インタビュー

「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」インタビュー

原作のエッセンスをふんだんに盛り込んだパワフルな造形

【ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム】

8月25日16時 予約開始

2024年2月 発送予定

価格:12,100円

 BANDAI SPIRITSは、塗装済み完成品フィギュア「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」を8月25日16時より通販サイト、プレミアムバンダイ内「魂ウェブ商店」にて予約受付を開始する。発売は2024年2月を予定し、価格は12,100円。

 「アンカーガンダム」は長谷川裕一氏のマンガ「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」の主人公、アッシュ・キングが駆るモビルスーツ。頭部の錨のような造形(ヒート・カッター)や丸みのある肩、左右非対称のデザインのケレン味溢れるデザインが目を引く機体だ。

ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム

 今回、「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」の企画を担当する天笠泰伸氏にインタビューを行なった。天笠氏の語る「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」の魅力や開発の経緯、商品ギミックなど、オススメポイントを聞いてみた。

「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」を担当するBANDAI SPIRITS コレクターズ事業部・天笠泰伸氏

宇宙戦国時代を渡る無敵運送が誇るアンカー

 インタビューに入る前に、「アンカーガンダム」について説明したい。

 上述の通り、長谷川裕一氏のマンガ「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」の主人公、アッシュ・キングが駆るモビルスーツ。舞台は前作「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」から16年後となっており、各スペースコロニーの独立運動が活発化し、宇宙戦国時代に突入していた。そのためモビルスーツの新造建設が困難となり、登場する機体は旧型機の改修・改造機が戦場を駆け抜けた。

 「アンカーガンダム」も同様に“ある機体”を元に独自に改修、複数の機体のパーツを組み合わせて完成させたミキシング・ビルド機となっている。

 左右非対称の外観が目を引くデザインで、左腕を覆う回転シールドや錨型の頭部、マッシブな印象が強い機体だ。

 そして、これまでの「機動戦士クロスボーン・ガンダム」シリーズの主役機らしい様々なギミックを内蔵し、戦闘ではそれらを巧みに操り、強力なモビルスーツとも渡り合ってきた。

 主武装となる近・中距離の複合武装アックス・ガンは腰から伸びる弾帯ベルトから給弾する射撃と制限時間付きながらビームサーベルを発振できる。劇中では弾帯を手にアックス・ガンを振り回すなどのアグレッシブなアクションを見せた。また左腕に装備した回転シールドは腕を覆うシールドから展開し、腕を包む回転式の巨大なナックルガードとしても機能する。

 頭部は「クロスボーン・ガンダム」シリーズならではのフェイスオープンによる放熱機構に加え、錨型のヒートカッターを展開・回転させる超至近距離による攻撃とケレン味溢れる武装も搭載。内蔵武装には脚部のパイルバンカー、右胸部に仕込まれた銃身から放つヒート・セラミック弾がある。

 そして、最大の得物である大型武装「イカリマル」は広範囲のビームの刃を展開、推進装置による加速も可能としている。さらに、右腕に仕込まれているワイヤーで振り回すなどパワフルな運用も劇中で見せた。

 「クロスボーン・ガンダム X-1」の武装を彷彿とさせる数々のギミックに加え、劇中のひっ迫した情勢の中で生まれた創意工夫による新しい武装と戦術が非常に心打たれる機体となっている。

 ROBOT魂シリーズではこれらギミックの再現はもちろんだが、「アンカーガンダム」が持つ魅力をいかにして立体にし、込めていったのか。企画担当の天笠氏に開発の裏側や「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」への想いを聞いてみた。

マンガの中の「アンカーガンダム」をROBOT魂で再現! のびやかなアクションとキャラクター性の再現

――「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」立体化の経緯をお聞かせください。

天笠氏:「ROBOT魂」で「クロスボーン・ガンダム」シリーズが展開されていますが、今回の立体化のきっかけになったのが「ROBOT魂 <SIDE MS> ファントムガンダム」(2021年4月 魂ウェブ商店)でした。こちらの商品がユーザー様からの評判がよく、特に長谷川裕一先生のコミックの雰囲気が非常によく出ていると好評をいただきました。

