インタビュー

「DECOCTION MODELS レイレナード 03-AALIYAH シュープリス」企画者インタビュー

ブローバックや隠し腕など、注目の武器関連ギミック

――次は武器などより細かい各ギミックをさらに見せていただきたいです。

千葉氏:右肩に取り付ける「グレネードランチャー」はブローバックします。排莢口はブローバックすると開くギミックも取り込んでいて、弾倉も外れます。中の弾薬は塗り分けています。肩に取り付けるパーツは「フレアユニット」です。展開して、ここからフレア弾を発射し、敵の熱源追尾ミサイルを攪乱します。フレアユニットの基部も動きが見せられる設計になっています。

 また、「アーマード ・コア4」のオープニングで左手に装備している「アサルトライフル」ですが、シュープリスがオープニングのラストで敵に「アサルトライフル」の先端を突き刺すシーンが印象的ですよね。あのシーンはパイロットであるベルリオーズの思考の柔軟性がうまく現れたシーンだと感じたんですよね。この銃は設定上、銃剣というわけではないのですが、そんなベルリオーズが接近戦で使う場合を想定し、下部分がスライドし突起が前に出るオリジナルギミックを搭載しました。また右腕に装備する「ライフル」は弾倉の取り外しが出来るスライドギミックを入れています。

【武器ギミック】
グレネードランチャー後部はブローバックギミックを内蔵。赤丸部分が押し込まれてスライドしているのがわかる
カートリッジの弾薬は塗り分けられている

フレアユニットを展開
アサルトライフル下部がスライド、先端を敵に突き刺しやすくなる

ライフルも弾倉が外れるギミックがある

 そして肘から前腕部分には前述した「隠し腕」があります。装甲の一部が腕から離れ伸張し、アサルトライフルの銃床を掴む。レイレナード製のアサルトライフルだからこそ対応している装備です。この隠し腕でしっかり接続されているから武器をしっかりホールドできるのです。フロム・ソフトウェアの佐竹さん発案のギミックです。

 さらに背中部分のブースタの展開です。「アーマード・コア4」には従来からの「オーバードブースト」というシステムがあり、ブースタを一気に噴かして急加速します。このブースタの展開もOPで印象的なシーンでした。商品でも大きくブースタが展開するため目玉ギミックの1つになっています。

――改めてクオリティの高さにうならされます。試作品ができてきたとき、どのような感想を持たれたでしょうか。

千葉氏:「本当にできちゃったよ……」というのが正直なところです(笑)。今回は設計など細かい仕様のディレクションは、弊社原型チームの堀克彦が担当してるんです。私は企画として「DECOCTION MODELS シュープリス」に関してコンセプトや、このギミックも、あのギミックも入れたいと提案する立場で、良いとこ取りとも言える立場でした。他のシリーズではこんなことは滅多にないんですが(笑)。

【ギミック】
隠し腕ギミック。アサルトライフルの銃床に、前腕部分の隠し腕が接続され、射撃の安定度が増す


オーバードブーストのギミック。背部のブースタが展開する

 堀はこれまでも「アーマード・コア」シリーズのプラモデルの原型も担当していて、お客さんも堀のディレクションによる製品を認めていただいている。だからこそ実際の設計などのディレクションは堀に担当してもらいました。私は「アーマード・コア」の商品で、発の合金モデルのハイブランド商品だから、こんなことをしたい、こう言う要素を盛り込んで欲しいと要望を出す立場でした。

 自分が思い描いたギミックや仕様が、見事に実現している。これは嬉しいですよ(笑)。堀もあまり表情を表に出す男ではないんですが、満足そうだったのは覚えています。

 「アーマード・コア」シリーズのプラモデルブランド「V.Iシリーズ」に続報が出ないまま10年経ってしまいました。しかしお客様は今でも「『アーマード・コア』の新作を」と言ってくださってる。今回はその声にようやく応えられたと思っています。シュープリスのオリジナルデザインの尊重、堀の起用などもファンに応えるために選択しました。私自身も、堀に「アーマード・コア」の新作商品を手がけて欲しいという想いが実現できた商品でもあります。「お客様が満足してくれる商品ができた」という実感を、試作品を前にして得ましたね。

