インタビュー

「プラレールリアルクラス」の開発者に聞く「なぜ185系?」、「なぜ3100形NSE?」、「造形のこだわりは?」

【プラレール リアルクラス】

6月22日発売

価格:7,700円(税込)

 タカラトミーは6月22日に「プラレールリアルクラス」を発売する。ラインナップは「国鉄型185系」と「小田急ロマンスカーNSE(3100形)」となっている。精緻な造形は、鉄道ファンにとっても喜ばしいものだ。

 通常のプラレールの車両の価格は2,500円前後。対して「プラレールリアルクラス」は7,700円。プラレールとしては高めな価格設定、国鉄型185系と小田急ロマンスカーNSE(3100形)という品揃えから見ても、子どものおもちゃというより「大人向けプラレール」といえそうだ。

 しかしなぜいま「大人向けプラレール」なのか。プラレールリアルクラスの企画開発担当者である、タカラトミー ブランドビジネス本部 ブランドビジネス事業室 プラレール事業部 企画開発課の岩田峰人氏に話を聞いた。

【より”リアル”なプラレール『プラレール リアルクラス』第1弾デビュー】

 なお、「プラレール リアルクラス」はレビューもしている。併せて読んで欲しい。

動かすだけでなく飾って楽しむ「プラレールリアルクラス」とは?

 「プラレールリアルクラス」とはどんな商品か、概要を説明しておこう。まず、プラレールと言えば青いレールを走る2軸サイズの車両たち。基本は3両編成で、実車の特徴を的確に捉えている。デフォルメしているとはいえ、こどもたちにとっては大好きな電車そのものだ。それが自分で敷いたレールの上を走る。その喜びはこどもだけではない。だからプラレールは大人にも愛好者が多い。

【プラレール プラレールエントリーセット 923形ドクターイエロー】
青いレールにディフォルメされた車両、子供達が求める「電車」を形とした、電車玩具で最もメジャーなシリーズだ

 「プラレール リアルクラス」は、そんな大人のプラレールファンに向けた上級版だ。飾る楽しみと走らせる楽しみの両方を目指しており、特に「飾る」にこだわった。車体の造形や塗装にこだわったほか、前面や側面にクリアパーツで窓ガラスを入れた。とくに屋根上のパーツはハイタイプとロータイプの2種類を同梱した。ハイタイプは「飾るとき」、ロータイプは「走らせるとき」に使い分ける。そしてディスプレイに使う新開発の「リアル直線レール」が同梱されている。別売のリアル曲線レールを購入すれば、リアル系レールで周回レイアウトを作れる。また、リアル直線レールやリアル曲線レールは青いレールと同じ規格で、レイアウトに組み込んで使える。

【プラレール リアルクラス 国鉄型185系】
【プラレール リアルクラス 小田急ロマンスカーNSE(3100形)】

 飾る要素を持つ「プラレール リアルクラス」がなぜ作られたか、185系と3100形を選んだ理由、とくに3100形が実車のような連接車体にならない理由など、筆者が気になる点を岩田氏に聞いた。

飾りたい、走らせたい、プラレールの魅力が昇華する

 最初に質問したのは、「プラレールリアルクラス」をなぜスタートさせたかというものだ。

 岩田氏は、 「少子高齢化を受け、新しい切り口として大人向けのものを立ち上げてみようというか、チャレンジしようという試みはずっと前からありました。数々のアイデアがあるなかで、リアルクラスに関しては、2019年から始まっています」 と答えた。

タカラトミー ブランドビジネス本部 ブランドビジネス事業室 プラレール事業部 企画開発課 岩田峰人氏

 車種選択は筆者のような鉄道ファンの"昭和世代"にささる。「国鉄型185系」は、485系、183系に比べると、特急列車としては主流では無かった。しかし外観の原形をとどめる最後の国鉄型として引退が近づくほど人気が高まっていた。「小田急ロマンスカー3100形NSE」も昭和世代の憧れの列車だ。展望車が斬新で、絵本に出てくる特急列車の代表格だった。

  「185系は、デビューが1981年で、ラインナップの検討をしていた2019年ごろにはまだ定期運用の引退という話はなく、特急踊り子や湘南ライナーで活躍していました。国鉄時代を代表する特急車両として選びました。3100形は私鉄特急のロマンスカーで、デビューが1963年、東京オリンピックの前の年にデビューした車両です。小田急電鉄の歴史上初めて展望席を実装したロマンスカーで、私鉄特急を代表する車両ですのでラインナップさせて頂きました」。