2021年4月に発売された「ROBOT魂 <SIDE MS> ファントムガンダム」

天笠氏:本来マンガの中でしか見られなかった機体のギミックを自分の手で触って、「蜃気楼鳥(ミラージュ・ワゾー)」に変形するなどユーザー様に驚きを提供できたのかなと思います。続いて約1年後に「ROBOT魂<SIDE MS> ゴーストガンダム」(2022年1月 魂ウェブ商店)を発売しました。

2022年1月に発売された「ROBOT魂<SIDE MS> ゴーストガンダム」

天笠氏:こちらもユーザー様からも好評を頂きまして、「ファントムガンダム」、「ゴーストガンダム」と続いて、企画立ち上げ時に連載中だった「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」の主役機を立体化しよういう流れでした。

「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」

天笠氏:「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」は2年前の「TAMASHII NATION ONLINE 2021 特別展示」で参考出品、1年前の「TAMASHII NATION2022」でも展示と長いスパンがかかりましたが、ようやく今年に満を持しての発売となりました。

――「TAMASHII NATION ONLINE 2021」での参考出展でファンの期待は高かったと思います。そして、今回立体化にあたりギミックの再現度も気になるところです。

天笠氏:最初の参考出展時では「アンカーガンダム」の外形だけでした。そこからギミックの盛り込みをしていきました。その中で「ひとつでも欠けたら悲しい」と思い、できるだけ原作マンガにあったアクションは全部入れましょうと時間をかけました。特に目立つ左の回転シールドは、設定画に合わせるか、劇中のイメージに合わせて大きく迫力あるものにするか、バランスを取りながら立体化しました。

左腕を覆う巨大な回転シールド

天笠氏:こちらは設定画よりもやや大きめに設計し、劇中のイメージを表現できるよう、長谷川先生の絵を再現できるようにしました。実際に前に展開して、腕を覆うようにして折り畳み、攻撃時の回転モーション再現の3段階を仕込むことができました。

左腕を覆う巨大なナックルガードのような展開機構

――なるほど。腕を覆っている状態と殴り掛かる際のアクションで見せ方にこだわったと。マンガと立体での見せ方の違いが大きく出ていました。

天笠氏:そうですね。昨今のモビルスーツデザインの流行は、かっちりとしたスマートなフォルムになっていると思います。しかし、「アンカーガンダム」に関しては劇中でもゴツい、タフな機体という設定がありますので、すっきりしたフォルムより盛り盛りに作っていく方が主人公のアッシュの雰囲気があるのかなと思います。

――「ROBOT魂 <SIDE MS> ファントムガンダム」と比べても、マッシブで力強い印象がありますね

天笠氏:はい。こうして並べてみると「ファントムガンダム」の緑と「アンカーガンダム」のオレンジで非常にビビッドな並びになります。こうした色の並びも「クロスボーン・ガンダム」シリーズでしか味わえないガンダムのカラーですね。

「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」(左)と「ROBOT魂 <SIDE MS> ファントムガンダム」(右)

――「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」の左右非対称のデザインは「どんなギミックが仕込まれているか?」と想像するのも楽しいですね

天笠氏:そうですね。個人的は脚部のパイルバンカーが「そこまでやるか?」というギミックを備えていまして、実際に真ん中の脛の部分がスライドして、装甲の一部を外して付け替え、薬莢のエフェクトも付けてと劇中の射出工程を再現しています。

脛の一部装甲を取り外して、足首のアンクルガードに装着
脛パーツが下へスライドして射出状態を表現。足裏にパイルバンカーをセット
薬莢エフェクトを付ければ、劇中のギミックを再現できる

天笠氏:特にこちらはアンカーV1だけのオリジナリティのある武器なので再現したかったです。そのためにアンクルガードも一体で作っているところを正面部分が回るように、パーツを挟み込む構造になっており、展開した際の装甲の動きをできるようにしています。

――ギミック一つ取ってもこだわりがすごい。

天笠氏:長谷川先生にギミックを詰め込んでいただいているので、「負けてられないぞ」と再現しました。

――なるほど。次に肩に回ってくる弾帯のパーツですが、こちらは形が決まっているものになりますか?

