レビュー

「プラレールリアルクラス」レビュー

185系と3100形NSE、モチーフにも踏み込み各所を細かくチェック

【プラレール リアルクラス 185系特急電車(踊り子・緑ストライプ)】

【プラレール リアルクラス 小田急ロマンスカー3100形NSE】

6月22日 発売予定

価格:7,700円

 「プラレール リアルクラス」は飾る楽しみと走らせる楽しみの両方を目指した"大人向け"プラレールだ。プラレールと言えば青いレールを走る2軸サイズの車両たち。実車の特徴を的確に捉えた姿はこどもだけではなく、おとなにも人気がある。そんなプラレール車両のほとんどが3両編成で店頭価格にして2,000円前後。

 「プラレール リアルクラス」は定価7700円の上級品で、おとなのプラレールファン向けといえる。それは1959年に発売された「プラスチック汽車レールセット」から64年にわたる技術進化の逸品でもある。

プラレールパーツを配置、レイアウトで走らせてみた

 本稿では「プラレール リアルクラス」のシリーズ第1弾となる「185系特急電車(踊り子・緑ストライプ)」と「小田急ロマンスカー3100形NSE」を発売に先がけてサンプルをじっくり鑑賞し、走らせてみた。モチーフとなった車両の紹介も含め、「プラレール リアルクラス」の魅力を紹介したい。

 なお、筆者は鉄道ファンの視点も活かして「プラレール リアルクラス」開発担当者のインタビューも行っている。併せて読んで欲しい。

選択式クーラーはナイスアイデア、プラレールとして走らせる楽しさも追求

 「プラレール リアルクラス」の第1弾は2種の商品が発売される。「185系特急電車(踊り子・緑ストライプ)」(以下185系)と「小田急ロマンスカー3100形NSE」(以下3100形)の共通点は、4両編成、屋根上クーラー2種、グレーの「リアル直線レール」だ。4両編成の車両はひとめで「185系だ!」「3100形だ!」とわかる。

 185系は定期運用から離れており、3100形は引退して、現在は海老名市のロマンスカーミュージアムと開成駅前第2公園のロンちゃんのみとなった。これらの車両がもっとも活躍した時期を知っている人なら、再会の喜びがこみ上げてくるはずだ。

 車両の造形は個別に掘り下げるとして、まずは共通仕様、何よりもプラレールとして遊ぶために重要なポイント「クーラー」について触れていきたい。

【パッケージ】
黒を基調としてゴールドのラインを入れた化粧箱。
きちんと収納して飾りたくなるデザインだ

 両車両とも屋根上のクーラーが2種類あり、選択式となっている。3100形では2階席の運転台も含まれる。これが「飾る楽しみ」と「走らせる楽しみ」を実現するパーツだ。ハイタイプのクーラーとパンタグラフは「飾る楽しみ」用だ。存在感があり、実車に近い雰囲気になる。一方、ロータイプのクーラーは「走らせる楽しみ」用だ。これで、飾る仕様と走らせる仕様を簡単に切り替えられる。

【クーラーパーツ】
185系のクーラーパーツ。ロータイプ(左)とハイタイプ(右)が4両ぶんずつ入っている
3100形のクーラーパーツ。運転席も一体化されている

 背の高いクーラーはカッコいいけれど、じつはプラレール車両の許容高さを超えてしまう。実車で言うところの建築限界を超える。具体的にはトンネルなど情景パーツが通れなくなってしまう。だから走行用の低いクーラーが入っている。185系は低いクーラーにパンタグラフも彫り込まれている。3100形は低いクーラー用のパンタグラフもついている。

 リアルな外観で影響が出てしまう部分を、パーツの交換で解決する。思い切ったアイデアだと思う。実際の鉄道でも、中央本線はトンネルが低いので車両の屋根が低くなっているし、予讃線も小さなパンタグラフを採用している。そんなトリビアを思い出した。