 ……やはりじっくり眺めて、この黒と金の塗装感を味わって欲しいと思います。マットな黒だからこそは得る差し色の金。フロム・ソフトウェアさんのデザインがあってこその質感ですが、これは多くの人に体験していただきたいです。かっこいいですよね。

武器を両手に持って構える。肘がまっすぐになるのも、スプリングギミックでパーツの干渉を防いでいるからだ

「DECOCTION MODELS」は、様々な可能性がある! モチーフも表現方法も変わる!

――「DECOCTION MODELS シュープリス」が今回発売となりますが、今後という所ではどのような展開があるのでしょうか?

千葉氏:先日の静岡ホビーショー2023では「アーマード・コアVI」のプラモデル展開を予告させていただきました。こちらはまずゲームが発売され、登場機体が明らかになってから皆様に情報を提示したいと思います。私としてもすぐにでも話したいのですが、まずゲームでの情報をお待ち下さい。

頭部には発光ギミックがあり、目が光る

 しかしここで話しておきたいのは、「DECOCTION MODELS」というのはコトブキヤの新しい挑戦であり、「アーマード・コア」に限定したブランドでもないし、「塗装済みハイブランド合金完成品モデル」を指すわけでもないのです。「DECOCTION MODELS」は、「高価格帯でコトブキヤの技術を結集した商品」を指します。モチーフ、販売形態、これらを固定していません。

 今回は「アーマード・コア4」でしたが、次何をやるか、それは今後発表します。他の版権タイトルか、全く別な商品かもしれません。

 このブランドにおいて「DECOCTION」は端的に言うと"突き詰める"という意味を込めています。今回は「アーマード・コア4」というモチーフだったから、「塗装済み合金完成品モデル」になりましたが、モチーフが変わればその突き詰め方、表現と手法は大きく変わります。例えば私が担当しているシリーズで言うと「勇者」シリーズや「ロックマン」シリーズではどうなるか、他のシリーズで言えば「フレームアームズ・ガール」や「メガミデバイス」だったらだったらどういう形となるのか? それは回答がそれぞれ違います。ですので、その多彩な方向も含めて期待していただきたいと思います。「ディフォルメで省コストで作った製品を、究極のプラモデルにする」、「キャラクター性を追求したアレンジを突き詰めた商品」など色々なアイディアがあります。

――方向性が異なる「DECOCTION」でも、核になるのはモチーフのキャラクター性でしょうか?

千葉氏:そうですね。キャラクター性をどう突き詰めていくか、になると思います。

――最後にファンへのメッセージをお願いします。

千葉氏:本当に皆さんコトブキヤの「アーマード・コア」シリーズを支えてくださってありがとうございます。皆さんのおかげで「DECOCTION MODELS シュープリス」を発売することができました。皆さんの応援がこのような商品を生み出す原動力になる。そのことをお見せできたと思います。これからも一緒に盛り上げていきましょう。

ギミックをいじってると時がたつのを忘れてしまうという。各所には今後の展開を予想させる仕掛けも?
パッケージもこだわり。「アーマード・コア」元開発チームの可児裕行氏が手がけているとのこと

 非常に魅力的な商品だ。昨今ではゲーム関係の立体物も増えてきてはいるが、全高300mm、金属関節にディテールにこだわった「究極のアクションモデル」での商品は少ない。コトブキヤだからこそのこだわりに満ちた商品であることが、話を聞いて伝わってきた。

 腕の良いモデラーでしか作れないような表現に、プレイバリューと耐久力のある合金製完成品アクションフィギュアは、高価格ではあるが、ファンの夢を実現させた商品であると思う。まさに"宝物"といえる商品となるだろう。

 一方、「DECOCTION MODELS」というのは「アーマード・コア」でも、合金製アクションフィギュアでもないというところが興味深い。次はどんな商品を見せてくれるのだろうか? 今後にも注目したい。