天笠氏:弾帯パーツは軟質パーツを使用しておりまして、実際に腰から肩を通しまして、アックス・ガンに接続してもある程度ポーズが取れる様にしております。

――軟質パーツとのことで、弾帯を手に持たせて劇中で見せたアックス・ガンを振り回すようなポーズもできますか?

天笠氏:はい。ある程度自由度のあるポージングが可能です。また、右腕部のワイヤーパーツもありまして、こちらは先端部分にフックが付いておりましてイカリマルにつけたりもできます。

弾帯部分は軟質パーツで動きの追従も可能

――「アンカーガンダム」の特徴でもあるフェイスオープンですが、攻撃も可能な頭部のヒート・カッターの表現で苦労されたところはありますか?

天笠氏:ヒート・カッターは頭部正面の中心を垂直に来ているという他のガンダムにはないデザインで、「アンカーガンダム」たらしめる部分だと思い、ここをスタートにデザインしていきました。

特徴的なヒート・カッター

天笠氏:そして、ガンダムらしいV字に展開したものは差し替えパーツで表現するのですが、それだけだと止まったイメージにしかならない。そこで、ヒート・カッターが回転しているイメージのエフェクトを付けたものを用意しました。クリアパーツを使用して、その隙間から目がちらっと見えたらカッコいいかなと。そして、劇中でもあった頭突きのアクションも表現できるようにしました。

エフェクト付きのヒート・カッターパーツ
ヒート・カッターが回転しているようなエフェクトパーツ

――背部のプロペラントはどのようになっていますか?

天笠氏:こちらはフレキシブルに可動し、基部の部分がボールジョイント、プロペラントにも軸可動があります。劇中でも方向を揃えて噴射するシーンもありますので、そういったシーン再現もできます。

プロペラント部分はフレキシブルに可動

――また、「アンカーガンダム」のデザインで、首元や肘関節が網目状になっているのですが、ROBOT魂でも再現されていますか?

天笠氏:そうですね。ここが一番苦労した部分でもあります。「アンカーガンダム」の特徴でもありますで、完全に関節はオリジナルになるのですが網目模様をうまくスケールに落として表現できているのではないかなと思います。頭を上げた際に見える首元のメッシュ表現も入れています。

首元のメッシュ表現も再現
肘や膝の網目模様も落とし込まれている

天笠氏:手の部分も特徴的なデザインです。通常のモビルスーツの場合、節がモーターで繋がっているイメージなのですが、「アンカーガンダム」の場合は鎖帷子のような形で人差し指だけ装甲があるオリジナリティあるデザインも再現しています。

手首パーツもメッシュ表現が入っている

――そして、「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」が持つイカリマルも迫力ある造形ですね

天笠氏:イカリマルはかなり大きなものなので、ディスプレイ台座「魂STAGE」などで補助をしていただけるとよりアクションが楽しめると思いますが、最低限肩に背負わせたりで自立ができるように考えています。

巨大な武器イカリマル。幅が「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」の本体の全高に匹敵する迫力ある造形となっている

――イカリマルは柄の部分は別パーツで伸縮機構が再現されていますが、エフェクトパーツもすごい力が入っていますね。

剣のように伸びたエフェクトパーツは「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」をも超えるビッグサイズ

天笠氏:マンガの一コマで劇中に登場したモビルアーマー「ムラサメ」がイカリマルを手にしてビームサーベルを展開したイメージがあり、最大稼働時には刃渡り30mを超えるという設定もありましたので、せっかくなのでifの世界として面白いかと。

――ビームのエフェクトパーツが「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」の大きさを超えてますね

