエキスパート・中瀬崇嗣氏

ゾイドの原点に立ち戻り、新しい未来を提示する「AZ-01 ブレードライガー」

――最初に、ムービングキット「AZ-01 ブレードライガー」を「ゾイド40周年」を記念する商品として、選んだ理由をお聞かせください。

中瀬氏:40周年を迎えた「ゾイド」ですが、ゾイドには様々な世代のファンがいらっしゃると思っています。大きく分けると2つ、私も憧れ、タカラトミー(当時:トミー)入社の原動力となった、1980年代に生まれたムービングキット「メカ生体 ゾイド」からのファン。そして1999年のアニメ「ゾイド -ZOIDS-」から始まる層がいらっしゃいます。今回はこのアニメからのファンに向けての商品です。

 40周年の企画として、アニメにフィーチャーしようと思いました。1999年のゾイドファンも大人となり、自分の好きだった物を振り返る時期になっている。その人達へ向け、アニメ「ゾイド-ZOIDS」で活躍したブレードライガーをモチーフとしました。ブレードライガーは作中・主役機であったシールドライガーが大破し、再生・進化した姿です。作中でも一番人気と言えるゾイドです。40周年でのゾイド記念商品の第一弾はブレードライガーで行こうということになりました。2弾、3弾もアニメを中心とした主役機をモチーフにしていきます。

「AZ-01 ブレードライガー」は、1999年のアニメ「ゾイド -ZOIDS-」の主役機ブレードライガーがモチーフ。劇中大破したシールドライガーが進化した姿となる

――今回のムービングキット「AZ-01 ブレードライガー」は、アニメ放映当時に発売された「ブレードライガー」のアップデートなのでしょうか、それとも完全新規の商品となるのでしょうか?

中瀬氏:アニメ放映当時に発売された「ブレードライガー」に対して、完全新規の商品となります。そして設計のラインという意味では、2016年に発売したマスターピースゾイドの1つ、「MPZ-01シールドライガー」のパーツとはある程度共通しているものがあります。旧商品のシールドライガーがブレードライガーにアップデートしたように、今回の商品も「MPZ-01シールドライガー」のアップデートと言える商品となります。

こちらはアニメ放映時に発売された「ブレードライガー」
2016年に発売された「MPZ-01シールドライガー」

――「MPZ-01シールドライガー」発売の時にインタビューさせていただいていますが、当時の商品のテーマ、コンセプトはどのようなもので、それが今回の「AZ-01 ブレードライガー」にどう活かされているのでしょうか?

中瀬氏:「MPZ-01シールドライガー」で目指したのは、「肉食獣のシルエットと動きを再現する」というものでした。「ゾイド」はゼンマイやモーターなどで“歩く(動く)”ことを最大の特徴としています。しかしリアルな生物を表現しようとしたかつてのゾイドも、多くの商品が正面から見た時に幅広になるスタイルが多かったんです。

本格的なCGアニメの始まりであり、ゾイドの動きをCGで表現した1999年のアニメ「ゾイド -ZOIDS-」では、CGで各パーツが体にめり込んだりしないようにクリアランスをとってデザインされたため、実際のネコ科の動物より、胴体の側面から手足が生えたトカゲのようなスタイルになっていました。これはこれでゾイドのプロポーションとしてかっこよさもあります。

 しかし、身の回りにいる犬や猫を見ていただくと分かっていただけると思いますが、肩幅は狭いし、足も胴体のラインに繋がっている。正面から見ると縦長の印象を受けます。「MPZ-01シールドライガー」ではライオンの立ち姿、そして歩き方を再現しようというのがコンセプトとなりました。

 2016年の「MPZ-01シールドライガー」は、「ゾイドの歴史と向き合う」というところから企画をスタートさせました。これまでの積み重ねのノウハウがありますが、「動物のシルエットをできるだけ再現したい」と考えました。ライオンの動きを研究し、ライオンが歩く姿勢を再現したフレームを「MPZ-01シールドライガー」では実現しました。今回発売する「AZ-01 ブレードライガー」は、そのゾイドならではのライオンの動きを再現したこのノウハウを使おう、そこが商品設計の出発点になっています。

 このため、「AZ-01 ブレードライガー」は、アニメのプロポーションを再現していません。「MPZ-01シールドライガー」で生み出した“ライオンのプロポーションと歩き方を表現”をより突きつめたうえで、アニメでのブレードライガーのイメージ、ファンの望む要素を盛り込もう、というのが、「AZ-01 ブレードライガー」のコンセプトとなりました。

