インタビュー

「トミカプレミアムunlimited 超時空要塞マクロス VF-1」プレビュー&インタビュー

河森氏もこだわった全体のフォルムと翼の薄さ、トミカの限界へ挑んだ商品

 今回、開発者に話を聞くことができた。トミカでVF-1をどう表現したのか、注目ポイントはどこかを質問した。

Q:先ずお聞きしたいのは、「トミカプレミアムunlimited VF-1」はどのような経緯で生まれたのでしょうか?

A:『機動戦士ガンダム』とのコラボによって「トミカプレミアムunlimited」というブランドの可能性がさらに広がったこともあり、1980年代のロボット・SFアニメ作品ファン層をターゲットにした商品として、「トミカプレミアムunlimited 超時空要塞マクロス VF-1」は生まれました。

 今回は『超時空要塞マクロス』で活躍した「VF-1 バルキリー」の商品化となります。

今回は、3機体がラインナップとなる。輝やマックスと小隊を構成する「柿崎速雄機」を望む声もSNS上では少なくなかったという

Q:これまでもトミカでは「航空自衛隊 F-35A」や「787エアポートセット」といった飛行機をモチーフとした商品を展開していますが、今回トミカでVF-1、そしてファイター形態のみの表現にしたのはどうしてでしょうか?

A:弊社では航空機をトミカで表現する所にはノウハウがあります。その上で「手のひらサイズ」という大きさでVF-1をどう表現するかを考えて、ファイター形態のみでの表現とすることに決めました。「トミカらしい表現」を追求したといえます。

 今回はもちろん新規設計、新規金型となります。今回トミカとしてのVF-1を追求するに当たり、他社のVF-1との差別化も意識しました。手のひらサイズで、トミカのブランディング、ダイキャストのボディと、トミカで定める安全基準、これらのフォーマットから、VF-1らしい、お客様に満足いただける表現のバランスを考えていきました。

 その中でも注力したところは「主翼の薄さ」です。トミカの安全基準があり、また手のひらサイズなので、強度の関係もあり、どうしても主翼を薄くは作れないんです。そしてディテール表現の彫刻です。溝を深くしすぎるとデザインが入れられなくなってしまうし、浅くすると塗料の塗膜で潰れてしまう。航空機らしい主翼の薄さと、ディテール表現は特にこだわりました。結果として結構うまくバランスがとれたんじゃないかと思います。塗装なども含め「マクロスのVF-1」を表現するため、力を込めました。

航空機としてのフォルムは特にバランスを追求したという
トミカの安全基準を満たしつつ、主翼の薄さを追求

Q:一方で、マクロスなら、VF-1ならガウォーク、という選択もあったのかな、と思います。あえてファイター形態にこだわった所を教えて下さい。

A:変形モードの場合、トミカとしての表現が難しいところがありました。「トミカプレミアムunlimited VF-1 バルキリー」は翼長が75.6mm、高さが25.3mm、全長が84.9mmというまさにトミカサイズでVF-1を表現しています。ボディをダイキャスト、主翼と尾翼を樹脂パーツで表現しています。

Q:今回は台座に置く形になっています。これは飛んでいる風景をイメージしたディスプレイなのでしょうか?

A:手に持って飛行している姿もイメージして眺めるようにもしています。ランディングギアは表現していませんが、機体を正面から見たときは、アニメ『超時空要塞マクロス』のオープニング、発艦用のエレベーターから出てくるVF-1をイメージしました。発進しようとするVF-1のイメージも重なるようにしています。

 その上で、台座に載ったVF-1は発進しようとするイメージと、飛んでいる姿、どちらも想像できるようにしていますし、3つの機体を並べた姿ですね。「一条機」、「マックス機」、「フォッカー機」を並べて飾る楽しさも感じられるようにしました。

どこから見ても美しく。手に持って飛ぶ姿を想像するのも楽しい

Q:3機編隊ということで、やはり輝とマックスと来れば、劇中で「バーミリオン小隊」を構成する「柿崎速雄機」だったのではないでしょうか? もちろん「ロイ・フォッカー スペシャル」は外せなかったと思いますが、柿崎機を商品化しよう、という流れにはならなかったのですか?

A:SNS上でも「柿崎機は出ないのか」という反応は多かったです(笑)。やっぱり、主役機である一条機、人気が高くTV版での後半の主役機でもあるフォッカー機は外せず、後もう一機というところで、人気の高いマックス機に決めました。マックス機は続編である「マクロス7」にも登場します。こう言った判断で3機をラインナップしました。

Q:商品での注目ポイントをもう少し教えて下さい。

A:各機体とも彩色で差別化を図っていますが、その中でも工程が複雑だったのが「ロイ・フォッカー機」です。尾翼のドクロマークはそのデザインの再現もですが、位置がとても重要なので、工場で生産するときは特に注意しました。

 主翼の細さも構造検討の際には苦労しました。「トミカプレミアムunlimited VF-1」は他のマクロスアイテム同様、総監督である河森正治氏に監修をお願いしていますが、「主翼をできるだけ細く」というのは監修されていたところで、河森氏の想いにできるだけ応えたいと、工場の方、設計担当者と共に努力しました。

特に大変だったというドクロマーク

 河森氏の監修は指示が非常に明確だったのが印象的です。河森氏の中に明確な「VF-1像」があり、その理想的なラインを提示していただけたので、私たちはそこに向かって努力するということができました。

 また、トミカという手のひらサイズのミニカーに関しても理解していただけていたので、監修に応えるというところではとてもやりやすかった、という点も強調しておきたいところです。

Q:ほかにも河森氏の監修で印象に残っているところがありますか?

