インタビュー
『マクロス7』のファイヤーバルキリーが、「HI-METAL R」と『TINY SESSION』に!
プロポーションや変形システム、企画担当者が語るこだわり
2024年4月4日 00:00
- 【HI-METAL R VF-19改 ファイヤーバルキリー】
- 8月発売予定
- 価格:14,300円
- 【TINY SESSION VF-19改 ファイヤーバルキリー with 熱気バサラ】
- 4月発売予定
- 価格:5,500円
- 【TINY SESSION YF-19(イサム・ダイソン機) with ミュン・ファン・ローン】
- 8月発売予定
- 価格:5,500円
今回、BANDAI SPIRITSコレクターズ事業部で、『マクロス』シリーズの最新商品の話を聞くことができた。3つの商品に関してで、1つは「HI-METAL R VF-19改 ファイヤーバルキリー」。そして2つめが「TINY SESSION VF-19改 ファイヤーバルキリー with 熱気バサラ」、最後が「TINY SESSION YF-19(イサム・ダイソン機) with ミュン・ファン・ローン」である。
今回話を聞いたのは企画担当者であるBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の寺島塁氏。VF-19改は『マクロス』シリーズでも特にユニークなメカだ。“歌う主人公”である「熱気バサラ」が搭乗する「戦わないバルキリー」である。戦闘機なのに戦わず、バサラの歌を戦場に届けるために、宇宙を飛翔するのだ。「HI-METAL R」シリーズ、そして「TINY SESSION」で、このユニークな機体をどう表現したのか、こだわりを聞くことができた。
なお、今回撮影したアイテムはすべて試作品なので、実際の商品とは仕様が異なる場合があるので注意して欲しい。
「俺の歌を聞け!」、戦わない主人公の愛機「ファイヤーバルキリー」が「HI-METAL R」に
まずは「HI-METAL R VF-19改 ファイヤーバルキリー」を紹介したい。この商品は8月発売予定で、価格は14,300円。モチーフに加え、商品企画そのものもユニークなものとなっており、ちょっと複雑な背景がある。順を追って説明していきたい。
モチーフである「VF-19改 ファイヤーバルキリー」は1994年のアニメ『マクロス7』に登場する。『マクロス7』は、前作に当たる『超時空要塞マクロス』から35年後の世界で、星間戦争により一時は絶滅の危機に瀕した地球人類が、人類存続のために宇宙へ進出した時代を描く。7番目の移民船団「マクロス7」が、正体不明の敵「バロータ軍」の襲撃を受ける。
バロータ軍はマクロス7と同様可変戦闘機を主力とし、しかも撃墜したパイロットや市民から「スピリチア」と呼ばれる生体エネルギーを吸収する。スピリチアを奪われた人々は生きる気力を失い、命の危険にさらされる。マクロス船団の防衛を担う統合軍はこの正体不明の敵に不利な戦いを強いられていた。
その統合軍とバロータ軍のど真ん中に真っ赤なバルキリーが割り込んでくる。パイロットはロックバンド「Fire Bomber」のボーカリスト・熱気バサラだ。彼はなぜか最新鋭機であるはずのVF-19を所有しており、超人的なテクニックで戦場を飛び回り、そして戦場のど真ん中で“歌”を歌い始める! 「戦いなんてくだらねえ、俺の歌を聞け!」。……バサラの突飛な行動はしかし、この戦いに大きな影響を与え始めるのである。
今回の商品のモチーフとなるのはこのバサラが乗る愛機「VF-19改 ファイヤーバルキリー」である。『マクロス7』時代の最新鋭可変戦闘機「VF-19」を大胆に改造したもので、番組開始時の統合軍が使用している「VF-11」や「VF-17」以上の性能を持っている。バサラはこのファイヤーバルキリーを真っ赤に塗装、バトロイド時の顔には“口”が造型されており、肩には展開式のスピーカーを装備、さらには敵にスピーカーポッドを撃ち込み、戦場で自身の歌を響かせる。
コクピットでバサラはギターをつま弾く。このギターは何と操縦桿を兼ねており、バサラは演奏しながらギターでVF-19を操縦する。そしてその技能はトップパイロットも驚かせる超絶技巧だ。このインパクトのものすごい主人公と愛機はその後の『マクロス』シリーズでも並ぶもののいない、特別なキャラクターとしてファンに記憶されている。