天笠氏:別ブランドの「METAL BUILD」シリーズについているものよりも大きいのでは? というくらい大きいです。ただ、自立させるのは難しいかと思います。その際は「魂STAGE」(別売)で支えて使っていただければと思います。

――右胸部にあるヒート・セラミック弾の砲身展開も嬉しいです。劇中では奥の手的に使用しているのが印象的でした

天笠氏:2発限定というのもロマンがありますからね。

右の胸部からせり上がるように銃口が展開

――「クロスボーン・ガンダム」シリーズは「何か隠しているのではないか?」というワクワクしたギミックが多く、「アンカーガンダム」を初めて見た時も何が飛び出してくるのかと期待感がありました。

天笠氏:マンガの中の演出と噛み合って使用されるので印象に残りますので、「再現しないわけにはいかない!」と展開ギミックを入れました。ユーザー様の中ではこういったギミックは外せないと思っています。

――一番意識したのはこうした「アンカーガンダム」の特徴、キャラクター性が出るギミック表現ですか?

天笠氏:キャラクター性の再現はまさにその通りで、「設定にあるから作る」というよりは「劇中で実際こう使われたからそこは入れなくちゃいけない」と思いました。ユーザー様が印象に残っているところ、それが例え1回しか使われていない武器だとしてもそこは入れたいな、と。

――まさに“マンガの再現”ですね

天笠氏:もちろんマンガの表現もありますので、立体での完全再現というところは難しいのですが、最低限印象に残った部分を再現できるようにしています。

――その点で「ROBOT魂<SIDE MS>」シリーズはアニメ作品からの立体化が多いですが、「アンカーガンダム」のようなマンガ作品からの立体化で造形表現の違いなどはありますか?

天笠氏:アニメ、特に古い作品ですと作画によって違う絵の描かれ方がされていますので、極力それらに合わせる様にして「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」では可動軸を入れています。それに近い表現で、「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」でもマンガののびやかなイメージ、そしてアッシュとの人機一体になって暴れまわるキャラクター性の強いマシンを意識してモデリングしています。

――作品のエッセンスを抽出して、造形やギミックに落とし込む感じですか?

天笠氏:そうですね。原作での使われ方、マンガの中での印象をできるだけ盛り込みたいというのが今回のテーマでした。

追加ディテールは入れず、マンガのキャラクター性やアクションに重きを置かれたデザイン

――なるほど。では、特に気に入っているギミックは何ですか?

天笠氏:足のパイルバンカーですね。ここが「そこまでやるか?」、「やろう!」というノリで作りました。

アンカーガンダムの足裏から飛び出るパイルバンカー。作動時の膝、脛装甲のスライド、薬莢の排出と劇中アクションが再現されている

――ディテール面に関してですが、モールドなどの情報量は極力抑えたデザインになっていますね。

天笠氏:昨今はディテールを追加していくのが流行だとは思うのですが、「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」ではフォルムであったり、アクションであったり、そういったところを強調していく商品だと思っていました。なので、追加ディテールなどは考えていませんでしたね。

――「アンカーガンダム」は動かしてこそ映える印象が強い。

天笠氏:長谷川先生にも見ていただいたときに、伸びやかな表現を大事にしていますとお伝えした時にご理解をいただけました。

――長谷川先生から反応の良かった部分やギミックはありますか?

天笠氏:反応が良かったのとは違いますが、最後まで話し合ったのは回転シールドですね。最初はシールドの大きさや若干軸の位置がズレているのではないかと話はありました。それに関しても「武器は派手につけたいです!」、「殴っているときのシーンなどで力が出ると思います!」とお話しした際に「なるほど、わかりました!」と言っていただけたことが印象に残っています。

――回転シールドはいろんな場面で活躍していましたので、かなり印象深い武装だと思います

天笠氏:本当はベアリングを入れて、回転させたかったですね(笑)

――差し替えなしでの展開にもこだわったのでしょうか?

