インタビュー

東京マルイ、「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」インタビュー

完全新規の3発同時発射メカニズム! 分解時のリアルさも楽しいショットガン

【ガスブローバックショットガン SAIGA-12K】

開発・販売元:東京マルイ

発売日:6月2日発売

価格:60,280円(税込)

種類:ガスブローバックショットガン

全長:666 mm/908 mm(ストック伸長時)

銃身長:300mm

重量:3,140g(空マガジン含む)

弾丸:6mm BB(0.2~0.25g)

装弾数:45発(15発の射撃が可能)

 東京マルイが遡ること2年前の7月2日「マルフェスONLIN pt.5」において発表した「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」はガスショットガンの新作、製品化されることが少ない東側の銃など様々なポイントでユーザーの話題を集めた。

 2021年の東京マルイは非常にコンパクトなガスガン「固定スライドガスガ LCP」、東側の武器として代表的なアサルトライフルAK-47の生産性を向上させたAKMをモチーフとした「ガスブローバックマシンガン AKM」、そして人気の高いサブマシンガンMP5A5にリコイルショックや、電子トリガーなどを盛り込んだ「次世代電動ガン MP5A5」と新製品を積極的に展開している中で、電撃的に発表されたのが、「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」だった。

電撃的に発表された「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」

 ガスブローバックのショットガンは東京マルイでは新機軸となるジャンルである。そして「SAIGA-12K」というモチーフも東京マルイは初、他のエアソフトガンメーカーでも商品化されていない。東側の狩猟用や警察用で使われるショットガンだが、ゲームなどにも登場しており、その当時は大いに盛り上がった。

 今回、開発に参考にしたという無可動実銃と商品を前に広報の島村優氏にインタビューし、本製品の特徴、開発のポイントなどを聞くことができた。「ガスブローバックで3発同時のBB弾発射」を実現した、「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」を紹介していきたい。

今回も東京マルイ広報・島村優氏にインタビューを行なった

ボックスタイプで素早い射撃が可能。東側の狩猟用ショットガン「SAIGA-12K」

 実銃ではカートリッジに小さな弾を詰めることで放射状に弾を発射する”散弾”が印象的なショットガンだが、エアソフトガンではこの散弾の雰囲気を表現するため、複数の弾を発射するという製品がある。「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」は、3発を一度に発射できる。

 サバイバルゲームにおいてショットガンを使うプレーヤーはかなりこだわりを感じさせられる。アサルトライフルやサブマシンガンを使うプレーヤーが多い中、ショットガンで戦うユーザーの姿は印象的だ。フィールドでショットガンで戦うプレーヤーを見るとつい注目してしまうし、銃口から複数のBB弾が一度に発射しているか確認したくなってしまう。こだわっているプレーヤーはやはり見ていて楽しい。

 東京マルイのショットガンはポンプアクションでシリンダー内に空気を作り、弾を撃ち出すエアコッキングショットガン、空気の代わりにガスを使うことでポンプアクションをスムースにしたガスショットガンなど、様々なエアソフトショットガンを発売している。中でもバッテリーを使いフルオートで3発のBB弾を発射できる「電動ショットガン AA-12」は話題を集めた。東京マルイはさらに実銃が存在しない、東京マルイオリジナルデザインの「電動ショットガン SGR-12」も発売している。

ポンプアクションでエアコッキングを行なう「エアーショットガン一 スパス12」。価格は21,780円(税込)
「ガスショットガン M870ウッドストックタイプ」。価格は38,280円(税込)
「電動ショットガン AA-12」電子トリガーを採用した意欲作。価格は60,280円(税込)

 そういった様々な製品を発売している東京マルイだが、「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」は、はじめてブローバック機構を搭載したガスショットガンとなる。実銃ではブローバックによる自動装填式のショットガンは「ベネリM3」、「レミントンM1100」といった銃があるが、ボックスタイプのマガジンを持つオートショットガンはあまり種類がなく、東京マルイ初挑戦であるガスブローバックショットガンのモチーフに選ばれたという。

 この「ボックスマガジン」という特徴が今回の選択に大きかったと島村氏は語った。ボックスマガジンにすることでこの中にガスタンクが仕込める。ガスブローバックショットガンはブローバックに加え、3発のBB弾を同時発射するので、ガスの消費が大きい。マガジンを複数持っていれば、交換することでガスがたっぷり入った環境に瞬時にすることができ、サバイバルゲームでも活躍できる。そういうメリットを考えているのだ。