「HI-METAL R VF-19改 ファイヤーバルキリー」はこのファイヤーバルキリーを全高約15cm(バトロイド時)で表現、バルキリーの商品化を積極的に行っている「DX超合金シリーズ」より手軽な大きさでありながら、劇中の3段変形を再現しており、ファイター、ガウォーク、バトロイドに変形する。
実はBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部(当時はバンダイコレクターズ事業部)では2010年に「VF HI-METAL VF-19改 ファイヤーバルキリー」という商品を発売している。しかし今回の商品はこの「VF HI-METAL」の再販ではなく、新規設計・新規金型を採用したという。次章からは試作品を前に、企画担当者のこだわりに迫っていこう。
「HI-METAL R」では特にバトロイド時のマッシブさを追求
今回、まず最初に質問したのは、今の時期に「ファイヤーバルキリー」をモチーフとした商品を発売する意義だ。寺島氏は「今年は『マクロス7』30周年です。この記念すべき年に商品を投入したいというところで『HI-METAL R VF-19改 ファイヤーバルキリー』を発表しました。まずは『TINY SESSION VF-19改 ファイヤーバルキリー with 熱気バサラ』を4月に、そして続いてこのHI-METAL Rの発売を予定しています」と答えた。
コレクターズ事業部の『マクロス』関連商品としては、「DX超合金」シリーズがある。このシリーズでは変形システムや基本機構は共通の「DX超合金 YF-19 エクスカリバー(イサム・ダイソン機)」が発売されている。この設計を活用するDX超合金での展開もあり得たと思うが、あえて新規設計の「HI-METAL R」での商品展開を決めたのは、HI-METAL Rの方がサイズや価格を手ごろにでき、高額なDX超合金を集めるファンとは違う層のユーザーにも興味を持ってもらえるようにしたかったということだ。
ファイヤーバルキリーは、今から14年前、VF HI-METALでの商品展開を行っているが、今回はそこから設計を一新、「HI-METAL R VF-19改 ファイヤーバルキリー」では、「HI-METAL RでのVF-19」という新しいフォーマットを設定すべく、
新規金型で設計を行っている。
設計のテーマは3段変形の実現、特にファイターと、バトロイド形態のプロポーションを両立させることに注力している。プロポーションを変えると変形システム、パーツの構造、すべてが変わるので、以前の設計は流用できないと判断した。「テレビアニメーション内のイメージ通りのバランスのファイヤーバルキリーを目指す」というのが、商品の目的だという。
掲げたテーマの中で、寺島氏が企画にあたり重要視したのが「バトロイド形態のプロポーション」だ。ファイヤーバルキリーはマッシブなイメージがある。設定画やアニメ内のイメージに近づけるべくバトロイド形態のシルエットを追求している。印象的なボディの赤は試作品では彩色されているが、商品では成型色と、表面処理でマットな質感になる予定だ。ツヤツヤではなく、航空機の表面のような感じを追求するという。
試作品はバトロイド形態だったが、比較のため「VF HI-METAL」版も横に置いてみた。比較すると足の太さが一目瞭然だ。また、「VF HI-METAL」版は変形システムの都合で足の付け根が胴体の下側にあるスマートな、ちょっと胴長な感じになっているが、「HI-METAL R」は逆に胴部分が短く、ぎゅっと詰まったような感じになる。スネも短く、そしてふくらはぎも含めて膝から下部分のボリュームが増しているのがわかる。
肩のボリュームも増している。劇中でも怒り肩のファイヤーバルキリーは印象的であり、上半身のマッシブさを印象づけるために、肩は大きく見えるように意識している。そして劇中で印象的なギミック、肩のスピーカーの展開ギミックも盛り込まれている。スピーカーの展開は上部カバーの差し替えで表現。
スピーカーユニットや、塗り分けられた銀色のメカニカルな内部パーツも見ることができた。空気のある大気圏内ではファイヤーバルキリーは肩のスピーカーを展開し、バサラの歌を周囲に聴かせるのである。ファイヤーバルキリーには必須と言える装備だろう。
ファイヤーバルキリーで外せないギミックといえば、ふくらはぎに内蔵されたマイクロミサイル「ペッパーミル」である。このミサイルの表現は寺島氏のお気に入りだという。VF-19は脚部にミサイルを内蔵しており、ふくらはぎ部分の装甲を展開しミサイルが発射できる。手に持つガンポッドはスピーカーポッドの射出、頭部レーザー機銃すら取り払っているファイヤーバルキリーが唯一持っている“武器”だ。50話ある『マクロス7』で、バサラは片手で数えられるほどしかこのミサイルを使っていないが、だからこそ印象的だ。
