インタビュー

「DECOCTION MODELS レイレナード 03-AALIYAH シュープリス」企画者インタビュー

合金アクションフィギュアとして究極の「アーマード・コア」商品を!

【DECOCTION MODELS レイレナード 03-AALIYAH シュープリス】

6月30日発売

価格:52,800円

全高:約300mm

原型/設計:アストレイズ

スケール:ノンスケール

 コトブキヤは6月下旬に「DECOCTION MODELS レイレナード 03-AALIYAH シュープリス」を発売する。本商品は「アーマード・コア4」に登場する機体「シュープリス」をモチーフとした、「塗装済み合金完成品モデル」である。

 マットな質感に金の差し色、ハイディテールで再現された精密な造型、間接に金属パーツを使うことでしっかりした保持と、幅広い関節可動を実現している。さらには多彩な武器、そして商品オリジナルのギミックなど、現在のコトブキヤの造型・設計技術を結集したモデルとなるという。

 今回、本商品の企画担当であるコトブキヤ・千葉氏に話を聞いた。商品が生まれる経緯、新ブランド「DECOCTION MODELS」に込めた想い、そして実際の商品の魅力はどのようなものか? サンプルを前に話を聞いた。

【DECOCTION MODELS レイレナード 03-AALIYAH シュープリス】

「アーマード・コア4」のシュープリスを最高の完成品モデルで表現する!

――いよいよ「DECOCTION MODELS レイレナード 03-AALIYAH シュープリス(以下、DECOCTION MODELS シュープリス)」が発売されます。まずはこの商品が生まれる経緯をお話ください。

千葉氏:元々は2006年に発売された「アーマード・コア4」の15周年を記念した計画からスタートしました。色々な事情があり2021年時には見送られましたが、2023年でコトブキヤが70周年を迎えるという記念をしてこれに合わせてプロジェクトが計画されました。

「DECOCTION MODELS シュープリス」の企画を担当した千葉氏。壽屋オリジナルプラモデルシリーズである「アルカナディア」や「勇者」シリーズ、「ロックマン」シリーズ、「遊☆戯☆王」シリーズなどコトブキヤの様々なプラモデルを手がけている。

 私はプラモデル担当として壽屋オリジナルプラモデルシリーズである「アルカナディア」や「勇者」シリーズ、「ロックマン」シリーズ、「遊☆戯☆王」シリーズなど、コトブキヤの様々なプラモデルを手がけています。70周年にあたりプラモデル以外のジャンルも挑戦したいと思ったんです。その中で市場調査を進めていく中、現状の当社のラインナップとは異なる「価格に左右されない、クオリティを突き詰めたハイボリューム商品」という題材を検討したんです。このジャンルは日本のみならず海外でも人気が高く、コトブキヤでもチャレンジしたいという想いが、私も含め、社内で大きくなっていました。

 コトブキヤでもハイブランドの商品ができるのではないか、現在でも「フレームアームズ・ガール」や「メガミデバイス」は1万円に近いボリュームとクオリティの高い商品を展開していますが、より高い開発コストを掛け、さらなるクオリティを提示する商品も出したい。現在のコトブキヤの総力を結集すれば、ハイブランド商品を生み出せるという確信がありました。

 「コトブキヤ70周年を記念するハイブランドアクションフィギュア」という目標に適したモチーフは何だろうか? そこでいくつかの候補から白羽の矢を立てたのが「アーマード・コア4」でした。「DECOCTION MODELS」というハイブランドアイテムとしてのコンセプトを最も提示しやすい素材と考えました。「令和の時代にコトブキヤが出すハイターゲット向けの高価格帯アクションフィギュア」とはどういうものか? それを体現できる題材だと考えました。精密な造型とディテール感、従来のロボットフィギュアの枠を超えるようなクオリティを提示できるのではないか、そういう想いを込めています。

 コトブキヤのプラモデルは対象年齢を上げた設計で、シャープでエッジの効いた造型が特長の1つです。「DECOCTION MODELS シュープリス」ではこのシャープさ、ディテールの細かい表現を突きつめたいと思っていました。コトブキヤらしい商品になったと思っています。

――「アーマード・コア4」の登場機体を選んだ理由は何でしょうか?