天笠氏:そうすることで極力ストレスなく遊ぶことができますので、こだわりました。付属のパーツも多いので、極力減らしたいというのもありますし、別パーツの付け替え作業やその際のパーツ紛失とかも避けたい。作れるものに関しては作っていく「ROBOT魂」シリーズでは基本そのように考えています。

――差し替えパーツによってディテール表現は上がりますが、劇中の再現度や一体感がなくなるので変形する方がロマンを感じます

天笠氏:「ROBOT魂 <SIDE MS> ファントムガンダム」などもそのあたりのコンセプトは同じで、極力オールインワンになっている状態が玩具としては美しいと思います。究極的には手首パーツの指先も動くようになるといいのかもしれません。

――昨今のフィギュアに求められるレベルも高くなっていると思います。

天笠氏:「ROBOT魂 <SIDE MS> ファントムガンダム」の「蜃気楼鳥(ミラージュ・ワゾー)」への変形が一つの到達点としてあり、今回の「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」は機体の変形はありませんが、盛り盛りのギミックをできるだけ差し替えなしで表現できればと考えていました。先ほどの回転シールドも差し替えの方が綺麗な形になるのかもしれませんが、玩具としてはこれが正解であろうと考えています。

――「アンカーガンダム」は一連の流れで様々な武器を使うので、そこをシームレスに楽しみたいところだと思います。

天笠氏:やはりブンドドしている時、自分の手で変形させてポーズを取らせるのが楽しいと思います。そこをパーツを外して、箱から出してをすると遊びが止まってしまうのではないかと考えています。

――フィギュアとして飾って眺めるよりも遊んでもらいたい。

天笠氏:「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」はガチャガチャと遊んでほしいですね。「ROBOT魂」での立体化となり、完全再現への制限はありましたが、一つの到達点になったのではないかなと思います。

――長谷川先生作品の持つロマンを再現といった感じでしょうか?

天笠氏:ロマンの再現であり、キャラクター性のモビルスーツとして「アッシュがメカになって大きくなったように見える」イメージを大事にしました。「アンカーが泣いている、怒っている」という表現もあるので。

――「アンカーガンダム」を立体化するにあたって苦労された点はどこでしょうか?

天笠氏:苦労した点としては、完成形の弾着点を決めるというところですね。当然ギミックは全部入れるというのは初めからありました。それらを入れつつ、フォルムを維持しつつ、パーツをできるだけ増やさずに「ROBOT魂」のフォーマットに落とし込む。本当にバランス取りが大変で、そこに2年の時間を費やしましたね。

――マンガやアニメでは場面によって設定画とは異なる“ハッタリ”を利かせた画面構成ができるので、その部分をどう立体に起こすかという感じでしょうか?

天笠氏:先ほどもお話ししました回転シールドを大きく作るなど、“ハッタリ”をユーザー様に違和感なくお伝えできるサイズを検討し、何パターンか作りましたね。設定画の立ち絵だと肩から腕までぴったりとした鎧のような感じですが、展開した際は大きく回転しているところがあります。そのどちらを活かそうかとした時、今回はアクションをしている時のイメージを取り入れたいと考えました。

――差し替えではなく変形で表現されているところで、かなり玩具としての印象も変わってくると思います

天笠氏:どうしても「ROBOT魂」のサイズだと限界がありますので、本来なら回転シールドの軸部分にも可動があって、肘の可動にもついてくるのが正しいと思います。なので、ある程度の取捨選択、「ROBOT魂」シリーズの中でできることの結論にはなったかなと思います。

――「アンカーガンダム」の武器は一つ一つに印象的なエピソードがあるので、それらもキャラクター性に密接にかかわっている

天笠氏:それがある限りは妥協できない。「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」のお話もみんなが前進していく前向きな展開があって、「アンカーガンダム」の活躍もあるのでできるだけのびやかに作りたいと考えていました。

――「ROBOT魂」でも「クロスボーン・ガンダム」商品が数多く展開されて、積み重なった一つの到達点として今回の「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」が発売されるのも物語性があって感慨深いですね。

天笠氏:長谷川先生の作品がまさにそのような感じで、各物語の連なりがあって「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」の結末に繋がるけど、そこで終わりではなく続いていくと思います。そういうマンガのストーリーを思い浮かべながら遊ぶのも楽しいと思います。

――今後の商品展開はいかがでしょうか?