 「AZ-01 ブレードライガー」はアニメの想い出を完全再現する商品ではありません。トミーからタカラトミーへ、受け継がれ進化していった「ムービングキット」として、ブレードライガーをどう表現するか、そのチャレンジとなります。現代の技術でライオン型ゾイドであるブレードライガーをどう表現しよう、そういうテーマでの商品となります。

――昨今、他社からも「ゾイド」をテーマにしたフィギュアやプラモデルが販売されています。しかしタカラトミーがゾイドを出すからこそ、「動き」にはこだわりたいと言うことでしょうか。

中瀬氏:はい、タカラトミーは「ムービングキット」という要素は外せないと思っています。ライオン型のゾイドの基本的な骨格というのは「MPZ-01シールドライガー」で提示することができました。

 またアニメ側の進化も注目して欲しいと思っています。ゾイドはその後もいくつかアニメ作品が製作されています。特に2018年の「ゾイドワイルド」、2019年の「ゾイドワイルドZERO」ではゾイドの動きに現実の動物を意識した演出が盛り込まれていました。力強さや、ディテールの入れ方、玩具的なギミックとアニメの演出を効果的に取り込んだ「ワイルドブラスト」など、アニメとしてもゾイドの表現は進化しました。

 そしてタカラトミーの「ゾイドワイルド」の商品で蓄積した技術もあります。これらを活かして「AZ-01 ブレードライガー」は生まれました。自分たちにとってこの商品はアニメと共に進化した上で、原点である「ムービングキット」に立ち戻る商品となりました。

対象年齢15歳以上の「AZ-01 ブレードライガー」は、ディテール表現も非常に細かい

――動きに関して「AZ-01 ブレードライガー」は、ベース技術と言える「MPZ-01シールドライガー」からの進化発展した商品とのことで、どこが大きく変わりましたか?

中瀬氏:2つの商品の機構は同じものではなく、今回新たに様々な所に手を入れています。一番大きな点は「シールドライガーは2つのモーターを搭載していたが、今回は1つのモーターですべての動きをカバーしている」というところです。

 2016年の「MPZ-01シールドライガー」は2つのモーターを搭載。さらにサウンドの回路も内蔵していました。スイッチ制御で様々なアクションを実現、頭を回転させて雄叫びを上げるアクションも実現していました。ギアやリンクにスイッチを仕込んで動きを制御したため機構が複雑になり、サウンドユニットもあったため、価格が上がってしまいました。今回はサウンドシステムを削除、モーターを1つにするといった機構のシンプル化を図っています。このため、内部設計やギミックが変わっています。

 このシンプル化での課題の1つが「胸や尻尾が動かなくなる」ということでした。シールドライガーではサブモーターで首と尻尾を動かしていたのです。胸と尻尾の動きは是非ともブレードライガーで入れたかったので、リンクを繋いで動くように機構を作っています。

 「AZ-01 ブレードライガー」は、歩行時に足はもちろん、胸、背骨、顎、尻尾など、様々な可動を1つのモーターでカバーするようになっています。このため、歩行時のアクションそのものはモーターが1つ多い「MPZ-01シールドライガー」と較べて、同レベルのアクションが実現できました。

――お話を聞いた上でスタイルを見たいと思います。実際のネコ科の動物同様の、ある意味胴体に手足がめり込んでいるかのような、縦長のスマートなシルエットですね。

中瀬氏:横から見た「胴長」のイメージも見て欲しいです。動物のシルエットは横から見ると胴体が長い。アニメ放映時の商品は胴が短く、ちょっとかわいらしさもあるシルエットになっています。現実の動物もこういった胴長のイメージです。

開発には、実際のライオンの骨格を参考にしている

 ただ、単純に見比べたとき、アニメ放映当時の商品は対象年齢が6歳の商品で、今回の「AZ-01 ブレードライガー」は15歳以上というところは注意して欲しいです。パーツの鋭利さや、ディタールの描き込み、耐久度を考えた設計など、対象年齢が低いとどうしても制限がある。また、商品を落としたときの破損を考えています。対象年齢6歳の商品は外れやすい代わりに割れにくく設計されています。「AZ-01 ブレードライガー」はそういった制限が少なく、凝ったメカディテールをたっぷり盛り込むことができます。

「AZ-01 ブレードライガー」は胴長なバランス
1999年の「ブレードライガー」は胴が短く、かわいらしさも感じさせるバランスだ

――では動かしているところを見させてください。

中瀬氏:「AZ-01 ブレードライガー」では台座が付属しており、ここに飾ることで床面に置かなくても歩行する姿を見ることができます。実際、床面を歩かせると細かいところをじっくり見られないんですよ(笑)。

 台座に乗せてみると、各部分がどう稼動しているかをじっくり見ることができます。お腹や胸足の付け根など様々な部分が動いていることが確認できると思います。目が光るだけでなく、胸の「ゾイドコア」も光っています。


【タカラトミー、「AZ-01 ブレードライガー」台座に乗せて動きの細部をチェック!】

 次はテーブルの上を歩かせてみましょう。地面を踏みしめ歩く姿をしっかり見てもらえると思います。前脚が実際の動物と同じように手の甲に当たる部分をこちらに見せてから着地するところも見所です。


【タカラトミー、「AZ-01 ブレードライガー」重量感を感じさせる歩き】

――歩く姿は「獲物ににじり寄るイメージ」を感じました。歩く姿、走る姿、様々な選択肢はあったと思いますが、今回の商品ではどのようなイメージを込めましたか?