A:バトロイド時に頭部となる、機体の下側のカメラとタレットですがここの表現は監修で指摘をいただきました。もう一つが“ヒゲ”。VF-1は一対の突起があるんですが、ここをしっかり造型して欲しいと。トミカの安全基準でこの出っ張りの表現はかなり難しかったので、構造で工夫はしました。実現できたのはよかったです。

 キャノピーの透明度、内部のコクピットのディテール表現などは「トミカプレミアムunlimited」という、トミカの最上位ブランドとして表現をこだわった部分です。

赤丸で囲んだのが“ヒゲ”の部分

 ほかにも尾翼のバランスも注目して欲しいです。細すぎても歪んでしまいますし、厚すぎるとVF-1らしさが減ってしまう。できるだけ細く、そして強度も考えたバランスになっています。経年でたれてこないように調整しています。生産は他のトミカ同様、トミカの工場で行っています。VF-1のための調整も大変でしたが、これまでのトミカの設計・生産のノウハウが活かされています。

Q:企画開発者のお気に入りはどこでしょうか。

A:まずは全体的なフォルムです。トミカできちんとVF-1らしいシルエットができました。そしてエンジン部分ですね。これは別パーツで雰囲気もきちんと再現しています。もう1つはやはり繰り返しになりますが翼の薄さです。ここは生産で一番難しい部分でした。もちろん、彩色、カラーリングもこだわった部分です。

 今回、私たちが「トミカプレミアムunlimited VF-1」で目指したのは、『超時空要塞マクロス』TV版の最初のVF-1の姿であり、バランスです。私も子供の頃に『超時空要塞マクロス』を見て、VF-1が好きでした。きちんと飛行機としてリアルなフォルムの機体が、ロボットに変型するデザインはそれまで見たことがなく、衝撃でした。あの頃は小学校低学年でしたが、その衝撃は今でも覚えています。

 今回そのVF-1を担当でき、河森監督とお話をすることもできて夢が叶った気持ちになりました。河森監督は柔らかい物腰の中で明確で理論だった説明をしていただけたので、改めてすごい人だな、と思いました。

Q:見方、遊び方でオススメはありますか? 手に持って飛んでいる姿を想像するのが良いでしょうか、それとも台座に乗せてアニメのオープニングのアングルで見るのが良いでしょうか?

A:「どのアングルでも良さが感じられる」というバランスを目指して作りました。その主張がそれぞれのパッケージに出してあります。3種それぞれのパッケージに描かれるVF-1はアングルが別になっています。パッケージで描かれるVF-1には「色々なアングルから商品を見て欲しい」というメッセージも込めています。

パッケージではVF-1の“見せ方”も意識しているという

Q:『機動戦士ガンダム』とのコラボで、「ホワイトベース」には車輪がついてコロ走行が可能になっていましたが、VF-1ではそういった走行ギミックはないのでしょうか?

A:『機動戦士ガンダム』の時は「トミカらしいアレンジ」として走行ギミックを付けましたが、「トミカプレミアムunlimited 超時空要塞マクロス VF-1」に関しては飛行機としてのフォルムの再現を重視しました。「トミカプレミアムunlimited」はできるだけモチーフに近づけるというのが方向性で、VF-1でも同じベクトルで商品化を行いました。

Q:では最後に、ユーザーへのメッセージを。

A:対象年齢が低めに設定されているトミカで、できる限り攻めた商品企画となっています。ぜひ「トミカのVF-1」を手に取って下さい。よろしくお願いします。本商品は「トミカプレミアムunlimited」ブランドで初めての飛行機モチーフとなります。今回はトミカというブランドの中で、unlimited…限界を超えるシリーズの新商品で、今後のシリーズの可能性を広げたといえます。これからの展開もお楽しみにして下さい。

Q:ありがとうございました。

トミカでしっかり再現されたVF-1。コレクションアイテムとして非常に魅力的だ

 実際、「トミカプレミアムunlimited VF-1」は触ってみて楽しい商品だ。変形可能なアクションフィギュア、航空機としてのディテールをたっぷり盛り込んだプラモデル、美少女フィギュアと合体可能なアレンジなど、「マクロス」は様々な商品が出ているが、手のひらサイズで、ダイキャストの重みが感じられる、「トミカのVF-1」は独特の質感がある。

 コレクションとして机のそばなどに置くのにちょうど良いし、改めてVF-1のデザインの面白さを実感できる。『超時空要塞マクロス』のメカファン要チェックの商品と感じた。VF-19など、他のシリーズのマクロスメカにも挑戦して欲しい。