 「ガスショットガン KSG」や、「ガスショットガン M870ウッドストックタイプ」などはストックにガスタンクを入れる形式なので、いわゆるBB弾が入るマガジンとセパレート構造になっている。ショットシェルの装填とガスタンクの再充填とが別アクションのため、それぞれのスペアを携帯する必要があり、継戦することが難しい場合もあった。カートリッジ式にすることで、これらの問題も解決できた。

 モチーフとなったSAIGA-12Kも少し掘り下げよう。SAIGA-12Kは、1990年代にイズマッシュ(イジェフスク機械製作工場)が製作した狩猟用のショットガン。イズマッシュはAK-47をベースにしたハンティングライフルとしてSAIGAシリーズを展開しており、SAIGA-12Kはショットシェルに対応したモデルとなる。狩猟だけでなく、警察の装備品にも使用されている。

大きなボックスタイプのマガジンが目を惹くSAIGA-12K。シルエットはAK-47そのままだ
こちらは「次世代電動ガン AK-47」。価格は54,780円(税込)

 実銃のボックスマガジンは5発のショットシェルを装填できる。8発の拡張マガジンも用意されている。デザイン、外寸、カートリッジ装填の位置や、セレクターレバーなどAKシリーズを継承しており、操作感が近い事も人気の理由。また、東側の銃なため比較的価格が安い。耐久度の高さ、ブローバックによる連射性能の高さ、ボックスマガジンによるリロードのしやすさなどでも評価は高い。

 本銃はいくつかバリエーションがあり、今回のモチーフはバレルの短いタイプ。SAIGA-12Kの”K”がショートバレルである事を示し、ノーマルは20インチ(508mm)、Kは17インチ(431.8mm)とのこと。ちなみに、SAIGA-12狩猟用として日本でも所有可能な銃だが、ピストルグリップは許可されず、ストックと一体化したグリップを使用する。また装弾数も2発に制限されるという。

 SAIGA-12Kは軍用の銃ではなく狩猟用であり、東側の銃ということもあって、「企画者は発表するまでは不安があった」と島村氏は語った。社内でも「受けるだろうか?」という声もあったとのこと。しかしやると決めたからには東京マルイは一丸となってこの商品を一番ユーザーに受けるようにアピールしていこうと決めた。このときの作戦が「隠し球」である。商品の開発は進めながらもその情報は出さない。そして「マルフェスONLIN pt.5」で一気に明らかにする。

 結果は予想を超える好評だった。SAIGA-12Kはこれまでエアソフトガンとなっていないモチーフだった。このモチーフを喜ぶ声が大きかった。ユーザーの反応は好意的なものが多く、島村氏をはじめ開発陣も「やってよかった」と感触をかみしめたという。

完全新規設計で、SAIGA-12Kの特徴を余すことなく再現

 ここからは外観にフォーカスしていきたい。最初に島村氏が「強調しておきたいこと」といって挙げたポイントが、「本商品は『ガスブローバックマシンガン AKM』との共用部品はない」ということだという。SAIGA-12KはAK-47の民間バリエーションのショットシェル仕様だ。そして「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」と、2021年7月に発売された「ガスブローバックマシンガン AKM」は開発時期で重なる部分も多い。ひょっとしたらフレームなど、部品を共用しているのではないか? そう予想するユーザーの声も多かったという。

「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」の外観。レシーバーの塗装などで「ガスブローバックマシンガン AKM」の技術を使用しているものの、部品もすべて新規設計だという

 しかし、両者は全く別々に開発が進められていたとのこと。ちなみに実銃もAKMとSAIGA-12Kは同じ部品は使用されていないだろう、とのことだ。

 「例えばトリガーガードなどは似ている形ですが、よく見ると違います。もちろんマガジンキャッチも違いますし、トリガーそのものも違います。共有パーツはないですね。レシーバーカバーなどを外すことで見える機構なども似ているように見えるんですが、全く違うんですよ」と島村氏は語った。