中瀬氏:この商品の元となった「MPZ-01シールドライガー」では、「いかに動物の歩行を再現するか」をテーマにしました。元々動物園には好きで通っていたのですが、商品開発時はさらに行く頻度を上げ、じっくり観察してました。ネコ科だとライオンは寝てばかりで、虎などの方が参考になりましたが、前脚をちょっと上げて、地面に下ろすこの動きを再現できないか注力しました。

 もう1つ強く意識したのは「歩幅」です。できるだけ大きな歩幅、足を前に突き出し、着地する動きの再現も注力しました。地面に沈み込むような動きをしますが、これはゾイドとしての「重量感」を感じさせる演出です。本当は人が乗り込む全長25.9mの巨大メカなので、重さを意識した動きにしています。

 お客様からは「走るゾイドが見たい」という要望もいただきます。試作もするんですが、イメージと実際の動きが合致しないんですね。本当に走らせようとすると、チャカチャカめまぐるしい動きになってしまい、小型犬が床で足をばたつかせるようになってしまう。カッコイイバランスが見つけられません。

 アニメのゾイドは空中を泳ぐように優美に体を動かして走るのですが、実際のムービングキットではその動きで走らせることはできない。空中で体をピンと伸ばすような、スローモーションの動きは現実では難しいです。だからこそある程度のスピードでしっかり歩くモーションにしています。

 これは余談なんですが、台座を付けたのは動くブレードライガーをたっぷり見ることができるようにですが、ぜひゾイドが動く姿をツマミにお酒を飲んで欲しいですね。各部の動きを確認して、その凝った動きにニヤニヤしてしまう。ぜひ皆さんもその楽しさを味わって欲しいです。背骨とか胸とか、歩いている姿だけでは確認が難しい、全身の稼動を台座に乗せてみてもらいたいと思います。

――「AZ-01 ブレードライガー」はこれまでのゾイド商品で進化した動きの演出だけでなく、アニメのブレードライガーが好きなファンに向けての要素もたくさん盛り込んであるとのことですね。

中瀬氏:各ブレードの展開、ブースターがせり出す演出など、ブレードライガーのアニメの演出を意識したギミックも多数盛り込んでいます。

 特に印象深いのは「2人乗りのコクピット」ですね。主人公のバンと、ヒロインのフィーネがきちんと座っています。コクピットハッチは2人を載せやすいように設定より開くようにしています。商品のサイズは1/72なのでフィギュアはちっちゃいのですが、こだわりの部分です。

 またブレードライガーには“目”が造型されています。以前の商品にはない新しい解釈です。もう1つ、レーザーブレードについているパルスレーザーガンですが、前方に向けたときちゃんと砲口が前を向くように基部にスライドギミックを入れています。こちらもアニメファンに向けた改良ポイントです。アニメでも砲撃シーンはあったのですが、デザインでは砲口がここまで前を向かないんですね。その整合性を持たせるためのギミックです。

2人乗りのコクピット。目の造型も注目
こちらはアニメ放映当時のブレードライガー。目の造型がない

 ちょっとしたネタばらしなんですが、実は「MPZ-01シールドライガー」を商品化したとき、ラインナップとしてブレードライガーの試作も作っていました。そこからいわば企画を眠らせていたんですが、今回商品化に辺りもう一度全面的に見直しました。この砲撃のための変形ギミックは今回の見直しで追加したポイントで、より納得のいく表現ができたと思っています。

 もう1つ、カラーリングと色のバランスも調整しています。こちらもアニメのイメージにより近い物になるように青と白の割合や見え方などを考えました。足のスプリングの部分など、塗り分け場所も細かく、質感も意識していますので、カラーリング、塗り分けも注目してもらいたいポイントです。「AZ-01 ブレードライガー」は組立が必要なムービングキットですが、成型色だけでなく、一部パーツは塗装されており、組み上げるだけで劇中イメージに近くなります。

レーザーブレードについているパルスレーザーガンを正面に向けるギミック
アームに伸張ギミックが追加されている
全体のカラーリングも注目ポイント