天笠氏:すでに参考出展しております「ファントムガンダムV2」や、マンガの「アンカーガンダムV2」から「アンカーガンダムV4」と展開していきたいものはあります。特に「アンカーガンダムV2」以降は足の履帯表現を色々玩具としては難しい。長谷川先生からの挑戦状のような気がします。それらをどう立体にするかを考えています。V2のイカリマルを背負うギミックやV3のファントム・フレイムの表現など各バージョンで面白いギミックがありますので、「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」を作っている段階でどうするかを考えていました。

――「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」にこの先の商品展開時の仕掛けも込めている、と。

天笠氏:一応込めています(笑)

――「ファントムガンダムV2」の商品化も視野に入れていますか?

天笠氏:基本的にはV2、V2改を考えています。左腕のノーズローターやV2改で改良・展開したミスティック・シールドなどがあると思いますが、「ROBOT魂 <SIDE MS> ファントムガンダム」、「ROBOT魂<SIDE MS> ゴーストガンダム」を活かして立体化しやすいというところで考えています。

――「クロスボーン・ガンダム」で出てくる機体をすべて立体化したいなどの夢はありますか?

天笠氏:そうですね。「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」に関しても色々なモビルスーツが出ているので、「アンカーガンダム」だけでなく、「立体化してみたい」という機体はたくさんあります。特にミキシングビルド・モビルスーツとか。しかし、現在ユーザー様が付いてきてくださっている。長谷川先生のファンがたくさんいらっしゃる。思い入れを持った方が多くいらっしゃるので、もし立体化するなら半端な形ではなく「作るならちゃんと作りたい」と考えています。並べて終わりではなく、一つ一つの機体のギミックなどを大事に作りたいです。

――今回「アンカーガンダム」がROBOT魂で立体化され、「ファントムガンダム」と並べたいユーザーの方もいらっしゃると思います。その並べた時のスケール感は劇中に近いものでしょうか?

天笠氏:「アンカーガンダム」が18m級のモビルスーツという表現が原作にはあります。例えば「ファントムガンダム」とかですと頭一つ大きいところがありますので、不自然にならないくらいの身長差をつけています。完全再現ではありませんが、並べた際に違和感のないものにはなっていると思います。シルエットや背丈もそうですが、足の太さであったり、肩の丸さであったり、一回り大きいモビルスーツなんだと表現できていればいいなと思います。

――基本的に「ROBOT魂」シリーズはノンスケールでしたね。本商品ではその中でもサイズ差を強調するための演出が入っているわけですね。

天笠氏:やはり「ROBOT魂 <SIDE MS> ファントムガンダム」を購入いただいたユーザー様が「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」も購入してくださるだろうと想定して、並べた時に違和感のないように意識して造形しています。

――「アンカーガンダム」は劇中でもかなりアグレッシブかつパワフルなアクションを見せています。それをROBOT魂の可動で表現する難しさはありましたか?

天笠氏:それはもう頑張りました(笑)。タフな機体ということもありますし、ユーザー様にも遊んでいただきたい。なので、パーツがぽろぽろ外れないようにできるといいなと思いつつ、「ROBOT魂」シリーズは比較的細かいところにスプリングピンを使用したりと保持しやすい材質と設計になっていますのでタフな立体化になるかと思います。

――完成品だからこそできることですね。

天笠氏:これは強みですね。

――最後に「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」を楽しみにしているユーザーへのメッセージをお願いいたします。

天笠氏:実際に手に取っていただきたい。皆様が手に取って遊んで、長谷川先生が描くストーリーを追体験していただけるというのが企画者として一番の理想の楽しみ方だと思います。ユーザー様の喜びの声が多ければ、今後も展開をしていける可能性が上がります(笑)。まずは「ROBOT魂<SIDE MS>アンカーガンダム」を手に取ってください。

――ありがとうございました。