 もちろん開発が近いために技術的な相談は両チームで行なっている。トリガー部分の機構や、レシーバー部分の金属塗装の質感。この金属塗装の塗料開発や塗装方法などでは「ガスブローバックマシンガン AKM」で開発した技術が役に立ったとのことだ。ただ、部品、設計、など全く別な製品であるとのことだ。

 SAIGA-12Kとしての特徴としては「12Kショットシェルの反動への対処」というところが大きなポイントとなる。AK-47とくらべ、レシーバーのマガジンを差し込む上部のところにリブ(突起)がある。ここははっきりと厚みが増されているのだ。SAIGA-12Kは12ゲージ(直径18.4ミリ)の実包を使用するので、薬室そのものが大きい。そしてその射撃の反動もライフル弾よりも大きくなる。このため構造を強化しているのだ。

大きなマガジンの根元には構造強化のデザインが入り、コッキングハンドルの下部分にも強化リブ(盛り上がり)がある。反動の強い12ゲージのショットシェルに耐えられるように強化が行なわれている
樹脂製のハンドガードもチェッカリングが刻まれ、しっかり手で握れるようになっている

 「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」はグリップ、銃床、ハンドガードはABSの樹脂製である。ハンドガード部分も滑り止めの溝が掘られており、しっかりと銃を握りしめられるようになっている。ここも反動を意識しての造形だ。

 レシーバーカバーのロック機構もAK-47のものより強化されており、しっかり留め金を押し込まないと外れないようになっている。ここも発射時の衝撃に備えるための強化だろう。随所にショットシェルを撃つための強化設計が見てとれる。

 SAIGA-12Kの特徴としては銃身上部のサイト(照準装置)がある。この照準装置はダイヤルのついた板と前方の金の部品で構成されている。ダイヤルを回すことで前側が持ち上がる。後方側は固定されているので、前が持ち上がれば板の傾きが強くなっていく。この傾きを使って、狙いを調整できるというわけだ。ちなみに金の部品は実銃も同じだ。ショットガンの照準装置には金色を用いられることが多いという。

特徴的な標準装置。つまみを回すと上に持ち上がる。金のピンは真鍮製だ

 銃の右側は排莢口とセレクターレバー。このセレクターレバーはAKシリーズの特徴であるが、AK-47の場合は上から「安全位置(引き金が引けない)」、「フルオート」、「セミオート」SAIGA-12Kでは「安全位置」と「セミオート」のみである。

 左側にはAK-74などに使われている「サイドレール」が取り付けられている。このレールを使うことでSAIGA-12Kはダットサイトの装着など拡張性が設けられている。また左側にはストックを折り曲げた際のロック機構も用意されている。ストックをこちら側に折り曲げて携行しやすくさせることができるのだ。

AKシリーズの大きな特徴であるセレクターレバー。チャンバーが大きく、ダストカバーがついているのも印象的だ
銃の左側には、オプションを取り付けられるサイドレールを装備
ストックは折り曲げることができる

 「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」と実銃の違いとしては”ネジ”がある。実銃はレシーバーの左右の貼り合わせや、マウントレイルの装着部分はリベットで止めて簡単に分解できないようにしているのだ。しかし「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」でこのリベットを再現しては分解ができなくなり、メンテナンスや修理が行なえなくなる。このためネジ止めにしているとのことだ。

 銃口部分も特徴的だ。実銃の場合、先端部分のパーツを回して外すことで銃身内に「チョーク」という部品があり、このチョークを交換することで散弾が飛び散る範囲を調整するのだが、「ガスブローバックショットガン SAIGA-12K」の場合は3発のBB弾を発射するのでチョークを装着する機能はない。製品ではこのパーツはアルミ切削で造形されている。

アルミ切削の部品で表現された銃口部分

 ちなみに、今回見ることができたSAIGA-12Kの無可動実銃は銃身すべてが鉄の棒で塞がれているので、銃の先端が重く、実銃とはバランスが違っている。また薬室がオープンした状態で固定されている。無可動実銃はまさに”本物”であるが、例えば銃の重量バランスや、機構を操作できない、といった処理がされていると言うことを、筆者は今回初めて実際に見て触れて確認できた。とても貴重な体験だった。

上が開発の参考になった無可動実銃。チャンバーは開放状態で操作できない。また銃身に鉄の棒が詰まっていて、持つとかなり重い