 手元にあるプラレール用の情景部品には、ハイタイプでも通過できるものがあった。しかし、数多く出回っている情景パーツの中にはもっとクリアランスの低い商品もあるだろう。プラレールには建築限界が設定されていると思うけれど、公開されていないようだ。いずれにしても、「プラレール リアルクラス」を走らせる場合はロータイプが無難。ハイタイプを走らせたいなら、高さ制限のある情景パーツは避けよう。

【情景パーツと合わせてみる】
単線架線柱は185系のハイタイプのクーラーも通過できる。ただしパンタクラフが引っかかる
ロータイプに交換すれば高さ制限もクリア
3100形もパンタグラフだけ単線架線柱で引っかかる
ロータイプの小型パンタグラフは通過可能
このトンネルは185系のハイタイプもクリアできた
ロータイプはもちろん通過可能
3100形のハイタイプのパンタグラフはトンネルに引っかかる
ロータイプは通過できた

 クーラーの取り付けについて、185系のクーラーはどれも似ているけれど、実は4両ぶんとも別のパーツで共通ではない。1両目はスイッチ部分に切り込みがあるし、3両目はパンタグラフ部分がある。2両目と4両目のクーラーは似ているけれど、これも専用パーツで4両目のほうは目印の切り欠きがある。正しいクーラーを選べばスッとはまる。はめ込みにくいと思ったら、それは車両か前後方向のどちらが間違っている。むりやり押し込んではいけない。ちょっと戸惑うけれど、各車両がきちんと専用設計としている。「プラレール リアルクラス」の丁寧な仕様に驚く。

185系の4両目のクーラーには目印の切り欠きがある。

 3100形のクーラーは形が異なるので分別しやすい。2両目と3両目は前後方向を確認しよう。クーラーを取り外したい場合は、車体をシャーシから取り外し、天井から押し出す。電動車は電池交換の要領でネジを1本外せば車体を外せる。2、3、4両目は、車体の中央を押すとツメが外れる。あとは車体の内側からクーラーを押し抜く。屋根側から爪をひっかけて取るとクーラーを傷つけてしまうし、なにより185系の場合は銀塗装をはがしてしまいそうだ。車体を外すと室内の座席パーツも観察できる。

味わい深いグレー「リアル直線レール」

 ディスプレイ用として付属するグレーの「リアル直線レール」も新製品だ。標準的な「R-01 直線レール」と互換性がある。別売りで「リアル曲線レール」と「リアル直線レール」がそれぞれ4本セットでタカラトミー公式ショッピングサイト「タカラトミーモール」にて発売予定となっており、周回コースを作れる。どちらもプラレールのレール製品と接続できるから、ポイントなどは既存製品を使える。

 リアル直線レールの特徴は「枕木」を再現しているところだ。まるでハシゴのようにレールの中央に穴が空いている。実車ではラダー軌道というハシゴ状の線路がある。ただしこちらは枕木を再現したらこの形になったと言えそうだ。枕木の端にはレール締結装置も再現されており、こだわりを感じた。

 リアル直線または曲線レールを茶色の床の上に置けば、実際の砂利敷き線路のように見たてられそうだ。ふと思い立って、鉄橋の線路をリアル直線レールに交換してみたら、ローカル線の鉄橋のような趣になった。リアル曲線レールでも同じ効果があるだろう。プラレールのレイアウトを楽しむ人にとっても、リアルレールは気になるはずだ。

【リアル直線レール】
下から、リアル直線レール、直線レール、エコ直線レール
「小さな鉄橋」のレール部分をリアル直線レールにしてみた。トラス橋の雰囲気が出た
いかにもローカル線にありがちな鉄橋だ

 欲を言えば、ポイントなどもグレーの選択肢がほしくなる。再生プラスチックのミドリ色のレールもあることだし、グレーのレールの種類が増えると嬉しい。鉄橋やトンネル、駅などのリアルクラス情景部品がほしい。あれもこれもほしくなるけれど、リアルクラスの世界は始まったばかりだ。発展に期待しよう。次ページからは各車両にフォーカスしていきたい。