千葉氏:コトブキヤの「アーマード・コア」シリーズのプラモデルで、最も人気を集めていたのが、「アーマード・コア4」系統の商品でした。先日最新作である「アーマード・コアVI」の発売が発表されましたが、「アーマード・コア4」のシュープリスを選びました。今見ても全くそのデザインは色あせませんし、今の技術でシュープリスを表現したいと思ったためです。

 「アーマード・コア4」は2006年にリリースされたゲームです、PS3やXbox 360向けのゲームでしたが、CGがとにかくすごかったんです。今の時代でも通じるような表現でした。私はまだその頃コトブキヤの社員ではなかったのですが、「アーマード・コア」が大好きで、当時発売されていたコトブキヤのプラモデルも買っていました。

「アーマード・コア4」はPS3版が2006年12月、Xbox 360版が2007年3月に発売された。価格は8,190円

 この時期のコトブキヤのプラモデルは現在のようなCADデータによる原型ではなく、樹脂などを削って原型師が実際の立体モデルを作る「手原型」で、プラモデルにするためのパーツ分割や金型設計は工場側で行っていたのですが、生産を重視したパーツ分割で、例えば当時のシュープリスは肩のパーツの中央に分割線が入ってしまっていて、エンブレムを貼ったりする面なのにこの線がとても目立つ。私は当時学生だった頃にCADを専攻していたので「私が設計するならこう作るのに」と思ったりしていました。「DECOCTION MODELS シュープリス」はこういった想いも込めています。

 コトブキヤは「アーマード・コア」シリーズのプラモデル化を積極的に行っていて、ゲームを開発するフロム・ソフトウェアさんと強いつながりがあります。そして私自身はコトブキヤ社内でも仲間達や上司とも「今の技術で、もう一度『アーマード・コア』をやってみたい」と話していました。

 その中でも「アーマード・コア4」の機体をモチーフにしたいと思っていました。「アーマード・コア」シリーズは自分の機体をカスタマイズしていくゲームで、プレーヤーは傭兵として様々な勢力に所属していくのですが、各勢力に所属するライバルとなる機体がとても印象的なんです。特に「アーマード・コア4」の勢力を代表するパイロットの機体は強い個性があります。

 以前フロム・ソフトウェアさんともお話をしたんですが、「アーマード・コア4」は、シリーズの中でも転換点となる作品であり、開発チームでも印象深い作品だそうです。「アーマード・コア4」は近未来兵器と、現用兵器のテイストを併せ持つバランスも魅力的ですし、この作品からパイロットの個性がさらに前面に出た印象を持っています。パイロットが乗る機体が魅力的なんです。

――「アーマード・コア」を知らない人向けに、改めてシュープリスという機体の紹介をお願いします。

千葉氏:シュープリスは"機体名"です。ベルリオーズというパイロットが搭乗しています。ベルリオーズは「レイレナード」という企業に所属しており、シュープリスは作中の強力な機体としてプレーヤーに強い印象を与えます。「アーマード・コア」シリーズはプレーヤー機体というのは装備をどんどん交換して攻略していくので決まった形がなく、こういった固有パイロットの機体の方がキャラクター性が強いんです。

 ベルリオーズは柔軟な思考の持ち主で、シュープリスを雇い主であるレイレナードの装備で統一せず、必要ならば敵対企業の装備も使います。他の企業パイロットの機体やパーツは、その企業のお仕着せの機体、お仕着せの装備なのですが、ベルリオーズは所属するレイレナードの、新興企業らしい野心的・先鋭的なパーツにとどまらず、堅実な実弾兵器やフレアが装備され、より実践的な機体となっています。ベルリオーズという優れたパイロットだからこそ許されたカスタマイズで、このカスタマイズもプレーヤーで人気がある理由です。

コトブキヤは「V.I.シリーズ」で「アーマード・コア」プラモデル商品を展開している。写真はプラモデル「レイレナード 03-AALIYAH シュープリス OP Ver.」。2022年1月に再販、価格は8,250円

 なによりシュープリスは「アーマード・コア4」のオープニングムービーで大活躍するんです。シュープリスは両手の武器で敵を撃ち抜き、フレアで敵のミサイルを防ぐ。ブーストして大きなジャンプ、高機動で敵を幻惑し、最後は敵の機体に手持ち武器を突き刺しとどめを刺す。「アーマード・コア4」とはどんなゲームか、このゲームでの戦いはどのようなものかを伝えてくれる。「アーマード・コア4」を象徴する機体と言っても過言ではないんです。

――千葉さん自身は、この機体のどこに惹かれますか?