 最近の小田急のロマンスカーは50000形VSE、70000形GSEもプラレールで商品化されている。3100形NSEはライト回りが飛び出し、2階の運転席も高く凹凸が大きい。この造形はリアルクラスの価格だからこそ実現できたといえそうだ。

  「3100形は特徴的な先頭車として、リアルな造形にこだわっています。ヘッドライトは試作段階では別のパーツをはめ込むタイプでした。しかしディティールを詰めるときに、あらためてロマンスカーミュージアム(海老名市)に行ったら、ここは一体化しないといけないと思いました。それから塗装ですね。塗装工程を増やし、バーミリオンオレンジ、グレー、細い白帯、通常製品に比べて生産時の工程が増えています」。

 ズバリ気になったところを聞いてみた。3100形の実物は「連接車体」といって、車両間の連結部に台車を置く。これは曲線区間を高速走行できるという利点があった。プラレールリアルクラスは「リアル」というなら、連接車体を再現できなかったのか。あるいは「プラレールらしさ」を残すために、あえて2軸車体にしたか。

  「無理矢理連接車体にすると、プラレールのロマンスカーらしい形にならなくなってしまうかなと。先頭の動力車の後方に動力輪があるので、そこに台車を作っても、先頭車に固定されてしまう。結局、連接にならないいびつな形になってしまうんですね」。

 一方、185系の難しさは「斜めストライプの位置」ではないか。車体を短縮すると、太さの異なる斜めストライプのバランスが難しい。

  「そこは悩みました。どうしてもデフォルメせざるをえないので、斜めストライプのバランス、窓のバランス、その他、プラレールとしては行わなければいけない部分なので苦労しました。造形部分もこだわっています。クーラー、パンタグラフ、前面の造形では特急のエンブレム、クリアパーツを入れてワイパーを掘り、タイフォン(警笛)カバー、ジャンパ線の造形も表現しました。通常のプラレールでは入れないモールドもリアルにこだわって入れています。一方で、量産したときの塗装が困難な部分は敢えて省略したところもあります」。

東京おもちゃショーでの展示風景。プラレールリアルクラスの展示は黒い背景で大人向けのホビー演出していた

 プラレールリアルクラスの提案は「飾って楽しむ、走らせて楽しむ」だ。パッケージにハイタイプとロータイプ、2種類の屋根上クーラーが同梱されている。3100形は運転席もハイタイプとロータイプがある。

  「飾るときはハイタイプのほうがリアルで見栄えがあります。これも正面から見てタテヨコ比でバランスを取っています。ところがこの高さは、既存製品のトンネルやブロック橋脚などのパーツに引っかかってしまうんです。走らせるときにトンネルやブロック橋脚がある場合はロータイプに交換していただくというわけです。プラレールの列車は3両編成の製品が多いのですが、あえて4両編成にした理由は、飾るとき、走らせるときに編成美を感じてほしいからです」。

 実は箱の背表紙も鉄道模型のパッケージや図鑑参考にデザインしているという。棚に置いても所有欲を満たせる仕組みだ。しかし、そうなると棚にプラレールリアルクラスの箱を並べたくなる。まだ第一弾の発売前だけど、今後はどんな車両が登場するだろう。

鉄道模型のパッケージや図鑑参考にデザインしたというパッケージ

  「第2弾があるとは公式サイトに載せてはいるんですけど、具体的な車両については解禁前ということで申し上げられません。ただ、最初の車両が185系と3100形、このコンセプトから察していただければ、いきなり最新型車両とかにはなったりはしないのではと(笑)。

  子供の頃にプラレールで遊んでから時間が経った方も、車両とそのディテールを見て、飾ってみたいな、もう1回走らせてみたいなって思っていただけると嬉しいです。今はもう走ってない名車両も、それぞれの方に、いろんな思い出がある。大好きな車両が心の中で走ってる。あるいは、走り続けていってほしいなっていうところを提供したいと思います」

 第2弾は40代、50代にとって懐かしい車両か、あるいは最近惜しまれつつ引退した古参名車両か。とても興味深い。発表を楽しみに待ちたい。

185系が走るジオラマは伊豆の海沿い区間をイメージしたという。曲線レールも6月22日から販売予定。