「HI-METAL R VF-19改 ファイヤーバルキリー」ではスネの外側の装甲を開き、内部のミサイルの向きを変えることで射撃状態を再現できる。ミサイルの角度を調整すれば、ファイター時でもミサイルの射撃姿勢がとれる。さらにミサイルを外して搭載していない状態も再現できる。「このミサイルは戦わない主人公であるバサラが撃ってしまう、バサラの葛藤や、作品のテーマを問う上でも重要だと思うんです。だからこそミサイルギミックは実現させたかったです」と寺島氏は語った。
そしてコクピットに座るバサラのフィギュアだ。豆粒のように小さなサイズだが、きちんと操縦桿であるギターも持っており、服装も塗り分けられている。工場生産品として非常に工程のかかるところではあるが、ぱっと見ただけできちんとバサラだとわかる。強いこだわりを感じさせられる。
もう1つ、「差し替えのフェイスパーツ」も楽しいオプションだ。本商品には「フェイスプレートを再現したフェイスパーツ」が付属し、口のある顔と差し替えができる。バサラが歌えなくなったとき、ファイヤーバルキリーも口のカバーが開かなくなってしまうエピソードがあったのだ。「口がなければ歌えない」という印象的なエピソードである。
ファイヤーバルキリーは勇者ロボシリーズのように口は動かないのだが、このカバーが閉じて歌を封じられた演出があった。商品は差し替えでこの「口が閉じたファイヤーバルキリー」が表現できる。ファンがニヤリとする仕掛けで、企画担当者が本商品に託した方向性がしっかりわかる要素と言えるだろう。
「HI-METAL R」は要所に金属(ダイキャスト)部品を使用していることも特徴のひとつ。本商品でも肘等の関節や、ボディの骨組み部分などに金属パーツを使い、しっかりした変形を実現している。特にVF-19は背中部分が大胆に可動するため、まるまるダイキャストを使用している。強度だけ出なく手に持ったときの重量感や、変形時に見える金属光を放つパーツのマテリアル感などの演出も意識している。
もちろん変形機構は本商品の大きなウリで、手頃なサイズ感で設定上のVF-19がどういった変形システムを持っていて、どのように各部位が移動していくか、「DX超合金」同様、しっかり変形機構を堪能できる。「『HI-METAL R』でVF-19の変形を表現した初商品になるので、しっかり変形を見て欲しいです」と寺島氏は語った。
そしてファンとしての期待は、今回ファイヤーバルキリーで、「VF-19の基本構造」がしっかり商品化されたことで、今後の商品展開への期待も大きく跳ね上がるというところも大きい。VF-19は試作機である「YF-19」がOVA『マクロスプラス』の主役を務めているほか、『マクロス7』でも制式採用機として「VF-19F/S ブレーザーバルキリー」が登場している。ゲーム作品オリジナル機体などもあり、VF-19は人気も高い。これらの展開も大いに期待したい。
寺島氏は「HI-METAL R VF-19改 ファイヤーバルキリー」に関して、「繰り返しになりますが、本商品は劇中のイメージや設定画をモチーフとした、劇中のファイヤーバルキリーを手にできる楽しさに注力しています。バトロイドで色々なポーズを取らせて、3段変形を愉しみ、色々なギミックで劇中のエピソードを思い出して遊んでください」と語った。
さらに今後の展開も聞くことができた。実現の可能性が高いのは「サウンドブースター」だ。“歌エネルギー”を有効活用する装備として登場するファイヤーバルキリーの追加装備だ。さらに『マクロス7』に関しては、Fire Bomberメンバーが搭乗する「ミレーヌバルキリー」、「ストームバルキリー」の試作品も2023年11月に開催されたTAMASHI NATION 2023に参考出展されており、寺島氏はこれらもぜひ商品化すべく努力したいと語った。
次ページではデフォルメ体系で3段変形が愉しめる「TINY SESSION VF-19改 ファイヤーバルキリー with 熱気バサラ」、「TINY SESSION YF-19(イサム・ダイソン機) with ミュン・ファン・ローン」を紹介していこう。
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※写真はすべて試作品であり、実際の仕様とは異なります。