千葉氏:やはりギミックとデザインですね。個人的に流線型のデザインが好きなのですが、シュープリスは設定資料で説明されています。立体物を上から見るとはっきりわかるのですが、ボディにF1のシャーシの意匠を盛り込んでいるのです。こういったデザインに痺れました。

 ギミックに関しては、「隠し腕」の存在があります。これも設定資料集からのエピソードなのですが、ゲーム中ではなく、プラモデルをフロム・ソフトウェアさんが監修してくださった際に生まれた物です。デザイナーの佐竹大輔さんから提案していただいたギミックで、展開式の副腕により銃の保持力を高めるというアイディアを提示してくださったんです。しかしプラモデル監修時だったためその時は商品に反映できなかった。今回、絶対にこのギミックを盛り込もうと思っていました。佐竹さんがコトブキヤのために考えてくださったギミックは是が非でも商品化しようと、ずっと思っていたんです。

――そうなると「DECOCTION MODELS シュープリス」は、ゲーム内のシュープリスそのままではなく、最新の要素を盛り込んだ、今だから表現できるシュープリスということになるのでしょうか。

千葉氏:当時のプラモデルではできなかったこと、そしてサイズですね。プラモデルの「V.I.シリーズ」では全高約180mmですが、「DECOCTION MODELS シュープリス」は、約300mmというビッグサイズになっています。

 この大きさだからこそ隠し腕を実現し、カメラアイを光らせることが可能となりました。オープニングでも印象的な目の光を商品でも体験できます。逆に言うとこういった様々なギミックを実現しようと考えた結果、全高300mmというサイズになったんです。このサイズでもシュープリスはめちゃくちゃ顔が小さいので、ギミックを盛り込むのは苦労しましたね(笑)。顔は大きさやディテールを検討するために設計を何種類もしています。

 かつ、片手で扱えるギリギリのサイズを狙って、今回のサイズが決まりました。まずは「このサイズではギミックが盛り込めなかった」というのはやめようと。今回やりたかったギミックを盛り込むために大きさを決めました。

可動、表現、オリジナルギミック……。完成品合金モデルだからこそできる表現

――そして次にお聞きしたいのが、「合金モデル」への挑戦です。プラモデルではなく、合金パーツを盛り込むことでどんな可能性が広がったんでしょうか。

千葉氏:前述の通り、最初のコンセプトは「現在の技術でシュープリスを表現すること」でした。今だからできるパーツ、ディテール表現。目の発光、隠し腕などやりたかったギミックの実現。シュープリスの魅力をきちんと表現する立体物が作りたかったんです。

発売前のサンプルを前に各ギミックの話を聞いた

 しかし、コトブキヤ70周年記念商品として、私たちの新しい挑戦である「合金パーツを使った完成品モデル」というテーマを盛り込むことにしました。合金部品を使うことで実現できる要素も含めて、この商品ならではのオリジナルギミックを入れることにしたのです。そのテーマとなったのが「プレイバリュー」です。玩具としてガチャガチャ遊べる要素を入れるという方向でギミックを考えていきました。

 私たちでギミックを検討し、話し合い、遊べる要素を考えました。この要素ならばシュープリスに合うんじゃないか? そう考えたギミックをフロム・ソフトウェアさんに見ていただいたところ、好意的なお返事がいただけました。

――そのオリジナルギミックというのは何でしょうか?

千葉氏:「アーマード・コア フォーアンサー」より導入された「アサルトアーマー」というギミックです。シュープリスを含めた「ネクストAC(アーマード・コア)」という機体には、プライマルアーマーという一種のバリアが使われています。このアーマーによりネクストACは従来のACとは比べものにならない防御力があるのですが、アサルトアーマーはこのプライマルアーマーを一気に放出し爆発を起こすことで自分の周囲のものを吹き飛ばすことができます。

 シュープリスは「アーマード・コア4」の機体ですが、プライマルアーマーを持っているので、アサルトアーマーの発動も可能ではないか? ということで、今回新たに装甲の展開によるアサルトアーマーの発動時をイメージした変形ギミックを盛り込みました。この変形の際、気をつけたのはヒンジなどこの変形のために元のシュープリスのデザインを崩さないことでした。単純に商品のためのギミックではなく、世界観に沿った形でのギミックになったと思っています。

 「元のデザインを崩さず追加ギミックを入れる」というのは挑戦しがいのあるテーマでした。もちろん元のデザインをアレンジすればいくらでもギミックを入れられるのですが、「アレンジされたらシュープリスじゃないよ」というお客様もいると思ったので、シュープリスオリジナルのデザインにこだわったギミックとしています。

――ここからはサンプルを前によりディテールに踏み込んだお話しができればと思います。「DECOCTION MODELS シュープリス」のサンプルですが、やはり重量感、質感が良いですね。

千葉氏:まず見ていただきたいのは黒のカラーリングです。こちらはフロム・ソフトウェアさんのこだわりも強く、造型以上にリテイクを重ねた部分です。黒のマットな本体塗装に、金の差し色の美しさを見て欲しいです。

