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これこそが俺が見たかったサンダーバード! 第32回モデラーズクラブ合同作品展での巨大ジオラマ展示に注目【#静岡ホビーショー】

【第61回 静岡ホビーショー】

開催日:5月10日~14日(一般開放は13~14日)

入場料:無料

場所:ツインメッセ静岡(静岡市駿河区曲金3丁目1-10)

※一般公開日の入場受付は終了

 「第61回 静岡ホビーショー」の見所の1つは間違いなく「第32回モデラーズクラブ合同作品展」だろう。静岡県内はもちろん、日本中のモデラー達がその力作を持ち寄る、日本最大級の模型作例展示だ。

 その模型展示は力作揃い。原形の商品もない1から作り上げた「フルスクラッチ」の作品も多いし、まるでプラモデル商品の見本のようにかっちり仕上げられた物もある。モーターライズ、電飾、ジオラマ、ギャグ作品などアプローチも様々だ。

 観客の目を集めていた作品も少なくない。本稿ではジオラマアーティストであるSOL氏の「サンダーバード」作品を紹介したい。

 「サンダーバード」は1965年のイギリスの特撮番組。サンダーバードは世界的な大富豪ジェフ・トレーシーが設立した秘密組織・国際救助隊。ジェフの5人の息子達はブルーの制服に身を包み、最新鋭の科学技術で開発されたスーパーメカ・サンダーバードを操り、世界中の大災害や事故に立ち向かう。

SOL氏の「サンダーバード秘密基地」。1965年の番組放映当時、多くの人が憧れた秘密基地だ
滑走路の椰子の木が倒れる。劇中印象的なギミック
外装を外し、内部を見ることも

 「サンダーバード」が世界中の人々を魅了し、現代まで語り継がれる名作たるゆえんはその特撮映像にある。サンダーバードのメカや、災害、事故をミニチュアワークで描くその特撮技術は世界に衝撃を与えた。また作中の人物の描写は人形を使用。人形とミニチュアワークを組み合わせた「スーパーマリオネーション」の映像は、後の特撮SFドラマの爆発的発展のきっかけとなった。

 その中でも印象的なのが、「発進シーン」である。秘密組織である国際救助隊の基地は小さな島に偽装されている。何の変哲もナイシマに見えるが、内部はサンダーバードを整備運用する秘密基地であり、隠された滑走路や発射台が現れる。これらは毎回同じ映像を使用する「バンクシーン」として印象づけられる。「ウルトラセブン」をはじめとしたウルトラシリーズの防衛隊の発進シーンや、アニメロボの出撃シーンなど、このサンダーバードメカの出撃シーンにその源流がある。

 放映当時各サンダーバードメカをモチーフとしたプラモデルは飛ぶように売れた。その中でも高価な、子供達の憧れだったのが今井科学が発売した「サンダーバード秘密基地」である。モーターライズやスプリングギミックを用いて島のジオラマから各メカが出撃するのだ。

 今回SOL氏はこのサンダーバード秘密基地をまるまる再現したジオラマを会場に出展し多いに話題を集めていた。巨大サイズと見事なジオラマ表現に加え、各部が可動、劇中そのままに発進シーンを再現する。それは各装置が動くだけでなく、ジオラマに設置された小型カメラが、当時の映像そのままのアングルで各メカの出撃シーンを映し出すのである!

 このサンダーバード秘密基地は、原型となる商品がある。ディアゴスティーニが2020年1月より刊行した「週刊サンダーバード秘密基地」だ。全110号で、総額は約220,000円。しかしSOL氏はここから自身の模型スキルでこのジオラマをブラッシュアップした。

原型であるディアゴスティーニの「週刊サンダーバード秘密基地」。非常に凝っているが、SOL氏はここから大きく手を加えている

 まず原型では小さかった島の海を大きく拡張。原作にはないサンダーバード4号の発進口を丁寧に潰した。また「島の背面」もディアゴスティーニ版は設定されたが、すべて削っている。TVドラマではその設定はないからだ。ジオラマ全体も「当時のまま」を考えて手を入れている。

最大の特徴が内部に備え付けられたカメラ映像
当時のアングルでメカが動く
海も大きくスケールアップ
原作にない後ろ部分はバッサリカット

 そしてこのジオラマの最大の特徴は「小型カメラ」である。ディアゴスティーニ版はジオラマの島の外殻を外し内部メカをむき出しにすることで発進シーンを楽しめるのだが、それは“SOL氏の求める発進の姿”ではなかった。

 当時のアングル、当時の出撃シーンを再現できるように慎重に計算し、ジオラマ内部に小型カメラを設置した。このため、外殻を閉じていてもカメラで出撃シーンを追えるのだ。「劇中そのまま」という視点において、原型を遙かに上回る再現度を獲得したのである。この熱い想いは、会場の人の足を止めさせ、人気を博していた。

こちらもSOL氏の「サンダーバード2号」。出撃カタパルトが可動する。原型はタカラトミーから発売された「サンダーバード 1/144フルアクションサンダーバード2号」だが、現在の価値観でディテールアップされたラインはすべて潰し、当時の質感、ディテールを再現している