 そして先ほどのアサルトアーマーでの展開ギミックの1つとして、ふくらはぎの所を見て欲しいです。ふくらはぎには赤銅色のバーニアの噴出口があります。ここからバーニアの炎が出れば熱を持つことが想像できますよね。と同時に、その熱を放熱するギミックが近くにあるのではないかと、機械部品的な目線で考え、それならば装甲を開いて熱を逃がす機能があると自然ではないかと想像し、ギミックを思いつきました。これはシュープリスのプラモデルを見て思いついたギミックです。ふくらはぎの装甲がちょうど展開させやすいデザインだったんです。

【装甲展開ギミック】
ボディの先端部分がスライド、内部メカが見える
ふくらはぎの装甲が開く。放熱も考えたギミック
腰部のユニットも両側が開きシルエットが変わる

 ネクストACは「コジマ粒子」という粒子を機体各部から散布することで、プライマルアーマーというバリアを張り巡らせることができ、機体の耐久力を増しています。そして「アーマード・コア フォーアンサー」ではこのコジマ粒子を一気に放出、爆発させることでネクストACの周囲に大ダメージを与えるアサルトアーマーが使えるようになった。「アーマード・コア フォーアンサー」ではアサルトアーマー使用シーンにおいて、ネクストACの各部が展開しコジマ粒子を一気に放出する描写が入ります。この装甲展開は粒子放出だけではなく排熱なども兼ねているのではないか、という解釈のデザインです。装甲の展開には意味を持たせたかったんです。

 腰のアーマーは両側面が展開する。装甲展開させることでシルエットを変えたいという想いもありました。外観的に膨らんだりちゃんと変化がわかるようにする。それでいながら新しいヒンジなど元のデザインは崩さない。工業製品としての説得力も大事にする……。デザインはやはり難しかったです。

――「DECOCTION MODELS シュープリス」を目の前にすると、やはり造型や塗装の細かさに感心させられます。購入したお客様の家にはこれが届けられる。「塗装済み完成品」である本商品が手に入るというのが良いですね。

千葉氏:プラモデルを技術の高いモデラーが組み上げれば、非常にカッコイイシュープリスの立体物となりますが、組み立てる事自体が難しく感じてしまう人もいる。私たちもイベントで作例を飾っていると、「この完成品が欲しい」とお客様に言われることが多いんです。「DECOCTION MODELS シュープリス」はその声に応えた商品でもあります。ものすごい完成度の高いフィギュアが手に入る、というのはお客様が望まれたことだとも思うんです。このクオリティで量産できたのはやはり嬉しいですね。

――千葉さんのお気に入りのギミックはどこですか?

千葉氏:私のこだわりで、飾っているだけだとわからないギミックではあるんですけど、「足の脛のスプリングギミック」です。上から機体を押しつけると脛部分が数ミリ沈み込むんですよ。これはダンパーとして機能し、着地の衝撃を緩和させるという設定です。「アーマード・コア4」のオープニングムービーで、この足の脛部分が大写しになって、着地の衝撃に脛が沈み込むシーンがあるんです。それを是が非でも再現したかったんです。これもロボットファンの方に伝わって欲しいギミックです(笑)。

【千葉氏のお気に入り】
上から見たシュープリスは後部にウイング、先がとがっており、F1カーのような意匠が見て取れる
本体を力を込めて押しつけると、スプリングギミックで脛部分が沈み込む
しっかり面で表現された肩装甲。「ベルリオーズ」のエンブレムも印刷済み

 先程のCADの話もありましたが、実は私は学生時代の専攻はロボット工学、2足歩行ロボットを研究してたんです。ロボットの歩行の難しさは実際に体験していて、歩行のギミックとしては衝撃吸収のダンパーは"当たり前"なんです。だからこそこの商品にはダンパーを入れたかったんです。「歩くときどこに一番負荷がかかるか?」という観点で大学での研究を活かして盛り込んだギミックなんです。

――合金パーツはどのような場所に使っていますか。

千葉氏:腕や足の付け根、膝部分など負荷がかかりそうな部分に使っています。下半身に多めに使うことで重心も考えています。

 またスプリングを仕込むことで膝を深く曲げることができます。干渉する装甲がスプリングで内部にめり込むので、プラモデルではできなかった膝の深い折曲げが可能になっています。

【金属パーツ】
膝や足の付け根に金属パーツを使用。関節の保持や、重量感、質感自体も増している
足の付け根など、耐久度を求めるところに金属パーツが使われている
緩衝する部分がスプリングで沈み込むので、膝を深く折り曲げられる

 次ページでは武器の細かいギミックなどをさらに掘り下げていきたい。